ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題091~問題100

2007年11月27日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題091~問題100】

問題091 手術解剖で誤っているのはどれか。
a)仙骨リンパ節は子宮頚癌の所属リンパ節である。
b)子宮底部からのリンパ管は傍大動脈リンパ節に入る。
c)基靱帯の血管部は神経部よりも骨盤底側に存在している。
d)準広汎子宮全摘出術ではリンパ節郭清の有無を問わない。
e)骨盤神経はS2~S4より発する副交感神経である。

問題092 傍大動脈リンパ節郭清の解剖で正しいのはどれか。
a)下大静脈は下行大動脈の左方に位置する。
b)下大静脈の分岐部は下行大動脈の前方(腹側)に位置する。
c)左尿管は下腸間膜動脈の前方(腹側)を走行する。
d)右卵巣静脈は右腎静脈に注ぐ。
e)下腸間膜動脈は下行大動脈の前方(腹側)から発する。

問題093 広汎子宮全摘出術の解剖で正しいのはどれか。
a)膀胱側腔は外腸骨動静脈の内側で基靱帯の足方に位置する。
b)直腸腟靱帯の外側には神経線維は少ない。
c)基靱帯浅層部には神経線維を豊富に含む。
d)膀胱子宮靱帯の前層は神経線維を豊富に含む。
e)直腸側腔は外腸骨動脈の直内側に入って展開する。

問題094 臨床試験について正しいのはどれか。
a)第Ⅰ相試験は前臨床試験である。
b)第Ⅱ相試験は薬剤の至適用量を決定するための試験である。
c)第Ⅲ相試験は薬剤の抗腫瘍効果を評価するための試験である。
d)第Ⅲ相試験は標準的治療法を決定するための試験である。
e)第Ⅲ相試験におけるランダム化は封筒法で行う。

問題095 倫理委員会(IRB)について正しいのはどれか。
(1)IRBは臨床研究の倫理性を審議する。
(2)IRBメンバーは両性で構成されるべきである。
(3)IRBメンバーは医学専門家のみで構成される。
(4)IRBメンバーには一般人を加えない方がよい。
(5)研究施設代表者はIRBの委員長になれない。

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

問題096 臨床試験の実施で正しいのはどれか。
a)承認薬を用いる試験では倫理委員会(IRB)での承認は必要ない。
b)口頭での十分な説明の後、その場で速やかに文書での同意を得る。
c)治療が開始すれば患者の希望によるプロトコール中止はできない。
d)患者の同意、症例登録、治療開始の順番を厳守する。
e)安全性の観点から、治療開始や中止は各医師の裁量で行う。

問題097 臨床試験における同意で正しいのはどれか。
a)臨床試験参加の同意を口頭のみで得た。
b)臨床試験参加の同意文書を家人のみから得た。
c)臨床試験参加の同意文書を本人のみから得た。
d)臨床試験参加登録を行った後に同意を得た。
e)臨床試験参加の同意文書を治療開始後に得た。

問題098 癌化学療法の効果判定基準RECISTで誤っているのはどれか。
a)評価の対象となる病変は測定可能病変のみである。
b)CTやMRIで測定可能病変の最小サイズが定義されている。
c)PRとは病変長径30%以上の縮小が4週間以上のものをいう。
d)PDとは病変長径20%以上の増大をいう。
e)効果を総合的に判断する総合判定基準が設けられている。

問題099 癌化学療法に使用するG-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤で正しいのはどれか。
a)好中球減少Grade 4が確認されたらG-CSF製剤の投与が必須である。
b)好中球数が5,000/mm3を超えたらG-CSF製剤の投与を中止する。
c)G-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤は原則的に抗癌剤と同日投与する。
d)有熱性好中球減少症Grade 3では第3世代抗菌剤の投与が必須である。
e)5-HT3受容体拮抗剤は遅発性嘔吐に著効する。

問題100 抗癌剤の毒性が現れやすい臓器・組織で誤っているのはどれか。
a)ドキソルビシン - 心筋
b)エトポシド - 呼吸器
c)イリノテカン - 消化器
d)パクリタクセル - 神経
e)シクロホスファミド - 卵巣

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解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題091 手術解剖で誤っているのはどれか。
a)仙骨リンパ節は子宮頚癌の所属リンパ節である。
b)子宮底部からのリンパ管は傍大動脈リンパ節に入る。
c)基靱帯の血管部は神経部よりも骨盤底側に存在している。
d)準広汎子宮全摘出術ではリンパ節郭清の有無を問わない。
e)骨盤神経はS2~S4より発する副交感神経である。

解答:c

a)子宮頚癌の所属リンパ節:基靱帯リンパ節、閉鎖リンパ節、外腸骨リンパ節、内腸骨リンパ節、総腸骨リンパ節、仙骨リンパ節

e)下腹神経:T11~L2より発する交感神経。直腸の両側を下降し、仙骨子宮靱帯および直腸腟靱帯の外側を走行し、骨盤神経叢を形成し、さらに膀胱に至り排尿筋を弛緩させる。
 骨盤神経:S2~S4より発する副交感神経。基靱帯の神経部分を構成し、交感神経とともに骨盤神経叢を形成し、排尿筋を収縮させる。

******

問題092 傍大動脈リンパ節郭清の解剖で正しいのはどれか。
a)下大静脈は下行大動脈の左方に位置する。
b)下大静脈の分岐部は下行大動脈の前方(腹側)に位置する。
c)左尿管は下腸間膜動脈の前方(腹側)を走行する。
d)右卵巣静脈は右腎静脈に注ぐ。
e)下腸間膜動脈は下行大動脈の前方(腹側)から発する。

解答:e

a)下大静脈は下行大動脈の右方に位置する。

b)下大静脈の分岐部は下行大動脈の後方(背側)に位置する。

c)左尿管は下腸間膜動脈の後方(背側)を走行する。

d)右卵巣静脈は下大静脈に注ぐ。

******

問題093 広汎子宮全摘出術の解剖で正しいのはどれか。
a)膀胱側腔は外腸骨動静脈の内側で基靱帯の足方に位置する。
b)直腸腟靱帯の外側には神経線維は少ない。
c)基靱帯浅層部には神経線維を豊富に含む。
d)膀胱子宮靱帯の前層は神経線維を豊富に含む。
e)直腸側腔は外腸骨動脈の直内側に入って展開する。

解答:a

e)直腸側腔は、尿管と内腸骨動脈の間隙を確認し、その間を左右に鈍的に開いて展開する。

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問題094 臨床試験について正しいのはどれか。
a)第Ⅰ相試験は前臨床試験である。
b)第Ⅱ相試験は薬剤の至適用量を決定するための試験である。
c)第Ⅲ相試験は薬剤の抗腫瘍効果を評価するための試験である。
d)第Ⅲ相試験は標準的治療法を決定するための試験である。
e)第Ⅲ相試験におけるランダム化は封筒法で行う。

解答:b

臨床試験:治療効果を評価する目的で人を対象に行う科学的実験。

前臨床試験:動物での安全性や有効性を試す実験。

第Ⅰ相試験(臨床薬理試験):健康な成人ボランティア(通常は男性)に対して開発中の薬剤を投与し、その安全性(人体に副作用は無いか)を中心に、薬剤が体にどのように吸収され排泄されていくかといった「薬物動態」を確認する。

第Ⅱ相試験(探索的試験):比較的少数の患者に対して第Ⅰ相試験で安全性が確認された用量の範囲で薬剤が投与される。その安全性、用法(投与の仕方:投与回数、投与期間、投与間隔など)、用量(最も効果的な投与量)を調べる。第Ⅱ相試験で行われる臨床試験としては、単回投与試験→ パイロット試験→ 用量設定試験→ 長期投与試験が行われます。

用量設定試験:第Ⅱ相試験で行われる臨床試験の試験デザインの1つ。承認申請の効能・効果が期待される適応疾患患者を対象として、主に二重盲検法を用いて、低量・中量・高量の2~3種類の用量の被検薬で、時にはプラセボを対照薬に含め、比較試験を行う。この結果から、被検薬の用法・用量・至適用量幅が設定され、第Ⅲ相試験で検証される。

第Ⅲ相試験(検証試験):従来の治療あるいはプラシーボと新しい治療を比較する。多数の患者を対象に、比較試験(二重盲検試験)で、実際の臨床使用における有効性・安全性を確認する。適応疾患における用法・容量を確認する。

第Ⅳ相試験:市販後調査であり、多くの人々に対し長期副作用、長期効果について検討する。

封筒法:予め組み入れられる群が記入された紙の封筒を決められた順番で破っていく方法。

ランダム化の割付を(センターではなく)各施設で行った場合には、質の高い研究とはみなされません。なぜなら、公正な割付がなされないことが経験的にわかっているからです。治療群と無治療群を比較すると仮定すると、通常医師は治療群に割り当てられることを望みます。また2つの治療法の比較の場合には、通常どちらか自分が優れていると思っている治療法に割り当てられることを望みます。特に重要な患者(有力者や親しい人の紹介患者)、自己主張の強い患者では、優れていると信じている方の治療を割り付けたくなります。このため、封筒法では無治療群に割り当てられた場合にもう一枚封筒を破いたり、勝手に治療群に変更したりということが高い確率で発生します。このため、封筒法を採用して、治療群と無治療群に割り付けると、治療群の患者数が無治療群の患者数よりも多くなります。

******

問題095 倫理委員会(IRB)について正しいのはどれか。
(1)IRBは臨床研究の倫理性を審議する。
(2)IRBメンバーは両性で構成されるべきである。
(3)IRBメンバーは医学専門家のみで構成される。
(4)IRBメンバーには一般人を加えない方がよい。
(5)研究施設代表者はIRBの委員長になれない。

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

解答:a

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問題096 臨床試験の実施で正しいのはどれか。
a)承認薬を用いる試験では倫理委員会(IRB)での承認は必要ない。
b)口頭での十分な説明の後、その場で速やかに文書での同意を得る。
c)治療が開始すれば患者の希望によるプロトコール中止はできない。
d)患者の同意、症例登録、治療開始の順番を厳守する。
e)安全性の観点から、治療開始や中止は各医師の裁量で行う。

解答:d

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問題097 臨床試験における同意で正しいのはどれか。
a)臨床試験参加の同意を口頭のみで得た。
b)臨床試験参加の同意文書を家人のみから得た。
c)臨床試験参加の同意文書を本人のみから得た。
d)臨床試験参加登録を行った後に同意を得た。
e)臨床試験参加の同意文書を治療開始後に得た。

解答:c

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問題098 癌化学療法の効果判定基準RECISTで誤っているのはどれか。
a)評価の対象となる病変は測定可能病変のみである。
b)CTやMRIで測定可能病変の最小サイズが定義されている。
c)PRとは病変長径30%以上の縮小が4週間以上のものをいう。
d)PDとは病変長径20%以上の増大をいう。
e)効果を総合的に判断する総合判定基準が設けられている。

解答:a

RECISTガイドラインでは、病変を測定可能な標的病変と腹水や胸水などの非標的病変に分類する。

標的病変の評価(1臓器につき最大5病変、合計10病変までの最長径の和で評価)
完全奏効 CR (complete response):すべての病変の消失が4週間以上。
部分奏効 PR (partial response):ベースライン最長径和と比較して、標的病変の最長径の和が30%以上減少が4週間以上。
進行 PD (progressive disease):治療開始以降に記録された最小の最長径の和と比較して、標的病変の最長径の和が20%以上増加。
安定 SD (stable disease):PRとするには縮小が不十分、かつPDとするには増大が不十分。

非標的病変の評価(測定不要)
完全奏効 CR:すべての非標的病変の消失かつ腫瘍マーカー値の正常化。
不完全奏効/安定 IR/SD (incomplete response/stable disease):1つ以上の非標的病変の残存かつ/または腫瘍マーカーが正常上限値を超える。
進行 PD:既存の非標的病変の明らかな増悪。

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問題099 癌化学療法に使用するG-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤で正しいのはどれか。
a)好中球減少Grade 4が確認されたらG-CSF製剤の投与が必須である。
b)好中球数が5,000/mm3を超えたらG-CSF製剤の投与を中止する。
c)G-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤は原則的に抗癌剤と同日投与する。
d)有熱性好中球減少症Grade 3では第3世代抗菌剤の投与が必須である。
e)5-HT3受容体拮抗剤は遅発性嘔吐に著効する。

解答:b

G-CSF製剤の癌化学療法による好中球減少症に対する適応は好中球数が500/μl(白血球数1000/μl)未満の時である。好中球数が5000/μl(白血球数10000/μl)以上で投与中止と規定されている。

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問題100 抗癌剤の毒性が現れやすい臓器・組織で誤っているのはどれか。
a)ドキソルビシン - 心筋
b)エトポシド - 呼吸器
c)イリノテカン - 消化器
d)パクリタクセル - 神経
e)シクロホスファミド - 卵巣

解答:b


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題081~問題090

2007年11月24日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題081~問題090】

問題081 家族性卵巣がんに関与する遺伝子はどれか。
a)p53
b)K-ras
c)PTEN
d)BRCA2
e)HER2/neu

問題082 家族性癌で誤っているのはどれか。
a)家族性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)では子宮体癌を併発する。
b)家族性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)はDNA修復遺伝子に異常がある。
c)BRCA1遺伝子は家族性卵巣癌の原因遺伝子である。
d)家族性卵巣癌の組織型では漿液性腺癌が多い。
e)p53遺伝子変異が検出された女性に予防的卵巣摘出術が行われる。

問題083 放射線感受性が高い腫瘍はどれか。
a)妊娠性絨毛癌
b)子宮頸部腺癌
c)子宮平滑筋肉腫
d)外陰悪性黒色腫
e)卵巣未分化胚細胞腫

問題084 放射線による細胞死の主な標的はどれか。
a)細胞膜
b)ミトコンドリア
c)核小体
d)核内DNA
e)核内RNA

問題085 子宮頚癌の腔内照射で用いられるA点の定義はどれか(いずれも前額面)。
a)体軸正中線で外子宮口から上方2cmの点
b)体軸正中線で外子宮口から上方2cmの高さを通る垂直線の側方2cmの点
c)体軸正中線で外子宮口から上方2cmの高さを通る垂直線の側方5cmの点
d)子宮腔長軸で外子宮口から上方2cmの点
e)子宮腔長軸で外子宮口から上方2cmの高さを通る垂直線の側方2cmの点

問題086 子宮頚癌に対する化学療法同時併用放射線療法で選択すべき薬剤はどれか。
a)シスプラチン
b)アドリアマイシン
c)シクロホスファミド
d)メソトレキセート
e)塩酸イリノテカン

問題087 放射線腸炎で誤っているのはどれか。
a)大腸より小腸が傷害されやすい。
b)早期障害の症状として下痢や血便がある。
c)晩発性障害として腸閉塞や瘻孔形成がある。
d)蛋白漏出性腸炎の原因となる。
e)副腎皮質ステロイド薬が著効する。

問題088 子宮頚癌放射線治療の合併症・後遺症に関連性が低いのはどれか。
a)下血
b)血尿
c)下肢浮腫
d)皮膚障害
e)肝機能障害

問題089 放射線晩期合併症をきたすため照射時に遮蔽を要する臓器はどれか。
a)腎臓
b)骨盤骨
c)腸骨動脈
d)直腸
e)膀胱

問題090 Surgical stagingで傍大動脈リンパ節郭清(生検)が必要なのはどれか。
a)絨毛癌
b)子宮体癌
c)腟癌
d)子宮頚癌
e)外陰癌 

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解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題081 家族性卵巣がんに関与する遺伝子はどれか。
a)p53
b)K-ras
c)PTEN
d)BRCA2
e)HER2/neu

解答:d

家族性乳癌・卵巣癌症候群:BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子(癌抑制遺伝子)の異常が、乳癌、卵巣癌の家族性発症に関与する。

******

問題082 家族性癌で誤っているのはどれか。
a)家族性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)では子宮体癌を併発する。
b)家族性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)はDNA修復遺伝子に異常がある。
c)BRCA1遺伝子は家族性卵巣癌の原因遺伝子である。
d)家族性卵巣癌の組織型では漿液性腺癌が多い。
e)p53遺伝子変異が検出された女性に予防的卵巣摘出術が行われる。

