閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

物怪考

2013-11-05 15:36:42 | 日々


走って見に行った5分間の夕焼け。

 

 

 

 

 

 

 

ナガコガネグモ(?)の網。
苺畑の地表から10数センチという低い位置に張ってある。


 

前々回に書いた江戸時代の妖怪話。
まだしつこく考えつづけている。
本は「稲生物怪録」。
三次藩の武士だった稲生平太郎(のちに武太夫)の少年時代の体験談を
同僚の柏正甫という人が聞いて書いた、ということになっている。
(それとは別に、平太郎本人が書き残したという「三次実録物語」も存在する)

「江戸のホラー」などといって紹介した本もあるけれど、
どうもホラーというほどは怖くもないし、物語としても散漫である。
普通ならそこで引き返すのだけれど、今回はぐずぐずしている。
何か頭のすみにひっかかるものがあるからだ。
時鳥さんのブログを拝見して、そうか、とようやく腑に落ちた。

まず、タイトルに「録」とつくように、これは「おはなし」ではなく
「記録」であった。
怪異の出てくる順とか、主人公のキャラとか、オチのつけ方とか、
もうちょっと面白くなるのにとか、こっちはいろいろ考えてしまうけれど、
「実話だからしょうがない」のだ。

それと、「もののけ=怖いもの」という先入観がそもそも間違っていた。
とりあえず「わけのわからん奇ッ怪なもの」として読めばいいんですね。
だから造形的にも、唐突で不自然でヘンテコなほど良い、ということになる。
しかも、それらはさほど本気で襲ってくるわけではない。
この人間は遊んでくれそうだぞと喜んで、いれかわりたちかわり、
かまってもらいに来ているのだ。
とすれば、毎晩いろんな奴が家にあがりこむ(だけ)という設定も、
それを淡々と記録した(だけ)という構成も、なるほどと思える。
(最後に魔王と称する妙にまともなボスが出てくるけれど、
そのへんはオマケというか、無理やり話をまとめた感が強い)

平太郎君は「化け物にひとりで立ち向かう気丈な武士の少年」ではない。
怪異現象大好きな「もののけオタク」なんである。
そうでなければ、ひと月も自宅にこもって化け物の相手なんかできやしない。
平太郎君は、自分が見た(≒想像した)変なモノのあれやこれやを、
じつは誰かに話したくてしょうがない。
「えー、なにそれ、マジすげーじゃん」と目を丸くして聞いてほしいのだ。
でも、真面目で地味な性格で、親しい友人も少ないし、なにしろ口下手だし、
しゃべったって誰も信じてくれないかなーと思うので、なかなかしゃべれない。
というような話ですね、これは。

・・って、簡単にまとめちゃっていいのかどうか。
わたしは妖怪にも江戸時代にも全然詳しくありませんので、
シロウトのいい加減な推察、ということでご容赦を。


この件で、手がかりをもとめて、水木しげるの「墓場鬼太郎」を読んだ。
昭和30年代に出版されたいわゆる貸本漫画のシリーズである。
(読んだのはその復刻版で、Mが水木サンからいただいたもの。
箱の裏に赤ペンで著者サインが入ってます)

水木しげるというと、わたしはTVアニメのほうの印象が強く、
そういえばコミックはほとんど読んだことがなかったけれど、
これを見ていると、平太郎君と水木サンはとても近い!という気がしてくる。
たぶん、水木漫画によく出てくる、目の小さい、ぼーっとまのびした顔の
少年を、ちょんとつまんで座敷に座らせれば、そのまま平太郎になるのだろう。
と想像したら、この世界が急に理解できた気がした。

実話かフィクションか、なんて区別は関係なしに、とにかく、
そういうモノが好きな人のところに、そういうモノが寄ってくるのだ。
天賦の才といってもいいけれど、そのような変な才能を実生活で
有効に活用できる人というのは、非常に稀だろう、と思う。
水木サンはおおいに活用できたが、平太郎君は使いみちがないまま
平凡な下級武士の一生を送ったのではないだろうか。


余談。
新宿の町、ビル工事の騒音の中を、鬼太郎と目玉親父が歩いている。

鬼太郎「オリンピックだというのでさわいでますね」
親父「そうだ 土建屋と旅館にもうけて頂くために
   全国民がさわいでいるようなものだ」

(水木しげる「墓場鬼太郎 ボクは新入生」より)

この「オリンピック」というのは、もちろん前回(1964年)の
東京オリンピックのことだけれど、ううむ、そうか。
やっぱり、そうだよね。
妖怪に言われると、妙に説得力がありますね。
 

さてさて。
いったいどこから「稲生」にたどりついたかというと、
ジャンプ元は巌谷小波の「こがね丸」(ってご存じでしょうか?)
その話もいずれ書きますが、その前は、えーっと、どこだったかなあ。
例によって風桶流の閑猫発想跳び。

 

 

本日の「いいね!」

オハイオ州立大学マーチングバンド (動画)

スーパーボウルのハーフタイムショウ。
映画好きな子は必見!

 

コメント
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