元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「青春のつぶやき」

2006-03-27 06:53:13 | 映画の感想(さ行)
 97年台湾作品。金持ちの娘で、台北のマンションに住む女子大生メイリ(ルネ・リュウ)と、田舎に住む下層階級の娘メイリ(ツェン・ジン)。同じ名を持つ二人のヒロインの生き方を平行して描く。監督は「春花夢露(浮草人生)」のリン・チェンシェン。

 前作「春花夢露(浮草人生)」が素晴らしかったので期待していたが、見事な失敗作であった。ヒロイン二人は映画後半で偶然出会い、それぞれの過去を引きずりながら深い間柄になっていくという展開だが、そこに行くまでが滅茶苦茶タルい。

 60年代の台湾の田園地帯を舞台に“家族の肖像”を大河ドラマ的に描いて観客に深い感銘を与えた前作だが、そこで顕著だった“カメラ引きまくりでセリフ極少、ドキュメンタリー・タッチで淡々と進む”という手法が今回は悲しいほど題材に合っていないのだ。前作のようにノスタルジックな素材をバックにするならば絶大な効果を発揮しても、現代の台北を舞台にモダンなコンテンツを配した現在進行形の青春ドラマでは、ドラマの進行を妨げることにしかならない。

 カメラをぶん回してケレン味たっぷりにスピーディに演出しろとは言わないが、もう少しテンポ良くやってもいいのでは・・・・と思っても、それではこの監督の作風にマッチしないし、第一こういうネタはエドワード・ヤンなんかの得意科目で、リン・チェンシェンとは対極にある題材であると言わざるを得ない。

 ま、あまりケナしても何だから良かった点もあげると、田舎に住むメイリの家族の描写が的確だったことか。両親は単純労働者で子供たちに自分たちが味わった苦しみを味あわせたくないと思っている。家長は口数は少ないが威厳のある祖母だが、彼女の人生は苦労の連続で、昔死んだ夫の思い出が胸をよぎり、老後を楽しめないでいる。静かだがそれぞれの悩みにとらわれて毎日を送る人々の生活が等身大に迫る。ところが、娘のメイリの悩みは学業についていけないとか片思いの彼氏に友人が先にモーションかけたとかいうつまんない話であり、家族と同程度に扱うのは無理があり過ぎる。都会のメイリの悩みにいたっては“両親がよそよそしい”とかいったどうでもいいものであり、何でもう一人のヒロインと平行して描かなければいけないのか理解に苦しむ。・・・・おっと、結局ケナしてしまったぞ(^_^;)。
コメント
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