解答:e

家族性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC):DNAミスマッチ修復遺伝子の変異が原因で、大腸癌、子宮体癌を始めとして多くの癌が家族性に発生する症候群。常染色体優性遺伝形式。HNPCCに関与する遺伝子:MLH1、MSH2、MSH6、MLH3、PMS2。

BRCA1変異陽性の卵巣癌の組織型は漿液性腺癌が大部分を占め、予後が良好であるといった報告もみられる。

******

問題083 放射線感受性が高い腫瘍はどれか。
a)妊娠性絨毛癌
b)子宮頸部腺癌
c)子宮平滑筋肉腫
d)外陰悪性黒色腫
e)卵巣未分化胚細胞腫

解答:e

******

問題084 放射線による細胞死の主な標的はどれか。
a)細胞膜
b)ミトコンドリア
c)核小体
d)核内DNA
e)核内RNA

解答:d

放射線は、細胞の核内に存在するDNAを障害する。

******

問題085 子宮頚癌の腔内照射で用いられるA点の定義はどれか(いずれも前額面)。
a)体軸正中線で外子宮口から上方2cmの点
b)体軸正中線で外子宮口から上方2cmの高さを通る垂直線の側方2cmの点
c)体軸正中線で外子宮口から上方2cmの高さを通る垂直線の側方5cmの点
d)子宮腔長軸で外子宮口から上方2cmの点
e)子宮腔長軸で外子宮口から上方2cmの高さを通る垂直線の側方2cmの点

解答:e

A 点の定義:外子宮口を基準として、前額面上、子宮腔長軸に沿って上方2cmの高さを通る垂線上で、側方に左右それぞれ2cmの点とし、腔内照射の病巣線量の基準点に用いる。A 点線量は原発巣の治療量、膀胱・直腸の障害量の指標となる。 A 点線量は左右2つあるが、左右差があるときは少ない方の線量を用いる。

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問題086 子宮頚癌に対する化学療法同時併用放射線療法で選択すべき薬剤はどれか。
a)シスプラチン
b)アドリアマイシン
c)シクロホスファミド
d)メソトレキセート
e)塩酸イリノテカン

解答:a

CDDP を用いたCCR によって、放射線単独療法群やCDDP以外の薬剤併用群より有意に高い生存率が得られたとの報告がある。米国では、NCIが,CDDP 併用によるCCR を推奨する勧告を出しており、今後、本邦においても、進行頸癌、あるいは再発頸癌の治療において、CDDPを併用したCCR が主流になると思われる。

******

問題087 放射線腸炎で誤っているのはどれか。
a)大腸より小腸が傷害されやすい。
b)早期障害の症状として下痢や血便がある。
c)晩発性障害として腸閉塞や瘻孔形成がある。
d)蛋白漏出性腸炎の原因となる。
e)副腎皮質ステロイド薬が著効する。

解答:e

******

問題088 子宮頚癌放射線治療の合併症・後遺症に関連性が低いのはどれか。
a)下血
b)血尿
c)下肢浮腫
d)皮膚障害
e)肝機能障害

解答:e

******

問題089 放射線晩期合併症をきたすため照射時に遮蔽を要する臓器はどれか。
a)腎臓
b)骨盤骨
c)腸骨動脈
d)直腸
e)膀胱

解答:d

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問題090 Surgical stagingで傍大動脈リンパ節郭清(生検)が必要なのはどれか。
a)絨毛癌
b)子宮体癌
c)腟癌
d)子宮頚癌
e)外陰癌

解答:b 


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題071~問題080

2007年11月20日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題071~問題080】

問題071 TJ療法(パクリタキセル+カルボプラチン)3週間毎投与で正しいのはどれか。
a)薬剤投与順序はカルボプラチンが先でパクリタキセルが後である。
b)パクリタキセルの投与量は17.5 mg/m2静注、day 1(3時間投与)である。
c)カルボプラチンの投与量はAUC=1-2静注、day 1(1-2時間投与)である。
d)Calvertによるカルボプラチン投与量は目標AUCx(GFR+25)で計算できる。
e)カルボプラチン投与による急性過敏性反応は初回治療後に最も多い。

問題072 卵巣癌の化学療法で誤っているのはどれか。
a)パクリタキセルは24時間投与に比し3時間投与で神経毒性が高度である。
b)化学療法をスケジュールどおりに遂行するためG-CSFを投与する。
c)進行癌に対する維持化学(地固め)療法の生存期間延長効果は未知である。
d)進行した境界悪性腫瘍における補助化学療法の有用性は証明されていない。
e)初回療法から6ヶ月以上の再発では同じ化学療法が奏効する可能性が高い。

問題073 卵巣悪性胚細胞腫瘍に対する第一選択の化学療法はどれか。
a)シスプラチン/ドキソルビシン/シクロホスファミド
b)パクリタキセル/カルボプラチン
c)イリノテカン/シスプラチン
d)ブレオマイシン/エトポシド/シスプラチン
e)フルオロウラシル/シスプラチン

問題074 卵管癌で誤っているのはどれか。
a)卵管溜水症の形態を示すことがある。
b)卵巣癌に準じた腫瘍減量手術を行う。
c)寛解導入化学療法にTJ療法を用いる。
d)術後治療の第一選択は放射線療法である。
e)CA125が腫瘍マーカーとして有用である。

問題075 原発性腹膜腺癌で正しいのはどれか。
a)組織型として類内膜腺癌が多い。
b)術前化学療法の有用性が証明されている。
c)化学療法は白金製剤を中心にして行われる。
d)生存期間は進行卵巣癌に比べて著しく短い。
e)術後治療としてホルモン療法も有用である。

問題076 わが国で最も発生頻度が低い癌はどれか。
a)外陰癌
b)腟癌
c)子宮頸癌
d)子宮体癌
e)卵巣癌

問題077 ヒトパピローマウイルス(HPV)と関係が深い癌抑制遺伝子はどれか。
(1)p53
(2)BRCA1
(3)FHIT
(4)NF1
(5)Rb

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

問題078 子宮頸部悪性腺腫と関連が深いのはどれか。
a)遺伝性非ポリポーシス大腸癌 (hereditary nonpolyposis colorevtal cancer)
b)家族性大腸ポリポーシス (familial adenomatous polyposis coli)
c)リ・フラウメニ症候群 (Li-Fraumeni syndrome)
d)カウデン病 (Cowden syndrome)
e)ポイツ・イエーガー症候群 (Peutz-Jeghers syndrome)

問題079 タイプⅠ子宮体癌の遺伝子異常で頻度が高いのはどれか。
(1)microsatellite instability (MI)
(2)K-ras
(3)PTEN
(4)p53
(5)BRCA1

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題080 子宮体部の漿液性腺癌で高頻度に変異がみられる遺伝子はどれか。
a)PTEN
b)K-ras
c)BRCA1
d)p53
e)MLH1

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解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題071 TJ療法(パクリタキセル+カルボプラチン)3週間毎投与で正しいのはどれか。
a)薬剤投与順序はカルボプラチンが先でパクリタキセルが後である。
b)パクリタキセルの投与量は17.5 mg/m2静注、day 1(3時間投与)である。
c)カルボプラチンの投与量はAUC=1-2静注、day 1(1-2時間投与)である。
d)Calvertによるカルボプラチン投与量は目標AUCx(GFR+25)で計算できる。
e)カルボプラチン投与による急性過敏性反応は初回治療後に最も多い。

解答:d

a)パクリタキセル→カルボプラチンの順で投与する。

b)パクリタキセルの投与量:60~80mg/m2静注、day 1、8、15

c)カルボプラチンの投与量:AUC 6、day 1、3週間隔で投与
 またはAUC 2、day 1、8、15、4週間隔で投与

d)Calvertによるカルボプラチン投与量=目標AUCx(GFR+25)

e)カルボプラチン投与による急性過敏性反応は初回や2~3回目の治療では発症することは稀でカルボプラチン投与の半ばで発症することが多い。

******

問題072 卵巣癌の化学療法で誤っているのはどれか。
a)パクリタキセルは24時間投与に比し3時間投与で神経毒性が高度である。
b)化学療法をスケジュールどおりに遂行するためG-CSFを投与する。
c)進行癌に対する維持化学(地固め)療法の生存期間延長効果は未知である。
d)進行した境界悪性腫瘍における補助化学療法の有用性は証明されていない。
e)初回療法から6ヶ月以上の再発では同じ化学療法が奏効する可能性が高い。

解答:b

一次予防を目的としたCSF投与は原則的には推奨されない。重度の好中球減少症発症のリスクが20%以上見込まれるようなハイリスク症例には一次予防投与を考慮する。二次予防(化学療法2サイクル目でのCSFの使用)としてのCSF投与もルーチンには推奨されない。CSFを投与して化学療法のスケジュールをこなしても生存期間は改善しない。

******

問題073 卵巣悪性胚細胞腫瘍に対する第一選択の化学療法はどれか。
a)シスプラチン/ドキソルビシン/シクロホスファミド
b)パクリタキセル/カルボプラチン
c)イリノテカン/シスプラチン
d)ブレオマイシン/エトポシド/シスプラチン
e)フルオロウラシル/シスプラチン

解答:d

卵巣悪性胚細胞腫瘍では、BEP療法(ブレオマイシン/エトポシド/シスプラチン)が標準的治療である。

******

問題074 卵管癌で誤っているのはどれか。
a)卵管溜水症の形態を示すことがある。
b)卵巣癌に準じた腫瘍減量手術を行う。
c)寛解導入化学療法にTJ療法を用いる。
d)術後治療の第一選択は放射線療法である。
e)CA125が腫瘍マーカーとして有用である。

解答:d

卵管癌の治療方針は卵巣癌と同様であり、手術療法と化学療法を組み合わせる。両側付属器切除術、単純子宮全摘術、大網切除術、および骨盤内および傍大動脈リンパ節郭清術を行い、腹腔内播種性病変も可能な限り切除する。また卵管から直接浸潤した隣接臓器を合併切除することは予後改善における意義が大きい。術後化学療法として、これまでのCAP(cyclophosphamide+adriamycin+cisplatin)療法が行われ有効性が報告されてきたが、最近のTJ(paclitaxel+calboplatin)療法も有効である。

******

問題075 原発性腹膜腺癌で正しいのはどれか。
a)組織型として類内膜腺癌が多い。
b)術前化学療法の有用性が証明されている。
c)化学療法は白金製剤を中心にして行われる。
d)生存期間は進行卵巣癌に比べて著しく短い。
e)術後治療としてホルモン療法も有用である。

解答:c

a)組織学的に卵巣漿液性癌と区別できない腫瘍が腹膜表面にびまん性に認められるが、卵巣は正常ないしごく表層のみに認められる。

c)治療は卵巣癌に準じて行われる。

d)予後は卵巣癌よりも悪く、一時的軽快は見られても再発は必発であり、平均生存期間は14.7ヵ月とされている。

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問題076 わが国で最も発生頻度が低い癌はどれか。
a)外陰癌
b)腟癌
c)子宮頸癌
d)子宮体癌
e)卵巣癌

解答:b

外陰癌:全女性性器癌の約4%

腟癌:全女性性器癌の約1~2%

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問題077 ヒトパピローマウイルス(HPV)と関係が深い癌抑制遺伝子はどれか。
(1)p53
(2)BRCA1
(3)FHIT
(4)NF1
(5)Rb

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

解答:b

HPVのもつ2つの癌原遺伝子、E6遺伝子とE7遺伝子が発癌に関与している。E6蛋白質とE7蛋白質はHPVが産生する蛋白質で、宿主細胞の癌抑制遺伝子産物であるp53蛋白質、Rb蛋白質と結合し、その機能を抑制する。

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問題078 子宮頸部悪性腺腫と関連が深いのはどれか。
a)遺伝性非ポリポーシス大腸癌 (hereditary nonpolyposis colorevtal cancer)
b)家族性大腸ポリポーシス (familial adenomatous polyposis coli)
c)リ・フラウメニ症候群 (Li-Fraumeni syndrome)
d)カウデン病 (Cowden syndrome)
e)ポイツ・イエーガー症候群 (Peutz-Jeghers syndrome)

解答:e

子宮頸部悪性腺腫(adenoma malignum)は、ポイツ・イエーガー症候群 PJS(Peutz-Jeghers syndrome:STK11遺伝子の欠失)と高い頻度の合併がある。

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問題079 タイプⅠ子宮体癌の遺伝子異常で頻度が高いのはどれか。
(1)microsatellite instability (MI)
(2)K-ras
(3)PTEN
(4)p53
(5)BRCA1

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:a

タイプⅠ子宮体癌(類内膜腺癌)は、過剰のエストロゲンの支持を受けた一連の増殖性病変を経て発生し、子宮体癌の3/4を占める。タイプⅠ子宮体癌では、microsatellite instability (MI)、K-ras変異、PTEN変異が高率で見られる。MIは、類内膜腺癌なかでも低分化腺癌に多く、漿液性腺癌ではまれである。

癌組織では正常組織にはみられない塩基の繰り返し配列数の異常が検出されることがあり、これをmicrosatellite instability (MI)という。MIは、DNAミスマッチ修復異常によりDNA複製時のエラーの頻度が上昇していることを反映している。

******

問題080 子宮体部の漿液性腺癌で高頻度に変異がみられる遺伝子はどれか。
a)PTEN
b)K-ras
c)BRCA1
d)p53
e)MLH1

解答:d

子宮体部の漿液性腺癌や低分化型腺癌では、p53変異が高率に見られる。明細胞癌に関しては特異的な遺伝子異常はこれまで報告されていない。


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題061~問題070

2007年11月12日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題061~問題070】

問題061 卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化で正しいのはどれか。
a)頻度は約10%である。
b)閉経後の患者に多い。
c)腫瘍径の小さいものが多い。
d)両側性発生例が多い。
e)組織型は明細胞腺癌が多い。

問題062 若年者の卵巣悪性胚細胞性腫瘍で正しいのはどれか。
a)原則として妊孕性温存手術を考慮する。
b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が低い。
c)未熟奇形腫では血性LDH高値を示す。
d)絨毛癌の予後は良好である。
e)治療後の問題点は妊孕能のみである。

問題063 転移性卵巣癌で正しいのはどれか。
a)悪性卵巣腫瘍の約40%を占める。
b)20歳代の若年女性に頻度が高い。
c)ほとんどが片側性発生である。
d)原発性では肺癌が最も多い。
e)胃癌の転移は印環細胞癌が多い。

問題064 卵巣癌の進行期分類(FIGO 1988、取り扱い規約1992)で正しいのはどれか。
a)一側の卵巣に限局する被膜浸潤を認める場合はⅠb期である。
b)骨盤腹膜に顕微鏡的な播種を認める場合はⅢb期である。
c)直径2cmをこえる腹腔内播種を認める場合はⅢc期である。
d)肝実質転移は組織学的に確認された場合にのみⅣ期とする。
e)大量胸水の存在は悪性細胞の有無にかかわらずⅣ期とする。

問題065 卵巣癌の進行期分類(FIGO 1988、取り扱い規約1992)でⅣ期はどれか。
a)膀胱漿膜浸潤
b)肝表面の播種
c)鼠径リンパ節転移
d)縦隔リンパ節転移
e)胸水貯留で細胞診陰性

問題066 卵巣癌の妊孕性温存手術で誤っているのはどれか。
a)基本術式は患側付属器摘出術と大網切除術である。
b)開腹所見がⅠa期と思われても腹腔細胞診を採取する。
c)進行期Ⅰa期を対象とし、病理組織所見は問わない。
d)後腹膜リンパ節の評価は触診、視診、必要に応じ生検で行う。
e)対側卵巣の生検は肉眼的に異常所見が認められた場合に行う。

問題067 卵巣癌の手術用語(卵巣がん治療ガイドライン、2004)で正しいのはどれか。
a)基本術式とは患側付属器摘出術、子宮摘出術、大網切除術をいう。
b)staging laparotomyとは進行期の確定に必要な手技を含む手術をいう。
c)試験開腹とは原発腫瘍の摘出が困難なため何もしないで閉腹する手術をいう。
d)cytoreductive surgeryとは腫瘍減量のために腸管切除を伴う手術をいう。
e)second look operationとは初回手術の6か月後に行う再開腹手術をいう。

