水面を破壊せよ、上へ昇って

勢いよく水面を破壊する気概で、海面に湧く言葉たちであれ。

『日日是好日』と『翔んで埼玉』を観て

2019年07月29日 05時34分55秒 | ぽつり一言
昨日、地元のハコモノで映画フェスタをやっていたので、幸運にも無料で、わりかし最近公開になったばかりの映画、2作品を観てきた。
『日日是好日』と『翔んで埼玉』の2つである。時間の都合上、この2つを観てきたのだが、同時にこの2つが最もメインで見たい作品だった。
結果、どちらも見れたことで満足している。
この映画祭、復興応援ということで開催されているということ、ロビーで無料の飲料も配っているということもあり、細やかなところまで配慮が行き届いていて、非常に有り難い催しものだったと今ひしひしと感じている。
私の見たい時間に、このラインナップを見せていただいたことに感謝している。
順番も良かった。最初に『日日是好日』を見れて良かった。なぜなら、映画を見る醍醐味はこれだろうと思わせる、美しいカット(というか)、静かなカットの数々、描き出す心理描写なり風景の美しさが映画の王道を思わせて、座席に座っているのが一種の禅のようになって(タイトルの日日是好日というのは元々禅の公案から持ってきた言葉だそうだが)、ひたすら落ち着いたからだ。翻って『翔んで埼玉』の方は、描写というよりも、ストーリー展開の面白さ(これもまた王道というか鑑賞するものの期待に応えるコテコテのエンターテイメント感満載の内容でありつつ)、かつイロモノとも見れる奇抜な、ある意味アグレッシブな冒険作と言えるものに仕上がっていたので、これは見る体力をある程度要するものなので、この後解散というのは、鑑賞後感というものにおいても相応しかった。
内容の感想にもうちょっと立ち入っていこう。(ネタバレはしないよう気を付けます)
『日日是好日』の方は、昨年亡くなられた樹木希林の演技がとても良かった。自然というのは、こういうことだと思った。作ったものだと感じさせない、ただ居るから居るんだというようなことを体現した演技が、だからこそ作り込まれたものなんだと圧倒的な驚きを見るものに与える。死期も迫り鬼気迫るものもあったかということだが(念を入れておくが洒落のつもりはない)、どちらかというと自然の摂理に沿ったかたちで穏やかに死期も迎えられたのではなかろうか、といった印象を抱かせる死期も間近な演技だった。死期といえば、また四季もこの映画を彩る大事な要素だった。日本人において重要な四季の移ろいが、非常によく描かれている。四季そのものを楽しんでいる映画だと言える。
この作品のなかで、女性の主人公(黒木華)は、幼い頃ある映画を観たと話す、そして大人になった後もまた観たという場面がある。その時に、大人になったらその映画というものがどういうものか分かった、感動に値する映画だったとしみじみ思うことができたと言う。私は、この映画こそまさしくそういう映画になると思えて仕方ないのだが。私は泣いた。ボロボロとではないが、しっとりと泣いた。移りゆく季節に、後ろ髪引かれる思いと(男だから大した後ろ髪はないのだが)切なさを感じるように、泣いた。
 さて、『翔んで埼玉』の方は、あっけらかんとした気持ちで素直に楽しんで観た。埼玉ディスりもここまでくるとお家芸である。映画のシナリオ上、関東一帯しか出てこないのだが、他の地域も出てきたら、映画10本は越える軽いシリーズものとなるくらいの、てんこ盛り感を与える中身になっている。ダサいたまで知られる(もちろんそれ以外でも知られている)埼玉だが、このディスり方には最早強烈な愛すら感じる。それこそ、日本のそれぞれの土地に住む人が「郷土愛」を堂々と持っていいんだと思える、誇り高い埼玉県人が数多く出てくる。これは、賑やかなエンターテイメント作にとどまらない、日本の新しい郷土愛像のモデルとなってもおかしくない見方を提示した作品である。新しいといっても、日本歴史のパロディは多用されていて、そこがストーリーの王道感にも現れているのだが。
この映画の優れた点は、テンション高めのネタ満載な中身だけでなく、テンション上がり過ぎない冷めた目線を常に合間に覗かせている点にある。お陰で観客は、取り残されることなく話の突飛さ、ぶっ飛び加減に上手く付き合わされる(これは望ましいということで)ことになるというわけなのである。
以上、この2作品を続けて見れたことは私にとって、非常に落ち着くかつ心躍る時間をもたらしてくれたことになった。有り難いことだ。
何度も言うが、これが無料なのだから最高なのである。
『日日是好日』は静の映画、『翔んで埼玉』の方は動の映画、ということができるかも知れない。
あれ、この2つって意外と、気をつけて読まないと読めない漢字で書かれているということも共通してるな(笑)

バイバ~イ。映画感想、まともに書いたの人生で初めてかな?

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