前回に続きカルガリー軍事博物館の海軍館の展示を見ていきます。
4インチMk.XXI単装砲とMk.XXIV砲架 Single 4" Mk.XXI Gun on Mk.XXIV Mounting。4インチていうとだいたい100mmです。
第二次世界大戦時のコルベット、アルジェリン級掃海艇、イギリス海軍駆逐艦数隻に装備されていました。
展示されている単装砲は、1945年にカナディアンパシフィック鉄道軍需局のオグデン工場で製造されました。
鉄道会社が軍需局ってのも物騒な話で。元々は機関車や貨車の車両製造をしていましたが、軍需の高まりで戦争中は砲を製造を専門にしていたそうです。終戦までに30万ドル分の兵器を造ったそうな。
砲は戦後、長期間保管されたままになっていて、1992年にエスクイモルトのドックヤードに持ち込まれ、1999年にカナダ海軍太平洋軍司令R.バック少将が復元とカルガリーへの里帰り展示を指示したとされています。オグデン工場というのがカルガリーにあったからだと思います。
復元作業は戦時の砲手や商業水兵などの退役軍人によるボランティアが担当し、カルガリーまではカナディアンパシフィックが輸送したという、粋な復元と返還が行われました。
ちなみに防盾に描かれているノーズアートっぽい絵はHMCSカルガリーに描かれていたもの、だそうで。ただしこの砲がHMCSカルガリー搭載のものだったかは確証得られず。
裏側も見れますで。マネキンがおられるので様子が分かりやすいですね。
砲手2人と装填手1人といったところですかな。
狙いをつけるのだ。艦載砲なんて当たるもんじゃないし、とにかく数打つしか無いんじゃ。
ボフォース40mm機関砲 Bofors 40mm gun。
第二次世界大戦中の対水上/対空砲で、単装あるいは四連装で戦艦、空母から駆逐艦、掃海艇まであらゆる艦艇に装備された万能機関砲。海の他に陸でも使用されました。当時の超有名な対空砲のひとつなんですが、私は知りませんでした。
戦後も使用され続けて、ここの説明には1996年時点でカナダの新型沿岸警備艇に装備されているとあります。20年経った今でも使っているのかは分かりませぬが、M2機関銃の例もあるしまだ使われている可能性も無きにしろあらず。ていうか海上保安庁の巡視船が現在も使ってますし、カナダでもその可能性はありますね。
砲架が特殊だそうで、空母HMCSボナベンチャーの対空砲に装備されていた時のものです。HMCSボナベンチャー退役後は西ドイツのカナダ軍ラー基地の対空砲に転用されました。
ラー基地閉鎖後はマニトバ州シロ基地のカナダ軍火砲博物館に収蔵され、1996年からここに貸し出しているとのこと。
ここにもマネキンが。
弾。
そろそろ気づいてきたと思いますが、ここやたらと火砲が展示してあります。もうここが火砲博物館って感じです。こんなに置いてあるところも中々ないんじゃないかなって思います。
Mk33 50口径3インチ速射砲 Mk 33 3" 50caribre gun。
対空/対水上両用砲です。戦後に配備が開始され、カナダ海軍には朝鮮戦争中にトライバル級駆逐艦に装備されました。
砲架は速射砲が現役だった頃に訓練のために西海岸艦隊学校(はいふりだ...)で使用され、1995年学校の廃校後にここに移設されて展示されるようになりました。
ちなみにこの艦隊学校はビクトリアにあって、今はロイヤルローズ大学になっています。またそのうち行くことになります。
裏はこうなっています。
2ポンド(40mm)ポンポン砲 2pdr Pom-Pom gun。ポンポンという音を立てて発射するからポンポン砲。これも有名。
第二次世界大戦時のイギリスの対空砲です。単装、連装、4連装、8連装で発動機艇から戦艦まで全てのイギリス艦艇に装備されました。強力で濃密な弾幕を張れるのでイギリス意外にも導入されました。日本でもライセンス生産してたらしいよ?