問題068 卵巣癌の治療で誤っているのはどれか。
a)Ⅰa期で組織学的分化度grade 1の症例では術後化学療法は省略できる。
b)進行癌におけるprimary cytoreductive surgeryの意義は確立されている。
c)進行癌の術後化学療法には標準治療としてTJ療法が行なわれる。
d)進行癌におけるsecond look operationは予後改善効果がある。
e)interval debulking surgeryがoptimalであれば予後改善が期待できる。

問題069 卵巣癌の治療で誤っているのはどれか。
a)術前化学療法によりinterval debulking surgeryで腫瘍摘出率が向上する。
b)早期卵巣癌に対する維持(地固め)化学療法の有用性は示されていない。
c)腹腔内化学療法は抗がん剤静脈内投与にとって代わる標準療法ではない。
d)造血幹細胞移植併用の超大量化学療法で生存期間延長の報告がある。
e)化学療法後の再発例では放射線療法も選択肢の一つとなる。

問題070 再発卵巣癌の治療で正しいのはどれか。
a)手術療法は適応とならない。
b)初回化学療法後6か月以内の再発は薬剤抵抗性の可能性が高い。
c)初回化学療法後6か月以降の再発には薬剤の変更が必要である。
d)シスプラチン耐性例にはカルボプラチンが第1選択となる。
e)化学療法では単剤よりも多剤併用療法が有効である。

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解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題061 卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化で正しいのはどれか。
a)頻度は約10%である。
b)閉経後の患者に多い。
c)腫瘍径の小さいものが多い。
d)両側性発生例が多い。
e)組織型は明細胞腺癌が多い。

解答:b

a)成熟嚢胞性奇形腫の悪性化は約2%の頻度である。

b)閉経後女性に発生することが多い。

c)腫瘍径の大きいものが多い。腫瘍の急速な増大を示す場合がある。

d)すべてが片側発生である。

e)80%は扁平上皮癌である。

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問題062 若年者の卵巣悪性胚細胞性腫瘍で正しいのはどれか。
a)原則として妊孕性温存手術を考慮する。
b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が低い。
c)未熟奇形腫では血性LDH高値を示す。
d)絨毛癌の予後は良好である。
e)治療後の問題点は妊孕能のみである。

解答:a

b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が高い。

******

問題063 転移性卵巣癌で正しいのはどれか。
a)悪性卵巣腫瘍の約40%を占める。
b)20歳代の若年女性に頻度が高い。
c)ほとんどが片側性発生である。
d)原発性では肺癌が最も多い。
e)胃癌の転移は印環細胞癌が多い。

解答:e

a)癌患者の剖検時に発見される卵巣転移率は肉眼的には6%で、顕微鏡的には12%に達する。

c)両側性は65%~75%である。

d)卵巣転移の原発巣は、消化管、乳腺、女性性器の癌が90%以上を占める。

e)印環細胞癌(signet ring cell carcinoma、粘液産生性の腺癌細胞が印環細胞を作り、粘液を細胞内に貯留しながら、びまん性に浸潤するもの): 原発巣の大多数は胃癌で、極めてまれに大腸癌や乳癌がある。

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問題064 卵巣癌の進行期分類(FIGO 1988、取り扱い規約1992)で正しいのはどれか。
a)一側の卵巣に限局する被膜浸潤を認める場合はⅠb期である。
b)骨盤腹膜に顕微鏡的な播種を認める場合はⅢb期である。
c)直径2cmをこえる腹腔内播種を認める場合はⅢc期である。
d)肝実質転移は組織学的に確認された場合にのみⅣ期とする。
e)大量胸水の存在は悪性細胞の有無にかかわらずⅣ期とする。

解答:c

a)Ⅰc期: 腫瘍は一側または両側の卵巣に限局するが、被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり、腹水または洗浄の細胞診にて悪性細胞の認められるもの。

b)Ⅲa期: リンパ節転移陰性で腫瘍は肉眼的には小骨盤に限局しているが、腹膜表面に顕微鏡的播種を認めるもの。

c)Ⅲc期: 直径2cmをこえる腹腔内播種ならびに/あるいは後腹膜または鼠径リンパ節に転移の認められるもの。

d)肝実質転移は組織学的(細胞学的)に証明されることが望ましいが、画像診断で転移と診断されたものもⅣ期とする。

e)胸水の存在によりⅣ期とする場合には、胸水中に悪性細胞を認めなければならない。

******

問題065 卵巣癌の進行期分類(FIGO 1988、取り扱い規約1992)でⅣ期はどれか。
a)膀胱漿膜浸潤
b)肝表面の播種
c)鼠径リンパ節転移
d)縦隔リンパ節転移
e)胸水貯留で細胞診陰性

解答:d

Ⅲ期: 腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し、さらに骨盤外の腹膜播種ならびに/あるいは後腹膜、または鼠径部のリンパ節転移を認めるもの。また腫瘍は小骨盤に限局しているが小腸や大網に組織学的転移を認めるものや、肝表面への転移の認められたものもⅢ期とする。
 Ⅲa: リンパ節転移陰性で腫瘍は肉眼的には小骨盤に限局しているが、腹膜表面に顕微鏡的播種を認めるもの。
 Ⅲb: リンパ節転移陰性で、組織学的に確認された直径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの。
 Ⅲc: 直径2cmをこえる腹腔内播種ならびに/あるいは後腹膜または鼠径リンパ節に転移の認められるもの。
【注1】 腹腔内病変の大きさは最大のものの径で示す。すなわち、2cm以下のものが多数認められてもⅢbとする。
【注2】 リンパ節郭清が行われなかった場合、触診その他できうるかぎりの検索で知りえた範囲で転移の有無を判断し進行期を決定する。

Ⅳ期: 腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し、遠隔転移を伴うもの
 胸水の存在によりⅣ期とする場合には、胸水中に悪性細胞を認めなければならない。また肝実質への転移はⅣ期とする。
【注】 肝実質転移は組織学的(細胞学的)に証明されることが望ましいが、画像診断で転移と診断されたものもⅣ期とする。

******

問題066 卵巣癌の妊孕性温存手術で誤っているのはどれか。
a)基本術式は患側付属器摘出術と大網切除術である。
b)開腹所見がⅠa期と思われても腹腔細胞診を採取する。
c)進行期Ⅰa期を対象とし、病理組織所見は問わない。
d)後腹膜リンパ節の評価は触診、視診、必要に応じ生検で行う。
e)対側卵巣の生検は肉眼的に異常所見が認められた場合に行う。

解答:c

妊孕性温存手術を行うことのできる臨床病理学的な必要条件: Ⅰa期で高分化型または境界悪性腫瘍であること。明細胞癌は除かれる。

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問題067 卵巣癌の手術用語(卵巣がん治療ガイドライン、2004)で正しいのはどれか。
a)基本術式とは患側付属器摘出術、子宮摘出術、大網切除術をいう。
b)staging laparotomyとは進行期の確定に必要な手技を含む手術をいう。
c)試験開腹とは原発腫瘍の摘出が困難なため何もしないで閉腹する手術をいう。
d)cytoreductive surgeryとは腫瘍減量のために腸管切除を伴う手術をいう。
e)second look operationとは初回手術の6か月後に行う再開腹手術をいう。

解答:b

a)基本術式: 両側付属器切除術・子宮摘出術・大網切除術

b)staging laparotomy: 進行期の確定に必要な手技を含む手術

c)exploratory laparotomy(試験開腹術): 原発腫瘍の摘出が困難で生検と最小限の進行期確認にとどめる手術

d)debulking (cytoreductive) surgery(腫瘍減量手術): 病巣の完全摘出または可及的に最大限の腫瘍減量に必要な手技を含む手術

e)second look operation (SLO): 初回手術後の臨床的寛解例に対する化学療法の効果判定を目的として行われる手術。その際発見された再発腫瘍を切除するものはSLO/SDSと表現。(SDS=secondary debulking surgery)

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問題068 卵巣癌の治療で誤っているのはどれか。
a)Ⅰa期で組織学的分化度grade 1の症例では術後化学療法は省略できる。
b)進行癌におけるprimary cytoreductive surgeryの意義は確立されている。
c)進行癌の術後化学療法には標準治療としてTJ療法が行なわれる。
d)進行癌におけるsecond look operationは予後改善効果がある。
e)interval debulking surgeryがoptimalであれば予後改善が期待できる。

解答:d

d)SLOは治療後の病変の有無を最も正確に評価できる方法であるが、その治療的意義に関する科学的根拠に乏しく、現時点では臨床試験以外には適応されない。

******

問題069 卵巣癌の治療で誤っているのはどれか。
a)術前化学療法によりinterval debulking surgeryで腫瘍摘出率が向上する。
b)早期卵巣癌に対する維持(地固め)化学療法の有用性は示されていない。
c)腹腔内化学療法は抗がん剤静脈内投与にとって代わる標準療法ではない。
d)造血幹細胞移植併用の超大量化学療法で生存期間延長の報告がある。
e)化学療法後の再発例では放射線療法も選択肢の一つとなる。

解答:d

造血幹細胞移植を併用することで通常投与量の5~10倍まで増量が可能とする大量化学療法は、いずれも治療成績を向上できるとする報告はなく、推奨されない。

******

問題070 再発卵巣癌の治療で正しいのはどれか。
a)手術療法は適応とならない。
b)初回化学療法後6か月以内の再発は薬剤抵抗性の可能性が高い。
c)初回化学療法後6か月以降の再発には薬剤の変更が必要である。
d)シスプラチン耐性例にはカルボプラチンが第1選択となる。
e)化学療法では単剤よりも多剤併用療法が有効である。

解答:b

再発卵巣癌に対する化学療法の奏功期間は初回化学療法の奏功期間を超えることはなく、化学療法の限界も認識すべきである。一般的には再発までの期間が長いほど2次化学療法の奏功率は高い。一般的に初回化学療法後6か月以内の再発は初回化学療法に抵抗性ありと判断され、6か月以降の再発には抵抗性なしと判断されるため、初回と同じ抗癌剤が推奨される。


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題051~問題060

2007年11月10日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題051~問題060】

問題051 卵巣腫瘍の組織分類で正しい組合わせはどれか。
a)ブレンナー腫瘍 - 表層上皮性・間質性腫瘍
b)未分化胚細胞腫 - 表層上皮性・間質性腫瘍
c)漿液性嚢胞腺腫 - 性索間質性腫瘍
d)顆粒膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍
e)莢膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍

問題052 卵巣腫瘍組織分類で胚細胞腫瘍でないのはどれか。
a)卵黄嚢腫瘍
b)ステロイド細胞腫瘍
c)未熟奇形腫
d)卵巣甲状腺腫
e)カルチノイド

問題053 卵巣腫瘍の組織学的特徴で誤っているのはどれか。
a)顆粒膜細胞腫 - Call-Exner body
b)未分化胚細胞腫 - Schiller-Duval body
c)明細胞癌 - hobnail cell
d)Krukenberg腫瘍 - signet-ring cell
e)Brenner腫瘍 - coffee-bean nuclei

問題054 卵巣腫瘍で誤っているのはどれか。
a)漿液性腺癌はpsammoma bodyをしばしば伴う。
b)わが国では明細胞腺癌の発生頻度が欧米に比し高い。
c)移行上皮癌はブレンナー腫瘍成分を認めないものをいう。
d)良性胚細胞腫瘍の大部分は卵巣甲状腺腫である。
e)未熟奇形腫では未熟神経組織の量が予後と相関する。

問題055 卵巣腫瘍と腫瘍マーカーの組み合わせで誤っているのはどれか。
a)漿液性嚢胞腺癌 - CA125
b)粘液性嚢胞腺癌 - CA19-9
c)顆粒膜細胞腫 - エストロゲン
d)卵黄嚢腫瘍 - AFP
e)Krukenberg腫瘍 - SCC

問題056 卵巣腫瘍のMRI検査でT1強調像、T2強調像ともに低信号を呈するのはどれか。
a)漿液性嚢胞腺癌
b)粘液性嚢胞腺癌
c)線維腫
d)成熟嚢胞性奇形腫
e)子宮内膜症性嚢胞

問題057 卵巣がんで誤っているのはどれか(卵巣がん治療ガイドライン)
a)わが国における罹患数は毎年約6,000人である。
b)わが国では1995年には3,892人が死亡した。
c)Ⅰ期の5年生存率は90%を越える(1998~1994年、FIGO)。
d)Ⅱ期の5年生存率は約70%である(1998~1994年、FIGO)。
e)Ⅲ期の5年生存率は約50%である(1998~1994年、FIGO)。

問題058 卵巣癌で正しいのはどれか。
a)漿液性腺癌の多くは境界型悪性腫瘍を経て発生する。
b)粘液性腺癌では境界悪性腫瘍病変の合併は稀である。
c)類内膜腺癌の多くは内膜増殖症を経て発生する。
d)類内腺腺癌が子宮と卵巣にあれば原発巣は子宮である。
e)明細胞腺癌では子宮内膜症の合併が高頻度にみられる。

問題059 卵巣明細胞腺癌で正しいのはどれか。
a)20歳代の若年女性に好発する。
b)上皮性卵巣癌で最も頻度が高い。
c)進行期ではⅠ期癌が最も多い。
d)hobnail patternは予後不良である
e)プラチナ製剤が奏功する。

問題060 卵巣腫瘍と腹膜偽粘液腫で正しいのはどれか。
a)多量の血性腹水が貯留した状態である。
b)漿液性境界悪性腫瘍でしばしば認められる。
c)粘液性嚢胞腺癌に合併することはない。
d)手術では虫垂切除も行なう必要がある。
e)術後のTJ化学療法が奏功する。

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解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題051 卵巣腫瘍の組織分類で正しい組合わせはどれか。
a)ブレンナー腫瘍 - 表層上皮性・間質性腫瘍
b)未分化胚細胞腫 - 表層上皮性・間質性腫瘍
c)漿液性嚢胞腺腫 - 性索間質性腫瘍
d)顆粒膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍
e)莢膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍

解答:a

a)ブレンナー腫瘍: 表層上皮性・間質性腫瘍。特異な上皮構造(移行上皮型の充実巣)と間質の増殖を伴い、大部分が良性である。上皮細胞の核はしばしば縦溝を呈し、コーヒー豆様(coffee-bean nuclei)と表現。境界悪性腫瘍は増殖性ブレンナー腫瘍悪性腫瘍は悪性ブレンナー腫瘍と呼ばれる。

b)未分化胚細胞腫: 胚細胞腫瘍。原始生殖細胞に類似した比較的大型の細胞とそれを取り巻くような小形の円形細胞から構成される2相性の腫瘍、若年者に好発、両側性が多い。

c)漿液性嚢胞腺腫: 表層上皮性・間質性腫瘍。卵巣表層上皮が卵管上皮への分化を示す良性腫瘍。卵管と同様に線毛細胞が観察される。単房性の嚢胞性腫瘤であることが多く、内壁も卵管壁に似てしばしば乳頭状構造を呈する。

d)顆粒膜細胞腫: 性索間質性腫瘍。顆粒膜細胞に類似した細胞が主体の境界悪性型腫瘍。しばしばエストロゲンを産生する。

e)莢膜細胞腫: 性索間質性腫瘍。莢膜細胞に類似した細胞が主体の良性腫瘍。エストロゲンを産生する。

******

問題052 卵巣腫瘍組織分類で胚細胞腫瘍でないのはどれか。
a)卵黄嚢腫瘍
b)ステロイド細胞腫瘍
c)未熟奇形腫
d)卵巣甲状腺腫
e)カルチノイド

解答:b

b)性索間質性腫瘍。ステロイドホルモン産生腫瘍。ライディク細胞、黄体化細胞ないし副腎皮質細胞類似の細胞からなる腫瘍。ライディク細胞腫(良性)、間質性黄体腫(良性)、分類不能型(境界悪性)に分類。

******

問題053 卵巣腫瘍の組織学的特徴で誤っているのはどれか。
a)顆粒膜細胞腫 - Call-Exner body
b)未分化胚細胞腫 - Schiller-Duval body
c)明細胞癌 - hobnail cell
d)Krukenberg腫瘍 - signet-ring cell
e)Brenner腫瘍 - coffee-bean nuclei

