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カナダ航空宇宙博物館の続きです。ジェットエンジンの展示がありますね。
カナダのアブロ・カナダが独自開発したターボジェットエンジン、オレンダ14型です。1953年に運用開始されたオレンダ3型が最初の量産型です。
カナダ初のジェット戦闘機CF-100カナックやアメリカのF-86セイバーのライセンス生産版などに搭載されていました。同世代のゼネラル・エレクトリックJ47よりも高性能を発揮したとかで。4000基造られたということで、結構売れたほうなんじゃないでしょうか。
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ジェットエンジンの構造がわかるように、カットモデルで展示されています。こういうのは日本の博物館ではよく見ますが北米の博物館ではこういうのが無いところも多く、珍しいです。
手前側がエンジンの前部、空気取入口となります。先端のコーンにはエンジン始動機が収められているとかで。
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空気を圧縮する圧縮タービンです。10段あります。
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燃焼室です。ここで圧縮した空気を燃料で爆発させてその時の空気の膨張で推進力を生み出すのです。燃焼器は6個あります。
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排気口ですね。排気口の前部には圧縮タービンを回すためのタービンが1段あります。ターボジェットなので燃焼した空気はそのまま排気されます。
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こっちはターボファンエンジンです。ロールスロイスRB211型です。1972年登場のジェット旅客機用高バイパス比ターボファンエンジンです。
ロッキードL-1011専用に開発されたエンジンで、新機軸を多く採り入れています。それが仇になって開発が順調に進まず、L-1011販売不振の一因とも言われています。
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このエンジンは、エアカナダ(後にエア・トランザットへ転籍)のL-1011に搭載されていたものだそうな。
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ターボジェットエンジンの前方にエンジン直径よりも大きなファンを設置して回すことで空気流量を増やし、推力を増大させます。エンジン後部ではエンジンで燃焼されたジェット噴流とエンジン外周を流れる普通の空気流が流れるわけです。この方式だと特に亜音速域での燃費に優れるので、経済性が重視される現用ジェット旅客機のエンジンは間違いなくターボファンエンジンです。
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排気口はこんな感じ。
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飛行機の展示に戻りましょう。ウェストランド・ライサンダーMk III (Westland Lysander Mk III) です。初飛行1936年。
見た目からして高翼配置、優れた下方視界、頑丈そうな脚と、観測機に必要な構造は一通り揃っているわけです。イギリス陸軍の作戦行動を支援するための観測機です。偵察活動や弾着観測などを上空から行うと何かと役立つのですよ。
ただし自軍に航空優勢な場面ばかりじゃないですよね。敵さんもアホじゃないので戦闘機を迎撃に向かわして阻止するわけです。ライサンダーは低速なので、敵戦闘機のいいカモでした。
設計思想が基本的に第一次世界大戦の時から進歩していなかったのです。仕方ないね。
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丈夫だけが取り柄そうな主翼です。
低速性能には自信アリで、カナダの訓練基地では向かい風に向かって超低速で飛行していると、風に流されて後ろへ向かって飛んでいたという逸話が残っています。
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主翼には前縁スラットが付いていて、離着陸時はこれを展開して滑走距離を短縮しています。これはこの部分だけ展開していますが本当は前縁全てにスラットが付いているはず。
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頑丈だけが取り柄そうな脚です。
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エンジンは、ブリストル・マーキュリーXX 870馬力星型9気筒です。
Mk IIIはもはや観測機としては使い物にならない頃に生産された機体で、敵地へスパイの送り込みと回収、レジスタンスへの資金供与、武器、物資の支援などの工作目的に使われたのだそうな。なんだかイギリスって感じですわ。
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この個体はカナダに残っていた3機の部品を寄せ集めて仕上げたものです。サンコイチということです。復元後しばらくは飛行もできたみたいです。
3機の正確な経歴は不明ですが、胴体はウェストランドで、主翼はカナダのナショナル・スチール・カーで生産された模様。機体はMk IIIですが、塗装はカナダ空軍第110飛行隊のMk Iの個体を再現しています。
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鋼管羽布張りの胴体です。
というところで今日はここまで。
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