ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

子宮頸がん予防ワクチンについて

2007年06月10日 | 婦人科腫瘍

コメント:

子宮頸がんは世界において45歳以下の女性の死亡原因の2番目となっており、毎年27万人以上がこの病気で亡くなっています。子宮頸がんは、パピローマ・ウイルスの持続感染からがんへ進行するとされています。わが国でも、子宮頸がんによって年間約2400人が死亡しています。

現時点において、子宮頸がんで死亡することを免れるためには、年に1度の子宮頸がん検診(子宮頚部の細胞診検査)を受診することが最も有効とされています。しかしながら、欧米での子宮頸がん検診の受診率が7~8割であるのに対し、わが国の子宮頸がん検診の受診率は2割程度にとどまっています。

米国メルク社が開発した初の子宮頸がん予防ワクチン「ガーダシル」が、昨年6月に米国で承認され、9月には欧州でも承認されました。最近、英国グラクソ・スミスクライン社が開発した子宮頸がん予防ワクチン「サーバリックス」が、世界で初めてオーストラリアで承認されました。日本でも、現在、これらの子宮頚がん予防ワクチンの臨床試験が進行中ですから、数年以内には使用可能となるはずです。

今後、これらの子宮頸がん予防ワクチンが世界的に普及すれば、将来的には子宮頸がんがほとんど撲滅される可能性もあります。

参考:

子宮頚がんワクチン 米国で認可

子宮頸癌について

子宮頸がん、最近の話題

****** 薬事日報、2007年4月27日

【万有製薬】子宮頸癌ワクチン「ガーダシル」‐今年中に申請へ

 万有製薬の平手晴彦社長は都内で記者会見し、子宮頸癌ワクチン(海外名「ガーダシル」)の日本での承認申請について、「期待値としてだが、今年中に申請したい」と述べた。子宮頸癌によって年間約2400人が死亡していることから、早期上市が社会的使命だとし、全力を上げる構えだ。実現すれば当初予定より2年以上前倒しの申請となる。

 ガーダシルは、米メルクが開発した子宮頸癌ワクチンで、2006年6月に米国で承認。子宮頸癌ワクチンとしては世界初となった。その後9月には欧州でも承認。日本では現在PⅢにある。

 「ガーダシル」は、子宮頸癌の原因の約70%を占めるされるヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型と、尖圭コンジローマなど生殖器疣贅の原因として約90%を占めるHPV6型、11型の感染を予防するワクチン。海外臨床試験では、HPV16型、18型に曝露された経験のない女性で、両型に起因した子宮頸癌を100%予防したという結果が報告されている。

 日本の治験では、当初計画として18~26歳の健康な女性1000人を対象に、プラセボ対照二重盲検群間比較試験が予定されている。筋肉注射によって初回と2カ月目、6カ月目の計3回接種し、抗体価、ワクチンに含まれる型に由来するHPV持続感染及び生殖器疾患の発生の有無が検証される。

 同社としては、日本で年間約7000人が新たに子宮頸癌と診断され、約2400人が死亡している状況を解消したい考え。ドラッグラグの解消の動きやがん対策基本法、ワクチン産業ビジョンの策定など環境が整ってきている中で、「何よりも優先させて取り組む」(高橋希人・研究開発本部長)としており、データ収集・解析を急ぎ、早期承認にこぎつける方針だ。

(薬事日報、2007年4月27日)


執刀医ら2人を書類送検 子宮摘出手術の死亡事故で (共同通信)

2007年04月18日 | 婦人科腫瘍

コメント(私見):

子宮頸癌に対する根治手術である広汎性子宮全摘術は非常に難しい手術で、婦人科悪性腫瘍の治療を専門とする医師で、がんセンターや大学病院で、若い時から長年にわたって非常に多くの手術の経験を積んだ者でないと、この手術の執刀医にはなれません。ですから、そもそも、この手術を執刀できる医師の数自体が国内全体でもそう多くはありません。

広汎性子宮全摘術を何百例も執刀し、神業的に手術に熟達した高名の医師であっても、時に、術中に大量出血となり、止血が極めて困難となる場合があり得ます。

ですから、広汎性子宮全摘術を実施する場合は、術前に相当な量の輸血の準備をし、十分な人員も確保し、その日は他の予定手術は一切組まないようにして、相当な気合を入れて手術に臨んでいます。

以前、当科においても、広汎性子宮全摘術の際に、骨盤底から湧き上がってくる出血をどうやっても止血することができなくなってしまい、大量の新鮮血の輸血をしながら十数時間にわたり交替でガーゼ圧迫による止血をし、ガーゼを腹腔内に何十枚も詰め込んだままでいったん閉腹して、気管内挿管をしたまま1週間にわたり集中治療室で全身管理をし、1週間後に再開腹して腹腔内に詰めたガーゼを取り出し、何とか奇跡的に、ぎりぎりのところで術中死を免れた症例の経験があります。

非常に難しい手術を実施して、結果的にうまくいかなかった場合には、執刀医と麻酔医が罪に問われるような世の中になってしまったら、誰もわざわざ苦労して長年かけて難しい手術を習得しようとは思わないでしょうし、そのような難しい手術の麻酔は麻酔医から全例拒否されるようになってしまうと思います。

****** 共同通信社、2007年4月17日

執刀医ら2人を書類送検 子宮摘出手術の死亡事故で

 国立がんセンター中央病院(東京都中央区)で2002年8月、子宮摘出手術を受けた東京都八王子市の主婦=当時(47)=が手術翌日に死亡した事故で、警視庁築地署は17日までに、業務上過失致死の疑いで執刀医(65)と麻酔医(44)を書類送検した。

 調べでは、執刀医は骨盤内のリンパ節をはがす際、静脈を傷つけ、大量出血したのに十分な止血をしなかった疑い。麻酔医は、執刀医に十分止血するよう促さなかった疑い。

 主婦は子宮がん治療のため02年8月8日、同病院に入院。同12日、手術中に大量出血し、翌日、多臓器不全などで死亡した。

(共同通信社、2007年4月17日)

****** 朝日新聞、2007年4月17日

がんセンターの2医師、書類送検 手術で過失致死容疑

 国立がんセンター中央病院(東京都中央区)で02年8月、子宮摘出手術を受けた都内の主婦(当時47)が手術中に大量出血して死亡した事故で、警視庁は、当時の執刀医(65)と麻酔医(44)を業務上過失致死の疑いで書類送検した。手術中の止血が不十分だったことなどが原因と判断した。

 調べでは、主婦は02年8月12日、がんのため、子宮を全摘出する手術を受けた。骨盤内のリンパ節をはがす際に大量に出血し、意識が戻らないまま翌13日に出血性のショックによる多臓器不全で死亡したという。

(朝日新聞、2007年4月17日)

****** 毎日新聞、2007年4月18日

患者出血死事故 2医師書類送検 
国立がんセンター

 国立がんセンター中央病院(東京都中央区)で02年8月、子宮がん治療のため子宮の摘出手術を受けた八王子市の主婦(当時47歳)が大量出血して死亡した医療事故で、止血処置を十分にせず、手術を続けたことが死亡につながったとして警視庁捜査1課と築地署が執刀医(65)と麻酔医(44)を業務上過失致死容疑で書類送検したことが分かった。遺族との間では示談が成立している。

 調べでは、女性は02年8月12日午前9時ごろから子宮摘出手術を受けた。途中で執刀医が骨盤内の静脈を過って傷つけたため大量に出血したが、執刀医は十分に止血しないまま手術を続行。別の血管も傷つけ、さらに出血した。麻酔医は出血を知りながら手術をやめさせるなどの措置をしなかった疑い。女性は輸血を受けたが、同日夕、手術終了後に死亡した。【鈴木泰広】

