「有益費」?「利得の押し付け」?

2014-02-26 16:42:18 | 司法試験関連

佐久間先生の見解をまとめてみました。

「利得の押し付け」は避けなければならない。

「196条2項の趣旨は,償還義務の対象を有益性が認められる増加に限った点にある。物をどのような状態にしておくかは所有者が決めるべきであり,物の価値が増加さえすれば,「有益費」にあたるとすると,所有者にとって大きな負担となるからである。したがって,単に物の価値が増加したと言うだけでは十分ではなく,それが行われなければその物の社会状況に応じた通常の利用にも支障を来たしかねないと認められることを要すると解する。具体的には,物の通常の利用に関係の無い価値増加や,通常の利用に役立つにしても,あれば便利だという程度の改良等のための費用は有益費に含まれない。物が通常の利用のために備えているべき状態を欠くに至った場合において,その状態を確保するために物の原状維持・回復に留まらない措置が講じられたときにその費用が「有益費」となる」。

 → 占有者が勝手にした改良等によって物の価値が増加したとしても,その増加は所有者にとって「押し付けられた利得」になるため,所有者保護の必要があるという考慮に基づく。

*「具体的には」以下は,時間的・スペース的に余裕がないときはカットして,当てはめの指針として頭の中で使えば良い。

【派生論点】

占有者が投下した費用によって占有物の価格が返還時に増加しているような場合には,703条・704条の要件も充足される。そこで,占有者がこれらの規定によって利得の返還を回復者に請求できるのかが問題になるが,否定すべきである。回復者の償還義務を有益性の認められる場合に限定した196条2項の趣旨が没却されてしまうからである。

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