2階の庭に面した窓で「ドン!」と大きな音がしました。
出てみると、ベランダにヤマガラさんが・・。
バレンタインデーから小鳥がさえずりを始める、といいますが、
それは本当で、今年は寒いけれど、小鳥たちにはもう春です。
ヤマガラ、シジュウカラも、この時期には巣箱をめぐる争いで、
ときにはライバルどうし空中戦も。
音がした直後、窓の向こうに、変な格好でターンする1羽が見えたので、
追いかけっこに夢中でガラスが見えなかったのかもしれない。
仰向けになっているので、あ、駄目かな・・と思いました。
胸が小さく上下して、くちばしをパクパクしていました。
音からみて、かなり強く当たっているので、
これまでの経験では、助からない率のほうが高いかな・・。
とりあえず、レスキューの基本は「保温・安静」。
体温の高い鳥にとって、人間の手というのはかなり「冷たい」です。
フリースのパーカを着ていたので、ジッパーを半分下げて、
おなかのところにそーっと入れました。
そして、気をつけて部屋の中へ。
なにしろ、うちの場合、「中」のほうがはるかに危険。
猫に気づかれると大騒ぎになるので・・
弱った鳥が室内でばたばた飛び回る最悪の事態だけは
絶対に避けたいです。
悪魔のように勘のいい茶々姫とは目を合わせないように、
「ゴハンくれ~」と寄ってくるさんちゃんもなんとか押し戻し、
台所のドアを閉めてたてこもりました。
しばらく、動かないで、ぐんにゃりぐったりしていたので、
ほんとに駄目だと思ったのですが、5分ほどしてのぞいたら、
きょとんとつぶらな目をあけてこっちを見ていました。
人間なら、顔色をみるところですが、鳥やケモノは、目の光です。
目が、ぱっちり濡れたように光って、ピントが合っている感じだったら、
だいじょうぶ。
外側からみる限り、傷も、折れたり曲がっている部分もなさそうです。
脳しんとうだけかな。
うすい砂糖水を、綿棒に含ませ、くちばしの付け根に
ちょんと1滴ずつつけてやると、くちゅくちゅして自分で飲みました。
(砂糖水は、水分補給と同時に「気つけ薬」になると聞いたので。
下手に「飲ませ」ようとすると気道に入ってしまい危険です)
すこしずつ、頭を左右に動かすようになりました。
ふつうこういう小鳥は、木の枝にとまって、あっちこっち、あっちこっち、
絶えず頭を動かして、餌を探したり、敵がいないか確認したりしています。
写真を撮りたいときは「ちょっとじっとしてろ!」と言いたくなるくらい、
小鳥というのは、じっとしていません。
こんなにおとなしく、こんなに近くにいるヤマガラを見るのは初めてで、
どきどきします。
もうちょっとゆっくりしていく?と言いたくなる。
だけど、猫がいるからね・・。
人間のそばにいるというだけでも、野鳥には大変なストレスのはず。
大丈夫なら、なるべく早く、暗くなる前に放してやりましょう。
台所から、こそっと裏に出て、ヤマガラをパーカから出し、
手に乗せてみました。
ほそい足指で、しっかりつかまってとまります。
すごく小さくて、軽い。
そして、すごくすごくきれい。
羽と翼のあるいきものは、おなじ地球上にいながら、
やっぱりヒトとは違う世界に住んでいる。
「・・ココハドコ?」
とまどったように、しばらくぼーっと手に乗っていましたが、
そのうち、はたはたと少し飛んで、低い木の枝へ。
仲間がしきりに鳴いている声が聞こえます。
記憶喪失・・でなければ、いいけど。
もうぶつからないと、いいけど。
枝づたいに、少しずつ飛んで、やがて見えなくなりました。