忙しいチットの さいきんの楽しみは、毎晩少しずつ、
大正時代の「九州日報」を 読むこと。
ここに のちのドグラ・マグラ作家「夢野久作」が、記者として
コラムを書いていて、
文章がとても良い、と言います。
「・・夢野久作って父親が政界のフィクサーでさ、有名人。
右翼の玄洋社と つながってたんだよね
九州日報の前身は玄洋社の新聞らしいから、多分父親のコネで入社したんじゃないかな?」
と
説明するチットが ハマっているのが、
「街頭から見た新東京の裏面(りめん)」
記者・ゆめのきゅうさく(夢野久作)が、
「関東大震災」の翌年、東京に出てきて取材した、見聞記です。
~出だし~
「万世一系のミカドの居ます東京――。
黄色人種中最高の民族のプライドを集めた東京――。
僅か五十幾年の間に日本をあれだけに改造した東京――。
思想でも流行でも何でもかんでも、日本でモテたり、流行ったりするものの大部分はここからはじまる東京――。
日光、京都、奈良そのほか日本の古美術や名所古跡に感心し、ゲイシャガールに涎(よだれ)を流し、能楽(ノーダンシング)に首をひねる前に、是非ここの黄色いホコリを吸わねばならぬことになっている東京――。
そのほかあらゆる意味に於てヤマト民族を代表し、国際問題の大部分に於て東洋を代表し、芸術なんどの方面ではうっかりすると人類文化の最も高い方面を代表しているところもある東京――。
その東京が一撃の下に殆ど全域にまではたきつぶされたという事は、日本全国はもとより世界の人々を驚かすに充分であった。」
リズムがあります
以下、記者(夢野久作)は、
復興期の東京市政の腐敗や、
東京市民の堕落、
江戸っ子の衰滅、
鉄筋コンクリート都市の悲哀
などを あげつらい
「東京は大都市だけに、上中下どれともつかぬ階級の人間や、
思い切った変態生活者が夥しい。」
と
呆れたり 面白がったりしています
彼が伝える細かい「路上観察」や
東京市長たちのありさまは、
なかなか知りえない当時の世情を リアルに教えてくれ、
うちのチットは
「夏目漱石にこういう人間関係があったのか。」
とか、
「勝海舟の明治政府評は、さすがだね」
などと
よろこんでいました
中でも、江戸っ子のチャキチャキと一脈通じる福岡っ子の
ゆめのきゅうさく(夢野久作)が、
ズバリ
江戸っ子くずれの「東京の知識人階級」を、
「天下の事に憤慨するよりも、一鉢の朝顔に水を遣る真実味を愛する亡国の賢人」
と
ぶったぎっているくだりには
すさまじく切れがあるといい・・
(ただの「変質者作家」じゃなかったんだな)
と
発見できたって 言ってました