解答:b

b)卵黄嚢腫瘍:特徴ある多彩な組織像を呈する腫瘍で、種々の組織像が混在し、移行もみられる。免疫組織化学的にAFPが証明される。主として次の4 組織像からなる。
 ①内胚葉洞型:最も高頻度で、網目状、Schilller-Duval body(腫瘍細胞が血管周囲に配列),hyaline globules(好酸性球状の硝子様小球)などがみられる。
 ②多嚢胞性卵黄型:卵黄嚢に類似した多数の嚢胞からなり、一層の扁平な中皮様細胞に被覆。
 ③類肝細胞型:未熟肝細胞あるいは肝細胞癌に類似する腫瘍細胞が索状に配列。
 ④腺型:立方形の腫瘍細胞が管状、胞巣状あるいは原腸状配列を示す。

******

問題054 卵巣腫瘍で誤っているのはどれか。
a)漿液性腺癌はpsammoma bodyをしばしば伴う。
b)わが国では明細胞腺癌の発生頻度が欧米に比し高い。
c)移行上皮癌はブレンナー腫瘍成分を認めないものをいう。
d)良性胚細胞腫瘍の大部分は卵巣甲状腺腫である。
e)未熟奇形腫では未熟神経組織の量が予後と相関する。

解答:d

c)悪性ブレンナー腫瘍と移行上皮癌との区別は、良性のブレンナー構造を混在すれば前者であり、無ければ後者とWHO/日産婦は分類している。

d)胚細胞性腫瘍の90%以上が成熟奇形腫である。

******

問題055 卵巣腫瘍と腫瘍マーカーの組み合わせで誤っているのはどれか。
a)漿液性嚢胞腺癌 - CA125
b)粘液性嚢胞腺癌 - CA19-9
c)顆粒膜細胞腫 - エストロゲン
d)卵黄嚢腫瘍 - AFP
e)Krukenberg腫瘍 - SCC

解答:e

******

問題056 卵巣腫瘍のMRI検査でT1強調像、T2強調像ともに低信号を呈するのはどれか。
a)漿液性嚢胞腺癌
b)粘液性嚢胞腺癌
c)線維腫
d)成熟嚢胞性奇形腫
e)子宮内膜症性嚢胞

解答:c

c)線維腫は、T1、T2 強調画像でいずれも均一な低信号を示す境界明瞭な腫瘤として認められ、信号強度は子宮筋腫に類似する。

******

問題057 卵巣がんで誤っているのはどれか(卵巣がん治療ガイドライン)
a)わが国における罹患数は毎年約6,000人である。
b)わが国では1995年には3,892人が死亡した。
c)Ⅰ期の5年生存率は90%を越える(1998~1994年、FIGO)。
d)Ⅱ期の5年生存率は約70%である(1998~1994年、FIGO)。
e)Ⅲ期の5年生存率は約50%である(1998~1994年、FIGO)。

解答:e

b)わが国の卵巣がん死亡数は、1995年には3,892人、1996年には4,006人、2005年には4467人と、明らかに近年死亡数が増加傾向にある。

c)Ⅰ期の5年生存率は92.55%である。

d)Ⅱ期の5年生存率は70.12%である。

e)Ⅲ期の5年生存率は37.45%である。

******

問題058 卵巣癌で正しいのはどれか。
a)漿液性腺癌の多くは境界型悪性腫瘍を経て発生する。
b)粘液性腺癌では境界悪性腫瘍病変の合併は稀である。
c)類内膜腺癌の多くは内膜増殖症を経て発生する。
d)類内腺腺癌が子宮と卵巣にあれば原発巣は子宮である。
e)明細胞腺癌では子宮内膜症の合併が高頻度にみられる。

解答:e

******

問題059 卵巣明細胞腺癌で正しいのはどれか。
a)20歳代の若年女性に好発する。
b)上皮性卵巣癌で最も頻度が高い。
c)進行期ではⅠ期癌が最も多い。
d)hobnail patternは予後不良である
e)プラチナ製剤が奏功する。

解答:c

b)卵巣癌の6~8%を占める。

c)約50%がFIGOⅠ期症例である。

e)化学療法が奏功せず、予後は漿液性腺癌に比較して不良である。

******

問題060 卵巣腫瘍と腹膜偽粘液腫で正しいのはどれか。
a)多量の血性腹水が貯留した状態である。
b)漿液性境界悪性腫瘍でしばしば認められる。
c)粘液性嚢胞腺癌に合併することはない。
d)手術では虫垂切除も行なう必要がある。
e)術後のTJ化学療法が奏功する。

解答:d

腹膜偽粘液腫の大多数は、卵巣原発ではなく、消化管とくに虫垂原発癌の腹膜播腫による。化学療法が無効で、治療法は頻回の腫瘍切除しかない。進行は遅いが治癒は難しい。


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題041~問題050

2007年10月28日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題041~問題050】

問題041 子宮体部の癌肉腫で誤っているのはどれか。
a)平滑筋肉腫よりも発生頻度が高い。
b)子宮腔にポリープ様に突出する。
c)癌成分の多くは腺癌である。
d)線維肉腫は異所性成分である。
e)転移や再発は癌成分が多い。

問題042 子宮平滑筋肉腫で誤っているのはどれか。
a)閉経前の発症が多い。
b)体部悪性腫瘍の約1%を占める。
c)子宮肉腫の約25%を占める。
d)出血・壊死を伴うことが多い。
e)核分裂像は>10個/10高倍視野のことが多い。

問題043 子宮平滑筋肉腫で誤っているのはどれか。
a)不正性器出血はきたすことは稀である。
b)閉経後の子宮増大は肉腫を疑う根拠となる。
c)内膜細胞診異常で発見されることは少ない。
d)血清LDH高値は診断に有用である。
e)MRIのT1強調像で高信号成分を認めることが多い。 

問題044 子宮平滑筋肉腫の病理診断で重要な所見はどれか。
(1)細胞密度
(2)核異型
(3)核分裂像
(4)凝固壊死
(5)核小体数

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題045 子宮内膜間質肉腫で正しいのはどれか。
(1)低悪性度子宮内膜間質肉腫と内膜間質結節との鑑別には子宮摘出を要する。
(2)低悪性度子宮内膜間質肉腫はしばしば脈管内へ侵入する。
(3)低悪性度子宮内膜間質肉腫は遠隔転移をきたさない。
(4)高悪性度子宮内膜間質肉腫の構成細胞は子宮内膜間質細胞に類似する。
(5)高悪性度子宮内膜間質肉腫は異所性成分を伴うことがある。

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

問題046 子宮内膜間質肉腫で正しいのはどれか。
a)骨盤内リンパ節転移は希である。
b)低悪性度であっても子宮を摘出すべきである。
c)低悪性度では卵巣はなるべく温存すべきである。
d)高悪性度では術後化学療法が予後を改善する。
e)高悪性度では黄体ホルモン療法が奏功する。

問題047 絨毛性疾患で正しいのはどれか。
a)全胞状奇胎の核型は常染色体のトリソミーが多い。
b)部分胞状奇胎は正常卵への2精子受精による3倍体が多い。
c)全胞状奇胎の発生は受精機構の異常による雌核発生である。
d)胞状奇胎妊娠の反復は30%程度にみられる。
e)絨毛癌では直前の妊娠が発生に関与する責任妊娠である。

問題048 絨毛性疾患で誤っているのはどれか。
a)肉眼的嚢胞化絨毛の診断規準は短径が2 mmを超える絨毛の存在である。
b)全胞状奇胎の組織像は絨毛間質の水腫化と栄養膜細胞の過剰増殖である。
c)妊娠中期の胞状奇胎に胎児が共存する場合は部分胞状奇胎と診断できる。
d)部分胞状奇胎に特徴的なscallopingは嚢胞化絨毛の辺縁が皺状の像をいう。
e)部分胞状奇胎では嚢胞化絨毛と正常絨毛の二群を認める。

問題049 胞状奇胎娩出後の管理に有用な検査はどれか。
(1)尿中hCG値測定
(2)胸部レントゲン撮影
(3)血中エストラジオール値測定
(4)骨盤CT
(5)基礎体温測定

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題050 絨毛癌肺転移に対してまず行う治療はどれか。
a)胸部腫瘤の摘出術
b)胸部腫瘤と子宮の摘出術
c)MTX単独化学療法
d)TJ化学療法
e)EMA-CO化学療法

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解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題041 子宮体部の癌肉腫で誤っているのはどれか。
a)平滑筋肉腫よりも発生頻度が高い。
b)子宮腔にポリープ様に突出する。
c)癌成分の多くは腺癌である。
d)線維肉腫は異所性成分である。
e)転移や再発は癌成分が多い。

解答:d

a)子宮肉腫は、主に子宮内膜間質肉腫、平滑筋肉腫、癌肉腫の3範疇に分類される。半数近くを癌肉腫が占め、ついで平滑筋肉腫、ときに子宮内膜間質肉腫が発生する。

c)上皮成分としては、類内膜腺癌が60%を占め、腺扁平上皮癌が25%で、漿液性腺癌が10%である。

d)肉腫成分は、同所性の場合は内膜間質肉腫、線維肉腫が多く、異所性の場合には横紋筋肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脂肪肉腫の順で頻度が高い。

******

問題042 子宮平滑筋肉腫で誤っているのはどれか。
a)閉経前の発症が多い。
b)体部悪性腫瘍の約1%を占める。
c)子宮肉腫の約25%を占める。
d)出血・壊死を伴うことが多い。
e)核分裂像は>10個/10高倍視野のことが多い。

解答:a

平滑筋肉腫は子宮悪性腫瘍のうちの1.3%を、また子宮肉腫の1/3を占める。平均発生年齢は52歳で、ほとんどが閉経後女性に発生している。

******

問題043 子宮平滑筋肉腫で誤っているのはどれか。
a)不正性器出血はきたすことは稀である。
b)閉経後の子宮増大は肉腫を疑う根拠となる。
c)内膜細胞診異常で発見されることは少ない。
d)血清LDH高値は診断に有用である。
e)MRIのT1強調像で高信号成分を認めることが多い。

解答:a

d)LDH値(isozyme LDH2, 3)の上昇も参考となる。

e)MRIで出血(T1/T2像で高信号)や壊死(T1で低信号、T2で高信号)の検出が参考となる。

******

問題044 子宮平滑筋肉腫の病理診断で重要な所見はどれか。
(1)細胞密度
(2)核異型
(3)核分裂像
(4)凝固壊死
(5)核小体数

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:d

典型的な場合は、高い細胞密度、著しい核の多形成、異型分裂像を含む高頻度(10高倍率視野で10以上)の核分裂像などがみられ、また腫瘍の凝固壊死や境界部の浸潤所見より平滑筋腫と区別される。診断には、細胞(核)異型、高頻度の核分裂像と栓塞性壊死が最も重要である。

******

問題045 子宮内膜間質肉腫で正しいのはどれか。
(1)低悪性度子宮内膜間質肉腫と内膜間質結節との鑑別には子宮摘出を要する。
(2)低悪性度子宮内膜間質肉腫はしばしば脈管内へ侵入する。
(3)低悪性度子宮内膜間質肉腫は遠隔転移をきたさない。
(4)高悪性度子宮内膜間質肉腫の構成細胞は子宮内膜間質細胞に類似する。
(5)高悪性度子宮内膜間質肉腫は異所性成分を伴うことがある。

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

解答:a

低悪性度子宮内膜間質肉腫は、子宮内膜間質細胞に類似した細胞よりなる肉腫で、子宮筋層ことに脈管を侵襲し、ときに子宮外の脈管へ進展する。子宮内膜間質結節とは腫瘍境界部の特徴(脈管侵襲を示さない)で鑑別される。

高悪性度子宮内膜間質肉腫は、低悪性度子宮内膜間質肉腫と腫瘍境界部浸潤部は共通しているが、多くの分裂像(10高倍率視野で10以上)を伴った多形性の細胞よりなり、低分化で特徴ある組織像を示さない場合が多く、また異所性成分を含まない。

******

問題046 子宮内膜間質肉腫で正しいのはどれか。
a)骨盤内リンパ節転移は希である。
b)低悪性度であっても子宮を摘出すべきである。
c)低悪性度では卵巣はなるべく温存すべきである。
d)高悪性度では術後化学療法が予後を改善する。
e)高悪性度では黄体ホルモン療法が奏功する。

解答:b

******

問題047 絨毛性疾患で正しいのはどれか。
a)全胞状奇胎の核型は常染色体のトリソミーが多い。
b)部分胞状奇胎は正常卵への2精子受精による3倍体が多い。
c)全胞状奇胎の発生は受精機構の異常による雌核発生である。
d)胞状奇胎妊娠の反復は30%程度にみられる。
e)絨毛癌では直前の妊娠が発生に関与する責任妊娠である。

解答:b

全胞状奇胎は、核のない卵子(ゲノム欠損卵)に精子が受精することにより発症し、すべての対立遺伝子が夫由来となり(雄核発生)、受精精子の本数によりホモ奇胎(1精子受精)、ヘテロ奇胎(2精子受精)に分類される。ホモ奇胎が90%、ヘテロ奇胎が10%を占めるとされる。全奇胎の核型はほとんどが46,XXで、残りの少数が46,XYである。

部分胞状奇胎は、正常卵子に2精子受精した3倍体がほとんどで、まれに2倍体の母方由来染色体を持つ3倍体の場合もある。

胞状奇胎掻爬後の妊娠転帰に関してはさまざまな報告がなされているが、奇胎を反復する頻度が2%前後と高率である以外、流産率、早産率、胎児奇形については差を認めなかった。

******

問題048 絨毛性疾患で誤っているのはどれか。
a)肉眼的嚢胞化絨毛の診断規準は短径が2 mmを超える絨毛の存在である。
b)全胞状奇胎の組織像は絨毛間質の水腫化と栄養膜細胞の過剰増殖である。
c)妊娠中期の胞状奇胎に胎児が共存する場合は部分胞状奇胎と診断できる。
d)部分胞状奇胎に特徴的なscallopingは嚢胞化絨毛の辺縁が皺状の像をいう。
e)部分胞状奇胎では嚢胞化絨毛と正常絨毛の二群を認める。

解答:c?

c)部分胞状奇胎と2卵性双胎妊娠の一方の児の奇胎化との鑑別が必要である。確定するには胎児、胎盤、奇胎、父母の細胞遺伝学的分析が必要である。

******

問題049 胞状奇胎娩出後の管理に有用な検査はどれか。
(1)尿中hCG値測定
(2)胸部レントゲン撮影
(3)血中エストラジオール値測定
(4)骨盤CT
(5)基礎体温測定

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:b

******

問題050 絨毛癌肺転移に対してまず行う治療はどれか。
a)胸部腫瘤の摘出術
b)胸部腫瘤と子宮の摘出術
c)MTX単独化学療法
d)TJ化学療法
e)EMA-CO化学療法

解答:e

絨毛癌では、MEA 療法(MTX、Act-D、Etoposide)、EMA/CO 療法(MTX、Act-D、Etoposide、Cyclophosphamide、Vincristine)などが行われている。


婦人科腫瘍学、必修知識

2007年10月28日 | 婦人科腫瘍

婦人科腫瘍専門医修練ガイドライン
(日本婦人科腫瘍学会)

