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北米project 5 ~How do you like Canada? その42【2016/6/15~22】

2024-01-23 23:20:02 | 海外旅行記
カナダ航空宇宙博物館の続きです。ちょっと航空機の歴史から外れて、カナダ海軍の艦載機の展示がありましたので寄り道です。ソードフィッシュ、シーフューリー、バンシーが一挙3機並んで展示されています。


最初はコレ、フェアリー・ソードフィッシュMk II (Fairey Swordfish II)。初飛行1933年。
イギリス製の単発複葉艦上攻撃機です。非全金製複葉機時代晩年の機体で、開発当時は妥当な物でしたが、これのまま第二次世界大戦に突入。はっきり言って時代遅れですが、意外な活躍を見せて第二次世界大戦を戦い抜きます。
時代遅れの複葉機なので速度が遅いんですがそれがドイツの高速戦闘機とは相性が悪く、羽布張りの主翼は機銃で撃ち抜かれた程度では折れず、意外な生存性の高さを見せました。ただし低速度の格闘戦に強いゼロ戦にはカモ打ちされていた模様。イギリス人そういう話あんまりしないけどね。


主翼は羽布張りなので、穴が空いても布を張り替えれば復活する整備性の高さも魅力だったとかで。
主翼には爆弾とロケット弾の担架がありにけり。


胴体エンジンマウントの外板は外されていて、中が見えます。


雷撃機として運用されることもあり、航空魚雷も置かれていました。ソードフィッシュがドイツの戦艦ビスマルクを撃沈したのは有名な話。


艦載機展示では3機とも全て主翼を折り畳んだ状態で置かれています。艦載機ならではの機構ですし、博物館の展示面積の節約にもなります。


こっちは上主翼の分割面。
カナダでのソードフィッシュは、ノバスコシア州マーヤスの海軍砲術学校と同州ダートマスのイギリス海軍基地で運用されていました。後方配置だったみたいです。カナダ向けの機体は、寒冷地対策として大型の風防を装備していたそうな。
この個体の正確な来歴は分かっておらず、推測ではブラックバーン製でイギリス海軍に納品後カナダへ運ばれていったと言われています。戦後に放出された機体が農家を営む個人により購入されましたが、その後長いこと放置されていたので、その間に来歴を示すものは喪失したんだと思います。


2機目は、ホーカー・シーフューリーFB.11 (Hawker Sea Fury FB.11) 。初飛行1945年。
イギリスのホーカー社が開発したレシプロの戦闘爆撃機です。シーフューリーという名前の通り、元々は空軍の陸上機フューリーとして開発が始められたものを海軍の艦上戦闘機として設計したものでした。なおフューリーは開発中止になってしまったので、艦上戦闘機のシーフューリーしか存在しないっていう変わった開発系譜になっています。
シーフューリーはホーカー・ハリケーンの後継機として開発されたタイフーン/テンペストが動けるデブで重かったので、小型軽量を目指して設計されました。艦上戦闘機として運用するために、主翼の折りたたみ機構と着艦フックを備えています。
レシプロ戦闘機としては最後発のうちの1種で、速さ自慢です。放出された機体はエアレースで活躍しているものもありにけり。



シーフューリーは約680機が生産され、カナダではカナダ海軍が74機運用していました。この時のカナダ海軍は空母HMCSマグニフィセントを保有していたので、それの艦載機として1948年から運用していました。その後1956年にF2H-3バンシーに置き換えられています。
この個体は、1948年製で製造後にカナダ海軍へ納品されています。退役後は民間企業が購入・保管して、1963年に当館へ寄贈されて今に至ります。


エンジン後方には排気管が集まった部分があります。排気管から出る衝撃波で速度向上を狙ったものです。元ネタは確かドイツのFw190のはずです。それなりに効果があったのか、シーフューリーの他にも日本の五式戦闘機、ソ連のラボチキなどにパクられています。
主翼の根本の四角い穴は空気取入口です。内側の小さい穴はキャブレター用の取入口、外側の大きい穴はオイルクーラー冷却用の穴です。主翼の根本にこういうのをつけるのは空気抵抗低減の点から合理的です。これの元祖はたしかアメリカのP-39エアラコブラだったと思います。
エンジンは、ブリストル・セントーラスXVIIc(2480馬力)星型18気筒です。この時代になると2000馬力級エンジンは当たり前です。なお日本・・・。


主翼の折れ目の部分です。内側へ向かって折りたたまる、よくあるやつです。
ちなみに、このFB.11型は戦闘爆撃機なので、主翼には爆弾やロケット弾を吊るす担架を付けられます。


脚です。これの前任機だったシーファイアは脚の左右の間隔が狭かったので着陸時の安定性が悪く、本当は艦上戦闘機として不向きな構造でした。これでマシになったと思います。
この時代のカナダ海軍機の塗装は、機体上面が暗い灰色、下面が薄い灰色のいわゆるペンギン塗装です。これは同時代のイギリス海軍機と類似しています。ただし、下面の色はイギリスとカナダでは異なるようです。カナダは薄い灰色ですが、イギリスでは緑がかった灰色です。微妙だけどはっきりと違う箇所なので、覚えておきましょう。


イスパノMk.5 20mm機関砲の穴です。中央と外側の大きい穴がそれです。内側の小さい穴はガンカメラ用の穴ですね。


着艦フックですね。後付で設計されたからなのか、機体尾部からはみ出るような位置に付けられています。


プロペラが5枚なのでちょっと画面がうるさいです。


こういう画角が好きです。


3機目、マクドネルF2H-3バンシー (McDonnell F2H-3 Banshee) 。初飛行1948年。
F2H-3はシーフューリーの後継機として1955~1958年に39機導入されたカナダ海軍の艦上戦闘機です。海軍唯一のジェット戦闘機となっています。このあたりから、導入する航空機がイギリス製からアメリカ製へ転換していくことになります。なお、この時期に空母がジェット機も運用できる大型のHMCSボナベンチャーに変わっています。
F2Hは、新興メーカーのマクドネル社が2番目の開発したジェット戦闘機です。1番目はFHファントムで、F2Hはそれを順当に大型化した機体です。
3型は胴体を延長しレーダーを装備した全天候型戦闘機です。

武装は20mm機関砲が4門。機首に集中配置されています。アメリカ製の機体ですがイギリス由来のペンギン塗装が異色の取り合わせです。


主翼の根本にジェットエンジンを収めているのでここは相応に分厚くグラマラスです。空気取り入れ口は胴体にベタ付けかと思いきや、小さいですが境界層分離板がありますね。


主翼の折りたたみ機構です。


尾部です。とくに特徴的な形状はなさそう。脇には空母の飛行甲板で機体を移動していたモトタグがおります。


着艦フックです。


後ろから見たジェットエンジン。やはり主翼の形状がグラマラス。
エンジンは、ウェスティングハウスJ34-WE-34軸流ターボジェットが2基。双発なのは冗長性というより高出力エンジンが無かったから・・・?


横から。


真後ろから。この角度から見ると魅力的ですわね。


空母の模型がありました。HMCSボナベンチャーです。縮尺が書かれていないのでよくわからんです。カタパルトはないみたいですがアングルドデッキが確認でき、意外と近代的な作りなのねと。


S-2トラッカーの模型がいました。バンシーはなんでか下の方に仕舞われていました。

というところで今日はここまで。


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