(原題:Geronimo)94年作品。通算17本目のジェロニモ映画らしい。脚本ジョン・ミリアス、監督ウォルター・ヒルという顔ぶれから見てヴァイオレンス満載のアクション西部劇だと思ったら全然違った。
映画はいきなり1885年のジェロニモ投降のシーンから始まる。インディアン居留地域に移送されるアパッチだが、そこは痩せた土地で作物もとれない。怒ったジェロニモは仲間と共に反乱を起こし、メキシコへ逃げ込むが、1年後に説得に応じて降伏している。この史実を意外なほど淡々と描いている。
物語は若い将校デイヴィスの一人称で綴られ、インディアンに共感を持つ中尉(ジェイソン・パトリック)や歴戦の勇者で軍の調達係の男(ロバート・デュヴァル)、インディアン側からも畏怖される騎兵隊の司令官(ジーン・ハックマン)などが手際よく描かれる。
特筆されるのはジェロニモを演じるウェス・ステュディの存在感で、実はアパッチ族出身ではないらしいが、たぶんジェロニモはこういう人だったのだろうと納得させるだけの貫禄、特に追手の首領の水筒を遠くからライフルで打ち抜き、“本当は頭を狙った”などとウソぶくあたりは、豪快なユーモアも感じたりして出色だ。ライ・クーダーによるスケールの大きい音楽(アカデミー音響賞の候補にもなった)、茶系のフィルターを通したと思われる西部の荒涼とした、しかし美しい風景をとらえた映像も捨て難い。
だが、残念ながらこの映画、あまり面白くない。歴史の勉強にはいいだろう。史実を正直に追っている。しかし視点がハッキリしない。インディアンへの挽歌なのか、白人同士の葛藤なのか、対インディアン政策への批判etc.たぶんそのすべてを狙ったのだろうが、すべてに中途半端。白人側のキャラクターの弱さは致命的で、けっこう豪華なキャスティングがもったいない。題材に遠慮したのかもしれないが。
ヒル監督得意の夜間シーンがないのも不満。それでも暗い酒場で悪い奴らをアッという間に片ずける場面など、数少ないアクション・シーンは盛り上げてくれる。これぞ西部劇の醍醐味。この調子で娯楽性たっぷりに全篇走ってもらいたかったが・・・・。