NPOな人

NPOの現状や日々の雑感などを徒然なるままにお伝えします。

行くに径(こみち)に由らず

2018年11月12日 | NPO

知人から、今年の3月に亡くなられた岡崎洋さんの遺稿集「行くに径(こみち)に由らず」をいただきました。

岡崎さんは、1995年4月から2期8年にわたり神奈川県知事を務められた方です。

元大蔵官僚ですが、最後の2年間は環境省事務次官を務められており、環境問題をライフワークにするとして、退官後は私財を投じて財団法人地球・人間環境フォーラムを設立したほどですので、非営利活動に対する理解は県職員の及ぶところではありませんでした。

・・・・・就任直後の6月に、「ボランティア活動を総合的に支援するための施設を設置する」という方針を示したが、知事のスピード感はいわゆるお役所仕事からみると尋常ではなかった。9月に横浜駅西口に立地する既存施設をサポートセンターとして改修するための経費を補正予算で措置し、翌年の4月20日にはオープンさせてしまったのである。後に岡崎知事は、かながわ県民活動サポートセンターを設置した時の思いを「今は企業も非常に具合が悪いし、閉塞感があふれて先行きがどうなるか分からない。新しい21世紀における生き生きとした社会づくりを考えたとき、発展のエネルギーがどういう層の中から出てくるのだろうか、模索の時代を通過しているのだと思っている。私は、NPOとかボランティアの自発的な活動を中心としたところから社会を引っ張っていく新しいエネルギーが生まれ、大きな力になる。そうした気持ちを持っていたので、知事になってから早速サポートセンターを立ち上げた」と述べている。(拙著:NPO解体新書より)

某は、サポートセンターの開設から足掛け10年にわたりその運営に携わりましたが、開設してから5年目に知事からA4の紙・1枚を渡されました。

そこには、県の貸付債権100億円を原資として基金を創設し、その運用益を活用してNPOの活動を支援するという、「かながわボランタリー活動推進基金21」の構想がメモされていました。

「親分、県の金庫には現ナマはありませんぜ?」

「なぁーに、現ナマは無くても、これまであちこちに貸付けた金の証文があるだろーが! 百億円ほど掻き集めりゃ、その上がりは年に1億円ほどにならーな。それを世のため人のために働いている皆さんに回すのよ!」

県職員には思いもつきませんが、財団経営で資金調達に苦しんだ経験を持つ岡崎さんならではのウルトラC施策であり、財政のプロ中のプロによる発想です某は胃に穴が開きそうになりながらも、何とか2001年に基金の設立に漕ぎつけることができました。

知事就任挨拶で、「行くに径(こみち)に由(よ)らず、公事に非ざれば偃(えん)の室に至らざるなり。(道を歩くのに脇道に入って楽をしようとせず。公の用事以外で私の部屋を訪れることはするな。)」と述べたように、県職員とは個人的な付き合いは一切しない方でしたが、岡崎さんがNPOに託した夢と希望、その強い思いは承知していました。

いま改めて感謝をしながら、遺稿集を読んでいます。

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