夏の東京都大会で初優勝を成し遂げた都立程久保高校野球部は、甲子園での開会式直前にテレビ局の取材を受けました。
取材インタビューを一手に引き受けていたのは、大会直前にキャプテンに任命された背番号10の二階正義です。
野球が一番下手で補欠選手だった正義は、マネジメントに参加するようになって以来、アイデアマンとしてさまざまなことを企画してきましたが、野球部が集中して練習に取り組めるようになったことやスタンドの盛り上がりを引き出した最高の功労者は、間違いなく正義でした。
みなみは、正義の取り組みに対し「人事」という形で応えたいと考え、たとえ下手でも大手を振ってベンチに入れるキャプテンにすることを思いついたのです。
キャプテンの正義は、インタビュアーの「甲子園では、どんな野球をしたいですか?」という質問に、しばらく考えた後、「あなたは、どんな野球をしてもらいたいですか?」と返しました。続けて、「ぼくたちは、顧客からスタートしたいのです。顧客が価値ありとし、必要とし、求めているものから、野球をしたいのです。」と答えました。
ドラッカーはマネジメントで、
真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち、現実、欲求、価値からスタートする。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。「われわれの製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである、」
と述べています。
江戸の商人の顧客志向の経営について高島屋を例にとると、初代飯田新七が創業に際し、経営の基本方針として3ケ条の掟を定めています。やがてそれは四つの綱領として成分化されて、
店是として現代に至るまで受け継がれています。
3カ条の掟
一 正札
二 正道
三 平等の待遇
四つの綱領
第一義 確実なる品を廉価にて販売し、自他の利益を図るべし
第二義 正札掛値なし
第三義 商品の良否は、明らかにこれを顧客に告げ、一点の虚偽あるべからず
第四義 顧客の待遇を平等にし、苟(いやしく)も貧富貴賎により差等を附すべからず
米国発の株主価値経営の真の意味は、短気利益を重視することではなく、顧客満足であることを「もしドラ」と「江戸の商人」は教えているのです。
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