元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「プライド 運命の瞬間」

2006-03-20 06:51:28 | 映画の感想(は行)
 98年作品。東京裁判での東條英機(津川雅彦)の行動に焦点を当てた2時間40分の大作だが、ひとことで言って“いい部分とつまらん部分が同居している映画”といったところか。

 “いい部分”というのは、ストーリーのメインたる裁判のシーンである。最初、カメラワークが落ち着かず、少し画面に違和感を持ったものの、中盤近くになるとかなりの盛り上がりを見せる(法廷ものにあまり馴染みがない日本映画では珍しいとも言える)。クライマックスのキーナン検事と東條との「対決」は特に見もの。本物の裁判記録と一字一句違わないセリフまわしであれだけ迫力を出せるってことは、やはり監督(伊藤俊也)の力量だろうか。たぶん実際の裁判もこうであったろうと思わせる画面展開である(「能」のシーンは蛇足でしかなかったが ^^;)。

 さて、“つまらん部分”というのは、上記の法廷場面を除いた部分のほとんどがそうである。副主人公であるパール判事のエピソードは、史実では重要だが、映画ではまったくの余計だ(当初は彼を主人公にする予定だったらしいが)。大鶴義丹と戸田菜穂にいたっては、何しに出てきたのかもわからない。つまり、法廷の外のシーンでは、とたんに演出が弛緩してしまうのだ。東條一人にストーリーを絞り、ギリギリまで主人公の内面に迫ってほしかった。

 このネタでは上映時間は長いと思った。ラストも裁判終了で映画も完結し、後日談は字幕で触れるだけにしておけば、もっとピシッとした内容になったろう。大島ミチルの音楽は良いけどね。

 それと、何でモノクロで撮らなかったかなあと思った。ドキュメンタリー・タッチを強調するとともに、ヘタな合成シーンをカバーする上で有効なはずだが・・・・。

 要するに、出来としては万全ではない。でも、この題材も含めて、まあ観る価値はあるとは思う。
コメント
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