クリンの広場

たまっこくりんのおもいのたけ

クリン・ショート・ショートVol.1「魔の森」最終話

2013-02-19 | ショート・ショート

         <多摩ニュース>

 

「クリン良くやったね!」

チットは、鮭のムニエルを焼きながら、クリンをねぎらった。

 

Img_0280

 

「クリン、えらいぞ。天才!」お兄ちゃんもいつものセリフで褒め上げると、しかとクリンを抱きしめた。

 

「やっぱ~?」

 

クリンは胸を反った。

 

(もうこれで、多摩は安泰だわ

 

達成感に、笑顔があふれるクリンであった。

 

 

その時、テレビから臨時ニュースが流れてきた。

 

 

 

 

 

 

「今日夕方、多摩市の郵便ポストの上に隠れていたカメレオンを、近所の住民が発見し、行政が捕獲しました。

 

このカメレオンは負傷していますが、顔が赤く、顔だけ色を変えられないようです。

きわめて珍しく、専門家によれば新種の可能が高いとされており、多摩動物公園に調査を依頼したということです。

 

 

このニュースの続報は、詳しいことが判明し次第お伝えいたします。

臨時ニュースを終わります。」 

 

 

・・・・・

 

一瞬、テレビ画面に映ったカメレオンの口元が何かをつぶやいたのを、クリンは見た。

 

                     

 

 

「・・・・おぼえていろよ。」

 

 

 

                  Img_0435

 

 

 

 

       (「魔の森」完)

 



 



 



 



 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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クリン・ショート・ショートVol.1「魔の森」第4話

2013-02-18 | ショート・ショート

          <仇うち>

 

クリンたちは、こった川で落ち合って、作戦をたてた。

雀たちが、ワシの多摩王から仕入れてきた情報では、

 

「この秋口から、こった川周辺のあちこちで、小さな生き物がこつぜんと消えている」

とのことであり、そのうちいくつかの事件の前後に、風を切って走り去る何者かがいたらしい。


ただ、そのいずれの目撃情報も、その何者かの姿はとらえていないのだった。


クリンが発表したカメレオン説に、みんなは驚嘆し不安を口にしたが、

 

「ぐずぐずしててもはじまらない。やるしかないよ!」

と、その作戦を実行することで合意した。

 

クリンを先頭にミーちゃんが続いて、チュンチュン、チッチッ、チェッチェッ、チョッチョッ、の順番でこったの森の事件現場へと向かった。

Img_0433


辺りは、不気味なほど静まり返っていた。


すべての動物や昆虫、草木たちが、クリン一団の活躍を期待して、息を潜めて注目している。

 

「そこに隠れてるひきょうもの、出て来なさい!みんなの仇をうってやる。」

Img_0377_2

主将・クリンがかっこよく言った。

 

 

「いることは、わかってるんだミャー!」副将のミーちゃんもおたけびの声をあげた。

「チュンチュン、チッチッ、チェッチェッ、チョッチョッ!」

 

 

 

・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・・

 

しかし、返事はなく、しばらく沈黙が続いた。 

 

 

草木が風に揺れ、擦れ合う音が、ざわざわと聞こえる。

 

みんなの緊張が頂点に達したその時、

 

「・・俺は、森の神だ。

 

全ては、俺の思いのままだ。

 

見つける事など、出来るはずがない。」

 

 

低い声がこだました。

 

 

クリンたちは、身構えて声のする方を睨みつけた。

 

「怖くなんかないミャー。」


「もう見えてるもん!チュンチュン、チッチッ、チェッチェッ、チョッチョッ」

 

みんなは、敵を挑発し、相手に声を出させようと試みた。

 

クリンに見つけてもらう作戦だ。

 

 

「おまえたちのすぐ側にいるのが、見えないのか?」

 

クリンは声のする方へ歩を進めて、にじり寄った。そして、目を閉じた。

 

 

「ギャー!」

 

ミーちゃんが悲鳴をあげて跳び、クリンの後ろに逃げ込んだ。


「鼻が!鼻を叩かれたー!赤くとがった細く長いものでミャー。」

 

敵は、いかにもおかしそうに笑い声を上げた。

「アハハ、アハハ、アハハハ。」


 

クリンは、パッと目をあけると、お兄ちゃんから授かったスプレーを出して、

「わかったわ、ここだわ!」と言って吹き付けた。

 

Img_0383_2

 

すると、みるみるうちに

カメレオンの顔が浮かび上がってきた。

 