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006)、問題と解答例

癌関連遺伝子

RECISTガイドライン

外陰の腫瘍・類腫瘍

腟の腫瘍

外陰・腟の腫瘍・類腫瘍、問題と解答

子宮頚癌、組織分類

子宮頸癌、進行期分類

子宮頸癌、放射線治療

子宮頚癌、化学療法

子宮頚癌、問題と解答

子宮体癌

子宮体癌、問題と解答

子宮肉腫

子宮肉腫、問題と解答

卵管癌

卵巣の腫瘍・類腫瘍、全般・組織型

卵巣癌、進行期分類

卵巣癌の手術療法

卵巣癌、化学療法

卵管・卵巣の腫瘍・類腫瘍、問題と解答

絨毛性疾患

絨毛性疾患、問題と解答

細胞診

細胞診、問題と解答

組織診、問題と解答

コルポスコピー

腫瘍マーカー

婦人科疾患のCT診断

婦人科疾患のMRI診断

抗癌剤の分類

緩和医療

EBM、ガイドライン

参考文献:
子宮頚癌取り扱い規約(改訂第2版)
子宮体癌取り扱い規約(改訂第2版)
卵巣腫瘍取り扱い規約
絨毛性疾患取り扱い規約(改訂第2版)
子宮頸癌治療ガイドライン(2007)
卵巣がん治療ガイドライン改訂版(2007)
子宮体癌治療ガイドライン(2006)
産婦人科研修の必修知識(2007)
婦人科腫瘍の臨床病理(改訂第2版)
症例から学ぶ婦人科腫瘍学入門(2006)
Berek & Novak's Gynecology(2006)
Clinical Gynecologic Oncology(2007)
その他


子宮頚癌治療ガイドライン2007年版

2007年10月18日 | 婦人科腫瘍

Keigansisin 日本婦人科腫瘍学会 編

後 援:日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会/婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構

金原出版、定価2,520円

以下、金原出版ホームページより

 本ガイドラインの作成にあたっては,これまでと同様にガイドライン作成委員会と評価委員会を設置し,作成委員には頸癌の診療を専門的に行っている医師を全国から召集し,さらに放射線治療専門医と腫瘍内科医にも入っていただいた。作成形式は,体癌と同様に頸癌も治療に関するエビデンスが少なくレベルも低いこと,欧米との治療上のギャップも少なからず存在することなどから,頸癌の治療上の問題点を明らかにしそれに回答する「Q&A形式」を採用することにした。取り扱う対象は,子宮頸部に原発した各ステージの扁平上皮癌と腺癌,およびそれらの再発癌と妊娠合併頸癌とした。さらにこれらの治療に対応した3つのアルゴリ ズムを載せ,各項を「Q&A形式」で記述した。すなわち,頸癌治療における現在の問題点を臨床的疑問点(クリニカルクスチョン:CQ)として抽出し,各CQに対して国内外の文献を網羅的に収集し,各文献の構造化抄録を作成しエビデンスとして評価した。これらを十分に吟味したうえで,総合的な判断からCQに対する答えを推奨として簡潔に記載しそのグレードを付記した。さらにそのCQに対する背景・目的と推奨に至るまでの経緯を解説として記述し,最後にエビデンスのレベルを付記した参考文献を載せた。エビデンスのレベルと推奨のグレードに関しては,「卵巣がん」や「子宮体癌」の治療ガイドラインとの整合性から,そこで用いたものをそのまま使用することにした。ガイドライン原案は,評価委員会での検討に次いで,大小計4回に亘るコンセンサスミーティングにて専門家間の長時間にわたる論議を尽くす一方で,全学会員に提示され,これらの過程を通して多くの提言や助言を容れた。さらに婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構(JGOG)や日本産婦人科医会,日本産科婦人科学会にも提示され,ここでも多くの意見を採り入れたうえで,これらの学会の承認を得た。最終的には本年夏に開催された日本婦人科腫瘍学会理事会での審査・承認を経て,このたびの発刊に至った。


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題031~問題040

2007年10月09日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題031~問題040】

問題031 子宮内膜細胞診で正しいのはどれか。
a)内膜細胞の細胞異型のみを評価する。
b)内膜細胞がみられなければ再検査を指示する。
c)細胞診陰性であれば子宮内膜癌は否定できる。
d)疑陽性の場合、内膜組織診は不要である。
e)卵巣癌細胞が検出されることはない。

問題032 わが国の女性10万人あたりの子宮体癌罹患数はどの程度か。
a)1 人未満
b)6~15人
c)106~115人
d)506~515人
e)1006~1015人

問題033 タイプⅡ子宮体癌で正しいのはどれか。
a)肥満
b)閉経後
c)予後良好
d)類内膜腺癌
e)エストロゲン依存性

問題034 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
(1)浸潤が筋層1/2を超えるものはⅠb期である。
(2)頚管腺のみを侵すものはⅡb期である。
(3)腟に転移を認める場合はⅢb期である。
(4)骨盤リンパ節に転移があればⅢc期である。
(5)鼠径リンパ節に転移があればⅣb期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題035 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
a)腹腔細胞診で陽性であったのでⅠc期とした。
b)卵巣に転移がみられたのでⅡa期とした。
c)大網に径1 cmの転移がみられたのでⅢb期とした。
d)子宮傍結合織浸潤がみられたのでⅢc期とした。
e)傍大動脈リンパ節転移がみられたのでⅣ期とした。

問題036 子宮体癌の治療で正しいのはどれか。
(1)若年女性で類内膜腺癌G1かつⅠa期と予測される場合は子宮温存を考慮する。
(2)傍大動脈リンパ節郭清が長期予後改善に寄与するか否かは不明である。
(3)臨床進行期Ⅱ期の症例に対する腟壁切除の有用性は証明されている。
(4)進行例に対する手術療法の意義は低く、腫瘍減量手術は行うべきでない。
(5)内視鏡下手術は確立しておらず、その適応は慎重に考慮すべきである。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題037 子宮体癌の化学療法で正しいのはどれか。
(1)中リスク症例の術後化学療法は放射線療法と同等かそれ以上に有効である。
(2)高リスク症例で術後残存腫瘍2 cm以下の場合に化学療法が推奨される。
(3)アンスラサイクリン系とプラチナ製剤の併用が推奨される。
(4)進行例に対する術前化学療法の有効性が証明されている。
(5)放射線療法後の再発例にはイリノテカンが有用である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題038 子宮体癌化学療法のkey drugはどれか。
a)エトポシド
b)ジェムシタビン
c)アドリアマイシン
d)サイクロフォスファミド
e)5-FU

問題039 子宮内膜増殖症および体癌の治療で誤っているのはどれか。
a)単純型子宮内膜増殖症に対して単純子宮全摘術を施行した。
b)子宮内膜異型増殖症に対して黄体ホルモン療法を施行した。
c)体癌で浸潤が筋層1/2を超えており傍大動脈リンパ節郭清を施行した。
d)体癌で頚部間質に深い浸潤を認めたため広汎子宮全摘出術を施行した。
e)体癌の高リスク例にdoxorubicinとcisplatinによる化学療法を施行した。

問題040 子宮肉腫の治療で正しいのはどれか。
a)第一選択の治療法は手術療法である。
b)標準的手術術式は広汎子宮全摘出術である。
c)進行例に対しては化学療法が有用である。
d)平滑筋肉腫には黄体ホルモン療法が奏功する。
e)低悪性度内膜間質肉腫の5年生存率は50%以下である。

―――――――――――――――――――――――――

解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題031 子宮内膜細胞診で正しいのはどれか。
a)内膜細胞の細胞異型のみを評価する。
b)内膜細胞がみられなければ再検査を指示する。
c)細胞診陰性であれば子宮内膜癌は否定できる。
d)疑陽性の場合、内膜組織診は不要である。
e)卵巣癌細胞が検出されることはない。

解答:b

******

問題032 わが国の女性10万人あたりの子宮体癌罹患数はどの程度か。
a)1 人未満
b)6~15人
c)106~115人
d)506~515人
e)1006~1015人

解答:b

子宮体癌は近年増加傾向にあり、推定罹患数は1996年4507人(女性10万人あたり5.7人)、2015年には6623人(女性10万人あたり7.3人)にまで増加すると予測されている。(婦人科腫瘍の臨床病理、改訂第2版、118頁)

******

問題033 タイプⅡ子宮体癌で正しいのはどれか。
a)肥満
b)閉経後
c)予後良好
d)類内膜腺癌
e)エストロゲン依存性

解答:b

Ⅰ型子宮体癌
 発生機序:unopposed estrogenの長期持続により、子宮内膜異型増殖症を経由しそれが癌に至るもの
 好発年齢:閉経前~閉経早期
 頻度:80~90%
 病巣周辺の子宮内膜異型増殖症:あり
 組織型:類内膜腺癌
 分化度:高分化型
 筋層浸潤:軽度
 予後:比較的良好
 遺伝子:K-ras(癌原遺伝子)、PTEN(癌抑制遺伝子)の変異が高率で見られる

Ⅱ型子宮体癌
 発生機序:子宮内膜異型増殖症を介さないで癌化するもの(de novo癌)
 好発年齢:閉経後
 頻度:10~20%
 病巣周辺の子宮内膜異型増殖症:なし
 組織型:漿液性腺癌、明細胞癌など
 分化度:低分化型
 筋層浸潤:高度
 予後:不良
 遺伝子:p53(癌抑制遺伝子)の変異が高率に見られる

******

問題034 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
(1)浸潤が筋層1/2を超えるものはⅠb期である。
(2)頚管腺のみを侵すものはⅡb期である。
(3)腟に転移を認める場合はⅢb期である。
(4)骨盤リンパ節に転移があればⅢc期である。
(5)鼠径リンパ節に転移があればⅣb期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:e

子宮体癌の手術進行期分類
0期 子宮内膜異型増殖症
Ⅰ期 癌が子宮体部に限局するもの
 Ⅰa 期 子宮内膜に限局するもの
 Ⅰb 期 浸潤が子宮筋層1/2以内のもの
 Ⅰc 期 浸潤が子宮筋層1/2をこえるもの
Ⅱ期 癌が体部および頸部に及ぶもの
 Ⅱa 期 頸管腺のみを侵すもの
 Ⅱb 期 頸部間質浸潤のあるもの
Ⅲ期 癌が子宮外に広がるが、小骨盤をこえていないもの、または所属リンパ節転移のあるもの
 Ⅲa 期 漿膜ならびに/あるいは付属器を侵す、ならびに/あるいは腹腔細胞診陽性のもの
 Ⅲb 期 腟転移のあるもの
 Ⅲc 期 骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移のあるもの
 (注:子宮傍結合織浸潤例はⅢc期とする)
Ⅳ期 癌が小骨盤腔をこえているか、明らかに膀胱または腸粘膜を侵すもの
 Ⅳa 期 膀胱ならびに/あるいは腸粘膜浸潤のあるもの
 Ⅳb 期 腹腔内ならびに/あるいは鼠径リンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの

〔分類にあたっての注意事項〕
(1)初回治療として手術がなされなかった例(放射線療法など)には、従来からの臨床進行期分類が適用される。
(2)各期とも腺癌の組織学的分化度により、それぞれ亜分類される。
(3)0期は治療統計に含まれない。FIGOでは0期は設定されていないが、日本産科婦人科学会では従来の分類との整合性により0期を設定した。
(4)所属リンパ節とは、基靭帯リンパ節、仙骨リンパ節、閉鎖リンパ節、内腸骨リンパ節、鼠径上リンパ節、外腸骨リンパ節、総腸骨リンパ節、および傍大動脈リンパ節をいう。
(5)子宮傍結合織浸潤例はⅢc期とする。
(6)本分類は手術後分類であるから、従来Ⅰ期とⅡ期の区別に用いられてきた部位別掻爬などの所見は考慮しない。
(7)子宮筋層の厚さは腫瘍浸潤の部位において測定することが望ましい。

〔子宮体部腺癌の組織学的分化度〕
すべての類内膜癌は腺癌成分の形態によりGrade 1、2、3に分類される。
Grade 1: 充実性増殖の占める割合が腺癌成分の5%以下であるもの
Grade 2: 充実性増殖の占める割合が腺癌成分の6~50%のもの。あるいは充実性増殖の割合が5%以下でも細胞異型の著しく強いもの
Grade 3: 充実性増殖の占める割合が腺癌成分の50%を超えるもの。あるいは充実性増殖の割合が6~50%でも細胞異型の著しく強いもの

〔組織学的分化度に関する注意〕
(1)漿液性腺癌、明細胞腺癌、扁平上皮癌は核異型によりGradeを判定する。
(2)扁平上皮への分化を伴う腺癌のGradeは腺癌成分によって判定する。

******

問題035 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
a)腹腔細胞診で陽性であったのでⅠc期とした。
b)卵巣に転移がみられたのでⅡa期とした。
c)大網に径1 cmの転移がみられたのでⅢb期とした。
d)子宮傍結合織浸潤がみられたのでⅢc期とした。
e)傍大動脈リンパ節転移がみられたのでⅣ期とした

解答:d

a)b)Ⅲa 期:漿膜ならびに/あるいは付属器を侵す、ならびに/あるいは腹腔細胞診陽性のもの。

c)Ⅳb 期:腹腔内ならびに/あるいは鼠径リンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの。

d)子宮傍結合織浸潤例はⅢc期とする。

e)Ⅲc 期:骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移のあるもの。

******

問題036 子宮体癌の治療で正しいのはどれか。
(1)若年女性で類内膜腺癌G1かつⅠa期と予測される場合は子宮温存を考慮する。
(2)傍大動脈リンパ節郭清が長期予後改善に寄与するか否かは不明である。
(3)臨床進行期Ⅱ期の症例に対する腟壁切除の有用性は証明されている。
(4)進行例に対する手術療法の意義は低く、腫瘍減量手術は行うべきでない。
(5)内視鏡下手術は確立しておらず、その適応は慎重に考慮すべきである。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:b

(2)CQ04:骨盤リンパ節郭清に加えて傍大動脈リンパ節郭清をすることの意義は?推奨:①正確な進行期決定を可能にする(グレードA)。②傍大動脈リンパ節郭清の治療的な意義は確立されていない(グレードC)。【子宮体癌治療ガイドライン2006、p28】

(4)CQ29:肉眼的な骨盤外腹腔内進展例に対し、腫瘍減量手術の治療的意義は?推奨:腫瘍減量手術を行うことにより、予後を改善し得る可能性がある(グレードC)。【子宮体癌治療ガイドライン2006、p94】

******

問題037 子宮体癌の化学療法で正しいのはどれか。
(1)中リスク症例の術後化学療法は放射線療法と同等かそれ以上に有効である。
(2)高リスク症例で術後残存腫瘍2 cm以下の場合に化学療法が推奨される。
(3)アンスラサイクリン系とプラチナ製剤の併用が推奨される。
(4)進行例に対する術前化学療法の有効性が証明されている。
(5)放射線療法後の再発例にはイリノテカンが有用である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:a

CQ21:術後補助化学療法は有効性が確立されているのか?推奨:①低リスク症例に対する術後補助化学療法は奨められない(グレードC)。②中リスク症例に対する術後補助化学療法は、放射線治療と同等あるいはそれ以上に有効である可能性がある(グレードC)。③高リスク症例術後残存腫瘍2cm以下の症例に対して、術後化学療法を行うことが奨められる(グレードB)。【子宮体癌治療ガイドライン2006、p74】

CQ22:術後補助化学療法を行う場合にはどのような薬剤が推奨されるか?推奨:①アンスラサイクリン系とプラチナ製剤を含む薬剤の選択が奨められる(グレードB)。②タキサン系薬剤も併用されているが、その十分な根拠は得られていない(グレードC)。【子宮体癌治療ガイドライン2006、p76】

CQ30:術前化学療法や術前放射線療法は有効か?推奨:①術前化学療法は推奨されない(グレードD)。②子宮頸部に明らかな浸潤がある場合に術前放射線療法が用いられることがある(グレードC)。【子宮体癌治療ガイドライン2006、p96】

******

問題038 子宮体癌化学療法のkey drugはどれか。
a)エトポシド
b)ジェムシタビン
c)アドリアマイシン
d)サイクロフォスファミド
e)5-FU

解答:c

アドリアマイシンは子宮体癌に対するkey drugであり、単剤での効果は17%~26%である。

******

問題039 子宮内膜増殖症および体癌の治療で誤っているのはどれか。
a)単純型子宮内膜増殖症に対して単純子宮全摘術を施行した。
b)子宮内膜異型増殖症に対して黄体ホルモン療法を施行した。
c)体癌で浸潤が筋層1/2を超えており傍大動脈リンパ節郭清を施行した。
d)体癌で頚部間質に深い浸潤を認めたため広汎子宮全摘出術を施行した。
e)体癌の高リスク例にdoxorubicinとcisplatinによる化学療法を施行した。

