元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「空中庭園」

2006-03-11 20:11:25 | 映画の感想(か行)
 家族の虚飾を暴く“辛口ホームドラマ”としては森田芳光の「家族ゲーム」が最高で、本作もそれを凌ぐものでは全くない。

 ドラマは不幸な生い立ちの主人公が、それを反面教師として“何でも話し合える家族”を構築しようとしたものの、それが徒労に過ぎないことを知るまでを描く。つまりは筋書きとしては単純で、主題を蕩々と登場人物に語らせる場面も目立ち、脱力してしまうラストも含めて、早い話が“語るに落ちる”というレベルだ。

 しかし、健闘はしていると思う。何より映像の構築力には一目置かれるものがある。舞台は首都圏のニュータウン。これが見た目は小綺麗だが、人間味がまったく感じられない。別に人通りが少ないわけでもないのに、何やら町の有機的な部分が欠落しているような病的なものを感じる。

 そしてグルグルと回るカメラ。ヒロインの心の揺れを表現しているのは明白だが、移動速度とアングルには細心の注意が払われており、図式的なクサさをほとんど感じさせない。

 キャスティングも万全だ。女優として全力投球している感じの小泉今日子と軽佻浮薄なダンナ役の板尾創路とのコンビは絶妙。永作博美のキチ○イぶりも楽しい。圧巻はヒロインの母親を演じる大楠道代で、鉄火肌のクソババアを憎々しく好演。彼女とダンナの愛人役のソニンとの喧嘩シーンだけで入場料のモトは取れる(爆)。豊田利晃監督の今後にも期待しよう・・・・とは言っても、不祥事でパクられた彼の“次の仕事”がいつになるのか誰にも分からないが・・・・(汗 ^^;)。
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オーディオむかし話/消えた規格

2006-03-11 17:46:28 | プア・オーディオへの招待
 気分が乗ったので、引き続きオーディオねた行きますw。

 私の実家に置いてあるメイン・システムは、もちろん社宅のサブ・システムよりはカネがかかっているが、しょせんこれも安物でしかない。でも、オーディオ歴自体はかなり(無駄に)長い(爆)。その間、現在では考えられない珍品も目にしたことも少なくなく、それを思い付く限り書き連ねてみます。

 私の子供の頃だったか、音響業界では「4チャンネルステレオ」というものが持て囃されていた。通常の2チャンネルにプラスして後方に2個スピーカーを設置するという、まあ今で言うサラウンドのはしりみたいなものだが、とうとうメジャーにはならずに数年で消滅したように記憶している。

 その理由は明らかで、4チャンネルステレオには方式が何と3つもあり、それぞれまったく互換性がないまま同時発売されてしまったからだ。ただし3方式とはいっても、レコーディング時点から完璧に4チャンネルで仕上げてあったのは1方式のみ(ビクターのCD-4)、あとは作成プロセスの中に従来の2チャンネルステレオのメソッドが入り込む「なんちゃって4チャンネル」でしかなかったのだ。

 しかも、当時の主要ソフトはアナログレコード。所詮は音源をレコード針で拾う方式なので、チャンネルを4つも完璧にトレースしようなんて無理な注文。ピシッと4つのスピーカーに向けて信号を分離させるには4チャンネル用のオープンリール・テープレコーダーで専用ソフトを再生するしかなかった。もちろんオープンリール・デッキは高価だし、取扱も面倒。ソフト(当然、オープンリール・テープ)も安くはない。廃れるのは必定だったろう。

 しかし、この動きによってアンプ等の性能が上がったというのも事実らしいので、まったくの無駄骨とは言えないのかもしれません。レコーディング技術面でも貢献したとか。ちなみにピンク・フロイドの「狂気」というロックの名盤がありますが、あれは4チャンネルステレオ用に録音されていたというのは有名な話。

 対して、無駄骨以外の何物でもない方式も存在しました。確か70年代の半ばだっただろうか。ソニーが「エルカセット」という規格を提案したことがある。従来のカセットテープより高性能の録音メディアとして登場したものであるが、要するにテープの幅を広げて、カセット自体も大きくしたという、安直極まりない方法論でした。当然、追随するメーカーは皆無。ソニーはこの頃から手前勝手な規格を向こう見ずに市場に投入して失敗することが目立っていました(笑)。

 カセットテープで思い出したけど(カセット全盛時を経験した人は誰でも知っていると思うが)カセットテープには3つのポジションがあった。ひとつが一番安価なノーマル、別名タイプ1、ラジカセ用にバンバン使われた商品です。ふたつめがハイ・ポジション、クロームとも言います。磁性体にクロームなどを使用し、ノーマルより高音質を謳ったものです。これがタイプ2。そして高価で音質も良かったのがメタル・ポジション、これは確か70年代後半から出てきたと記憶しています。別名タイプ4です。

 ・・・・ここまで書いてくると「おい、タイプ3が抜けているじゃないか!」という突っ込みが入るだろうが、実はタイプ3というのもちゃんと存在していた。だが、メジャーにならずに早期に立ち消えただけの話。タイプ3はフェリクローム・ポジションといい、開発したのはもちろんソニー(爆)。タイプ2よりも高音質だというのが謳い文句で、事実音は良かったんだけど、なぜかノーマル・ポジションと中途半端に互換性があってマーケティング的に差別化が図りにくく、メタル・ポジションの商品化も取り沙汰されていたこともあって、結局追随したのはデンオンとスコッチの2社のみ。国内大手のTDKやマクセルは見向きもせず、文字通り「幻のポジション」となっとしまったのであった(-_-;)。

 あと、カセットテープ録音時にヒスノイズを低減させるための「ノイズリダクション・システム」も百鬼夜行の感がありました。ドルビーCタイプをはじめとして、アドレスだのdbxだの、いろいろな方式が提案され、もちろん互換性はゼロ(爆)。時を待たずしてほとんどが消滅しました。そうこうしているうちに、カセットテープは歴史的役目を終えつつあります(考えてみれば感慨深い)。

 こういうネタを書き始めるとキリがないので本日はここまで。また気が向いたら取り上げます。
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