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平成18年4月10日
日産婦日産医群馬県支部 会員各位
日産婦学会群馬地方部会長 峯 岸 敬
日産婦医会群馬県支部長 佐 藤 仁
産婦人科医の不当逮捕に抗議する
-異状死のあいまいな定義こそ問題-
謹啓
時下、先生にはご健勝のこととご拝察申し上げます。日頃より支部の業務にご協力賜り厚く御礼申し上げます。
さて、今年2月に産婦人科医が業務上過失致死と医師法第21条(異状死等の届出義務)違反の容疑で逮捕されました。前置胎盤で帝王切開を受けた妊婦さんが出血性ショックで死亡した事例で、異状死として警察へ届け出なかったことが逮捕の理由になっています。
医師法第21条とは「医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」という条文です。明治時代の医師法をそのまま踏襲しており、犯罪の発見と公安の維持が当初の目的でした。実は現在第21条について、「手術や分娩に関連した偶発的な死を異状死と捉えるか否か」、日本法医学会と日本外科学会で大きな解釈の違いがあります。
日本法医学会は「過失の有無にかかわらず」届け出るとガイドラインに定めています。これに対して外科学会は「重大な医療過誤があったか、強く疑われるとき」と届け出に条件を設定しています。二つの見解が異なっている現状では、届け出れば業務上過失致死罪に問われ、届け出なければ第21条違反で逮捕されることになります。結局異状死の定義があいまいなため、司法の判断で過失認定されることが問題といえるでしょう。
3月31日の支部役員会で逮捕事件が議題になりました。その結果役員会は、不当逮捕に関する抗議の声明を各方面に出すとともに、下記のように対応することを決めました。
1.診療に関連する死亡事故や4月以上の死産の届け出
「過失の有無にかかわらず届け出る」ことは、法医学会の解釈を支持することになり産婦人科医として到底承服できません。3月24日に日本医師会は、異状死を巡っては医療事故と過誤を厳密に分けるべきという見解を打ち出しました。支部も、異状死の基準が明確になるまで従来通りと考えて、犯罪性のない死亡事故と死産を届け出る必要はないと判断致します。ただ明らかな過誤による死亡例は所轄警察署に届け出ることになります。
2.加藤克彦医師に対する支援
加藤医師は保釈されましたが、保釈金500万円が課せられました。過失の有無だけでなく、裁判を通じて異状死の定義を明確にするために長期の係争が予測されます。支部は支援の意味で、「加藤克彦先生を支える会」に義援金(20万円)を拠出することになりました。また支部会員にも別添の「募金趣意書」をご覧の上、ご協力をお願いする次第です。
敬具