永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(165)

2008年09月19日 | Weblog
9/19  165回

【薄雲(うすくも)の巻】  その(4)

こらえきれない悲しさに、明石の御方のうた、

「末とほき二葉の松にひきわかれいつか木だかきかげをみるべき」
――生い先長い姫君に別れて、私はいつ立派に成長なさったところを見ることができるでしょう――

源氏のうた
「おひそめし根も深ければたけくまの松に小松の千代をならべむ、のどかにを」
――あなたと私との深い契りの中に生まれた姫君ですから、ゆくゆくは二人でその出世を眺めましょう。気長にお待ちなさい。――

道すがら、源氏は、後に残った明石の御方の気の毒さに、ご自分の罪深さを思うのでした。

 暗くなって二条院へお着きになりました。一緒に付いて参りました明石の御方の侍女達には田舎じみた自分たちが、どんなにきまり悪いご奉公になることかと、思いましたが、

「西面をことにしつらはせ給ひて、ちひさき御調度ども、うつくしげに整へさせ給へり。若君は道にて寝給ひにけり。抱きおろされて、泣きなどはし給はず。」
――紫の上は、西面(にしおもて)に姫君の御座所(おましどころ)を特別にご用意なさって、小さいお道具類を、見るも美しくお揃えになっておりました。明石の姫君は道中寝てしまわれて、車から抱き下ろされてもお泣きにはなりません――

「こなたにて御くだものまゐりなどし給へど、やうやう見めぐらして、母君の見えぬをもとめて、らうたげにうちひそみ給へば、乳母召し出でて、なぐさめ紛らはし聞え給ふ」
――姫君は、紫の上のお部屋でお菓子を召し上がったりなさるけれども、次第にあたりを見回して、母君の姿が見あたらないのを探しながら、可愛らしく泣き顔をなさるので、一緒に付いて来ました乳母をお呼びになって、気をまぎらわせてお上げになります――

◆たけくまの松=武隈の松=奥州にあって古来双生で名高く、夫婦に譬えています。
◆ここの幼子の描写は、女性作家ならではの繊細な描写と言われています。

ではまた。




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