風を紡いで

旅の記録と料理、暮らしの中で感じた事などを綴っています。自然の恵みに感謝しながら…。

(26)鳥のさえずるを聴きながら

2005年07月21日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
easy-peasyのともこさんが、ブログで「こころに残る朝ごはん」について書いていました。その中でイギリスの朝食を紹介しています。彼女の席から見える景観が素晴らしいのです。イギリスの朝食は、ボリュームのある美味しさで定評があります。

私の心に残る朝ご飯も、イギリスの朝食です。美しい田舎“コッツウォルズ”を旅した時に泊まった2つのB&Bの朝食です。一つは、モートン・イン・マシューの農場で食べた「アツアツ焼きたて田舎パン」の朝ごはん。


もう一つは小さな村スノーズヒルのB&Bでいただきました。鳥たちが餌をついばむ様子が、食事をしているテーブル席からガラス越しによく見えました。

オーナーの奥さんが、雪の中でさりげなく小鳥に餌をあげている姿が心に焼き付いています。その奥に、雪が降り積もった真っ白な牧草地が広がっているのです。羊もいます。時間がゆっくりと流れ、鳥のさえずりを聴きながら摂った朝食が忘れられません!


印象に残る料理は、美味しいだけでないのです。誰と食べたのか、どんな場所だったのか、どんな人が作ったのかなど―ロケーションや人とのかかわりが結構影響してくると痛感しました。

※写真はスノーズヒルのB&Bの朝食

人生のスタートに遅過ぎることはない

2005年07月20日 | アート(本 美術 映画 音楽etc)
夫の急逝に続き、初孫を失い、そして父親までも…。4人の子供を育て上げ、これから夫とゆっくり余生を過ごそうと思ったいた矢先、夫を肝臓がんで亡くした50代専業主婦の再起物語です。

ともこさんのブログで知り、さっそく読みました!失意のどん底から抜け出すために、友人の住むスペインの旅を決意。飛行機に乗り込み、その便で日本人女性と出会ったことが縁で、ロンドンに語学留学をすることになるのです。英語はまったく話せない状態からのスタートでしたが、ホームステイ先の老姉妹に支えられ、クラスメートに助けられ、次第に語学を身につけていきます。そして逞しくなっていくのです。

いろいろな人たちとの交流から、視野が広がり、問題意識も持つようになります。二年九カ月の間、老姉妹のもとで暮らすことで家族同様に心を通わせていくところが素敵でした。それはとりもなおさず、彼女の誠実で真摯さがなすことなのでしょう。決してあきらめず地道な努力を続けることで、語学を自分のものにし、さらに素晴らしいものを手にされるのです。悲しみをバネに立ち上がった彼女の体験記です。

ホームステイ先の老姉妹がまた、魅力的なのです。いくつになってもおしゃれ心を失わず、素敵なのです。イギリス人の物の考え方もこの二人から学びます。また、定年後に絵の勉強にパリに移り住み14年という、日本人女性との出会いもありました。言葉を覚えている暇があったら、絵を描いていたい、という屈託の無さと自分の世界を追求する姿も印象に残りました。

古勝さんの本から、たくさんのエネルギーと勇気をもらいました。落ち込んだ時や、心が辛い時、きっと元気を届けてくれると確信します。「女ひとりロンドンを駈ける」は、“人生のスタートに遅すぎることはない”―それを身をもって証明した古勝さんの実体験を著した本ですから…。

光人社刊「女ひとりロンドンを駈ける」(古勝信子著)

異次元の世界・スタントン⑥

2005年07月18日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
歴史の重厚さを感じさせる家が続く。
ただ保存しているだけでないのだ。
親の、そのまた親の、そのまた…
先祖たちが築いた伝統が息づいている。
連綿と続く静かな村人たちの暮らし。
この村は眠ってなんかいない。
古い歴史が、
脈々と今も息づいているのだ。
静かな時を刻みながら…。

異次元の世界・スタントン⑤

2005年07月18日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
英国の田舎コッツウォルズを旅するには、ロンドンからのツアーを利用するといいと思うのだが、そのほとんどは点在する村を駈け足で巡るのが多い。それも日帰りとか、一日とか、短い日数で…。

じっくり、ゆったりとイギリスの美しい村を訪れたいと思う私たちに、ぴったり合うツアーなど見つからなかった。それじゃ~ということになり、自分たちで日程を組むことになった。(ほとんど娘に任せたが…)国際免許証も用意した。レンタカーの手配もする予定でいたのだが…。なにしろ2月下旬のコッツウォルズの天候がさっぱり分からないのだ。ロンドンに支店を持つ旅行会社に調べてもらったが、はっきりしなかった。雪が心配だったので、現地入りしてからレンタカーを借りることにした。(気に入ったところでのんびりしたい、というのが一番の旅の目的だった私たちは、結局のところレンタカーを借りなかった)

ロンドン・ヒースロ空港からモートン・イン・マーシュに入り、スノーズヒルに。ここまではずっと雪景色だった。娘は緑のコッツウォルズを夢見ていたので、ず~とがっかりしていたようだ。そんな矢先、スタントンで緑地が見られたのだった。
「私の中のコッツウォルズは、この緑のイメージだったんだよ」
娘の顔がほころんだ。

