フィリピントヨタ労組を支援する会からのメッセージです。
東京高等裁判所2007・12・26判決批判 多国籍企業トヨタの組合つぶしを擁護!
http://www.green.dti.ne.jp/protest_toyota/other/071226hanketu_hihan.pdf
2008年1月5日 フィリピントヨタ労組を支援する会
① 12月26日(水)午後1時15分、東京高等裁判所第12民事部裁判長裁判官柳田幸三は、全日本造船機械労働組合関東地強協議会による中労委決定の取消を求める行政訴訟で、控訴棄却の判決を下した。判決は次のようにいっている。
「ILO条約の各規定」や「国連規約22条1項及び3項」が「労働委員会に対し、本件のような国外の労使関係について労働組合法を適用し、同法27条の12に定める救済を行うべき義務を負わせているものと解することはできないから、本件について我が国の労働組合法の規定に基づく救済を否定することが、同規定及び憲法98条2項に違反するものということはできない。」
② この東京高裁の主張は単なる断定であり、私達が行った次の主張に対して反論どころかコメントすらしていない。
第一に、ILO条約、国際人権規約に取り上げられている労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権は、特定の国の労働者の権利ではなく世界の労働者の権利である。また、現在の多国籍企業の時代にあって、この権利は各国の労働者をその国内部の不当労働行為だけでなく多国籍企業の海外からの不当労働行為からも守るものである。逆に言えば、多国籍企業が海外に対して不当労働行為を行うことを禁止するものである。
第二に、日本もフィリピンもこれらの条約の批准国である。そして、日本国憲法は第98条2項で「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と述べている。したがって、日本国はILO条約や国連の人権規約の上記の内容を遵守しなければならないのであり、多国籍企業が海外に対して不当労働行為を行うことを禁止しなければならない。
③ ところが、東京高等裁判所はこれらの主張に何の反論を加えることなく、ILO条約や国際人権規約は労働委員会に対し『外国の労使関係』(正しくは「多国籍企業の国境を越えた労使関係」のこと)について労働組合法を適用する義務を負わせていない、すなわち日本の労組法は多国籍企業の国境を越えた労使関係には適用されないとただ断定している。またフィリピンの労働者が日本の労組法で救済されなくとも憲法98条2項国際条約の遵守違反にあたらないとこれもただ断定している。
いうまでもなく、憲法第98条2項に従えば、国はILO条約や国際人権規約を遵守し、国内の法体系がそれに不適合であれば法を改めなければならない。また、これまでの法解釈が不適合であれば法解釈を改めなければならない。ところが高等裁判所は法改定を要請するでもなく、法解釈を改めるわけでもなく、ただ上記のような断定を繰り返している。
そしてこの断定によって、東京高等裁判所は明らかに憲法98条2項の国際条約遵守規定に違反し、ILO条約や国際人権規約に違反している。
④ この東京高等裁判所の見解の根底には、先の引用文の中でも多国籍企業の発展途上国労働者との労使関係を『国外の労使関係』といっていることにも示されているように、労使関係を『国外の労使関係』と『国内の労使関係』に分けて考え、日本の労働組合法は日本の労使関係にだけ適用されるのであって海外の労使関係には適用されないのだという考えがある。この考えは多国籍企業がほとんど問題にならなかった時代には一定の妥当性があった。しかしその考えは20世紀末に多国籍企業の国境を超えた労使関係が世界中で成立する中で既に時代遅れになってしまい、多国籍企業の不当労働行為を免罪し、発展途上国の労働者の人権を抑圧する役割を果たすことになっている。
⑤ トヨタ自動車はフィリピントヨタの親会社であるだけでなく、フィリピントヨタのフィリピントヨタ労組に対する不当労働行為に深く関与してきた。すなわち、2001年3月フィリピントヨタが団体交渉を拒否し、2001年3月227名の組合員を解雇したのに対して、同3月28日からフィリピントヨタ労組がストライキで対抗し操業がストップした時、アロヨ政権労働雇用省と貿易産業省との会談で「労働問題がトヨタの有利に解決しないなら資本を引き上げる」とトヨタは脅した。
いうまでもなく、単なるフィリピンの国内企業や多国籍企業子会社が資本を引き上げるという脅しを使うことはない。こうした脅しを使うのはフィリピンを投資対象とみなしている多国籍企業であり、今回の場合はトヨタ自動車である。つまりこの場合のフィリピン政府にたいする脅しはフィリピンの国内子会社ではなく、出資元であるトヨタ自動車の意思を受けてトヨタ自動車から出向した日本人「トップ役員」がトヨタ自動車を代弁して脅したのである。
