元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「800 TWO LAP RUNNER」

2006-03-19 08:44:04 | 映画の感想(英数)
 94年作品。「TWO LAP」とは1周400メートルのトラックを2周すること。つまり800メートル競争のことだ。下町のヤクザの息子で不純異性交遊を見逃してもらうかわりに無理矢理陸上部に入らされた中沢(野村祐人)と、大金持ちのボンボンで陸上競技一筋の広瀬(松岡俊介)の2人の高校生ランナーを中心に映画は進む。彼らにからむのが陸上界のマドンナである翔子(有村つぐみ)、足の悪いナゾの女・杏子(河合みわこ)、広瀬の妹・奈央(白石玲子)らの女性陣。川崎を舞台に、それぞれの青春ドラマが展開する。

 ところがこの映画、この題材から当然予想される“スポーツ根性ドラマ”とはほど遠い位置にあるのだ。汗くささ、涙、努力、忍耐etc.そんなものは皆無。かわりにあるのは、非行、セックス、同性愛、近親相姦etc.でもムサ苦しい“不良少年映画”とも全然違う。夏のまぶしい日差しの下、スカーと抜けたような映像にうつし出されるのはカラリとした今様の青春群像。この意図はかなりいいと思う。でも・・・・。

 監督は廣木隆一。キャストもすべて当時の新人。こういう作品は映像のリズムにノレるかノレないかで評価が決まってしまう。残念ながら私はノレなかった。理由は簡単。余計なシーンが多すぎるからだ。

 中沢が延々と海岸を走る場面、中沢と奈央がカラオケをやるシーン、広瀬と杏子のやたら念の入った前戯etc.もうめちゃくちゃ長ったらしい。映画の主旨からして、これらのシーンに特別な意味などあるわけがない。映画のノリでしかない。これにノレないと映画自体も無意味だ。単なる環境映像ソフトとしての価値しかない。

 意味がないからダメだということはない。もともと若者には理性よりも生理が勝っているところがあるから、理屈よりも生理をギリギリまで描き出せば、それ相応の見ごたえある映像に仕上がる(相米慎二の「ションベン・ライダー」なんか好例)。でも、それに徹するには設定もストーリーも無視して全編これ映像のコラージュにしなければならない。しかし、映画は最後まで800メートル走の勝負にこだわってしまう。しかもスポーツ映画にとって致命的な迫力のなさ。これでそれまでの映像のコラージュらしきものは、慢然とカメラを回しただけのフィルムの浪費でしかなくなってしまった。

 まあ、好きな人にはたまらない映画だろうが、私としては薦めたくない。
コメント
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