解答:a

******

問題040 子宮肉腫の治療で正しいのはどれか。
a)第一選択の治療法は手術療法である。
b)標準的手術術式は広汎子宮全摘出術である。
c)進行例に対しては化学療法が有用である。
d)平滑筋肉腫には黄体ホルモン療法が奏功する。
e)低悪性度内膜間質肉腫の5年生存率は50%以下である

解答:a

a)b)子宮肉腫の治療の第1選択は手術療法であり、一般に標準的術式として単純子宮全摘出術、両側付属器切除、骨盤および傍大動脈の選択的リンパ節切除術が行われる。

c)術後の放射線療法あるいは化学療法によるアジュバント療法の有効性については不明である。

e)低悪性度子宮内膜間質肉腫の予後は比較的よく、Ⅰ、Ⅱ期では80%以上の5年生存率が期待できる。子宮内膜間質肉腫にはMPAによる内分泌療法も行われる。


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題021~問題030

2007年10月08日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題021~問題030】

問題021 TNM分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)TX - 原発腫瘍を認めない。
b)TO - 浸潤前癌
c)NX - 所属リンパ節に転移を認めない。
d)N1 - 所属リンパ節に転移を認める。
e)MO - 遠隔転移の検索が行われていない。

問題022 子宮頚癌の臨床進行期と治療法の組み合わせで誤っているのはどれか。
a) 0 期 - レーザー円錐切除術
b)Ⅰa1期 - 単純子宮全摘出術
c)Ⅰa2期 - 子宮頸部円錐切除術
d)Ⅰb1期 - 広汎子宮全摘出術
e)Ⅲb期 - 化学放射線療法

問題023 子宮頸癌の治療で誤っているのはどれか。
a)広汎子宮全摘出術では症例によっては卵巣温存が可能である。
b)広汎子宮全摘出術で傍大動脈節郭清の治療的意義は不明である。
c)放射線療法では全骨盤照射と腔内照射を組み合わせる。
d)化学放射線療法ではプラチナ製剤を同時に用いる。
e)化学療法後の放射線療法は生存期間を延長させる。

問題024 子宮頸癌の各組織型で誤っているのはどれか。
a)腺癌は扁平上皮癌に比し放射線感受性が低い
b)小細胞癌は腺扁平上皮癌に比し予後不良である。
c)すりガラス細胞癌は扁平上皮癌に比し予後不良である。
d)扁平上皮癌で角化型は非角化型に比し予後不良である。
e)腺癌のうちvilloglandular adenocarcinomaは予後良好である。

問題025 子宮頚部の上皮内腺癌で誤っているのはどれか。
a)子宮頚部細胞診が診断に有用な場合がある。 
b)コルポスコピーで病変の拡がりを評価できない。
c)円錐切除で断端陰性であれば残存病変はない。
d)リンパ節転移は認められない。
e)妊孕能温存は可能である。

問題026 子宮内膜増殖症で正しいのはどれか。
a)子宮体癌取り扱い規約で4 種類に分類されている。
b)異型増殖症の内膜細胞診による正診率は90%を超える。
c)異型増殖症では篩状(cribriform pattern)の腺管増生が著しい
d)異型増殖症が腺癌へと進展する割合は約5 %である。
e)異型増殖症と腺癌との鑑別にMRI検査が有用である。

問題027 単純型子宮内膜増殖症で正しいのはどれか。
a)間質量が著しく減少している。
b)腺は分泌期内膜腺に類似する。
c)腺細胞に極性の乱れが目立つ。
d)腺の拡張が認められる。
e)大型の核小体が目立つ。

問題028 子宮内膜異型増殖症に対する酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)療法で正しいのはどれか。
a)更年期以降の患者が適応となる。
b)効果は経腟超音波検査で観察する。
c)間質には脱落膜様の変化がみられる。
d)奏効率は約20%である。
e)完全消失例で再発は稀である。

問題029 子宮内膜異型増殖症に用いる酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)の副作用で誤っているのはどれか。
a)脳梗塞
b)心筋梗塞
c)肺塞栓症
d)肝機能障害
e)末梢神経障害

問題030 ポリープ状異型腺筋腫(atypical polypoid adenomyoma)で誤っているのはどれか。
a)閉経前の女性に好発する。
b)発生部位で最も多いのは子宮底部である。
c)腺癌の筋層浸潤と鑑別が必要である。
d)扁平上皮化生を伴うことが多い。
e)腺癌への進展例が報告されている。 

―――――――――――――――――――――――――

解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題021 TNM分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)TX - 原発腫瘍を認めない。
b)TO - 浸潤前癌
c)NX - 所属リンパ節に転移を認めない。
d)N1 - 所属リンパ節に転移を認める。
e)MO - 遠隔転移の検索が行われていない。

解答)d

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 浸潤前癌
NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
MX 遠隔転移の評価が不可能
M0 遠隔転移なし

******

問題022 子宮頚癌の臨床進行期と治療法の組み合わせで誤っているのはどれか。
a) 0 期 - レーザー円錐切除術
b)Ⅰa1期 - 単純子宮全摘出術
c)Ⅰa2期 - 子宮頸部円錐切除術
d)Ⅰb1期 - 広汎子宮全摘出術
e)Ⅲb期 - 化学放射線療法

解答:c

c)Ⅰa2期 - 広汎子宮全摘出術

******

問題023 子宮頸癌の治療で誤っているのはどれか。
a)広汎子宮全摘出術では症例によっては卵巣温存が可能である。
b)広汎子宮全摘出術で傍大動脈節郭清の治療的意義は不明である。
c)放射線療法では全骨盤照射と腔内照射を組み合わせる。
d)化学放射線療法ではプラチナ製剤を同時に用いる。
e)化学療法後の放射線療法は生存期間を延長させる。

解答:e

Neoadjuvant Chemotherapy(NAC)後の放射線治療については、メタアナリシスの結果、その効果が否定的な結論となったため、最近は、試みられなくなっている。

******

問題024 子宮頸癌の各組織型で誤っているのはどれか。
a)腺癌は扁平上皮癌に比し放射線感受性が低い
b)小細胞癌は腺扁平上皮癌に比し予後不良である。
c)すりガラス細胞癌は扁平上皮癌に比し予後不良である。
d)扁平上皮癌で角化型は非角化型に比し予後不良である。
e)腺癌のうちvilloglandular adenocarcinomaは予後良好である。

解答:d

d)角化型、非角化型の分類と予後との関連は少ないと考えられている。

e)villoglandular adenocarcinoma:肉眼的には頚管内に小乳頭状の腫瘍として観察される。長く細い茎を有する絨毛状構造を特徴とする。上皮細胞の異型は軽度で浸潤は浅い。経口避妊薬との関連性が指摘されている。若い人に多く、予後は良好とされている。円錐切除や単純性子宮全摘出術が推奨される。

******

問題025 子宮頚部の上皮内腺癌で誤っているのはどれか。
a)子宮頚部細胞診が診断に有用な場合がある。 
b)コルポスコピーで病変の拡がりを評価できない。
c)円錐切除で断端陰性であれば残存病変はない。
d)リンパ節転移は認められない。
e)妊孕能温存は可能である。

解答:c

円錐切除で断端陰性の症例においても、6~40%程度に病変の残存が証明されたとの報告がある。

上皮内腺癌adenocarcinoma in situ(AIS)
 組織学的に悪性の腺上皮細胞が正常の内頸腺の構造を保ったまま上皮を置換して増殖するが、間質への浸潤を欠くものである。上皮内腺癌は同一腺腔内あるいは一連の被覆上皮内に、非癌円柱上皮と明瞭な境界を形成するという特徴を有する(フロント形成)。診断は円錐切除術かそれに準じた方法で行う。本病変は40~100%と高い確率で扁平上皮の異形成・上皮内癌・微小浸潤癌と共存し、それらの手術摘出検体中に偶然発見されることもある。術前細胞診での診断は困難であることが少なくない。

******

問題026 子宮内膜増殖症で正しいのはどれか。
a)子宮体癌取り扱い規約で4 種類に分類されている。
b)異型増殖症の内膜細胞診による正診率は90%を超える。
c)異型増殖症では篩状(cribriform pattern)の腺管増生が著しい
d)異型増殖症が腺癌へと進展する割合は約5 %である。
e)異型増殖症と腺癌との鑑別にMRI検査が有用である。

解答:a

a)単純型子宮内膜増殖症、複雑型子宮内膜増殖症、単純型子宮内膜異型増殖症、複雑型子宮内膜異型増殖症。

c)腺癌では篩状構造をとるが、異型増殖症の場合はそのような構造は示さない。

d)腺癌への進展率:単純型子宮内膜増殖症が1 %、複雑型子宮内膜増殖症が3 %、単純型子宮内膜異型増殖症が8 %、複雑型子宮内膜異型増殖症が29%と報告されている(Kurmanら)。

******

問題027 単純型子宮内膜増殖症で正しいのはどれか。
a)間質量が著しく減少している。
b)腺は分泌期内膜腺に類似する。
c)腺細胞に極性の乱れが目立つ。
d)腺の拡張が認められる。
e)大型の核小体が目立つ。

解答:d

単純型子宮内膜増殖症
 細胞異型のない内膜腺の過剰増殖からなり、腺上皮は増殖期内膜腺に類似する。腺の拡張と内膜間質の過剰増殖を伴う。

******

問題028 子宮内膜異型増殖症に対する酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)療法で正しいのはどれか。
a)更年期以降の患者が適応となる。
b)効果は経腟超音波検査で観察する。
c)間質には脱落膜様の変化がみられる。
d)奏効率は約20%である。
e)完全消失例で再発は稀である。

解答:c

40歳以下で妊娠を希望する子宮体部類内膜癌Ⅰa期(28例)および子宮内膜異型増殖症(17例)の患者に対し、MPA 600mg/日を連日26週間投与した。CR率は64%であった。CR例の40%が治療後平均13.4ヶ月の間に再発した。(牛嶋公生、日本癌治療学会誌2005)

******

問題029 子宮内膜異型増殖症に用いる酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)の副作用で誤っているのはどれか。
a)脳梗塞
b)心筋梗塞
c)肺塞栓症
d)肝機能障害
e)末梢神経障害

解答:e

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問題030 ポリープ状異型腺筋腫(atypical polypoid adenomyoma)で誤っているのはどれか。
a)閉経前の女性に好発する。
b)発生部位で最も多いのは子宮底部である。
c)腺癌の筋層浸潤と鑑別が必要である。
d)扁平上皮化生を伴うことが多い。
e)腺癌への進展例が報告されている。

解答:b

ポリープ状異型腺筋腫(APA)
 ほとんどが閉経前の未経産婦に発症し、不正出血で発見される。定義は「扁平上皮化生を伴う不規則な異型内膜腺の増殖とその周囲を取り囲む平滑筋の密な増殖によって特徴づけられるポリープ状病変」である。粘膜下筋腫と臨床的には区別できないが、病理像で、子宮内膜上皮で構成された大小多数の腺腔が平滑筋束内に分け入って分布する。類内膜癌の筋層浸潤と誤診される場合もある。内膜癌との共存や癌化することもあるが、大部分は良性腫瘍である。


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題011~問題020

2007年10月06日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題011~問題020】

問題011 子宮頸部細胞診クラスⅣから推定される病変はどれか。
a)軽度異形成
b)中等度異形成
c)高度異形成
d)上皮内癌
e)微小浸潤癌

問題012 子宮頸部上皮内癌の細胞診所見で正しいのはどれか。
(1)平滑な核縁
(2)著しい核の大小不同
(3)出血壊死性の背景
(4)錯角化または異角化
(5)傍基底型の癌細胞

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

問題013 新コルポスコピー所見分類(日本婦人科腫瘍学会、2005)で正しいのはどれか。
a)ヨード塗布試験が必須である。
b)移行帯は異常所見に分類される。
c)白色上皮は軽度または高度にgradingする。
d)白斑は異常所見から除かれた。
e)HPV感染所見を特別に分類する。

問題014 子宮頸部にみられたポリープ状の病変である。組織診断はどれか。(図 1)
a)尖形コンジローマ
b)正常頚管腺上皮
c)微小頚管腺過形成
d)腺癌
e)扁平上皮癌

【問題14-図1】

問題015 子宮頸部腫瘤の生検標本である。組織診断はどれか。(図 2)
a)内頸部型ポリープ
b)正常重曹扁平上皮
c)扁平上皮癌
d)腺癌
e)尖形コンジローマ

【問題15-図2】

問題016 子宮頸部のヒトパピローマウイルス(HPV)感染で正しいのはどれか。
a)HPVは異形成の90%以上に検出される。
b)HPV感染の有無は血清抗体価で判定できる。
c)HPVの型分布は世界中でほぼ同じである。
d)ハイリスクHPVをもつ異形成の約90%が上皮内癌へ進展する。
e)HPVワクチンはタイプ非特異的に感染予防効果をもつ。

問題017 子宮頚癌発生におけるハイリスク型HPVはどれか。
a)11型
b)42型
c)43型
d)44型
e)52型

問題018 ヒトパピローマウイルス(HIV)で正しいのはどれか。
a)頚部扁平上皮癌で最も高頻度に検出されるHPVは52型である。
b)頚部腺癌で最も高頻度に検出されるHPVは18型である。
c)細胞診に異常のない女性でのHPV検出頻度は約50%である。
d)koilocytosisを示す細胞ではHPVは検出されない。
e)妊娠中にはHPVの増殖能(replication)が低下する。

問題019 子宮頸癌の臨床進行期分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)進行期決定に迷う場合は重い方に分類する。
b)進行期の決定にはCT所見とMRI所見を参考にする。
c)術前診断0期で摘出子宮に微小浸潤癌があればⅠa期とする。
d)膀胱内洗浄液中に癌細胞があればⅣa期とする。
e)進行期決定に頚部円錐切除の病理所見は考慮しない。

問題020 子宮頚癌Ⅰa2期(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)浸潤の深さ3 mmを超え5 mm以内で広がり10mmを超えない。
b)脈管侵襲が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
c)癒合浸潤が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
d)広がりの計測には微小浸潤巣の最大の幅を計測する。
e)深さの計測の基点は浸潤巣直上の最も深い表層基底膜とする。

―――――――――――――――――――――――――

解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題011 子宮頸部細胞診クラスⅣから推定される病変はどれか。
a)軽度異形成
b)中等度異形成
c)高度異形成
d)上皮内癌
e)微小浸潤癌

解答:d

日母クラス分類
 Ⅰ: 正常である。
 Ⅱ: 異常細胞を認めるが良性である。
 Ⅲa: 軽度(~中等度)異形成を想定する。
 Ⅲb: 高度異形成を想定する。
 Ⅳ: 上皮内癌を想定する。
 Ⅴ: 浸潤癌(微小浸潤癌も含む)を想定する。

******

問題012 子宮頸部上皮内癌の細胞診所見で正しいのはどれか。
(1)平滑な核縁
(2)著しい核の大小不同
(3)出血壊死性の背景
(4)錯角化または異角化
(5)傍基底型の癌細胞

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

解答:b

上皮内癌細胞の形態的特長としては、細胞分化が少なく、主として傍基底型の異型細胞が集族性に出現する。細胞は、その分化程度の差により卵円形から紡錘形までの多彩な形態をとる。核クロマチンは増量し、粗大顆粒状を示す。N/C比は増大し、ときに裸核を見る。背景は清明である。

******

問題013 新コルポスコピー所見分類(日本婦人科腫瘍学会、2005)で正しいのはどれか。
a)ヨード塗布試験が必須である。
b)移行帯は異常所見に分類される。
c)白色上皮は軽度または高度にgradingする。
d)白斑は異常所見から除かれた。
e)HPV感染所見を特別に分類する。

解答:c

b)移行帯は正常所見に分類される。

新コルポスコピー所見分類:日本婦人科腫瘍学会2005
A) 正常所見 NCF
 1 扁平上皮  S
 2 円柱上皮  C
 3 移行帯  T
B) 異常所見  ACF
 1 白色上皮  W
    軽度所見 W1
    高度所見 W2
       腺口型(腺口所見が主体の場合) Go
    軽度所見 Go1
    高度所見 Go2
 2 モザイク  M
    軽度所見 M1
    高度所見 M2
 3 赤点斑  P
    軽度所見 P1
    高度所見 P2
 4 白斑  L
 5 異型血管域  aV
C) 浸潤癌所見 IC
 コルポスコピー浸潤癌所見 IC-a
 肉眼浸潤癌所見 IC-b
D) 不適例  UCF
 異常所見を随伴しない不適例 UCF-a
 異常所見を随伴する  UVF-b
E) その他の非癌所見 MF
 1 コンジローマ Con
 2 びらん Er
 3 炎症 Inf
 4 萎縮 Atr
 5 ポリープ Po
 6 潰瘍 Ul
 7 その他 etc

