昨日からの続きになります。
以下掲載文引用開始
トヨタシステムで労働者は幸せになれるか。2
2006年7月
愛知働くものの健康センター理事 近森泰彦
2、 団交権確立---全トヨタ労働組合(ATU)
全トヨタ労働組合(ATU)はトヨタ関連企業の労働者有志を中心にして準備会を作り、弁護士も加わりじっくりと構想をまとめ、2006年1月22日名古屋で結成大会を行い発足しました。翌日、既存の、自らも加盟していたユニオンショップ労働組合に脱退届けを出し、会社に対しては結成通告と合わせて団体交渉を申し入れました。
ATUの結成宣言には「この組合は正規、非正規社員を問わずパート、期間工、嘱託、管理職、派遣などすべてのトヨタ関連企業で働く労働者が一人でも加入できる個人加盟の労働組合です」と明記してあります。
既存のユニオンショップ組合は会社と「労使共同宣言」を結び組合の第一義的役割を企業のさらなる発展においていることと比較すればどちらが労働者のためになるのか自ずと明らかです。
5万8千人の巨大な組合は内野過労死裁判など労働者一人ひとりの切実な要求に関心を示さず支援の要請に見向こうとさえしません。これでは世間で、会社のための労働組合と揶揄されても弁解のしようがないでしょう。
ナショナルセンター「連合」の委嘱を受けて中坊公平氏(弁護士)を座長とする7人の著名な方々がまとめた『連合評価委員会の最終報告』(2003年9月12日)が公表されています。「連合」はこの提言を受け入れて運動の改革に生かしことを表明しました。その一節をここに紹介しておきます。「労働運動の原点を確認するためには、働くことの意味とともに、働くものが連体し、協力する意味を問わなければならない。連帯と協力の意味は、働くものは、元来弱い存在であるという事実に含まれている。---本来は弱いものであるという事実が、働くものを連帯させる結節点であり、その結節点が強い労働組合の原点なのである。---労働組合員が働く人々全体のなかでは恵まれている層であるという自覚のもと、労働組合員が自分たちのために連帯するだけでなく、社会の不条理に立ち向い、自分よりも弱い立場にある人々とともに闘うことが要請されているのである」。
連合の中核的組合であるトヨタ自動車労働組合はこの苦言を早くも忘却のかなたに投げ捨ててしまったのでしょうか。
ATUは初回の団交で;
① 工場内に掲示板の設置
② 昼休みなど自由時間中のビラ配布
③ 組合訪問者への対応許可など初歩的な要求を行いました。
これらはいずれもユニオンショップ労働組合には制限なしに認めている活動です。しかし会社は「施設管理権は会社のものである。工場内での活動はいっさい認められない」、「ユニオンショップ協定を結んでいる既存の組合とは信頼関係があるがATUとはない」など敵意をこめた差別的姿勢を当初からあらわに示しています。
デンソー、アイシン、JTEKTの経営側はトヨタの「支配下」にあるため判を押したような同じ対応を繰り返えすのみです。
ATUの当面の課題は確信犯的な不当労働行為(労働組合法第7条)を改めさせ、労働組合として普通の活動ができるように権利を確立することにあります。トヨタの不当性を検証するために最高裁判所の判例が参考になりますので判決理由書から引用しておきます。
「団体交渉の場面においてみるならば、合理的、合目的的な取引活動とみられうべき使用者の態度であっても、当該交渉事項についてはすでに当該組合に対する団結権の否認ないし同組合に対する嫌悪の意図が決定的動機となって行われた行為があり、当該団体交渉がそのような既成事実を維持するために形式的に行われているものと認められる特段の事情がある場合には、右団体交渉の結果としてとられている使用者の行為についても労組法第七条三号の不当労働行為が成立するものと解するのが相当である」(昭和60年4月23日最高裁第三小法廷判決。注;これは日産プリンス労働組合が提訴して勝利した判決です—近森)
エコノミスト(06年7月25日号)の取材にたいしてATUの若月委員長は「トヨタの場合、単体で1万人超、全体の4割近い非正規労働者がいる。こういう不安定な労働条件の中で働く人が増えていることは社会的損失だと思う。20代、30代の若者が年収300万円程度の収入で果たして家庭がもてるのか。そういう環境悪化に歯止めを掛ける労働組合運動が台頭してこないと大変なことになる」と組合結成の動機を述べました。