(毎日新聞、2007年4月18日)


がん疼痛治療のレシピ(2007年版)、春秋社

2007年01月06日 | 婦人科腫瘍

コメント(私見):

がん末期の患者さんの緩和医療では、疼痛をうまくコントロールすることが非常に重要です。鎮痛薬、オピオイドには多種類あって、一般臨床医にとってそれらをどう使い分けていくのかの判断は非常に難しいです。緩和医療に非常に熱心に取り組んでいる当院の麻酔科の先生から本書(2004年版)を勧められて、わかりやすく実用的で非常にいい本だと感心しました。今回、2007年版が出版されたのでさっそく購入しました。白衣のポケットに入るサイズで非常にコンパクトな本ですが、がん疼痛治療の基本的考え方から最新の薬剤の使い方まで、必要なことはすべて書いてあると思われます。

Gantotsu

書名がん疼痛治療のレシピ(2007年版)
著者的場元弘[執筆・監修]
著者略歴国立がんセンター がん対策情報センター
がん医療情報サービス室長。
発行元春秋社
体裁手帳判
頁数176
発行日2006-11-30
税込価格1000 円(本体952円+税)

●2007年がんの痛み治療の最前線

●最新の薬剤の使い方をわかりやすく解説

がん疼痛治療の決定版として好評を博した2004年版を改訂増補。がん疼痛治療の原則から考え方、痛みの評価法、治療の実際、各オピオイドの使い分けからオピオイドローテーションまでをわかりやすく解説。この1冊でがん疼痛治療の重要なポイントすべてを網羅している。

副作用対策、鎮痛補助薬の適応と投与法、投与経路変更時の換算表もついて今日からすぐに役立つ。医師、看護師、薬剤師必携のがんの痛み緩和マニュアル

全頁カラー
明解図表、最新薬価表付き

*** 以下、本書2007年版の『序』より引用

緩和医療の領域ではこの2年間に色々なことがあった。最近では「がん対策基本法」が成立し、がん医療の後始末くらいにしか思われてなかった緩和医療が、がん医療の中で重要な位置を占めるようになった。

高度先進医療が中心、大学病院では緩和医療は馴染まないと豪語していた面々の先見性の乏しさはともかくとして、その後の豹変ぶりは滑稽でさえある。

緩和医療が政策として動き出した時、そこには心からその実現を待ち望む患者さんやご家族がいて、またそのための教育や人材確保、環境の整備に心を砕く医療者や行政、立法の関係者がいる。法律は成立したが、仏像に眼が入ったわけではない。”緩和医療とは何か”がん医療に関わる医療者がこの問いに向き合い、その大切さを認識して欲しい。補助金や加算のための緩和医療の導入では患者さん達やご家族の本当の満足は得られない。病院の陳腐なスローガンとしてではなく、個々の医療者が心を添えて緩和ケアを提供してもらいたい。

人は、自分にいつかは死が訪れることを理屈ではわかっている。しかし、普段私たちは自分が死ぬことを想定していない。死なないと思っている。

何千年にもわたって人が亡くなる悲しさを繰り返してきたにもかかわらず、人の命に限りがあることを自覚するのは、子を授かる時、そして大切な人の死に臨んだ時、そして自分の死を予感した時である。その場になって何とか無事を願う。逃れる術を考え、心から祈ることを覚える。自分を振り返れば取り繕いようがない、まさに身をもって学ばされたことである。

一方、現実はどうか。人が平穏な死を迎えるためにほんの少し心を砕き、そのための医療を提供することには、未だに多くのがん医療者や医療機関の管理者が抵抗する。制度や施設の問題ではない。自分は死なないと思っているからだろう。本当に愚かなことだと思う。

生命を扱うことに携わる人たちがこのことに気つき、緩和医療が本当の意味で患者さんやご家族に提供できるように、緩和医療が”眼に入る”ことを願う。

          2007年版によせて  的場元弘

(以上、2007年版の『序』より引用)

****** 用語解説

緩和医療(かんわいりょう)とは?

主に末期がん患者などに対して行われる、主に治癒や延命ではなく、痛みをはじめとした身体的、精神的な苦痛の除去を目的とした医療である。緩和ケアとも言われる。 オピオイドをはじめとした鎮痛剤や神経ブロックなどの処置を用いて、終末期に臨む時期のQOL(生活の質)を最大限高めることを目標としている。終末期医療のなかでも最も重要な位置づけを持つ。

緩和医療についてWHO(世界保健機関)は、以下のように定義しています。「緩和医療とは、治癒を目的とした治療に反応しなくなった疾患をもつ患者に対して行われる積極的で全体的な医療であり、痛みのコントロール、痛み以外の諸症状のコントロール、心理的な苦痛、社会面での問題、spiritualな問題の解決が重要な課題となる。緩和医療の最終目標は、患者とその家族にとって出来る限り良好なQOLを実現させることである。このような目的を持つので、緩和医療は末期だけではなく、もっと早い病期の患者に対しても、がん病変の治療と同時に適用すべき多くの利点を持っている。」

****** 追記(1月7日)

婦人科領域では、最近は卵巣癌が非常に増えてきています。

卵巣癌は、治療方法が進歩し、手術と最新の化学療法でほとんどの患者さんを一時的には病気のない状態にまでもっていけるようになってきましたが、長い目で見ればかなり多くの患者さんが再発していて、長期生存率は依然として不良であり、5年生存率が約30%、10年生存率が約10%であり、治療成績は現在でも決して良好とは言えません。

再発した時には最初に使った抗癌剤は無効の場合が多く、抗癌剤を変更すると一時的には効果がありますが、それもいずれは無効となります。

がんの治療では、最初は治癒や延命を目的とした治療が100%で緩和医療が0%ですが、次第に、治癒や延命を目的とした治療の比率が低くなっていき、緩和医療の比率が高くなっていきます。ある時期からは治癒や延命を目的とした治療が0%で緩和医療が100%となっていきます。ですから、がんの治療では緩和医療は非常に重要です。

しかし、現状では、がんの治癒や延命を目的とした治療の専門家は大勢いますが、緩和医療の専門家は非常に少ないです。地方の一般病院では、緩和医療の専門家はほとんど勤務していません。

我々、一般の臨床医や看護師は、今まで緩和医療の教育はほとんど受けてこなかったし、緩和医療の知識や技術は圧倒的に不足しています。また、治癒や延命を目的とした治療だけで忙殺されていますから、緩和医療が非常に大切であることは頭で理解していても、緩和医療にじっくりと取り組んでゆくだけの余裕が全くありません。

いくら医学が進歩しようとも、人間誰でも最後は必ず死にます。これからは、医療従事者だけでなく、行政や宗教家なども含めて、社会全体で広い意味での”緩和医療”に真剣に取り組んでゆく必要があると思います。


第1回婦人科腫瘍専門医筆記試験、問題

2006年12月17日 | 婦人科腫瘍

【問題021~問題030】

問題001 外陰病変で下床に腺癌を伴うことがあるのはどれか。
a)vulvar intraepithelial neoplasia (VIN)
b)Bowen様丘疹
c)Paget病
d)硬化性苔癬
e)悪性黒色腫

問題002 外陰癌で誤っているのはどれか。
a)60~70歳代の女性に頻度が高い。
b)角化型扁平上皮癌が大部分を占める。
c)最も頻度が高い部位は腟前庭である。
d)進行癌では鼠径リンパ節転移が多い。
e)Ⅰ期癌には手術療法が第一選択である。

問題003 Paget病で誤っているのはどれか。
a)外陰掻痒感や違和感を訴えることが多い。
b)スクリーニングに擦過細胞診が有用である。
c)術前評価では病巣周囲の多数の生検を行う。
d)手術では病巣辺縁から3 cm外周を皮切する。
e)約10%は間質浸潤を伴う浸潤Paget病である。

