細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

日本の職人の技術力

2012-01-03 09:21:15 | 研究のこと

元旦のNHKスペシャルはとても面白かったのですが、フェラーリや新幹線のデザインで高名な奥山さんが、新潟県の燕市の金属加工の職人たちとタイアップして、世界の目の肥えたバイヤーたちをうならせた金属でのワイングラスを作ったり、各地域の職人たちが奥山さんのコーディネートのもと和のスーパーカーを造ったり、と職人の技術力を最大限に引き出した取組みを紹介していました。

日本の技術は、職人にあり。ただ、職人は、それをどう活かせば世界がうなるような商品、製品を造れるのかが分からない。ビジョンを描けない。であれば、ビジョンを描くのが得意な人とタッグを組めば、素晴らしい仕事ができる。

これは、日本中どこも同じなのかもしれませんが、大学も一緒だな、と感じます。

大学にも、世界も、日本も全然注目していないけど、職人技としてはすごいレベルのものを持っているプロフェッショナルがごろごろいる(と思われる)。でも、それをどう活かせばいいのかが分からないので、研究室で閉じた世界で、レベルの高くない研究をやっている。燕市の職人が、非常に高い技術力で日用品を作っていたのと同じです。

大学には、産学連携のコーディネーターなどを配置して、いろいろやっておられますが、とても奥山さんのようなコーディネートはできない。仮にコンクリートの限られた領域であれば、私の方がよっぽどコーディネート能力に優れている。やはり、その道のことは、その道の先端にいて視野の広い人でないと真のコーディネートはできません。だから、もっと大学も本気で職人の技を生かす仕組みを作らないと、生き残っていけないでしょうね。大学のシーズを、民のニーズが活用する、などと甘っちょろいことを言っててもダメです。本気のコーディネートが必要。

山口県のひび割れ抑制システムでも、これまで埋もれていた、地場の建設業のベテラン技術者の「良いコンクリートを造るコツ」が前面に出てきており、職人技がシステムに反映されようとしています。技術の体系化、システムの体系化を、我々はこれからも目指します。これまでは準備期間で、いよいよ本気でこの体系化に取り組み始めた、というのが我々の現状です。

そういう意味では、私の研究室にも、スタッフ、学生含め、技術力をもった職人が多くいます。私もある限られた領域では職人です。研究室の小さなレベルであれば、コーディネートすることは私の職務だと思っていますが、職人たちのコーディネートをまだ十分にできてはいませんが、8年前に比べるとかなり有機的に連携できているとは感じます。

今後の日本に求められる、非常に重要なポイントの一つです。