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北米project 5 ~How do you like Canada? その41【2016/6/15~22】

2024-01-19 23:54:08 | 海外旅行記
カナダ航空宇宙博物館の続きです。このあたりから、展示機は第一次世界大戦コーナーへと移ります。
これは、カーチスJN-4カナック (Curtiss JN-4 “Canuck”) です。初飛行1915年。元々はアメリカのカーチス社が量産したアメリカ軍用の練習機JNジェニーです。これの3型 (JN-3) をカナダやイギリス向けに改良したモデルがJN-4です。4型はカナダのカナディアン・エアプレーンズ社で生産された現地生産仕様です。後にアメリカから派生したJN-4も開発され型番が重複したため、機体愛称を「カナック」に変えています。カナダ人という意味です。
第一次世界大戦からくる需要もあって、JNは当時としては大量のシリーズ累計6,000機を超える数が生産されました。JN-4も1,210機が生産されました。他のJN同様に戦後は大量の余剰機が民間に放出され、入手性と低廉な価格から曲技飛行士を始めとした多くの飛行機野郎の手に渡りました。



JN-4は原型機よりもあちこち改良されています。軽量化した骨格、両翼に装備された補助翼、大型化した昇降舵、独自の主翼と尾翼の平面形など。総じて操縦性が良好になったようです。
他にもいくつものカナダ初を達成しています。初の量産機、初の大量輸出、初の軍用飛行、初のスキー飛行、初の航空郵便、初の航空調査、初のカナディアンロッキー横断飛行など。カナダの航空史のマイルストーンです。


この機体は1918年製で、アメリカ軍に納品されました。退役後は民間に放出されて、1932年に個人が購入。以降30年以上納屋で保管されていたのを博物館が購入しました。カナダ空軍第85訓練飛行隊の塗装で復元されて展示しています。右舷側は機体外皮が外されて骨格が見えるようになっています。


尾翼周り。たしかに平面形が原型機と異なっているのです。


A.E.G. G.IVです。初飛行1915年。ドイツの爆撃機です。見たことない知らない。
A.E.G. (Allgemeine Elektricitäts-Gesellschaft ) は、ドイツの電機メーカーです。その社名は総合電気会社の意味です。アメリカのゼネラル・エレクトリックと電機市場を二分した超巨大企業でしたが、ここへ書こうとすると色々調べないとわからないことが多いので割愛。現在はすったもんだの末、ブランドだけは残っているような感じです。日本には食器洗い乾燥機なんかを売り込んでいるのを見かけます。


双発・複葉の爆撃機です。エンジンは下翼の上に装荷される設計ですが、左舷のエンジンは喪失しています。



エンジンマウント。エンジンはダイムラーメルセデスD.IVa直列6気筒260馬力です。


胴体下面に爆弾架があります。第一次世界大戦時の爆撃精度なんて高が知れているし、そもそも爆撃の概念も定まっていないでしょうから、夜間に嫌がらせ爆撃をして敵の神経をすり減らす活躍を見せました。

この個体は第一次世界大戦後にカナダが戦利品として1919年に召し上げた代物で、今では当時物としては唯一残るドイツ製の多発航空機なのです。なにげなく貴重な機体を複数抱えていますね、この博物館。
カナダに輸送された後40年間の記録は残っておらず、その間にオリジナルのエンジンは2発とも喪失しています。


右舷のエンジンは乗っかっています。ただしオリジナルのD.IVaじゃなくて、D.III直6 160馬力に変わっています。


双発爆撃機だけあってこの時代にしては大きい機体でございますね。


ニューポール12 (Nieuport 12)。初飛行1915年。
第一次世界大戦のフランス代表みたいな戦闘機です。イギリス、フランス、イタリア、ロシアで運用されていたそうな。
この個体は1915年製でカナダ軍とイギリス海軍航空隊などで使われてましたが、不評だったので1917年にとっとと退役させられました。かわいそす。
退役後はカナダに運ばれて北米各地で展示されて国民への戦争へのご理解とご協力を強制するための宣伝に使われていたそうな。
ニューポール12は世界に2機しか現存しておらず、これがそのうちの1機となります。


これはボレル・モラン単葉機 (Borel-Morane Monoplane) という単葉機です。初飛行1911年。当時のフランスの傑作機ブレリオXIの影響を受けています。ブレリオXIというのは、世界で初めて英仏海峡横断を成功させた航空機です(ドーバー海峡横断じゃないよ)。


ブレリオXIの製作に携わっていたレイモン・ソルニエが、幼馴染のボレルとモランと3人で開発したのがこの飛行機です。この時代の航空機というと複葉機が一般的ですが、フランスに限ってはまず単葉機が多く生まれてきました。特に強力なエンジンがあって速度が出るから単葉機にしたというわけではないみたいで、時期に複葉機に移行しています。
この個体は唯一現存するもので、カナダに現存する最古の機体でもあります。


マクドウォール単葉機 (McDowall Monoplane)。初飛行1915年。
カナダの航空オタク(本業土地測量士)のロバート・マクドウォールが1910年にイギリスとフランスを訪れた時に見た機体に影響を受けて開発した航空機です。現存最古のカナダ製航空機です。
当時は航空オタクが自分で飛行機を開発製作して飛ばすことは珍しくないことでした。マクドウォールもその一人ということです。単葉機という点から、フランスからの影響が強そうな気がします。ただ、飛行はできず短い距離を滑空した結果に終わりました。


1915年の初飛行後(飛行してないけど)は、男子学生が改造をして飛行を試みましたがそれも失敗。結局飛行には成功せずに最後は主翼を取られてアイススクーターに成り果てたとかで・・・。その後1980年代に当館が取得して主翼を復元して今に至ります。
単葉機で高揚力装置も無いですから、飛ばないのも無理ないのかなという気もします。


ノーム・オメガ7気筒ロータリー50馬力エンジンです。ボレル・モランのエンジンです。当ブログでは何度か説明していますが、空冷星型エンジンのように見えて実はロータリーエンジンです。エンジン自体が回転するのです。マツダのロータリーエンジンとは同音異義です。エンジン自体が回るので、エンジンとプロペラは直結しています。

というところで今日はここまで。


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