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新しい絵本ができました。
『なまえのないねこ』(小峰書店)
絵は町田尚子さんです。
ぼくは ねこ。なまえのない ねこ。
だれにも なまえを つけてもらったことがない。
まちの ねこたちは みんな なまえを もっている。
いいな。ぼくも なまえ ほしいな。
…と、まあ、そういう(どういう?)お話。
この表紙のキジトラさん(男の子)が、とにかくかわいいです。
本屋さんでばったり出会って、こんなふうにじっと見つめられてしまったら、これはもう、おうちに連れて帰るしかない、でしょ?
置いていけないですよね?(笑)
舞台は、とある町の商店街。
主人公のほかに、8匹の個性あふれる猫たち(+2わんこ)が登場します。この子たち、じつはみんな実在の猫さん犬さんが絵のモデルになっているのです。
町田さんちの猫さんや、デザイナーさんちの猫さんや、お友達の猫さんたち。
それぞれ町のあちこちで、じつに居心地よさそうに暮らしていて、ほかにも本文に入りきれない子たちが見返しいっぱいに描かれていて、もうそれだけでなんだかうれしくて、いつまで見ていても飽きないような…。
そして、
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靴屋さんの「レオ」は…
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ありし日のこだまじいちゃん! 特別出演させていただきました。
どの子をどの店の子にするか、町田さんとご相談しつつ考えて、楽しかったです。
「ウチのに似てる~!」とか、「いるいる、こんな猫」とか、それぞれに楽しんでいただければ嬉しいな。
そもそものはじまりは、4年前の春。
編集の美香子さんから「町田尚子さんの絵で絵本を…」というお誘いをいただきました。
わたしの場合、ひとりで文章を書き、それから画家さんを探して…というパターンがほとんどなので、具体的に画家さんを想定して書くという機会はめったにありません。
これはね、ちょっと緊張します。
この方の絵だったら、どんなおはなしが合うかを考える。
いや、そうじゃない。わたしはどんな絵が見たいか、を考えよう。
そのためには、どんな言葉を用意したらいいか。
じつをいうと、猫だけはやめようと、思っていました。
というのは、わたしが書かなくたって、町田さんはいくらでも猫の絵をお描きになる方だからです。それに、町田さんの猫の絵は、1点1点がきれいに「閉じた」世界で、他人の入る隙がないような、そんな気がしました。
で、猫以外で、たぶんこれならご本人は絶対思いつかないでしょう、というような妙案(ビミョーな案、ね)をいくつか出してみたものの、どれもこれも予選敗退。つまり、美香子さんが首を縦に振らない。
町田さんの絵で、ということは、大人むきの絵本でもいいということなんだ、と思ったら、そうではなくて、絵本であるからには幼児も読めるもの、怖いのはダメ、とのことで。あらまあ。
町田さんの絵の魅力は、質感の表現が素晴らしいところ。木は木の、草は草の、水は水の匂い。動物なら、てのひらをあてたときの毛の感触と、その下にあるしっかりした温かいボディ。木材、石材、たたみ、ガラス。とくに建物を描かれるときの映像的なアングル、光線、奥行き感に、わたしはとても心ひかれます。
そうだ、建物。商店街のいろんなお店を描いてもらえれば、子どもだって楽しめるんじゃないか、と思いました。
では、その「絵」を「絵本」にするには、どうしたらいいか。それぞれの店をつなぐ共通項として「お店の猫」が出てきて、それぞれの猫を結ぶものとして「主役の猫」が出てきて、主役が移動するための動機と必然性ができて、最後にテーマができて…
結局、猫になってしまった。
すべての道は猫に通じる、という…(笑)
「最後にテーマができる」というのが、一般常識と逆ですが、わたしには普通です。というより、そうでなければだめなので。いかにもなテーマを先に立ててしまったら、ろくなものはできない。(あくまでも個人的な話ですよ)
なんとなく手元に寄ってきたものたちを、そうっと集めて、あたためて育て、その中から浮かび上がってくる「いちばんたいせつなもの」を見分けて、すくい取る。それがほんとうのテーマと呼ぶべきもので、そこまで行きついたものだけが作品になる。(ええ、個人的に、です)
町田さんが、原稿を読んですぐ「描きたい」と言ってくださって、そこから待つこと約3年。
じっくり待ったかいあり、素晴らしい絵をいただいて、この絵本ができあがりました。
文章担当としては、無上のよろこびであります。
あとは…もう言うことはありません。ぜひ手にとってごらんくださいませ。
小峰書店さんのサイトで、扉+3画面が試し読みできます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/2d/f114c83e5951c9bd1b500224fed742aa.jpg)
![町田尚子](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51%2B7Sw1l3%2BL._SL160_.jpg) |
なまえのないねこ |
竹下文子・文 町田尚子・絵 |
小峰書店 2019年4月 |
いくつかの書店さんでサイン本を置いてくださるそうです。
もちろん来月の町田さんの個展でも。
6月には(たぶん)絵本ナビさんでもサイン本販売があるようなので、チェックしてみてくださいね。