問題004 外陰癌のFIGO進行期分類(1994)で誤っているのはどれか。
a)外陰に限局し、最大径1 cmで間質浸潤の深さ3 mm以下であればⅠa期である。
b)会陰に限局し、最大径3 cmであればⅡ期である。
c)肛門への浸潤があればⅢ期である。
d)両側の鼠径リンパ節に転移があればⅣa期である。
e)骨盤リンパ節に転移があればⅣb期である。

問題005 外陰癌のリンパ行性転移でただしいのはどれか。
(1)片側に限局する2 cm未満の腫瘍では、対側の浅鼠径節への転移は少ない。
(2)原発腫瘍の大きさが2 cm未満であれば、リンパ節転移は5%以下である。
(3)Cloquet節は、浅鼠径節のうちで最も内側に存在するリンパ節である。
(4)リンパ節転移は、浅鼠径節、深部大腿節、骨盤節の順に進展することが多い。
(5)浅鼠径節に転移を認める場合、その20~25%で骨盤節への転移がある。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題006 外陰癌Ⅰa期の標準的治療はどれか。
a)レーザー蒸散
b)根治的外陰部分切除(radical local excision)
c)根治的外陰部分切除+患側鼠径リンパ節郭清
d)広汎外陰切除(radical vulvectomy)+両側鼠径リンパ節郭清
e)根治的放射線治療

問題007 腟癌で正しいのはどれか。
a)40歳代の女性に最も頻度が高い。
b)組織型では腺扁平上皮癌が最も多い。
c)発生部位では中1/3に最も頻度が高い。
d)下1/3に発生した癌は鼠径リンパ節に転移する。
e)Diethylstilbesterolを服用した女性に腺癌が発生する。

問題008 腟癌の臨床進行期(FIGO)で正しいのはどれか。
(1)腟壁に限局していればⅠ期である。
(2)傍組織に浸潤するが骨盤壁に達していないとⅡ期である。
(3)傍組織浸潤が骨盤壁に達しているとⅢ期である。
(4)外子宮口に達していればⅢ期である。
(5)膀胱に胞状浮腫があればⅣ期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題009 子宮頚癌のリスク因子でないのはどれか。
a)HPV
b)喫煙
c)初交年齢
d)アルコール
e)性パートナー数

問題010 頚癌検診における細胞採取で正しいのはどれか。
a)腟円蓋から細胞を採取する。
b)子宮腟部表面と頚管内から細胞を採取する。
c)妊娠中は偽陽性が多いので避けるほうがよい
d)スライドグラスへ塗布した後30分以内に固定する。
e)自己採取による癌検出率は通常の検診と同様である。

問題011 子宮頸部細胞診クラスⅣから推定される病変はどれか。
a)軽度異形成
b)中等度異形成
c)高度異形成
d)上皮内癌
e)微小浸潤癌

問題012 子宮頸部上皮内癌の細胞診所見で正しいのはどれか。
(1)平滑な核縁
(2)著しい核の大小不同
(3)出血壊死性の背景
(4)錯角化または異角化
(5)傍基底型の癌細胞

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

問題013 新コルポスコピー所見分類(日本婦人科腫瘍学会、2005)で正しいのはどれか。
a)ヨード塗布試験が必須である。
b)移行帯は異常所見に分類される。
c)白色上皮は軽度または高度にgradingする。
d)白斑は異常所見から除かれた。
e)HPV感染所見を特別に分類する。

問題014 子宮頸部にみられたポリープ状の病変である。組織診断はどれか。(図 1)
a)尖形コンジローマ
b)正常頚管腺上皮
c)微小頚管腺過形成
d)腺癌
e)扁平上皮癌

【問題14-図1】

問題015 子宮頸部腫瘤の生検標本である。組織診断はどれか。(図 2)
a)内頸部型ポリープ
b)正常重曹扁平上皮
c)扁平上皮癌
d)腺癌
e)尖形コンジローマ

【問題15-図2】

問題016 子宮頸部のヒトパピローマウイルス(HPV)感染で正しいのはどれか。
a)HPVは異形成の90%以上に検出される。
b)HPV感染の有無は血清抗体価で判定できる。
c)HPVの型分布は世界中でほぼ同じである。
d)ハイリスクHPVをもつ異形成の約90%が上皮内癌へ進展する。
e)HPVワクチンはタイプ非特異的に感染予防効果をもつ。

問題017 子宮頚癌発生におけるハイリスク型HPVはどれか。
a)11型
b)42型
c)43型
d)44型
e)52型

問題018 ヒトパピローマウイルス(HIV)で正しいのはどれか。
a)頚部扁平上皮癌で最も高頻度に検出されるHPVは52型である。
b)頚部腺癌で最も高頻度に検出されるHPVは18型である。
c)細胞診に異常のない女性でのHPV検出頻度は約50%である。
d)koilocytosisを示す細胞ではHPVは検出されない。
e)妊娠中にはHPVの増殖能(replication)が低下する。

問題019 子宮頸癌の臨床進行期分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)進行期決定に迷う場合は重い方に分類する。
b)進行期の決定にはCT所見とMRI所見を参考にする。
c)術前診断0期で摘出子宮に微小浸潤癌があればⅠa期とする。
d)膀胱内洗浄液中に癌細胞があればⅣa期とする。
e)進行期決定に頚部円錐切除の病理所見は考慮しない。

問題020 子宮頚癌Ⅰa2期(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)浸潤の深さ3 mmを超え5 mm以内で広がり10mmを超えない。
b)脈管侵襲が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
c)癒合浸潤が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
d)広がりの計測には微小浸潤巣の最大の幅を計測する。
e)深さの計測の基点は浸潤巣直上の最も深い表層基底膜とする。

問題021 TNM分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)TX - 原発腫瘍を認めない。
b)TO - 浸潤前癌
c)NX - 所属リンパ節に転移を認めない。
d)N1 - 所属リンパ節に転移を認める。
e)MO - 遠隔転移の検索が行われていない。

問題022 子宮頚癌の臨床進行期と治療法の組み合わせで誤っているのはどれか。
a) 0 期 - レーザー円錐切除術
b)Ⅰa1期 - 単純子宮全摘出術
c)Ⅰa2期 - 子宮頸部円錐切除術
d)Ⅰb1期 - 広汎子宮全摘出術
e)Ⅲb期 - 化学放射線療法

問題023 子宮頸癌の治療で誤っているのはどれか。
a)広汎子宮全摘出術では症例によっては卵巣温存が可能である。
b)広汎子宮全摘出術で傍大動脈節郭清の治療的意義は不明である。
c)放射線療法では全骨盤照射と腔内照射を組み合わせる。
d)化学放射線療法ではプラチナ製剤を同時に用いる。
e)化学療法後の放射線療法は生存期間を延長させる。

問題024 子宮頸癌の各組織型で誤っているのはどれか。
a)腺癌は扁平上皮癌に比し放射線感受性が低い
b)小細胞癌は腺扁平上皮癌に比し予後不良である。
c)すりガラス細胞癌は扁平上皮癌に比し予後不良である。
d)扁平上皮癌で角化型は非角化型に比し予後不良である。
e)腺癌のうちvilloglandular adenocarcinomaは予後良好である。

問題025 子宮頚部の上皮内腺癌で誤っているのはどれか。
a)子宮頚部細胞診が診断に有用な場合がある。 
b)コルポスコピーで病変の拡がりを評価できない。
c)円錐切除で断端陰性であれば残存病変はない。
d)リンパ節転移は認められない。
e)妊孕能温存は可能である。