******

問題014 子宮頸部にみられたポリープ状の病変である。組織診断はどれか。(図 1)
a)尖形コンジローマ
b)正常頚管腺上皮
c)微小頚管腺過形成
d)腺癌
e)扁平上皮癌

【問題14-図1】

解答:c

******

問題015 子宮頸部腫瘤の生検標本である。組織診断はどれか。(図 2)
a)内頸部型ポリープ
b)正常重曹扁平上皮
c)扁平上皮癌
d)腺癌
e)尖形コンジローマ

【問題15-図2】

解答:e

******

問題016 子宮頸部のヒトパピローマウイルス(HPV)感染で正しいのはどれか。
a)HPVは異形成の90%以上に検出される。
b)HPV感染の有無は血清抗体価で判定できる。
c)HPVの型分布は世界中でほぼ同じである。
d)ハイリスクHPVをもつ異形成の約90%が上皮内癌へ進展する。
e)HPVワクチンはタイプ非特異的に感染予防効果をもつ。

解答:a

******

問題017 子宮頚癌発生におけるハイリスク型HPVはどれか。
a)11型
b)42型
c)43型
d)44型
e)52型

解答:e

HPVは子宮頸癌発症との関連性が確認されている。16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型などがハイリスク型である。

******

問題018 ヒトパピローマウイルス(HIV)で正しいのはどれか。
a)頚部扁平上皮癌で最も高頻度に検出されるHPVは52型である。
b)頚部腺癌で最も高頻度に検出されるHPVは18型である。
c)細胞診に異常のない女性でのHPV検出頻度は約50%である。
d)koilocytosisを示す細胞ではHPVは検出されない。
e)妊娠中にはHPVの増殖能(replication)が低下する。

解答:b

a)頚部扁平上皮癌では16型が最も高頻度である。
c)若年者には、HPV感染は30%前後で、50歳以降では5 %程度である。

******

問題019 子宮頸癌の臨床進行期分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)進行期決定に迷う場合は重い方に分類する。
b)進行期の決定にはCT所見とMRI所見を参考にする。
c)術前診断0期で摘出子宮に微小浸潤癌があればⅠa期とする。
d)膀胱内洗浄液中に癌細胞があればⅣa期とする。
e)進行期決定に頚部円錐切除の病理所見は考慮しない。

解答:c

******

問題020 子宮頚癌Ⅰa2期(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)浸潤の深さ3 mmを超え5 mm以内で広がり10mmを超えない。
b)脈管侵襲が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
c)癒合浸潤が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
d)広がりの計測には微小浸潤巣の最大の幅を計測する。
e)深さの計測の基点は浸潤巣直上の最も深い表層基底膜とする。

解答:d

a)浸潤の深さ3 mmを超えるが5 mm以内で、広がりが7 mmを超えないもの。

b)c)癒合浸潤、脈管侵襲がある場合はその旨記載する。進行期の判定には採用しない。

e)深さの判定は浸潤の開始している基底膜部位から最も深い部位までの距離となる。

子宮頸癌臨床進行期分類
(日本産科婦人科学会1997 年,FIGO 1994 年)

0 期:上皮内癌(注1)

Ⅰ期:癌が子宮頸部に限局するもの(体部浸潤の有無は考慮しない)。
 Ⅰa 期:組織学的にのみ診断できる浸潤癌。肉眼的に明らかな病巣はたとえ表層浸潤であってもⅠ b 期とする。浸潤は、計測による間質浸潤の深さが5mm 以内で、縦軸方向の広がりが7mmをこえないものとする。浸潤の深さは、浸潤がみられる表層上皮の基底膜(注2)より計測して5mm をこえないものとする。脈管(静脈またはリンパ管)侵襲があっても進行期は変更しない。
  Ⅰa1期:間質浸潤の深さが3mm 以内で,広がりが7mm をこえないもの。
  Ⅰa2期:間質浸潤の深さが3mm をこえるが5mm 以内で、広がりが7mm をこえないもの。
 Ⅰb期:臨床的に明らかな病巣が子宮頸部に限局するもの、または臨床的に明らかではないがⅠ a期をこえるもの。
  Ⅰb1期:病巣が4cm 以内のもの。
  Ⅰb2期:病巣が4cm をこえるもの。

Ⅱ期:癌が頸部をこえて広がっているが、骨盤壁または腟壁下1/3には達していないもの。
  Ⅱa期:腟壁浸潤が認められるが、子宮傍組織浸潤は認められないもの。
  Ⅱb期:子宮傍組織浸潤の認められるもの。

Ⅲ期:癌浸潤が骨盤壁にまで達するもので、腫瘍塊と骨盤壁との間にcancer free space を残さない。または、腟壁浸潤が下1/3 に達するもの。
 Ⅲa期:腟壁浸潤は下1/3 に達するが、子宮傍組織浸潤は骨盤壁にまでは達していないもの。
 Ⅲb期:子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの。または、明らかな水腎症や無機能腎を認めるもの。
 注:ただし、明らかに癌以外の原因によると考えられる水腎症や無機能腎は除く。

Ⅳ期:癌が小骨盤腔をこえて広がるか、膀胱、直腸の粘膜を侵すもの。
 Ⅳa期:膀胱、直腸の粘膜への浸潤があるもの。
 Ⅳb期:小骨盤腔をこえて広がるもの。

[注1]FIGO分類の0期には上皮内癌とCIN3が併記してある。
[注2]浸潤の深さについてFIGO分類では腺上皮の基底膜からの計測も併記されている。

分類にあたっての注意事項

(1)臨床進行期分類は原則として治療開始前に決定し、以後これを変更してはならない。

(2)進行期分類の決定に迷う場合には軽い方の進行期に分類する。FIGOでは習熟した医師による麻酔下の診察を勧めている。

(3)進行期決定のために行われる臨床検査は以下のものである。
 a)触診、視診、コルポスコピー、診査切除、頸管内掻爬、子宮鏡、膀胱鏡、直腸鏡、排泄性尿路造影、肺および骨のX 線検査。
 b)子宮頸部円錐切除術は,臨床検査とみなす。

(4)リンパ管造影、動・静脈撮影、腹腔鏡、CT、MRI 等による検査結果は治療計画決定に使用するのは構わないが、進行期の決定に際しては、これらの結果に影響されてはならない。その理由は、これらの検査が日常的検査として行われるには至っておらず、検査結果の解釈に統一性がないからである。
 CT や超音波検査で転移が疑われるリンパ節の穿刺吸引細胞診は、治療計画に有用と思われるが、進行期決定のための臨床検査とはしない。

(5)Ⅰa1期とⅠa2期の診断は、摘出組織の顕微鏡検査により行われるので、病巣がすべて含まれる円錐切除標本により診断することが望ましい。
 Ⅰa期の浸潤の深さは、浸潤が起こってきた表層上皮の基底膜から計測して5mm をこえないものとする。浸潤の水平方向の広がり、すなわち縦軸方向の広がりは7mm をこえないものとする。静脈であれリンパ管であれ、脈管侵襲があっても進行期は変更しない。脈管侵襲や癒合浸潤が認められるものは将来治療方針の決定に影響するかもしれないので別途記載する。
 ただし、子宮頸部腺癌についてはⅠa1,Ⅰa2期の細分類は行わない。

(6)術前に非癌、上皮内癌、またはⅠa期と判断して手術を行い、摘出子宮にⅠa期、Ⅰb期の癌を認めた場合は(1)の規定にかかわらず、それぞれⅠa期,Ⅰb期とする。従来用いられていたⅠb期“occ”は省かれている。

(7)術前に非癌、上皮内癌、またはⅠa期と判断して子宮摘出を行ったところ、癌が子宮をこえて広がっていた場合に従来は一括して“Ch”群としていたが、このような症例は臨床進行期の分類ができないので治療統計には含まれない。これらは別に報告する。

(8)進行期分類に際しては子宮頸癌の体部浸潤の有無は考慮しない。

(9)Ⅲb期とする症例は子宮傍組織が結節状となって骨盤壁に及ぶか原発腫瘍そのものが骨盤壁に達した場合であり、骨盤壁に固着した腫瘍があっても子宮頸部との間にfree space があればⅢ b 期としない。

(10)膀胱または直腸浸潤が疑われるときは、生検により組織学的に確かめなければならない。膀胱内洗浄液中への癌細胞の出現、あるいは胞状浮腫の存在だけではⅣa期に入れてはならない。膀胱鏡所見上、隆起と裂溝が認められ、かつ、これが触診によって腫瘍と硬く結びついている場合、組織診をしなくてもⅣa期に入れてよい。


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題001~問題010

2007年10月05日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題001~問題010】

問題001 外陰病変で下床に腺癌を伴うことがあるのはどれか。
a)vulvar intraepithelial neoplasia (VIN)
b)Bowen様丘疹
c)Paget病
d)硬化性苔癬
e)悪性黒色腫

問題002 外陰癌で誤っているのはどれか。
a)60~70歳代の女性に頻度が高い。
b)角化型扁平上皮癌が大部分を占める。
c)最も頻度が高い部位は腟前庭である。
d)進行癌では鼠径リンパ節転移が多い。
e)Ⅰ期癌には手術療法が第一選択である。

問題003 Paget病で誤っているのはどれか。
a)外陰掻痒感や違和感を訴えることが多い。
b)スクリーニングに擦過細胞診が有用である。
c)術前評価では病巣周囲の多数の生検を行う。
d)手術では病巣辺縁から3 cm外周を皮切する。
e)約10%は間質浸潤を伴う浸潤Paget病である。

問題004 外陰癌のFIGO進行期分類(1994)で誤っているのはどれか。
a)外陰に限局し、最大径1 cmで間質浸潤の深さ3 mm以下であればⅠa期である。
b)会陰に限局し、最大径3 cmであればⅡ期である。
c)肛門への浸潤があればⅢ期である。
d)両側の鼠径リンパ節に転移があればⅣa期である。
e)骨盤リンパ節に転移があればⅣb期である。

問題005 外陰癌のリンパ行性転移で正しいのはどれか。
(1)片側に限局する2 cm未満の腫瘍では、対側の浅鼠径節への転移は少ない。
(2)原発腫瘍の大きさが2 cm未満であれば、リンパ節転移は5%以下である。
(3)Cloquet節は、浅鼠径節のうちで最も内側に存在するリンパ節である。
(4)リンパ節転移は、浅鼠径節、深部大腿節、骨盤節の順に進展することが多い。
(5)浅鼠径節に転移を認める場合、その20~25%で骨盤節への転移がある。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題006 外陰癌Ⅰa期の標準的治療はどれか。
a)レーザー蒸散
b)根治的外陰部分切除(radical local excision)
c)根治的外陰部分切除+患側鼠径リンパ節郭清
d)広汎外陰切除(radical vulvectomy)+両側鼠径リンパ節郭清
e)根治的放射線治療

問題007 腟癌で正しいのはどれか。
a)40歳代の女性に最も頻度が高い。
b)組織型では腺扁平上皮癌が最も多い。
c)発生部位では中1/3に最も頻度が高い。
d)下1/3に発生した癌は鼠径リンパ節に転移する。
e)Diethylstilbesterolを服用した女性に腺癌が発生する。

問題008 腟癌の臨床進行期(FIGO)で正しいのはどれか。
(1)腟壁に限局していればⅠ期である。
(2)傍組織に浸潤するが骨盤壁に達していないとⅡ期である。
(3)傍組織浸潤が骨盤壁に達しているとⅢ期である。
(4)外子宮口に達していればⅢ期である。
(5)膀胱に胞状浮腫があればⅣ期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題009 子宮頚癌のリスク因子でないのはどれか。
a)HPV
b)喫煙
c)初交年齢
d)アルコール
e)性パートナー数

問題010 頚癌検診における細胞採取で正しいのはどれか。
a)腟円蓋から細胞を採取する。
b)子宮腟部表面と頚管内から細胞を採取する。
c)妊娠中は偽陽性が多いので避けるほうがよい
d)スライドグラスへ塗布した後30分以内に固定する。
e)自己採取による癌検出率は通常の検診と同様である。

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解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題001 外陰病変で下床に腺癌を伴うことがあるのはどれか。
a)vulvar intraepithelial neoplasia (VIN)
b)Bowen様丘疹
c)Paget病
d)硬化性苔癬
e)悪性黒色腫

解答:c

c)Paget病は通常は扁平上皮に限局する異型腺細胞からなる癌であるが、約10~20%の症例においてPaget病変下に腺癌を伴う(Fanning、1975)。

******

問題002 外陰癌で誤っているのはどれか。
a)60~70歳代の女性に頻度が高い。
b)角化型扁平上皮癌が大部分を占める。
c)最も頻度が高い部位は腟前庭である。
d)進行癌では鼠径リンパ節転移が多い。
e)Ⅰ期癌には手術療法が第一選択である。

解答:c

c)外陰の扁平上皮癌の発生部位は、大陰唇および小陰唇(60%)、陰核(15%)、会陰(10%)である。症例の約10%では、病変が拡がり過ぎて発生部位を特定できない。症例の5%は多中心性である。(Berek & Novak's Gynecology 14th Ed, p.1553)

******

問題003 Paget病で誤っているのはどれか。
a)外陰掻痒感や違和感を訴えることが多い。
b)スクリーニングに擦過細胞診が有用である。
c)術前評価では病巣周囲の多数の生検を行う。
d)手術では病巣辺縁から3 cm外周を皮切する。
e)約10%は間質浸潤を伴う浸潤Paget病である。

解答:e

臨床的には浸潤が疑われなくても、症例の約30%で病理組織学的に間質浸潤が認められる。(Atlas of Gynecologic Surgical Pathology, p32)

******

問題004 外陰癌のFIGO進行期分類(1994)で誤っているのはどれか。
a)外陰に限局し、最大径1 cmで間質浸潤の深さ3 mm以下であればⅠa期である。
b)会陰に限局し、最大径3 cmであればⅡ期である。
c)肛門への浸潤があればⅢ期である。
d)両側の鼠径リンパ節に転移があればⅣa期である。
e)骨盤リンパ節に転移があればⅣb期である。

解答:a

a)Ⅰb期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mmを超えるもの。

【外陰癌のFIGO進行期分類】
0 期:上皮内癌
Ⅰ期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍。リンパ節転移はない。
 Ⅰa期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mm以下のもの※。
 Ⅰb期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mmを超えるもの。
 ※浸潤の深さは隣接した最も表層に近い真皮乳頭の上皮間質接合部から浸潤先端までの距離とする。
Ⅱ期:外陰および/または会陰のみに限局した最大径2cmを超える腫瘍。リンパ節転移はない。
Ⅲ期:腫瘍の大きさを問わず、
(1) 隣接する下部尿道および/または膣または肛門に進展するもの。
  および/または
(2) 一側の所属リンパ節転移があるもの。
 所属リンパ節:大腿リンパ節、鼠径リンパ節
Ⅳa期:腫瘍が次のいずれかに浸潤するもの:上部尿道、膀胱粘膜、直腸粘膜、骨盤骨、および/または、両側の所属リンパ節転移があるもの。
Ⅳb期:骨盤リンパ節を含むいずれかの部位に遠隔転移があるもの。

******

問題005 外陰癌のリンパ行性転移で正しいのはどれか。
(1)片側に限局する2 cm未満の腫瘍では、対側の浅鼠径節への転移は少ない。
(2)原発腫瘍の大きさが2 cm未満であれば、リンパ節転移は5%以下である。
(3)Cloquet節は、浅鼠径節のうちで最も内側に存在するリンパ節である。
(4)リンパ節転移は、浅鼠径節、深部大腿節、骨盤節の順に進展することが多い。
(5)浅鼠径節に転移を認める場合、その20~25%で骨盤節への転移がある。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:c

