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かっぱの心をうるおす、山・川・岩・海などの小さな自然。主に北海道の話。

「青春の門」をくぐる歳ではなかった

2024-10-14 | 
小樽赤岩東の大壁で登っていないアルパインルートは残り2つ。
そのうちの「逆層の凹角ルート」は、赤岩本の記述が嫌な感じなのでやめておくつもり。
もうひとつが「北西壁大ハングルート」。
しかも、この途中には「青春の門」という12bのフリールートがある。
登れるかどうかはともかく見に行くことにする。
素晴らしい青空に加え風も穏やか。
ピナクルに見送られ、大壁の頭に行く。

「青春の門」の終了点にストレートに出る方法を考えた。
「黒いリッジ」の5P目を懸垂する。
そこから10mほどeクラック方向に藪を歩き、適当な木で懸垂する。
すると、ちょうど青春の門の終了点、つまり北西壁大ハングルート2P目終了点に出られるはずと考えた。
真横に、「ウルシルンゼ」と一目で分かるルンゼを見ながら、懸垂すると
ドンピシャで終了点に出た。
この終了点の支点は比較的まともだった。
写真ではいろいろついているが、ハンガー3本にくされ細引きが通してあった。

ここからまっすぐ下りれば、青春の門のスタート地点に出るはずだ。
懸垂で、ラインを眺めて、あわよくばTRで楽しもうと考えていた。
しかし、ルートの傾斜がきつく、下りながらヌンチャクをかけるのが大変だった。
これは無理かと思いつつも、下から2ピン目までヌン掛けした。
3ピン目まではロープを通してきたにもかかわらず、傾斜がきつすぎてスタート地点に足が届かない。
しばらく空中で体を揺らして頑張るが、ホールドが悪く取り付けない。
仕方がないので、5mほど余分に下りて何とか岩をとらえた。
そしてS地点に上がる。
そこで愕然とした。
写真でセルフを取っているハンガーは動く。
そのボルト以外は、さびさびだ。
左上のくされカラビナが掛かるRCCボルトは、この後輪がちぎれた。
「ここでフリーのビレイする気にはならないね。」ということで、下りてくるKGさんにせっかくつけてきたヌンチャク回収をお願いする。
それがまた大変。

傾斜がきついんです。
2人の知恵と技を結集して、何とか回収をこなす。

今回は60mロープ1本で来ていたので、上の終了点から60m折り返しで中央バンドまで届いていた。
なので、そのまま下まで降りてもらう。


中央バンドでホッと一息。

気を取り直して、「北西壁大ハングルート」を登る。
「出だしが悪い」と書いてあるが、本当に悪い。
2P目は、先程のS地点から。
右と左があるが、左を行く。
赤い線が、赤岩本の図で示されていると考えられるライン。
ロープがかかっているのが「青春の門」(これは下りてくる時の写真)
オレンジが今回登ったライン。
赤ラインは中間部にスタンスを見い出せない。
カムが決まりそうな隙間もない。
ハーケンが2本あったが、さびさびで上のは輪がなくなっている。
だから赤ラインにはとても突っ込めない。

支点を取るためには右のクラックに頼る必要があるので、オレンジラインを登った。
クラックは上部で細くなる。
最後まではたどれない。
仕方がないので、クラックにカムを決めてから、右に出た。
カム地点から1mほど離れた場所で、左のホールドを探している時に、右手で捉えていた小さなホールドが崩壊。
当然、落ちる。
一瞬でカムが抜ける想像をして身構えたが、
カムが完全に止めてくれた。
ホッとして、気を取り直し、
カムの効きを再確認して、その少し下から左に向かう。
痛いカチホールドと小さいスタンスを3つつなぐ。
ホールドが壊れるか、スタンスが抜けるか…、
全身の毛が逆立つムーブをこなした。
とても怖かった。
ほんの2mなのにね。
この2P目、5級になっているが6級でいいと思った。
こんな怖さの5級は知らない。

3P目は、ウルシルンゼ沿い、半ヤブ漕ぎ。
この終了点は鎖付きでしっかりしている。
で、ここには下降点の松の木からのロープが伸びている。

大ハングルートの終了点へ向かう側は崩壊が激しいので、伸びているロープ沿いを上がっていく。
もうこの最終ピッチは使えない。
日の当たる美しく穏やかな海を眺め続けて、自分たちはずっと日陰に居た。
ここに来て、太陽の下に出た。
暑かった。

ホッとしながら、東の大壁は一区切り終えた気持ちになった。
窓から見える青空の美しいこと…。


雑感でしかないが…、
「青春の門」は1999年に吉田和正氏が初登したラインだ。
取り付くのが大変なので、あまり登られていないのだろう。
スタート支点がもう少ししっかりしていれば、トライする人も出てくるかしら…。


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