驚いたカメレオンは目をキョロキョロさせたが、その瞬間、猫のミーちゃんが攻撃を仕掛け、顔を爪で引っ掻いた。


続いてクリンも頭にキックした。


そして、雀たちもいっせいに体をつついたので、カメレオンはたまらず、ほうほうの体で森の外に逃げ出して行った。

 

 

「やったー!やったー!やっつけた~!!」

 

 

Img_0385

 

影を潜めていた森の仲間達も、つぎつぎに出てきて、クリンたちにかけより、万歳した。

 

「あいつ、顔が赤くなって、もう隠れられないにゃー。」

「もう安心。チュンチュン、チッチッ、チェッチェッ、チョッチョッ」

 

ミーちゃんや雀たちも、もみくちゃにされながら喜びあった。

 

こったの森に、ふたたび平和が訪れた。

 

クリンたちの功績は長く語り継がれることになりました。

 

 

 

 

 

                               (つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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クリン・ショート・ショートVol.1「魔の森」第3話

2013-02-17 | ショート・ショート

          <特訓>

 

 

「ねえ、チットー。」 「なあに?クリン~。」

クリンはチットが帰ってくると、事件のことを話して、犯人について聞いてみた。

 

「ポンポコタヌキの霊じゃないかしら?」チットは、真剣な顔で答えた。

 

納得できないクリンであったが、チットは

「お兄ちゃんに聞いてみましょう。きっと分かるかも。」と言って、食事の準備を始めた。

 

クリンは待ちきれず、玄関の前であっちへ行ったりこっちへ行ったりしていた。

そのうち、お兄ちゃんが帰ってきた。

 

「おにいちゃん!」

 

帰ってくるなり抱きついて、いつものようにキスをするが早いか話し始めた、クリンである。

 

「クリンのお友達が、アゲハちゃんが死んじゃったの。森に食べられちゃったの。」

 

「どういう事?クリン!」

 

クリンは、今までの一部始終をお兄ちゃんとチットに話して聞かせた。

                   

                 Img_6751

 

お兄ちゃんが言った。

 

「それは・・、得体の知れない動物が潜んでいる可能性が高いね。クリン。お化けや森のせいじゃない。

 チット、ちょっと調べてくれないかな。」

 

「ねえチット、お願いします。」クリンは、お手てとお手てを合わせて懇願した。

「おやすいご用よ。」

 

チットは、パソコンの前で椅子の上に正座した。「えェーと、なんて検索するんだっけ?」

 

「見えない動物でどうかな?」

 

 

チットは、疾風のごとくキーボードを叩いた。

 

「あー出た出た。

 自分の糞で身体を隠すカバ。これじゃないな。写真のこれは、・・・カメレオンかな?」

 

「それだ!!」お兄ちゃんが、指をパチンと鳴らした。

 

「でも、生息地は、マダガスカルだよ。」

 

「ペットが逃げ出したって事も考えられるんじゃない?」

 

「そうね、あります。ありますわ。」チットは、大きく頷いた。


「カーメロン?」クリンには、はじめての名前だった。

 

 

「カメレオンだよ。自分の身体の色を自由自在に変えて、見えないように出来る動物なんだよ。」

 

「・・・そんな見えない敵と、どうやったら戦えるの?やっつけられる?」

クリンは、心配そうに聞いてきた。

 

「よ~し、お兄ちゃんに考えがある。今から特訓だよ、クリン!アゲハちゃんの仇うちだ。」

 

                         Img_9002

 

お兄ちゃんはそう言って、そこら辺の布をとるとクリンに目隠しをした。

 

「今から、お兄ちゃんが笑い声をかけるから、聞こえる方を指差してごらん。」

 

クリンは、なにがなんだか分からないながらも言われたとおりにやってみることにした。

 

「ワハハハハ!」

「フフフフフ!」

 

お兄ちゃんが、色々な方向から声をかけた。

 

 

最初は、まったく見当違いの方向に向かったりと、相当の誤差があったクリンの動きも、徹夜で頑張っていくうち、どんどん精度が上がってきた。

 

 

やがて朝日がさしてくる頃には、クリンの指の方向にお兄ちゃんの口があるまでになった。

 

Img_6347_3

 

「よ~し、クリン。完璧にマスターしたぞ! 良くやったね。」

 

「おにいちゃん!」

 

クリンは、フラフラになって、お兄ちゃんの腕の中にもたれ込んだ。

 

お兄ちゃんは、

「クリン!これを使うんだ。」と、赤色缶スプレーを出してきた。

 

一晩中特訓を続けたクリンは、そのスプレーを手に取ると、全てを理解し、うなづいた。


「みんなの所へ行ってくる。そして、こったの森でカーメロンをやっつける!」

 

