元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「プライドと偏見」

2006-03-30 06:45:03 | 映画の感想(は行)

 (原題:Pride & Prejudice )「いつか晴れた日に」や「エマ」などのジェーン・オースティン作品の映画化なので、展開や結末は観る前から分かっている。だから“語り口”こそが映画のポイントなのだが、その意味では本作は成功だ。

 これが監督デビューとなるジョー・ライトの演出は堅実かつ端正で、向こう受けを狙ったケレンや臭みは皆無。会話の軽妙さとテンポの良さ、緩急使い分けた自在な作劇で観客をグイグイと引っ張ってゆく。さらに目の覚めるように美しい田園風景や、堂に入った歴史公証、そして舞踏会のシーンをはじめとする万全の衣装・美術もドラマを盛り上げる。

 それにしても、女性は結婚して家庭に入ること以外に生き方の選択肢がなかった封建的な時代(18世紀末)にありながら、それでも自らの矜持を捨てずに理想の相手を求めようとするヒロインたちの奮闘を見るにつけ、社会的制約など恋愛には関係ないのだという思いを強くする。むしろ、ハードルの高さをバネにしているかのようだ。条件の困難さばかりに目が行くようでは、それは恋愛を成就できないことのエクスキューズではないか・・・・そういうことも伝わってくる。

 主演のキーラ・ナイトレイは天晴れだ。リベラルな考え方をする一方で、好きな相手に恋い焦がれるヒロイン像を実に魅力的に実体化させている。相手役のマシュー・マクファディンも好演だが、母親役のブレンダ・ブレッシンと父親役のドナルド・サザーランドが素晴らしい(特にラストのサザーランドのセリフには泣けてきた)。さらには後半にはジュディ・デンチも貫禄たっぷりに出てくるのだから、実に嬉しくなってしまう。

 とにかく今年度前半を飾る秀作であり、年末のベストテン選考でも上位に食い込むことだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする