クリンの広場

たまっこくりんのおもいのたけ

『声を限りに蝉が哭く』中津燎子・感想

2021-12-21 | 本と雑誌

柿を送ってくれた

お母さんから、

クリンって、蝉の鳴く小説特集っていう、

ブックレビューしてたでしょ?

ぴったりの本、見つけておいてあげたわ

告げられました。

(お母さん、、ブックレビューはとっくに終わったから、セミ本はもういいんだけど、、)

って、

口ごたえするのもナンだな・・

と 思ったクリンは、

 お母さんオススメの本、『声を限りに蝉が哭く』

を 借りてみました。

 書いたのは、なかつりょうこ(中津燎子)。

 

昭和の英語教育者で、

『なんで英語やるの?』という・ちょ(著)作がある方です。

(大宅壮一賞受賞

 中津さんは、お父さんが

ロシア語の通訳を やっていたので、

ウラジオストク・生まれです。

 そのお父さんは、関東軍の工作員でもあったため

中津家のくらしは・つなわたりを強いられる、ヒリヒリしたもので・・

 

幼少期の中津さんの「記憶断片」には、

日本人学校の同級生や、

ロシア人家政婦マルシアの思い出とともに、

スターリン体制下のきょくとう(極東)のフンイキや

日中戦争下のきんちょう(緊張)が、

 割れたガラスのように、するどく光っています。

 彼女は戦後、日本で「英語電話交換手」をつとめ

生きた英語を 見につけました

が、

今回のエッセイは、「語学の達人」としての

それではなく、

 80代になった・中津さんが、

気骨ある・おばあさんとして

この世を去る前に、

今の日本人に言っておきたいことがあるのよ!!

的な、

「置き土産本」でした。

 後半なんてまさに、「哭きまくるセミな風情」の、

力強い・メッセージが 込められています

 

 

中津さんは「戦争体験者」として、

戦争を体けん(験)していない人が、あたかも物知り顔で 戦争見解を発信していること

けねんを示し

「人間って、よくも悪くも実体験からしか学習できない動物だけど、

「戦争のナマ体験」ほど、未経験者たちにとって わかりにくいものはないのね。」

と・・

心がざわついた理由を 語っています。

 

その「違和感」は、

 かの有名な詩人で「劇作家」の

てらやましゅうじ(寺山修司)の短歌

にすら 向けられ

「 マッチする つかの間海に霧深し 身、捨つる程の祖国はありや 」

は、

良い短歌だけど・・

B29から逃げまどっていた自分が、昭和20年によんだ歌にくらべると

とんでもなくゆとりがある。

と、

おっしゃっています。

 

あのころ、私達日本人は、鉛色の顔をして押し黙っていたけれど、

自他共に総玉砕することしか考えていない軍人たちが強制してくる、『名誉の戦死』のヒステリックなお手軽さが

本当に嫌だった。」


と、

本音をぶちまける、中津さん。

 ~以下、すごかった部分を抜粋します

 

「戦争末期の沖縄戦で民間人の家族に手榴弾を手渡して、自決を命令したとかしないとかということを争っている軍人さんの話ほどコッケイなものはない。

従軍慰安婦として女性をかき集めた折の公的書類がないからそんなことはなかった‼️と言っている人たちと同じくらいアホらしい。


軍人が、負け戦の戦場で手榴弾をだれかに手渡したら「死ね」と命じたことであって、他に何があるのか?

あの八月十五日からの一週間、日本中のあらゆる組織や機関で燃やした書類がどれだけの量あったか見たこともないくせに、「書類がないからそうした事実もなかったはず」などとノーテンキなことを言うのはやめてほしい。バーカ。」

 

こんなかんじに、迫力まんてん(満点)です

 

 80代になったら丸くなり、ニコニコ柔らかいものごし

老女に求める「日本の風潮」って

ありますが・・

中津さんみたいに、ハッキリ・ものを言えるって、

やっぱり、長年、外国人と接してきた人だよなあ~

「国際人」って、これだよな

って、

クリンたち、あっとうされたのでした

 

 

【おすすめ度:

 


(すごく長くなっちゃったけど、とりあえず、お母さんへのギリも果たせたし、今年中に「蟬」関係のレビューを全うできて、良かったです~🐻

 

 

コメント (14)
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