問題026 子宮内膜増殖症で正しいのはどれか。
a)子宮体癌取り扱い規約で4 種類に分類されている。
b)異型増殖症の内膜細胞診による正診率は90%を超える。
c)異型増殖症では篩状(cribriform pattern)の腺管増生が著しい
d)異型増殖症が腺癌へと進展する割合は約5 %である。
e)異型増殖症と腺癌との鑑別にMRI検査が有用である。

問題031 子宮内膜細胞診で正しいのはどれか。
a)内膜細胞の細胞異型のみを評価する。
b)内膜細胞がみられなければ再検査を指示する。
c)細胞診陰性であれば子宮内膜癌は否定できる。
d)疑陽性の場合、内膜組織診は不要である。
e)卵巣癌細胞が検出されることはない。

問題032 わが国の女性10万人あたりの子宮体癌罹患数はどの程度か。
a)1 人未満
b)6~15人
c)106~115人
d)506~515人
e)1006~1015人

問題033 タイプⅡ子宮体癌で正しいのはどれか。
a)肥満
b)閉経後
c)予後良好
d)類内膜腺癌
e)エストロゲン依存性

問題034 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
(1)浸潤が筋層1/2を超えるものはⅠb期である。
(2)頚管腺のみを侵すものはⅡb期である。
(3)腟に転移を認める場合はⅢb期である。
(4)骨盤リンパ節に転移があればⅢc期である。
(5)鼠径リンパ節に転移があればⅣb期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題035 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
a)腹腔細胞診で陽性であったのでⅠc期とした。
b)卵巣に転移がみられたのでⅡa期とした。
c)大網に径1 cmの転移がみられたのでⅢb期とした。
d)子宮傍結合織浸潤がみられたのでⅢc期とした。
e)傍大動脈リンパ節転移がみられたのでⅣ期とした。

問題036 子宮体癌の治療で正しいのはどれか。
(1)若年女性で類内膜腺癌G1かつⅠa期と予測される場合は子宮温存を考慮する。
(2)傍大動脈リンパ節郭清が長期予後改善に寄与するか否かは不明である。
(3)臨床進行期Ⅱ期の症例に対する腟壁切除の有用性は証明されている。
(4)進行例に対する手術療法の意義は低く、腫瘍減量手術は行うべきでない。
(5)内視鏡下手術は確立しておらず、その適応は慎重に考慮すべきである。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題037 子宮体癌の化学療法で正しいのはどれか。
(1)中リスク症例の術後化学療法は放射線療法と同等かそれ以上に有効である。
(2)高リスク症例で術後残存腫瘍2 cm以下の場合に化学療法が推奨される。
(3)アンスラサイクリン系とプラチナ製剤の併用が推奨される。
(4)進行例に対する術前化学療法の有効性が証明されている。
(5)放射線療法後の再発例にはイリノテカンが有用である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題038 子宮体癌化学療法のkey drugはどれか。
a)エトポシド
b)ジェムシタビン
c)アドリアマイシン
d)サイクロフォスファミド
e)5-FU

問題039 子宮内膜増殖症および体癌の治療で誤っているのはどれか。
a)単純型子宮内膜増殖症に対して単純子宮全摘術を施行した。
b)子宮内膜異型増殖症に対して黄体ホルモン療法を施行した。
c)体癌で浸潤が筋層1/2を超えており傍大動脈リンパ節郭清を施行した。
d)体癌で頚部間質に深い浸潤を認めたため広汎子宮全摘出術を施行した。
e)体癌の高リスク例にdoxorubicinとcisplatinによる化学療法を施行した。

問題040 子宮肉腫の治療で正しいのはどれか。
a)第一選択の治療法は手術療法である。
b)標準的手術術式は広汎子宮全摘出術である。
c)進行例に対しては化学療法が有用である。
d)平滑筋肉腫には黄体ホルモン療法が奏功する。
e)低悪性度内膜間質肉腫の5年生存率は50%以下である。

問題049 胞状奇胎娩出後の管理に有用な検査はどれか。
(1)尿中hCG値測定
(2)胸部レントゲン撮影
(3)血中エストラジオール値測定
(4)骨盤CT
(5)基礎体温測定

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題050 絨毛癌肺転移に対してまず行う治療はどれか。
a)胸部腫瘤の摘出術
b)胸部腫瘤と子宮の摘出術
c)MTX単独化学療法
d)TJ化学療法
e)EMA-CO化学療法

問題051 卵巣腫瘍の組織分類で正しい組合わせはどれか。
a)ブレンナー腫瘍 - 表層上皮性・間質性腫瘍
b)未分化胚細胞腫 - 表層上皮性・間質性腫瘍
c)漿液性嚢胞腺腫 - 性索間質性腫瘍
d)顆粒膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍
e)莢膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍

問題052 卵巣腫瘍組織分類で胚細胞腫瘍でないのはどれか。
a)卵黄嚢腫瘍
b)ステロイド細胞腫瘍
c)未熟奇形腫
d)卵巣甲状腺腫
e)カルチノイド

問題053 卵巣腫瘍の組織学的特徴で誤っているのはどれか。
a)顆粒膜細胞腫 - Call-Exner body
b)未分化胚細胞腫 - Schiller-Duval body
c)明細胞癌 - hobnail cell
d)Krukenberg腫瘍 - signet-ring cell
e)Brenner腫瘍 - coffee-bean nuclei

問題061 卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化で正しいのはどれか。
a)頻度は約10%である。
b)閉経後の患者に多い。
c)腫瘍径の小さいものが多い。
d)両側性発生例が多い。
e)組織型は明細胞腺癌が多い。

問題062 若年者の卵巣悪性胚細胞性腫瘍で正しいのはどれか。
a)原則として妊孕性温存手術を考慮する。
b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が低い。
c)未熟奇形腫では血性LDH高値を示す。
d)絨毛癌の予後は良好である。
e)治療後の問題点は妊孕能のみである。

問題077 ヒトパピローマウイルス(HPV)と関係が深い癌抑制遺伝子はどれか。
(1)p53
(2)BRCA1
(3)FHIT
(4)NF1
(5)Rb

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

問題099 癌化学療法に使用するG-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤で正しいのはどれか。
a)好中球減少Grade 4が確認されたらG-CSF製剤の投与が必須である。
b)好中球数が5,000/mm3を超えたらG-CSF製剤の投与を中止する。
c)G-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤は原則的に抗癌剤と同日投与する。
d)有熱性好中球減少症Grade 3では第3世代抗菌剤の投与が必須である。
e)5-HT3受容体拮抗剤は遅発性嘔吐に著効する。

問題100 抗癌剤の毒性が現れやすい臓器・組織で誤っているのはどれか。
a)ドキソルビシン - 心筋
b)エトポシド - 呼吸器
c)イリノテカン - 消化器
d)パクリタクセル - 神経
e)シクロホスファミド - 卵巣


第1回婦人科腫瘍専門医筆記試験問題、日本婦人科腫瘍学会

2006年12月15日 | 婦人科腫瘍

問題001 外陰病変で下床に腺癌を伴うことがあるのはどれか。
a)vulvar intraepithelial neoplasia (VIN)
b)Bowen様丘疹
c)Paget病
d)硬化性苔癬
e)悪性黒色腫

解答:c

c)Paget病は通常は扁平上皮に限局する異型腺細胞からなる癌であるが、約10~20%の症例においてPaget病変下に腺癌を伴う(Fanning、1975)。

******

問題002 外陰癌で誤っているのはどれか。
a)60~70歳代の女性に頻度が高い。
b)角化型扁平上皮癌が大部分を占める。
c)最も頻度が高い部位は腟前庭である。
d)進行癌では鼠径リンパ節転移が多い。
e)Ⅰ期癌には手術療法が第一選択である。