「クリン、これを着て!」

 

チットは、クリンが特訓している間に、夜なべをして白装束を作っていた。

 

そろいのハチマキには、墨痕あざやかに「日本一」としたためてあった。

 

「チットありがとー!」クリンは、目をウルウルさせてチットを見つめ、衣装をまとって、こったの森に向かった。

 

「クリン頑張れ」チットは、火打ち石を切った。

 

                      (つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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クリン・ショート・ショートVol.1「魔の森」・第2話

2013-02-16 | ショート・ショート

           <見えない敵>

 

行方不明の者たちは、森の長老やベテランばかりで、簡単にカラスなどの外敵に食べられるはずもなかった。

 

森は木々に囲まれ外敵が侵入して来ても、すぐ分かる。

 

クリンたちは、ホトホト困り果てていた。

 

                 Img_9463

 

「アゲハちゃんは、どこに行ってしまったの?

 一緒に遊んだのに・・。

 おいしいみつの花の場所を教えてくれた。絶対に見つけてあげなきゃいけないよ!」

 

クリンが、みんなを励ますように言ったその時、

 

「フフフッフフフッ!」

 

馬鹿にしたような笑い声が聞こえてきた。

 

クリンたちは、声の聞こえる方に身構えて、辺りをキョロキョロ見回したが、

 

木の葉や枝が揺れているだけで、いつもと何も変わらない。

「キャー、悪魔!」

「お化けか?」

「幽霊じゃない?」

 

雀たちはいっせいに、腰を抜かした。

 

「・・みーんな旨かったぞ。

 

  この森にはまだまだ、うまそうな奴がたくさんいるな。明日も楽しみだ。

 お前たちの仲間を、全部食べてやる。アッハハハハハハハ・・・」

 

まるで、こったの森が話しているようだった。

クリンたちは、怖くなって、一目散に森の中から逃げ出して行った。

 

猫のミーちゃんは、

「この森が、大変な事になってしまった。連続失踪事件じゃない。連続殺人事件だみゃー!」と、身体を震わして叫んだ。

 

「帰って、チットとお兄ちゃんに聞いてみる。

 また明日集まって、話しましょう。必ずアゲハちゃんの仇はとってあげる から・・・」

 

「チュンチュン」「チョッチョッ」「チッチッ」「私たちも、ワシの多摩王に聞いてくる、チェッチェッ。」

 

みんなは、不安の表情を浮かべて解散した。

 

 

                     (つづく)

 

 

 

 

 



 

 

 

               

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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クリン・ショート・ショートVol,1「魔の森」

2013-02-15 | ショート・ショート

クリンショート・ショート vol・1 

~「魔の森」~

 

 

 

        <こった川サミット>

 



クリンは、いつものように月に一回行われる「こった川のサミット」に出かけた。

 

メンバーは、人間代表のクリンに、ペット代表の猫のミーちゃん、鳥代表の、雀のチュンチュンとチッチッとチェッチェッとチョッチョッだ。

 


「何か問題や事件は、起きてますか?ニャー」ミーちゃんがアクビをしながら言った。

 

「チットが、万歳屋のキャベツが安いと言っていたぐらいで、特に問題ナシ!」

クリンは、元気に答えて、雀たちの方を見た。

 

 

雀たちは、ひそひそ話してチュンチュンが代表して話し始めた。

 

 

「じつは、こったの森で連続失踪事件が起きてます。チュンチュン!」


クリンとミーちゃんはびっくりして、緊張の表情を浮かべた。

 

              Img_0382

 

 

 

多摩センターの開発が終わって、沢山のタヌキが山を追われて以来、

数々の試練を乗り越えて、今ようやく多摩は平和を取り戻し、動物や昆虫たちは、仲良く暮らしていた。

 

 

クリンたちにとっては、初めての大事件である。


「バッタのバタバタや蝶のアゲハちゃん、それに毛虫のモジモジまで、いなくなっちゃったんだ。突然!」

 

「仲間に聞いてもみんな知らないって言う。でも、目撃情報では、いずれも同じような場所で、半径50メートルくらいの地域の中で起きているんだ。チュンチュン。」

 

 

「神隠し?」クリンが眉根を寄せて、たずねた。

 

「とにかく、事件は現場で起きている。明日現場に行ってみましょう。みんな!明日の朝、10時にこったの森の入口で待ち合わせましょう。」

 

ミーちゃんは、ニャオー!とないて、締めくくった。

 

                       (つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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