ただし射程は短いし弾はよくジャムるしで、あまり長い間対空砲の主力に座り続けることはできなかった模様。
展示されているポンポン砲はトロントに保存されている駆逐艦HMCSハイダに装備されていたものです。
ビッカーズ3インチ(76.2mm)70口径連装砲 Vickers 3", 70 calibre gun mounting。
カナダ海軍駆逐艦レスティゴーシュ級の主武装として搭載するため1950年代に導入。元々イギリスで開発されていたんですが、弾詰まりが起きやすくて整備も面倒という英国面を持っていたため、カナダ人技師が修正して導入しました。
コルブス対抗装置 Corvus countermeasure system。コルブスチャフ発射管とも。
76.2mmロケットランチャー8発(3-3-2発)で構成される防御装置です。発射管にはチャフが入っていて、対艦ミサイルに対して防御します。
この発射管は1997年にビクトリアのスクラップヤードから引き揚げてきたものとのこと。
シールドミサイル防御装置 Shield missile defence system。
レーダー/赤外線追尾対艦ミサイルを逸らすためにチャフとIRフレアを発射する防御装置です。
昔はミサイルでミサイルを撃ち落とすようなことは離れ業だったそうなので、チャフやフレアでミサイルの目を潰して弾道を逸らそうとしたという感じです。現代では古典的手法ですが信頼性はあるので今でもチャフやフレアは使われています。
4インチ(102mm)速射砲Mk.XVIとMk.XIX連装砲砲架 4" Q/F Mk. XVI on Twin Mk. XIX mounting。
戦艦、巡洋艦、駆逐艦、スプール艦、フリゲート、対空補助艇に装備されていた連装速射砲。カナダではトライバル級駆逐艦4隻(HMCSハイダ、HMCSヒューロン、HMCSイロコイ、HMCSアサバスカン)に装備されていました。
砲塔内での手動操作の他に遠隔操作も出来ます。
これもビクトリアの艦隊学校で教育用に使われていましたが、学校閉鎖後はビクトリアのエスクイモルト海軍・軍事博物館に収蔵されました。で、1996年にここに貸し出されました。
21インチMk.IXホワイトヘッド式魚雷 21" Mk. IX Whithead torpedo。
ホワイトヘッド魚雷って何?って感じですが、今に通ずる魚雷の祖です。
1870年代、オーストリア政府と契約していたロバート・ホワイトヘッドというイギリス人技師が開発しました。なんでオーストリアやねん海無いやん。・・・昔は海に面する所まで領土持ってたということですかね(調べない
魚雷は水中を進んで艦艇の土手っ腹にドカンといく兵器です。艦砲だと中々喫水線下に穴を開けられないんですが、魚雷なら一発でドカンといって船内に浸水を起こせるのです。水中だと爆発の衝撃波の密度が濃いので破壊力も水上のそれより大きいですし。
あとは、大口径の大砲はバカみたいにデカさにクソみたいな重さなので戦艦クラスでないと積めないですが、魚雷だと小型ボートでも積めます。戦艦クラスの破壊力をボートに収められるんですから経済的です。魚雷艇で戦艦を沈められたらその費用対効果は絶大なのです。まあ実際そううまく事は運ばないわけですが。
日本海軍があんなに魚雷フェチだったのも、列強と比べて主力艦を制限されていた中で列強と張り合うには魚雷で一撃必殺を狙うんや!という部分があったとかなかったとか。
こっちは18インチ航空魚雷。
名前通り飛行機に魚雷を抱えさせて敵艦の近くでぶっ放して使います。この魚雷の運び屋を雷撃機とか攻撃機とか言うんですね。
魚雷というのは進むのが遅い遅いなので海戦で雷撃戦を行う距離でも割と簡単に避けられてしまいます。そこでもっと命中しやすいよう飛行機に敵艦の手前まで運んでもらおうってことで雷撃機が生み出されたんですな。
これはイギリスのソードフィッシュ雷撃機に装備されていた航空魚雷です。艦船に積む魚雷と較べて短いのが航空魚雷なのです。ソードフィッシュというのは複葉の雷撃機で、話すと長くなりそうなんで今回は省略。
無人標的機ビンディケーター Vindicator。急にハイテクなものが。
カナダで設計・開発された標的機で、カナダ軍とアメリカ軍へ向けて600機以上が製造されているとか。カナダ軍ではCU-162の型式で使われています。
UAVはよく分からないのであまり書くことないです。
艦内の食堂で食事を摂る水兵、という場面。
食堂は艦内の中でも広い空間を持つ部屋でもあるので、食事に使わない時は寝床として利用されていました。ベッドみたいな上等なものは無くてハンモックをぶら下げて寝ていました。部屋のあちこちにハンモックを吊るすフックが備わっているのですよ。これもまたいずれ・・・。
嫌い・・・もとい機雷。
第二次世界大戦時の機雷には主に接触、磁性、聴音を感知して爆発するものがあります。
これはイギリスのMk XVIIインフルエンス機雷で聴音感知機雷でした。見た目は接触機雷なんですけどね。
こんな感じで海軍館はおしまいです。他にも艦船模型もあるんで楽しいと思いますよん。とにかく充実の展示でした。
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