解答:c

c)外陰の扁平上皮癌の発生部位は、大陰唇および小陰唇(60%)、陰核(15%)、会陰(10%)である。症例の約10%では、病変が拡がり過ぎて発生部位を特定できない。症例の5%は多中心性である。(Berek & Novak's Gynecology 14th Ed, p.1553)

******

問題003 Paget病で誤っているのはどれか。
a)外陰掻痒感や違和感を訴えることが多い。
b)スクリーニングに擦過細胞診が有用である。
c)術前評価では病巣周囲の多数の生検を行う。
d)手術では病巣辺縁から3 cm外周を皮切する。
e)約10%は間質浸潤を伴う浸潤Paget病である。

解答:e

臨床的には浸潤が疑われなくても、症例の約30%で病理組織学的に間質浸潤が認められる。(Atlas of Gynecologic Surgical Pathology, p32)

******

問題004 外陰癌のFIGO進行期分類(1994)で誤っているのはどれか。
a)外陰に限局し、最大径1 cmで間質浸潤の深さ3 mm以下であればⅠa期である。
b)会陰に限局し、最大径3 cmであればⅡ期である。
c)肛門への浸潤があればⅢ期である。
d)両側の鼠径リンパ節に転移があればⅣa期である。
e)骨盤リンパ節に転移があればⅣb期である。

解答:a

a)Ⅰb期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mmを超えるもの。

******

問題005 外陰癌のリンパ行性転移でただしいのはどれか。
(1)片側に限局する2 cm未満の腫瘍では、対側の浅鼠径節への転移は少ない。
(2)原発腫瘍の大きさが2 cm未満であれば、リンパ節転移は5%以下である。
(3)Cloquet節は、浅鼠径節のうちで最も内側に存在するリンパ節である。
(4)リンパ節転移は、浅鼠径節、深部大腿節、骨盤節の順に進展することが多い。
(5)浅鼠径節に転移を認める場合、その20~25%で骨盤節への転移がある。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:c

(2)腫瘍径<1.0cm リンパ節転移18.0%
     腫瘍径 1~2cm リンパ節転移19.4%

******

問題006 外陰癌Ⅰa期の標準的治療はどれか。
a)レーザー蒸散
b)根治的外陰部分切除(radical local excision)
c)根治的外陰部分切除+患側鼠径リンパ節郭清
d)広汎外陰切除(radical vulvectomy)+両側鼠径リンパ節郭清
e)根治的放射線治療

解答:b

Ⅰa 期では鼠径リンパ節転移はないと考えられ、最低1cm 以上病変から離れて切除する根治的外陰部分切除術のみでよいと考えられる。

******

問題007 腟癌で正しいのはどれか。
a)40歳代の女性に最も頻度が高い。
b)組織型では腺扁平上皮癌が最も多い。
c)発生部位では中1/3に最も頻度が高い。
d)下1/3に発生した癌は鼠径リンパ節に転移する。
e)Diethylstilbesterolを服用した女性に腺癌が発生する。

解答:d

a)原発性腟癌の好発年齢は50~65歳で、平均年齢は約60歳である。

b)腟悪性腫瘍の組織型別頻度では扁平上皮癌が大多数を占めている。

c)好発部位は腟の上部1/3である。

d)所属リンパ節
  腟の上部2/3の場合:骨盤リンパ節
  腟の下部1/3の場合:鼠径リンパ節

e)欧米では、かつて切迫流産治療のためにDES (Diethylstilbesterol)が投与された妊婦から生まれた女児に、腟癌(明細胞癌)が好発し、大きな社会問題となった。

******

問題008 腟癌の臨床進行期(FIGO)で正しいのはどれか。
(1)腟壁に限局していればⅠ期である。
(2)傍組織に浸潤するが骨盤壁に達していないとⅡ期である。
(3)傍組織浸潤が骨盤壁に達しているとⅢ期である。
(4)外子宮口に達していればⅢ期である。
(5)膀胱に胞状浮腫があればⅣ期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:a

(4)腟病変が子宮腟部を侵しかつ外子宮口に及ぶものは子宮頸癌に、外陰を侵すものは外陰癌にそれぞれ分類される。

(5)Ⅳa期:膀胱、または直腸の粘膜に浸潤する腫瘍および/または小骨盤を超えて進展する腫瘍   
 注:胞状浮腫のみではⅣ期としない

******

問題009 子宮頚癌のリスク因子でないのはどれか。
a)HPV
b)喫煙
c)初交年齢
d)アルコール
e)性パートナー数

解答:d

子宮頸癌は、主に前癌病変である異形成から進行し発生すると考えられている。この前癌病変のリスクが、HPV感染、HIV感染、喫煙により高くなる事が報告されている。またこれらの感染は、複数のsex partnerをもつ者、partner が複数のsex partnerをもつ者、で多くなると考えられている。

******

問題010 頚癌検診における細胞採取で正しいのはどれか。
a)腟円蓋から細胞を採取する。
b)子宮腟部表面と頚管内から細胞を採取する。
c)妊娠中は偽陽性が多いので避けるほうがよい
d)スライドグラスへ塗布した後30分以内に固定する。
e)自己採取による癌検出率は通常の検診と同様である

解答:b

子宮頸部の異形成、上皮内癌、微小浸潤癌の発生部位は扁平円柱上皮境界であり、当該部位の細胞が確実に採取されている場合には、標本上に外頸部由来の扁平上皮細胞と頸管内膜由来の円柱上皮細胞の両者が観察される(どちらか一方の細胞を欠く場合は、診断に不適当な標本と判定される)。

******

問題011 子宮頸部細胞診クラスⅣから推定される病変はどれか。
a)軽度異形成
b)中等度異形成
c)高度異形成
d)上皮内癌
e)微小浸潤癌

解答:d

******

問題012 子宮頸部上皮内癌の細胞診所見で正しいのはどれか。
(1)平滑な核縁
(2)著しい核の大小不同
(3)出血壊死性の背景
(4)錯角化または異角化
(5)傍基底型の癌細胞

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

解答:b

上皮内癌細胞の形態的特長としては、細胞分化が少なく、主として傍基底型の異型細胞が集族性に出現する。細胞は、その分化程度の差により卵円形から紡錘形までの多彩な形態をとる。核クロマチンは増量し、粗大顆粒状を示す。N/C比は増大し、ときに裸核を見る。背景は清明である。

******

問題013 新コルポスコピー所見分類(日本婦人科腫瘍学会、2005)で正しいのはどれか。
a)ヨード塗布試験が必須である。
b)移行帯は異常所見に分類される。
c)白色上皮は軽度または高度にgradingする。
d)白斑は異常所見から除かれた。
e)HPV感染所見を特別に分類する。

解答:c

b)移行帯は正常所見に分類される。

新コルポスコピー所見分類:日本婦人科腫瘍学会2005
A) 正常所見 NCF
 1 扁平上皮  S
 2 円柱上皮  C
 3 移行帯  T
B) 異常所見  ACF
 1 白色上皮  W
    軽度所見 W1
    高度所見 W2
       腺口型(腺口所見が主体の場合) Go
    軽度所見 Go1
    高度所見 Go2
 2 モザイク  M
    軽度所見 M1
    高度所見 M2
 3 赤点斑  P
    軽度所見 P1
    高度所見 P2
 4 白斑  L
 5 異型血管域  aV
C) 浸潤癌所見 IC
 コルポスコピー浸潤癌所見 IC-a
 肉眼浸潤癌所見 IC-b
D) 不適例  UCF
 異常所見を随伴しない不適例 UCF-a
 異常所見を随伴する  UVF-b
E) その他の非癌所見 MF
 1 コンジローマ Con
 2 びらん Er
 3 炎症 Inf
 4 萎縮 Atr
 5 ポリープ Po
 6 潰瘍 Ul
 7 その他 etc