その結果アロヨ政権はストライキ中止・職場復帰命令を出してストライキをやめさせ、実際の職場復帰人選をフィリピントヨタに任せることで被解雇者を職場から放逐し、最終的には233名の解雇を承認した。このようにトヨタ自動車はストライキを止めさせ、労働組合をつぶすためのあからさまな圧力をフィリピン政府にかけ、大成功を収めたのである。
⑥ ストライキが起きるまではこの争議はフィリピンの一企業とその労働組合の争議のようにも見えた。ところがフィリピントヨタ労組がストライキに突入し、トヨタが「資本を引き上げる」と脅すことで、この争議が多国籍企業トヨタとその子会社の労働組合の争議であることが誰にもわかることになった。トヨタは単にストライキに反対したのではない。トヨタが反対したストライキとは団体交渉の開始と277名の解雇撤回を要求するストライキであった。そして、ストライキ前に団体交渉拒否と277名の解雇を現地で決済していたのは、このストライキに対する介入でトヨタ自動車を代弁した日本人「トップ役員」である。トヨタ自動車がフィリピントヨタの団体交渉拒否、227名の解雇を当初から指示もしくは承認を与えていたことは疑うべくもない。
⑦ このように多国籍企業はその経済力によって人口8000万人の発展途上国政府に圧力を加え組合つぶしを押し通すことができる力を持っている。だから、多国籍企業の不当労働行為は発展途上国では救済が極めて困難なのである。ところが、日本の東京高等裁判所は、多国籍企業の発展途上国労働者との労使関係を『海外の労使関係』であるとすり替えて、明白な多国籍企業トヨタの国境を超えた組合つぶしを日本の労働組合法では救済できないというのである。
しかし日本の旧法令9条1項は「法律を異にする地に在る者に対して為したる意思表示に付いてはこの通知を発したる地を行為地と看なす。」と明確に述べ、同11条1項で「其原因たる事実の発生したる地の法律に依る」と述べており、多国籍企業の国境を越えた組合つぶしは日本の労働組合法で十分救済することができる。
⑦ 東京高等裁判所は、日本の多国籍企業のあからさまな国境を超えた不当労働行為を免罪し、発展途上国労働者の権利を剥奪するための単なる詭弁を弄している。東京高等裁判所は発展途上国の労働者の労働三権を奪うことで発展途上国の劣悪な社会的、経済的地位の強制に一役買っている。そして、先進諸国労働者をこの発展途上国労働者と競争させることでその社会的、経済的地位をも押し下げもことにも加担している。
しかし、世界の労働者は競争しあうのではなく、国境を超えた団結を作り出すことによって、多国籍企業の国境を超えた組合つぶしを必ず打ち破るだろう。フィリピントヨタ労組が全造船機械労働組合関東地協に加入して多国籍企業の不当労働行為救済を求めたこの流れをおし留めることはできない。
以上
東京高等裁判所2007・12・26判決批判 多国籍企業トヨタの組合つぶしを擁護!
http://www.green.dti.ne.jp/protest_toyota/other/071226hanketu_hihan.pdf
2008年1月5日 フィリピントヨタ労組を支援する会
① 12月26日(水)午後1時15分、東京高等裁判所第12民事部裁判長裁判官柳田幸三は、全日本造船機械労働組合関東地強協議会による中労委決定の取消を求める行政訴訟で、控訴棄却の判決を下した。判決は次のようにいっている。
「ILO条約の各規定」や「国連規約22条1項及び3項」が「労働委員会に対し、本件のような国外の労使関係について労働組合法を適用し、同法27条の12に定める救済を行うべき義務を負わせているものと解することはできないから、本件について我が国の労働組合法の規定に基づく救済を否定することが、同規定及び憲法98条2項に違反するものということはできない。」
② この東京高裁の主張は単なる断定であり、私達が行った次の主張に対して反論どころかコメントすらしていない。
第一に、ILO条約、国際人権規約に取り上げられている労働者の団結権、団体交渉権、団体行動権は、特定の国の労働者の権利ではなく世界の労働者の権利である。また、現在の多国籍企業の時代にあって、この権利は各国の労働者をその国内部の不当労働行為だけでなく多国籍企業の海外からの不当労働行為からも守るものである。逆に言えば、多国籍企業が海外に対して不当労働行為を行うことを禁止するものである。
第二に、日本もフィリピンもこれらの条約の批准国である。そして、日本国憲法は第98条2項で「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」と述べている。したがって、日本国はILO条約や国連の人権規約の上記の内容を遵守しなければならないのであり、多国籍企業が海外に対して不当労働行為を行うことを禁止しなければならない。
③ ところが、東京高等裁判所はこれらの主張に何の反論を加えることなく、ILO条約や国際人権規約は労働委員会に対し『外国の労使関係』(正しくは「多国籍企業の国境を越えた労使関係」のこと)について労働組合法を適用する義務を負わせていない、すなわち日本の労組法は多国籍企業の国境を越えた労使関係には適用されないとただ断定している。またフィリピンの労働者が日本の労組法で救済されなくとも憲法98条2項国際条約の遵守違反にあたらないとこれもただ断定している。
