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「ベルサイユのばら」(2025年 日本映画)

2025年03月05日 | 映画の感想・批評
1972年から週刊マーガレットに連載されていた長編漫画のアニメ映画版新作。

オーストリア皇女のマリー・アントワネット、フランスの将軍家令嬢ながら父の希望で息子として育てられたオスカル・フランソワ、スウェーデンの貴公子フェルゼンは同じ年にそれぞれの地で生まれたが、やがて華麗なるベルサイユ宮殿で運命の出会いを果たす。男装の麗人オスカルを守るべく、乳母の孫のアンドレが常により添っている。
時はすでに絶対王朝の陰りがうまれ、民衆の中に王侯貴族たちの贅沢な暮らしに対する不満が噴出している、18世紀後半、まさしくフランス革命前夜。
宮廷で繰り広げられる華やかな舞踏会のかげで、国民の生活は疲弊しきっているのを知ったオスカルは、ついに市民に銃を向ける側から,市民とともにバスティーユ監獄へと突入し、命を落とす。

声優さん、特にアントワネットを演じた平野綾は、少女のころから母となる世代まで、声だけで成長していく過程を演じていて、さすがと思わせる。
今作は原作に忠実なストーリー展開なので、メインはどこまでもオスカル。アントワネットとの友情ゆえ、フェルゼンに思いを秘め、ただ一度だけ仮面舞踏会にドレスをまとってフェルゼンと踊るオスカルの姿も初見の人にはオスカルの気持ちがくみ取れただろうか。
市井の人に気持ちを寄せていくきっかけとなるロザリーたちの登場シーンもわずか。
あれだけの壮大な原作を2時間という枠は厳しすぎるのだが。
歌で心象風景を語られるのだが、十分に生かされていないように感じる。確かに声優たちの歌唱力はすばらしい。ただ、音の大きさの調整を願う。
エンドロールの綾香の唄も圧巻。画面の左右で描かれる革命の結末を見ながらでは歌に集中できなかったが。

50年の時を超えて、今アニメ映画で見せてくれる意味はどこなのだろうか。
宝塚版では、今作品の中心である「オスカルとアンドレ編」だけでなく、「アントワネットとフェルゼン編」が作られていた。
若干22,23歳で、半世紀を超えてなお愛される作品を生み出した池田理代子の筆力と創造力に今更ながら圧倒されるし、若い人たちにも知ってもらう良い機会にはなっている。劇場はほとんど中年以上でしたが。
原作の初期世代ファンとしては、「連載の同時代で読んでたのよ~。学校で級友から貸してもらって読むのが何よりの楽しみだったよ~。世界史の授業を架空の人物をふり回しながら先生を質問攻めにするのも面白かったのよ~」と、少女時代にぶっ飛んで思い出を語れる、良い時間ではあったのかも。
大雪さえなければ、近くに映画館が有ったら、週替わりの入場者特典、集めに行ったものを。もう少し深く観なおすことができたのかも。
30代になってから買いこんだ愛蔵版、たった2冊にまとめられていたことも驚きだった。
物置きを探しに行かなくっちゃ。「オルフェウスの窓」4冊も眠っているはず。こちらが舞台化されないのがとても残念。壮大すぎるか?
(アロママ)

監督;吉村愛
脚本:金春智子
原作:池田理代子
声の出演:沢城みゆき、平野綾、豊永利行、加藤和樹


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