以下次回にて掲載
以下掲載文引用開始
トヨタシステムで労働者は幸せになれるか。2
2006年7月
愛知働くものの健康センター理事 近森泰彦
2、 団交権確立---全トヨタ労働組合(ATU)
全トヨタ労働組合(ATU)はトヨタ関連企業の労働者有志を中心にして準備会を作り、弁護士も加わりじっくりと構想をまとめ、2006年1月22日名古屋で結成大会を行い発足しました。翌日、既存の、自らも加盟していたユニオンショップ労働組合に脱退届けを出し、会社に対しては結成通告と合わせて団体交渉を申し入れました。
ATUの結成宣言には「この組合は正規、非正規社員を問わずパート、期間工、嘱託、管理職、派遣などすべてのトヨタ関連企業で働く労働者が一人でも加入できる個人加盟の労働組合です」と明記してあります。
既存のユニオンショップ組合は会社と「労使共同宣言」を結び組合の第一義的役割を企業のさらなる発展においていることと比較すればどちらが労働者のためになるのか自ずと明らかです。
5万8千人の巨大な組合は内野過労死裁判など労働者一人ひとりの切実な要求に関心を示さず支援の要請に見向こうとさえしません。これでは世間で、会社のための労働組合と揶揄されても弁解のしようがないでしょう。
ナショナルセンター「連合」の委嘱を受けて中坊公平氏(弁護士)を座長とする7人の著名な方々がまとめた『連合評価委員会の最終報告』(2003年9月12日)が公表されています。「連合」はこの提言を受け入れて運動の改革に生かしことを表明しました。その一節をここに紹介しておきます。「労働運動の原点を確認するためには、働くことの意味とともに、働くものが連体し、協力する意味を問わなければならない。連帯と協力の意味は、働くものは、元来弱い存在であるという事実に含まれている。---本来は弱いものであるという事実が、働くものを連帯させる結節点であり、その結節点が強い労働組合の原点なのである。---労働組合員が働く人々全体のなかでは恵まれている層であるという自覚のもと、労働組合員が自分たちのために連帯するだけでなく、社会の不条理に立ち向い、自分よりも弱い立場にある人々とともに闘うことが要請されているのである」。
連合の中核的組合であるトヨタ自動車労働組合はこの苦言を早くも忘却のかなたに投げ捨ててしまったのでしょうか。
ATUは初回の団交で;
① 工場内に掲示板の設置
② 昼休みなど自由時間中のビラ配布
③ 組合訪問者への対応許可など初歩的な要求を行いました。
これらはいずれもユニオンショップ労働組合には制限なしに認めている活動です。しかし会社は「施設管理権は会社のものである。工場内での活動はいっさい認められない」、「ユニオンショップ協定を結んでいる既存の組合とは信頼関係があるがATUとはない」など敵意をこめた差別的姿勢を当初からあらわに示しています。
デンソー、アイシン、JTEKTの経営側はトヨタの「支配下」にあるため判を押したような同じ対応を繰り返えすのみです。
ATUの当面の課題は確信犯的な不当労働行為(労働組合法第7条)を改めさせ、労働組合として普通の活動ができるように権利を確立することにあります。トヨタの不当性を検証するために最高裁判所の判例が参考になりますので判決理由書から引用しておきます。
「団体交渉の場面においてみるならば、合理的、合目的的な取引活動とみられうべき使用者の態度であっても、当該交渉事項についてはすでに当該組合に対する団結権の否認ないし同組合に対する嫌悪の意図が決定的動機となって行われた行為があり、当該団体交渉がそのような既成事実を維持するために形式的に行われているものと認められる特段の事情がある場合には、右団体交渉の結果としてとられている使用者の行為についても労組法第七条三号の不当労働行為が成立するものと解するのが相当である」(昭和60年4月23日最高裁第三小法廷判決。注;これは日産プリンス労働組合が提訴して勝利した判決です—近森)
エコノミスト(06年7月25日号)の取材にたいしてATUの若月委員長は「トヨタの場合、単体で1万人超、全体の4割近い非正規労働者がいる。こういう不安定な労働条件の中で働く人が増えていることは社会的損失だと思う。20代、30代の若者が年収300万円程度の収入で果たして家庭がもてるのか。そういう環境悪化に歯止めを掛ける労働組合運動が台頭してこないと大変なことになる」と組合結成の動機を述べました。
以下次回にて掲載