(2)腫瘍径<1.0cm リンパ節転移18.0%
      腫瘍径 1~2cm リンパ節転移19.4%

******

問題006 外陰癌Ⅰa期の標準的治療はどれか。
a)レーザー蒸散
b)根治的外陰部分切除(radical local excision)
c)根治的外陰部分切除+患側鼠径リンパ節郭清
d)広汎外陰切除(radical vulvectomy)+両側鼠径リンパ節郭清
e)根治的放射線治療

解答:b

Ⅰa 期では鼠径リンパ節転移はないと考えられ、最低1cm 以上病変から離れて切除する根治的外陰部分切除術のみでよいと考えられる。

******

問題007 腟癌で正しいのはどれか。
a)40歳代の女性に最も頻度が高い。
b)組織型では腺扁平上皮癌が最も多い。
c)発生部位では中1/3に最も頻度が高い。
d)下1/3に発生した癌は鼠径リンパ節に転移する。
e)Diethylstilbesterolを服用した女性に腺癌が発生する。

解答:d

a)原発性腟癌の好発年齢は50~65歳で、平均年齢は約60歳である。

b)腟悪性腫瘍の組織型別頻度では扁平上皮癌が大多数を占めている。

c)好発部位は腟の上部1/3である。

d)所属リンパ節
  腟の上部2/3の場合:骨盤リンパ節
  腟の下部1/3の場合:鼠径リンパ節

e)欧米では、かつて切迫流産治療のためにDES (Diethylstilbesterol)が投与された妊婦から生まれた女児に、腟癌(明細胞癌)が好発し、大きな社会問題となった。

******

問題008 腟癌の臨床進行期(FIGO)で正しいのはどれか。
(1)腟壁に限局していればⅠ期である。
(2)傍組織に浸潤するが骨盤壁に達していないとⅡ期である。
(3)傍組織浸潤が骨盤壁に達しているとⅢ期である。
(4)外子宮口に達していればⅢ期である。
(5)膀胱に胞状浮腫があればⅣ期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:a

(4)腟病変が子宮腟部を侵しかつ外子宮口に及ぶものは子宮頸癌に、外陰を侵すものは外陰癌にそれぞれ分類される。

(5)Ⅳa期:膀胱、または直腸の粘膜に浸潤する腫瘍および/または小骨盤を超えて進展する腫瘍   
 注:胞状浮腫のみではⅣ期としない

腟癌の臨床進行期(FIGO)
  上皮内癌(浸潤前癌)
  腟に限局する腫瘍
  腟傍組織に浸潤するが骨盤壁に進展しない腫瘍
  骨盤壁に進展する腫瘍
Ⅳa 膀胱、または直腸の粘膜に浸潤する腫瘍
   および/または小骨盤を超えて進展する腫瘍
       (注:胞状浮腫のみではⅣ期としない)
Ⅳb 遠隔転移
所属リンパ節
 腟の上部2/3の場合:骨盤リンパ節
 腟の下部1/3の場合:鼠径リンパ節

******

問題009 子宮頚癌のリスク因子でないのはどれか。
a)HPV
b)喫煙
c)初交年齢
d)アルコール
e)性パートナー数

解答:d

子宮頸癌は、主に前癌病変である異形成から進行し発生すると考えられている。この前癌病変のリスクが、HPV感染、HIV感染、喫煙により高くなる事が報告されている。またこれらの感染は、複数のsex partnerをもつ者、partner が複数のsex partnerをもつ者、で多くなると考えられている。

******

問題010 頚癌検診における細胞採取で正しいのはどれか。
a)腟円蓋から細胞を採取する。
b)子宮腟部表面と頚管内から細胞を採取する。
c)妊娠中は偽陽性が多いので避けるほうがよい
d)スライドグラスへ塗布した後30分以内に固定する。
e)自己採取による癌検出率は通常の検診と同様である

解答:b

子宮頸部の異形成、上皮内癌、微小浸潤癌の発生部位は扁平円柱上皮境界であり、当該部位の細胞が確実に採取されている場合には、標本上に外頸部由来の扁平上皮細胞と頸管内膜由来の円柱上皮細胞の両者が観察される(どちらか一方の細胞を欠く場合は、診断に不適当な標本と判定される)。


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

2007年10月05日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)
問題と解答例

問題001~問題010

問題011~問題020

問題021~問題030

問題031~問題040

問題041~問題050

問題051~問題060

問題061~問題070

問題071~問題080

問題081~問題090

問題091~問題100


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題001~問題010

2007年08月04日 | 婦人科腫瘍

問題001 外陰病変で下床に腺癌を伴うことがあるのはどれか。
a)vulvar intraepithelial neoplasia (VIN)
b)Bowen様丘疹
c)Paget病
d)硬化性苔癬
e)悪性黒色腫

解答:c

c)Paget病は通常は扁平上皮に限局する異型腺細胞からなる癌であるが、約10~20%の症例においてPaget病変下に腺癌を伴う(Fanning、1975)。

******

問題002 外陰癌で誤っているのはどれか。
a)60~70歳代の女性に頻度が高い。
b)角化型扁平上皮癌が大部分を占める。
c)最も頻度が高い部位は腟前庭である。
d)進行癌では鼠径リンパ節転移が多い。
e)Ⅰ期癌には手術療法が第一選択である。

解答:c

c)外陰の扁平上皮癌の発生部位は、大陰唇および小陰唇(60%)、陰核(15%)、会陰(10%)である。症例の約10%では、病変が拡がり過ぎて発生部位を特定できない。症例の5%は多中心性である。(Berek & Novak's Gynecology 14th Ed, p.1553)

******

問題003 Paget病で誤っているのはどれか。
a)外陰掻痒感や違和感を訴えることが多い。
b)スクリーニングに擦過細胞診が有用である。
c)術前評価では病巣周囲の多数の生検を行う。
d)手術では病巣辺縁から3 cm外周を皮切する。
e)約10%は間質浸潤を伴う浸潤Paget病である。

解答:e

臨床的には浸潤が疑われなくても、症例の約30%で病理組織学的に間質浸潤が認められる。(Atlas of Gynecologic Surgical Pathology, p32)

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問題004 外陰癌のFIGO進行期分類(1994)で誤っているのはどれか。
a)外陰に限局し、最大径1 cmで間質浸潤の深さ3 mm以下であればⅠa期である。
b)会陰に限局し、最大径3 cmであればⅡ期である。
c)肛門への浸潤があればⅢ期である。
d)両側の鼠径リンパ節に転移があればⅣa期である。
e)骨盤リンパ節に転移があればⅣb期である。

解答:a

a)Ⅰb期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mmを超えるもの。

外陰癌のFIGO進行期分類1994年
0期:上皮内癌
Ⅰ期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍。リンパ節転移はない。
 Ⅰa期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mm以下のもの※。
 Ⅰb期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mmを超えるもの。
 ※浸潤の深さは隣接した最も表層に近い真皮乳頭の上皮間質接合部から浸潤先端までの距離とする。
Ⅱ期:外陰および/または会陰のみに限局した最大径2cmを超える腫瘍。リンパ節転移はない。
Ⅲ期:腫瘍の大きさを問わず、
(1) 隣接する下部尿道および/または膣または肛門に進展するもの。
  および/または
(2) 一側の所属リンパ節転移があるもの。
 所属リンパ節:大腿リンパ節鼠径リンパ節
Ⅳa期:腫瘍が次のいずれかに浸潤するもの:
上部尿道、膀胱粘膜、直腸粘膜、骨盤骨および/または両側の所属リンパ節転移があるもの。
Ⅳb期:骨盤リンパ節を含むいずれかの部位に遠隔転移があるもの

******

問題005 外陰癌のリンパ行性転移で正しいのはどれか。
(1)片側に限局する2 cm未満の腫瘍では、対側の浅鼠径節への転移は少ない。
(2)原発腫瘍の大きさが2 cm未満であれば、リンパ節転移は5%以下である。
(3)Cloquet節は、浅鼠径節のうちで最も内側に存在するリンパ節である。
(4)リンパ節転移は、浅鼠径節、深部大腿節、骨盤節の順に進展することが多い。
(5)浅鼠径節に転移を認める場合、その20~25%で骨盤節への転移がある。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:c

(2)腫瘍径<1.0cm リンパ節転移18.0%
      腫瘍径 1~2cm リンパ節転移19.4%

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問題006 外陰癌Ⅰa期の標準的治療はどれか。
a)レーザー蒸散
b)根治的外陰部分切除(radical local excision)
c)根治的外陰部分切除+患側鼠径リンパ節郭清
d)広汎外陰切除(radical vulvectomy)+両側鼠径リンパ節郭清
e)根治的放射線治療

解答:b

Ⅰa 期では鼠径リンパ節転移はないと考えられ、最低1cm 以上病変から離れて切除する根治的外陰部分切除術のみでよいと考えられる。

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問題007 腟癌で正しいのはどれか。
a)40歳代の女性に最も頻度が高い。
b)組織型では腺扁平上皮癌が最も多い。
c)発生部位では中1/3に最も頻度が高い。
d)下1/3に発生した癌は鼠径リンパ節に転移する。
e)Diethylstilbesterolを服用した女性に腺癌が発生する。

解答:d

a)原発性腟癌の好発年齢は50~65歳で、平均年齢は約60歳である。

b)腟悪性腫瘍の組織型別頻度では扁平上皮癌が大多数を占めている。

c)好発部位は腟の上部1/3である。

d)所属リンパ節
  腟の上部2/3の場合:骨盤リンパ節
  腟の下部1/3の場合:鼠径リンパ節

e)欧米では、かつて切迫流産治療のためにDES (Diethylstilbesterol)が投与された妊婦から生まれた女児に、腟癌(明細胞癌)が好発し、大きな社会問題となった。

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問題008 腟癌の臨床進行期(FIGO)で正しいのはどれか。
(1)腟壁に限局していればⅠ期である。
(2)傍組織に浸潤するが骨盤壁に達していないとⅡ期である。
(3)傍組織浸潤が骨盤壁に達しているとⅢ期である。
(4)外子宮口に達していればⅢ期である。
(5)膀胱に胞状浮腫があればⅣ期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:a

(4)腟病変が子宮腟部を侵しかつ外子宮口に及ぶものは子宮頸癌に、外陰を侵すものは外陰癌にそれぞれ分類される。

(5)Ⅳa期:膀胱、または直腸の粘膜に浸潤する腫瘍および/または小骨盤を超えて進展する腫瘍   
 注:胞状浮腫のみではⅣ期としない

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問題009 子宮頚癌のリスク因子でないのはどれか。
a)HPV
b)喫煙
c)初交年齢
d)アルコール
e)性パートナー数

解答:d

子宮頸癌は、主に前癌病変である異形成から進行し発生すると考えられている。この前癌病変のリスクが、HPV感染、HIV感染、喫煙により高くなる事が報告されている。またこれらの感染は、複数のsex partnerをもつ者、partner が複数のsex partnerをもつ者、で多くなると考えられている。

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問題010 頚癌検診における細胞採取で正しいのはどれか。
a)腟円蓋から細胞を採取する。
b)子宮腟部表面と頚管内から細胞を採取する。
c)妊娠中は偽陽性が多いので避けるほうがよい
d)スライドグラスへ塗布した後30分以内に固定する。
e)自己採取による癌検出率は通常の検診と同様である

解答:b

子宮頸部の異形成、上皮内癌、微小浸潤癌の発生部位は扁平円柱上皮境界であり、当該部位の細胞が確実に採取されている場合には、標本上に外頸部由来の扁平上皮細胞と頸管内膜由来の円柱上皮細胞の両者が観察される(どちらか一方の細胞を欠く場合は、診断に不適当な標本と判定される)。


補足(子宮頸がん予防ワクチンについて)

2007年06月11日 | 婦人科腫瘍

コメント(私見):

米国でも子宮頸がんが原因で毎年3700人が死亡していることから、全米で約20州が、十代の女性への子宮頸がん予防ワクチン接種を義務化することを検討しているとのことです。しかし、『若年層の性行為を助長する』などの批判もあって、ワクチン接種義務化に関して米国で大きな論争になっているそうです。

ワクチン接種の費用が約360ドルと高価なことも問題のようです。また、開発されたばかりのワクチンなので、副作用や免疫持続期間などに関するデータがまだ多く得られてないのも問題です。

現在、米国で承認されている子宮頸がん予防ワクチンは、米国メルク社製の「ガーダシル」のみで、HPV16、HPV18に対する感染予防効果が認められています。それに対し、最近、オーストラリアで初めて承認された英国グラクソ・スミスクライン社製の「サーバリックス」だと、HPV16、HPV18以外の高リスクHPVに対する感染予防効果も認められ、免疫持続期間も長いというようなデータが得られているそうです(日本臨床細胞学会ランチョンセミナー、金沢大学・井上教授)。今後、「サーバリックス」の方も世界各国で承認されることになるでしょうし、製薬会社間の激しいシェア争いが世界中で展開されることになるのかもしれません。

日本でも、十代後半の若者のクラミジア感染症の急増が問題となっています。十代後半で子宮頚部細胞診で異常がみつかる者も少なくないです。子宮頸がん予防ワクチンは、HPVに曝露される前に接種する必要があるので、ワクチン接種を義務化するのであれば、接種時期は十代前半でないと意味がないかもしれません。日本でも、近い将来、このワクチンの接種を義務化するかどうか?に関して論争になるかもしれません。

この子宮頸がん予防ワクチンの接種は、将来的な戦略として、次世代での子宮頸がんの発生率を減らそうという試みです。すでに現在がん年齢に達している人たちの場合は、毎年、子宮頸がん検診(細胞診検査)を受診していく必要があります。

参考:子宮頸がん予防ワクチンについて

****** 産経新聞、2007年4月4日

子宮頸がんワクチン、10代に義務付け 性行為助長と米で論争

 【ニューヨーク=長戸雅子】性感染症を主因とする子宮頸(けい)がんの予防接種を、女子生徒に義務付けることの適否をめぐる論争が、米国で続いている。米医薬品大手が開発した初の子宮頸がん予防ワクチンの効果が期待される一方、接種義務年齢を10代としたため、「若年層の性行為を助長する」という批判を呼んだためだ。副作用を懸念する声もあり、各州で始まった接種を義務づける動きは、ここに来て足踏み状態となっている。

 このワクチンはメルク社製の「ガーダシル」(対象年齢は9歳から26歳)。女性がかかりやすい子宮頸がんの発症原因の70%を占めるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染予防に特化した機能を持つ。同社が行った臨床実験でほぼ100%の予防効果が得られたとして、昨年6月、申請から半年足らずで米食品医薬品局(FDA)にスピード承認された。

 HPVは主に性行為で感染する。米疾病対策センター(CDC)によると、HPVには米国内で毎年620万人が感染するとされる。一方、毎年新たに約9700人が子宮頸がんと診断され、3700人が死亡している。

 こうした現状にもかかわらず、保護者らが反発したのは、多くの州がワクチン接種を10代に義務付けようとしたためだ。「予防ができたと不適切な性行為容認につながりかねない」「親の監督権を侵害している」とする意見が続出した。

 なかでも女子中学生への接種を義務付けたテキサス州では、ペリー州知事に対し州議会が、知事命令を無効とする法案を提出。加えてペリー知事の元側近がメルク社のロビー活動をしていることも不信を呼び、知事は支持基盤の保守層から連日、抗議を受けている。

 一方、メルク社は2004年に、当時の主力商品、関節炎鎮痛剤バイオックスの副作用問題で、同剤の販売を中止したことがある。今回のガーダシルについても「3年の臨床検査期間では免疫がどれぐらい継続し、長期的なリスクがあるかどうかについての治験が得られない」と、副作用を懸念する声は根強い。

 ワクチンの効果を得るには3回の接種が必要で、費用も約360ドルに上ることも、接種義務化の動きを阻んでいる。

 現在、全米で約20州が接種義務化を検討中だが、フロリダ州では、共和党議員の強い反対で提案者の民主党議員が年内の法案審議を断念した。医学と倫理の問題に政治的思惑も絡んで、事態はさらに複雑化している。

(産経新聞、2007年4月4日)