(原題:Proof )デイヴィッド・オーパーンの戯曲「プルーフ/証明」の映画化で、監督は「恋におちたシェイクスピア」などのジョン・マッデン。晩年には精神を病んだものの若い頃には学会を席巻した天才数学者、及びその娘を取り巻く人間模様を描く。
並はずれた才能は、本人を幸せにするとは限らない・・・・という真実を改めて思い起こさせる作品だった。
ある意味父親以上の頭脳を持っていながら、父親の死後もその影響から逃れられずに、若くして半ば世捨て人のように生きるヒロイン。彼女が外の世界に踏み出すことは、難解な数学理論を確立するよりも遙かにハードルが高い。彼女にとっては人間関係の再構築こそが自己の“証明(プルーフ)”なのである。逆に言えば、人間関係すなわち自己証明の基盤である。
映画は“自分には学問があるのだ!”というエクスキューズにともすれば埋没しそうになりながらも、主人公が手探りでアイデンティティを形成しようとする過程を丁寧に追うが、さらに父親と妹をシカゴに残したままニューヨークでキャリアウーマンとして腕をふるっている姉を登場させ、父親を最後まで世話したヒロインとの対比により、主題を一層普遍的に扱うことに成功している。
舞台版も手掛けたというマッデンの演出は多分に演劇的で、観る者によっては若干の息苦しさを覚えるかもしれないが、登場人物に逃げ場を与えない密度の濃さを作劇に与えている。
主演のグウィネス・パルトロウは正直言って好きな女優ではないが(笑)、かなりの好演であることは間違いない。アンソニー・ホプキンス、ジェイク・ギレンホール、ホープ・デイヴィスといった他のキャストも万全で、観て損のない佳作だと言えよう。