(22)マウント・インで昼食

2005年07月17日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
娘が追いついて来た。丘の上のパブを見て安堵したようだった。その嬉しさは言葉には表せない。ドアを開けて、最初に目に飛び込んできたのは、泥のついた2足の長靴と杖だった。さっきの夫婦連れかな?と思ってパブの中を見渡した。靴を履き替えて、入り口から左側の眺望のよい窓ぎわ席で、食事を楽しむ彼らの姿が見えた。

私たちは、思わず自分たちの足元を見た。泥まみれだった。ちょっと躊躇したあと、もう一度パブの中を観察した。すると、店内の右手奥に暖炉があり、ドリンク類を出すカウンターがあるのが見えた。

よくよく見ると、打ちっぱなしのコンクリートのような床になっていた。犬の散歩途中らしき青年や、お年寄りたちがビールを飲んでいた。ちょうど暖炉の近くに小さめのテーブル席が一つ空いていた。そこに落ち着いて、娘を見ると顔色がどうもよくないようだ。

「具合悪いの?大丈夫?」
「大丈夫だけど、疲れたぁ~」
「何か食べたら元気になるよ」

娘はあまり食欲がないらしく、野菜サラダとリンゴジュースを注文した。私はコテージ・パイと温野菜、そして地ビールにした。暖炉で暖まったパブにしばらくいたら、凍えそうだった体が少しずつほぐれてきた。しかし、娘はぐったりして目を閉じている。食べて、少し休めば元気になるだろうか…。(つづく)

坂の上から村を望む

2005年07月16日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
英国コッツウォルズ。スタントンのパブ「マウント・イン」の外、道を挟んだ左手にテーブル席がある。晴れた日には最高のロケーションでランチが楽しめそう…。イギリスの伝統食をつまみに飲む、地ビールの味は格別だろう。雪の舞う二月にこの地を訪れた私たちは、外での食事が出来なかった。残念としかいいようがない。

(21)丘の上のパブ

2005年07月16日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
スノーズヒルからスタントンに向かい、雪でぬかるんだフットパスを歩いていく。途中で休憩している年配の夫婦に出会った。軽くあいさつをして、追い越したが、またしばらくして追い越された。欧米人2人の装備はほぼ完全だったが、私たち親娘ときたら普通の革靴(一応ウオーキング用)だから、たまったものじゃない。

滑らないように一歩一歩雪道を踏みしめながら歩くのだが、ふらっ、ふらっ、つるっ…今にも転びそうで足元がおぼつかないのだ。雪は少し多くなってきた。転ばないようにますます神経を使って必死に歩く。

雪に埋もれないように気を使いながら農場を抜け、ぬかるんだ道に足を取られないようにただ歩く。アップダウンを何度か繰り返し、雪がひどくならないように祈りながらひたすら歩く。滑って転びそうになっては、手をついて転倒をさけた。疲労も限界に近くなった頃、丘の裾の方にスモークがかった緑地が姿を現したのだった。

「あそこに見えるのは、きっとスタントン!」
しかし、近くに見えたものの、目的地のスタントンに着くまでには、まだまだ歩かなければならなかった。

まだか、まだかと思いながら歩いた。時々、後ろを振り向いては娘の姿を確認する。細い泥道を抜けて、舗装道路にやっと辿り着いた。緑の木々を抜けると、そこに1軒のパブが建っていた。村を見渡せる一段高い場所にあった。看板には「マウント・イン」と書かれている。宿泊もできるパブだった。娘はまだ来ない。

「着いたぁ~!スタントンにやっと着いたよ!」

あまりの嬉しさに思わず大きな声をあげていた。

異次元の世界・スタントン③

2005年07月15日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
雪深いスノーズヒルからスタントンに入り、緑が多いのに驚いた。雪が舞ってはいたが、積もってはいない。雪は降ったり、止んだり…。スノーズヒルに比べ低地にあることもあり、比較的暖かった。ボケに似た赤い小さな花が咲いていたり、名前の分からない白い花も見られた。家の前の木々や草花が、蜂蜜色の石壁に映えて彩りを添えているのだった。

(20)雪原のウオーキング

2005年07月15日 | 2005年コッツウォルズ母娘旅
スノーズヒルからスタントンに向かって歩き始めた。イギリスの冬は寒い。2月に訪れた、英国コッツウォルズ。特に丘陵地のスノーズヒルは雪にすっぽりと包まれていて、まったくといっていいほど緑地がなかった。

B&Bで手に入れた地図を持ち、雪原を歩いていくと、どうやらフットパスの入り口らしき農場のゲートが見えてきた。標識らしきものはなかったが、地図でみるとここでいいようだ。娘が言った。

「雪の上に人が歩いた足跡もあるし、ここがフットパスの入り口かなぁ~」
「そうだね。行ってみよう!」と相槌を打つ私。

少しとまどいはあったが、ゲートを開けて中に入る。広大な農場には私たち2人のほか、人っ子一人いない。人の足跡を辿りながら歩く。農場沿いの細い道に移り、しばらく歩いて行くと、道端の木に小さい黄色い花が咲いていた。

「うわぁ~。可愛い!」
雪の中に懸命に咲いている小さないのち。少し疲れを感じ始めた2人に元気をくれるように咲いていた。結構歩いているのに、まだまだ先が見えない。そんな時に出会った小さい黄色の花が、心に活力を与えてくれたのだった。

スタントンへの道のりは、思ったより大変そうで、道を間違えていないか、少し不安になってきた。(つづく…)