******

問題014 子宮頸部にみられたポリープ状の病変である。組織診断はどれか。(図 1)
a)尖形コンジローマ
b)正常頚管腺上皮
c)微小頚管腺過形成
d)腺癌
e)扁平上皮癌

【問題14-図1】

解答:c

******

問題015 子宮頸部腫瘤の生検標本である。組織診断はどれか。(図 2)
a)内頸部型ポリープ
b)正常重曹扁平上皮
c)扁平上皮癌
d)腺癌
e)尖形コンジローマ

【問題15-図2】

解答:e

******

問題016 子宮頸部のヒトパピローマウイルス(HPV)感染で正しいのはどれか。
a)HPVは異形成の90%以上に検出される。
b)HPV感染の有無は血清抗体価で判定できる。
c)HPVの型分布は世界中でほぼ同じである。
d)ハイリスクHPVをもつ異形成の約90%が上皮内癌へ進展する。
e)HPVワクチンはタイプ非特異的に感染予防効果をもつ。

解答:a

******

問題017 子宮頚癌発生におけるハイリスク型HPVはどれか。
a)11型
b)42型
c)43型
d)44型
e)52型

解答:e

HPVは子宮頸癌発症との関連性が確認されている。16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型などがハイリスク型である

******

問題018 ヒトパピローマウイルス(HIV)で正しいのはどれか。
a)頚部扁平上皮癌で最も高頻度に検出されるHPVは52型である。
b)頚部腺癌で最も高頻度に検出されるHPVは18型である。
c)細胞診に異常のない女性でのHPV検出頻度は約50%である。
d)koilocytosisを示す細胞ではHPVは検出されない。
e)妊娠中にはHPVの増殖能(replication)が低下する。

解答:b

a)頚部扁平上皮癌では16型が最も高頻度である。
c)若年者には、HPV感染は30%前後で、50歳以降では5 %程度である。

******

問題019 子宮頸癌の臨床進行期分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)進行期決定に迷う場合は重い方に分類する。
b)進行期の決定にはCT所見とMRI所見を参考にする。
c)術前診断0期で摘出子宮に微小浸潤癌があればⅠa期とする。
d)膀胱内洗浄液中に癌細胞があればⅣa期とする。
e)進行期決定に頚部円錐切除の病理所見は考慮しない。

解答:c

******

問題020 子宮頚癌Ⅰa2期(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)浸潤の深さ3 mmを超え5 mm以内で広がり10mmを超えない。
b)脈管侵襲が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
c)癒合浸潤が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
d)広がりの計測には微小浸潤巣の最大の幅を計測する。
e)深さの計測の基点は浸潤巣直上の最も深い表層基底膜とする。

解答:d

a)浸潤の深さ3 mmを超えるが5 mm以内で、広がりが7 mmを超えないもの。

b)c)癒合浸潤、脈管侵襲がある場合はその旨記載する。進行期の判定には採用しない。

e)深さの判定は浸潤の開始している基底膜部位から最も深い部位までの距離となる。

******

問題021 TNM分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)TX - 原発腫瘍を認めない。
b)TO - 浸潤前癌
c)NX - 所属リンパ節に転移を認めない。
d)N1 - 所属リンパ節に転移を認める。
e)MO - 遠隔転移の検索が行われていない。

解答)d

******

問題022 子宮頚癌の臨床進行期と治療法の組み合わせで誤っているのはどれか。
a) 0 期 - レーザー円錐切除術
b)Ⅰa1期 - 単純子宮全摘出術
c)Ⅰa2期 - 子宮頸部円錐切除術
d)Ⅰb1期 - 広汎子宮全摘出術
e)Ⅲb期 - 化学放射線療法

解答:c

c)Ⅰa2期 - 広汎子宮全摘出術

******

問題023 子宮頸癌の治療で誤っているのはどれか。
a)広汎子宮全摘出術では症例によっては卵巣温存が可能である。
b)広汎子宮全摘出術で傍大動脈節郭清の治療的意義は不明である。
c)放射線療法では全骨盤照射と腔内照射を組み合わせる。
d)化学放射線療法ではプラチナ製剤を同時に用いる。
e)化学療法後の放射線療法は生存期間を延長させる。

解答:e

Neoadjuvant Chemotherapy(NAC)後の放射線治療については、メタアナリシスの結果、その効果が否定的な結論となったため、最近は、試みられなくなっている。

******

問題024 子宮頸癌の各組織型で誤っているのはどれか。
a)腺癌は扁平上皮癌に比し放射線感受性が低い
b)小細胞癌は腺扁平上皮癌に比し予後不良である。
c)すりガラス細胞癌は扁平上皮癌に比し予後不良である。
d)扁平上皮癌で角化型は非角化型に比し予後不良である。
e)腺癌のうちvilloglandular adenocarcinomaは予後良好である。

解答:d

d)角化型、非角化型の分類と予後との関連は少ないと考えられている。

e)villoglandular adenocarcinoma:肉眼的には頚管内に小乳頭状の腫瘍として観察される。長く細い茎を有する絨毛状構造を特徴とする。上皮細胞の異型は軽度で浸潤は浅い。経口避妊薬との関連性が指摘されている。若い人に多く、予後は良好とされている。円錐切除や単純性子宮全摘出術が推奨される。

******

問題025 子宮頚部の上皮内腺癌で誤っているのはどれか。
a)子宮頚部細胞診が診断に有用な場合がある。 
b)コルポスコピーで病変の拡がりを評価できない。
c)円錐切除で断端陰性であれば残存病変はない。
d)リンパ節転移は認められない。
e)妊孕能温存は可能である。

解答:c

円錐切除で断端陰性の症例においても、6~40%程度に病変の残存が証明されたとの報告がある。

******

問題026 子宮内膜増殖症で正しいのはどれか。
a)子宮体癌取り扱い規約で4 種類に分類されている。
b)異型増殖症の内膜細胞診による正診率は90%を超える。
c)異型増殖症では篩状(cribriform pattern)の腺管増生が著しい
d)異型増殖症が腺癌へと進展する割合は約5 %である。
e)異型増殖症と腺癌との鑑別にMRI検査が有用である。

解答:a

a)単純型子宮内膜増殖症、複雑型子宮内膜増殖症、単純型子宮内膜異型増殖症、複雑型子宮内膜異型増殖症。

c)腺癌では篩状構造をとるが、異型増殖症の場合はそのような構造は示さない。

d)腺癌への進展率:単純型子宮内膜増殖症が1 %、複雑型子宮内膜増殖症が3 %、単純型子宮内膜異型増殖症が8 %、複雑型子宮内膜異型増殖症が29%と報告されている(Kurmanら)。

******

問題031 子宮内膜細胞診で正しいのはどれか。
a)内膜細胞の細胞異型のみを評価する。
b)内膜細胞がみられなければ再検査を指示する。
c)細胞診陰性であれば子宮内膜癌は否定できる。
d)疑陽性の場合、内膜組織診は不要である。
e)卵巣癌細胞が検出されることはない。

解答:b

******

問題032 わが国の女性10万人あたりの子宮体癌罹患数はどの程度か。
a)1 人未満
b)6~15人
c)106~115人
d)506~515人
e)1006~1015人

解答:b

子宮体癌は近年増加傾向にあり、推定罹患数は1996年4507人(女性10万人あたり5.7人)、2015年には6623人(女性10万人あたり7.3人)にまで増加すると予測されている。(婦人科腫瘍の臨床病理、改訂第2版、118頁)

