ロクダイさんがタコと大根の絵を描いておられましたので、
タコについて。
「梅にうぐいす」「旭日に鶴」「粟穂にうずら」などと並んで、
「大根に蛸」も、古伊万里の染付などによくある図柄です。
これは17世紀に中国から伝わった伝統的な吉祥文様のひとつで・・
・・なぁんていうのはまったくのデタラメですが、
「夜中にタコが海からあがってきて畑の大根を盗んでいく」
というのは有名な話。
有名・・ではないのかな?
昨年亡くなられた西丸震哉さんの「動物紳士録」という本の中に、
著者が三陸の釜石で目撃した一部始終が書かれております。
海岸の畑がよくタコに荒らされるという話を聞き、
夜中に提灯をぶらさげて行ってみたところ、
7、8キロはあろうかという大きなタコに遭遇。
そいつは大根におおいかぶさって、葉のあいだから八方に足を拡げ、
そろそろと背のびをしつつ、クキクキクキッと引っこ抜くと、
2本の足で小脇にかかえてずるずるとひきずって海へ帰って行った。
この話は、誰に話しても信じてもらえない、と。
40年以上前に出版された本ですが、タコの話は昭和20年代のこと。
この西丸サンという方は、怪しくて面白い話をいっぱい書いておられ、
幽霊とか超常現象もかなりお好きだったみたいで、
(浦島太郎の乗った「亀」はUFOだった!というマジメな説とかね)
それでも学者さんですから、動物の生態で嘘は書かないだろうと、
わたしは勝手に信じているのですが、どうでしょうか。
タコは水から出てもしばらくは平気で行動できて、
カニなどの餌を追って陸に上がることもあるといいますが、
大根は波打際に植えてあるものではないし。
海の生物がどうしてわざわざそのような行動を?
そもそもタコって野菜を食べるの?
調べると、大根の他に、芋、スイカなどの目撃談もあるようです。
でも、すべて伝聞か推測、「お年寄りに聞いた」的なものばかり。
ネットでざっと検索しただけなので、文献は調べていませんが、
これはつまり、インターネット、いやTVが普及した以降には、
実際に見た人が少ない、ということかもしれません。
(このへんがネット検索の限界というか、時代をさかのぼっていくと
情報量が突然すとんと薄くなるポイントがあるんですね。
情報がないからといって事実がなかったわけではなく、
そこより前では、書き残されたものの存在が俄然貴重になってくる)
いまなら、赤外線カメラとかセンサーとか各種機材もあることだし、
提灯で夜通し張り込みをするまでもなく、スクープ映像や、
証拠写真の1枚くらい、誰かが撮っていそうなもの。
環境または習性の変化で、タコは畑にあらわれなくなったのでしょうか。
それとも、やっぱり都市伝説・・じゃなくて田舎伝説?
春も近くなると、大根の葉の外側のほうは枯れて周囲にひろがり、
その中央から太い花芽がむくむくと持ち上がってくる。
夜にあかりで照らして見たら、タコが乗っているように見えなくもないと思う。
また、引っこ抜いて抱えて逃げるという行動は、サルっぽい気もする。
だけど、「クキクキクキッ」というところがね。
つくり話や見間違いにしてはあまりにもリアル。
と、思いません?
タコは大根と煮ると美味しいです。
一説によると、タコの足は大根でドンドンと叩くと柔らかくなり、
叩いたその大根を切って一緒に煮ればどちらも美味しいと。
あ、もしかしたら、それも何か関係が・・ないよね・・?
(以上、閑蛸堂でした。
画像は本文とはまったく関係ないミゾソバの花)
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ハロウィンも近いので・・