いうまでもなく、憲法第98条2項に従えば、国はILO条約や国際人権規約を遵守し、国内の法体系がそれに不適合であれば法を改めなければならない。また、これまでの法解釈が不適合であれば法解釈を改めなければならない。ところが高等裁判所は法改定を要請するでもなく、法解釈を改めるわけでもなく、ただ上記のような断定を繰り返している。
そしてこの断定によって、東京高等裁判所は明らかに憲法98条2項の国際条約遵守規定に違反し、ILO条約や国際人権規約に違反している。
④ この東京高等裁判所の見解の根底には、先の引用文の中でも多国籍企業の発展途上国労働者との労使関係を『国外の労使関係』といっていることにも示されているように、労使関係を『国外の労使関係』と『国内の労使関係』に分けて考え、日本の労働組合法は日本の労使関係にだけ適用されるのであって海外の労使関係には適用されないのだという考えがある。この考えは多国籍企業がほとんど問題にならなかった時代には一定の妥当性があった。しかしその考えは20世紀末に多国籍企業の国境を超えた労使関係が世界中で成立する中で既に時代遅れになってしまい、多国籍企業の不当労働行為を免罪し、発展途上国の労働者の人権を抑圧する役割を果たすことになっている。
⑤ トヨタ自動車はフィリピントヨタの親会社であるだけでなく、フィリピントヨタのフィリピントヨタ労組に対する不当労働行為に深く関与してきた。すなわち、2001年3月フィリピントヨタが団体交渉を拒否し、2001年3月227名の組合員を解雇したのに対して、同3月28日からフィリピントヨタ労組がストライキで対抗し操業がストップした時、アロヨ政権労働雇用省と貿易産業省との会談で「労働問題がトヨタの有利に解決しないなら資本を引き上げる」とトヨタは脅した。
いうまでもなく、単なるフィリピンの国内企業や多国籍企業子会社が資本を引き上げるという脅しを使うことはない。こうした脅しを使うのはフィリピンを投資対象とみなしている多国籍企業であり、今回の場合はトヨタ自動車である。つまりこの場合のフィリピン政府にたいする脅しはフィリピンの国内子会社ではなく、出資元であるトヨタ自動車の意思を受けてトヨタ自動車から出向した日本人「トップ役員」がトヨタ自動車を代弁して脅したのである。
その結果アロヨ政権はストライキ中止・職場復帰命令を出してストライキをやめさせ、実際の職場復帰人選をフィリピントヨタに任せることで被解雇者を職場から放逐し、最終的には233名の解雇を承認した。このようにトヨタ自動車はストライキを止めさせ、労働組合をつぶすためのあからさまな圧力をフィリピン政府にかけ、大成功を収めたのである。
⑥ ストライキが起きるまではこの争議はフィリピンの一企業とその労働組合の争議のようにも見えた。ところがフィリピントヨタ労組がストライキに突入し、トヨタが「資本を引き上げる」と脅すことで、この争議が多国籍企業トヨタとその子会社の労働組合の争議であることが誰にもわかることになった。トヨタは単にストライキに反対したのではない。トヨタが反対したストライキとは団体交渉の開始と277名の解雇撤回を要求するストライキであった。そして、ストライキ前に団体交渉拒否と277名の解雇を現地で決済していたのは、このストライキに対する介入でトヨタ自動車を代弁した日本人「トップ役員」である。トヨタ自動車がフィリピントヨタの団体交渉拒否、227名の解雇を当初から指示もしくは承認を与えていたことは疑うべくもない。
⑦ このように多国籍企業はその経済力によって人口8000万人の発展途上国政府に圧力を加え組合つぶしを押し通すことができる力を持っている。だから、多国籍企業の不当労働行為は発展途上国では救済が極めて困難なのである。ところが、日本の東京高等裁判所は、多国籍企業の発展途上国労働者との労使関係を『海外の労使関係』であるとすり替えて、明白な多国籍企業トヨタの国境を超えた組合つぶしを日本の労働組合法では救済できないというのである。
しかし日本の旧法令9条1項は「法律を異にする地に在る者に対して為したる意思表示に付いてはこの通知を発したる地を行為地と看なす。」と明確に述べ、同11条1項で「其原因たる事実の発生したる地の法律に依る」と述べており、多国籍企業の国境を越えた組合つぶしは日本の労働組合法で十分救済することができる。
⑦ 東京高等裁判所は、日本の多国籍企業のあからさまな国境を超えた不当労働行為を免罪し、発展途上国労働者の権利を剥奪するための単なる詭弁を弄している。東京高等裁判所は発展途上国の労働者の労働三権を奪うことで発展途上国の劣悪な社会的、経済的地位の強制に一役買っている。そして、先進諸国労働者をこの発展途上国労働者と競争させることでその社会的、経済的地位をも押し下げもことにも加担している。
しかし、世界の労働者は競争しあうのではなく、国境を超えた団結を作り出すことによって、多国籍企業の国境を超えた組合つぶしを必ず打ち破るだろう。フィリピントヨタ労組が全造船機械労働組合関東地協に加入して多国籍企業の不当労働行為救済を求めたこの流れをおし留めることはできない。
以上