******

問題033 タイプⅡ子宮体癌で正しいのはどれか。
a)肥満
b)閉経後
c)予後良好
d)類内膜腺癌
e)エストロゲン依存性

解答:b

Ⅰ型子宮体癌
 発生機序:unopposed estrogenの長期持続により、子宮内膜異型増殖症を経由しそれが癌に至るもの
 好発年齢:閉経前~閉経早期
 頻度:80~90%
 病巣周辺の子宮内膜異型増殖症:あり
 組織型:類内膜腺癌
 分化度:高分化型
 筋層浸潤:軽度
 予後:比較的良好
 遺伝子:K-ras(癌原遺伝子)、PTEN(癌抑制遺伝子)の変異が高率で見られる

Ⅱ型子宮体癌
 発生機序:子宮内膜異型増殖症を介さないで癌化するもの(de novo癌)
 好発年齢:閉経後
 頻度:10~20%
 病巣周辺の子宮内膜異型増殖症:なし
 組織型:漿液性腺癌、明細胞癌など
 分化度:低分化型
 筋層浸潤:高度
 予後:不良
 遺伝子:p53(癌抑制遺伝子)の変異が高率に見られる

******

問題034 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
(1)浸潤が筋層1/2を超えるものはⅠb期である。
(2)頚管腺のみを侵すものはⅡb期である。
(3)腟に転移を認める場合はⅢb期である。
(4)骨盤リンパ節に転移があればⅢc期である。
(5)鼠径リンパ節に転移があればⅣb期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:e

******

問題035 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
a)腹腔細胞診で陽性であったのでⅠc期とした。
b)卵巣に転移がみられたのでⅡa期とした。
c)大網に径1 cmの転移がみられたのでⅢb期とした。
d)子宮傍結合織浸潤がみられたのでⅢc期とした。
e)傍大動脈リンパ節転移がみられたのでⅣ期とした

解答:d

a)b)Ⅲa 期:漿膜ならびに/あるいは付属器を侵す、ならびに/あるいは腹腔細胞診陽性のもの。

c)Ⅳb 期:腹腔内ならびに/あるいは鼠径リンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの。

d)子宮傍結合織浸潤例はⅢc期とする。

e)Ⅲc 期:骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移のあるもの。

******

問題036 子宮体癌の治療で正しいのはどれか。
(1)若年女性で類内膜腺癌G1かつⅠa期と予測される場合は子宮温存を考慮する。
(2)傍大動脈リンパ節郭清が長期予後改善に寄与するか否かは不明である。
(3)臨床進行期Ⅱ期の症例に対する腟壁切除の有用性は証明されている。
(4)進行例に対する手術療法の意義は低く、腫瘍減量手術は行うべきでない。
(5)内視鏡下手術は確立しておらず、その適応は慎重に考慮すべきである。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:b

******

問題037 子宮体癌の化学療法で正しいのはどれか。
(1)中リスク症例の術後化学療法は放射線療法と同等かそれ以上に有効である。
(2)高リスク症例で術後残存腫瘍2 cm以下の場合に化学療法が推奨される。
(3)アンスラサイクリン系とプラチナ製剤の併用が推奨される。
(4)進行例に対する術前化学療法の有効性が証明されている。
(5)放射線療法後の再発例にはイリノテカンが有用である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

******

問題038 子宮体癌化学療法のkey drugはどれか。
a)エトポシド
b)ジェムシタビン
c)アドリアマイシン
d)サイクロフォスファミド
e)5-FU

解答:c

******

問題039 子宮内膜増殖症および体癌の治療で誤っているのはどれか。
a)単純型子宮内膜増殖症に対して単純子宮全摘術を施行した。
b)子宮内膜異型増殖症に対して黄体ホルモン療法を施行した。
c)体癌で浸潤が筋層1/2を超えており傍大動脈リンパ節郭清を施行した。
d)体癌で頚部間質に深い浸潤を認めたため広汎子宮全摘出術を施行した。
e)体癌の高リスク例にdoxorubicinとcisplatinによる化学療法を施行した。

解答:a

******

問題040 子宮肉腫の治療で正しいのはどれか。
a)第一選択の治療法は手術療法である。
b)標準的手術術式は広汎子宮全摘出術である。
c)進行例に対しては化学療法が有用である。
d)平滑筋肉腫には黄体ホルモン療法が奏功する。
e)低悪性度内膜間質肉腫の5年生存率は50%以下である

解答:a

******

問題049 胞状奇胎娩出後の管理に有用な検査はどれか。
(1)尿中hCG値測定
(2)胸部レントゲン撮影
(3)血中エストラジオール値測定
(4)骨盤CT
(5)基礎体温測定

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題050 絨毛癌肺転移に対してまず行う治療はどれか。
a)胸部腫瘤の摘出術
b)胸部腫瘤と子宮の摘出術
c)MTX単独化学療法
d)TJ化学療法
e)EMA-CO化学療法

問題051 卵巣腫瘍の組織分類で正しい組合わせはどれか。
a)ブレンナー腫瘍 - 表層上皮性・間質性腫瘍
b)未分化胚細胞腫 - 表層上皮性・間質性腫瘍
c)漿液性嚢胞腺腫 - 性索間質性腫瘍
d)顆粒膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍
e)莢膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍

問題052 卵巣腫瘍組織分類で胚細胞腫瘍でないのはどれか。
a)卵黄嚢腫瘍
b)ステロイド細胞腫瘍
c)未熟奇形腫
d)卵巣甲状腺腫
e)カルチノイド

******

問題053 卵巣腫瘍の組織学的特徴で誤っているのはどれか。
a)顆粒膜細胞腫 - Call-Exner body
b)未分化胚細胞腫 - Schiller-Duval body
c)明細胞癌 - hobnail cell
d)Krukenberg腫瘍 - signet-ring cell
e)Brenner腫瘍 - coffee-bean nuclei

解答:b

卵黄嚢腫瘍:特徴ある多彩な組織像を呈する腫瘍で、種々の組織像が混在し、移行もみられる。免疫組織化学的にAFPが証明される。主として次の4 組織像からなる。
 ①内胚葉洞型:最も高頻度で、網目状、Schilller-Duval body(腫瘍細胞が血管周囲に配列),hyaline globules(好酸性球状の硝子様小球)などがみられる。
 ②多嚢胞性卵黄型:卵黄嚢に類似した多数の嚢胞からなり、一層の扁平な中皮様細胞に被覆。
 ③類肝細胞型:未熟肝細胞あるいは肝細胞癌に類似する腫瘍細胞が索状に配列。
 ④腺型:立方形の腫瘍細胞が管状、胞巣状あるいは原腸状配列を示す。

******

問題061 卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化で正しいのはどれか。
a)頻度は約10%である。
b)閉経後の患者に多い。
c)腫瘍径の小さいものが多い。
d)両側性発生例が多い。
e)組織型は明細胞腺癌が多い。

解答:b

a)成熟嚢胞性奇形腫の悪性化は約2%の頻度である。

b)閉経後女性に発生することが多い。

c)腫瘍径の大きいものが多い。腫瘍の急速な増大を示す場合がある。

d)すべてが片側発生である。

e)80%は扁平上皮癌である。

******

問題062 若年者の卵巣悪性胚細胞性腫瘍で正しいのはどれか。
a)原則として妊孕性温存手術を考慮する。
b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が低い。
c)未熟奇形腫では血性LDH高値を示す。
d)絨毛癌の予後は良好である。
e)治療後の問題点は妊孕能のみである。

解答:a

b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が高い。

******

問題077 ヒトパピローマウイルス(HPV)と関係が深い癌抑制遺伝子はどれか。
(1)p53
(2)BRCA1
(3)FHIT
(4)NF1
(5)Rb

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

解答:b

HPVのもつ2つの癌原遺伝子、E6遺伝子とE7遺伝子が発癌に関与している。E6蛋白質とE7蛋白質はHPVが産生する蛋白質で、宿主細胞の癌抑制遺伝子産物であるp53蛋白質、Rb蛋白質と結合し、その機能を抑制する。

******

問題099 癌化学療法に使用するG-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤で正しいのはどれか。
a)好中球減少Grade 4が確認されたらG-CSF製剤の投与が必須である。
b)好中球数が5,000/mm3を超えたらG-CSF製剤の投与を中止する。
c)G-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤は原則的に抗癌剤と同日投与する。
d)有熱性好中球減少症Grade 3では第3世代抗菌剤の投与が必須である。
e)5-HT3受容体拮抗剤は遅発性嘔吐に著効する。

解答:b

G-CSF製剤の癌化学療法による好中球減少症に対する適応は好中球数が500/μl(白血球数1000/μl)未満の時である。好中球数が5000/μl(白血球数10000/μl)以上で投与中止と規定されている。

******

問題100 抗癌剤の毒性が現れやすい臓器・組織で誤っているのはどれか。
a)ドキソルビシン - 心筋
b)エトポシド - 呼吸器
c)イリノテカン - 消化器
d)パクリタクセル - 神経
e)シクロホスファミド - 卵巣

解答:b


子宮体癌治療ガイドライン

2006年11月27日 | 婦人科腫瘍

子宮体癌治療ガイドライン (2006年版)

日本婦人科腫瘍学会、金原出版、127頁
価格:¥ 2,520(税込)、発売日:2006年10月10日

Emca_1 第 1 章 ガイドライン総説

第 2 章 初回治療

CQ01 臨床進行期1期に対して推奨される子宮摘出術式は?/CQ02 臨床進行期2期に対して推奨される子宮摘出術式は?/CQ03 骨盤リンパ節郭清の意義は?/CQ04 骨盤リンパ節郭清に加えて傍大動脈リンパ節郭清をすることの意義は?/CQ05 腟壁部分切除は腟断端再発率を低下させ得るか?/CQ06 若年者の卵巣温存は可能か?/CQ07 手術進行期分類には鼠径リンパ節転移の記載があるが,その生検は必要か?/CQ08 大網切除は必要か?/CQ09 組織型・分化度の判定に関して,術中迅速病理診断は有用か?/CQ10 筋層浸潤の程度は術中にどのように判断すれば良いか?/CQ11 リンパ節転移の判定に関して,術中迅速病理診断は有用か?/CQ12 腹腔細胞診陽性は独立した予後不良因子か?/CQ13 術中迅速腹腔細胞診は術式の決定に必要か?/CQ14 内視鏡下手術は標準術式に替わり得るか?/CQ15 センチネルリンパ節生検によりリンパ節郭清を省略できるか?/CQ16 高齢や内科的合併症などを有する手術不能例に対して,放射線治療は有用か?

第 3 章 術後療法

1.放射線療法

CQ17 術後の全骨盤外部照射は有用か?/CQ18 術後の腟断端腔内照射は有用か?/CQ19 術後の傍大動脈リンパ節領域への照射,全腹部照射は有用か?/CQ20 術後の放射線療法に禁忌はあるか?

2.化学療法・ホルモン療法

CQ21 術後補助化学療法は有効性が確立されているのか?/CQ22 術後補助化学療法を行う場合にはどのような薬剤が推奨されるか?/CQ23 術後の補助療法として,ホルモン療法は有効か?

第 4 章 治療後の経過観察

CQ24 治療後の経過観察として推奨される間隔は?/CQ25 治療後の経過観察において,血清CA125 とCA19─9の測定は有用か?/CQ26 治療後の経過観察において,内診と腟断端細胞診は有用か?/CQ27 治療後の経過観察において,胸部X線検査およびその他の画像診断は有用か?

第 5 章 進行・再発癌の治療

CQ28 臨床進行期3期や4a期に対して,どのような場合に手術適応となるか?/CQ29 肉眼的な骨盤外腹腔内進展例に対し,腫瘍減量手術の治療的意義は?/CQ30 術前化学療法や術前放射線療法は有用か?/CQ31 再発癌に対して,どのような場合に手術適応となるか?/CQ32 進行・再発癌に対して化学療法は有用か?/CQ33 進行・再発癌に対して化学療法を施行する場合,どのような薬剤が推奨されるか?/CQ34 再発癌・切除不能進行癌に対し,放射線療法は有用か?/CQ35 進行・再発癌に対して黄体ホルモン療法は有用か?

第 6 章 妊孕性温存療法

CQ36 高分化型の類内膜腺癌で妊孕性温存を希望する場合,黄体ホルモン療法は有用か?/CQ37 妊孕性温存後の高分化型類内膜腺癌の再発例にはどのような治療法が推奨されるか?/CQ38 黄体ホルモン療法の有害事象とそのリスク因子にはどのようなものがあるか?/CQ39 妊孕性温存例に対する排卵誘発は安全か?/CQ40 妊孕性温存療法後の経過観察の間隔と検査はどうすべきか?

第 7 章 子宮内膜異型増殖症

CQ41 子宮内膜異型増殖症に妊孕性温存治療を行う場合,(1)黄体ホルモン療法の有用性は? (2)経過観察の間隔・検査はどうすべきか?

第 8 章 資料集

****** 正誤表

60頁 13行目 術後に全腹部照射 → 術後に腟腔内照射
    14行目 しかし、全腹部照射  → しかし、腟腔内照射
    19行目 が、全腹部照射施行 → が、腟腔内照射施行
    30行目 さらに全腹部照射を → さらに腟腔内照射を
    31行目 後の全腹部照射 → 後の腟腔内照射

****** 読売新聞、2006年10月13日

子宮体がん治療、初の指針

 日本婦人科腫瘍(しゅよう)学会(安田允(まこと)理事長)は、子宮体がん治療に関する初の指針「子宮体癌(がん)治療ガイドライン」を作成した。子宮体がんは、医療機関によって治療方針にばらつきがあるのが現状で、指針は、患者が治療を選択する際の重要な参考資料になりそうだ。

 指針では、初回の手術でどの範囲まで切るか、リンパ節を取ることの意義、手術後の放射線治療や抗がん剤治療が有効かどうか、再発・進行がんの治療、妊娠・出産を希望する患者の子宮を温存する治療――などについて、進行の程度ごとに分類。推奨する治療法の解説に加え、判断の根拠になった過去の臨床研究の一覧などが参考文献として添えられている。

 同学会は、2004年に「卵巣がん治療ガイドライン」を発表、子宮頸(けい)がんの指針も作成中だ。国内では、年に推計約4000人が新たに子宮体がんと診断されている。30年以上前は、子宮がん全体の約5%だったが、食生活の欧風化などで急増、現在では40~50%程度を占める。指針は、金原出版(電03・3811・7184)から刊行された。

(2006年10月13日  読売新聞)

****** 毎日新聞、2006年10月

子宮体がん:治療に初のガイドライン----婦人科腫瘍学会

 日本婦人科腫瘍(しゅよう)学会(安田允理事長)は4日、子宮体がんの初の治療ガイドラインを発表した。原則として手術による子宮全摘出が望ましいとし、がんの進行度に応じて摘出範囲を拡大する。高齢の患者や、他に合併症がある場合は、放射線による治療を選ぶとした。

 子宮体がんは、日本では年間約4000人の患者が新たに発生している。これまでは50歳代以上が大半だったが、食生活の欧米化などが影響し、80年代から30歳代以下の患者が増えているとされる。

 同学会は、国内外の文献を参考に標準的な治療方法をまとめた。「子宮体癌治療ガイドライン」(2520円)は書店で購入できる。【永山悦子】

(毎日新聞、2006年10月)

****** 金原出版ホームページより
http://www.kanehara-shuppan.co.jp/

 本ガイドラインは,体癌の日常診療に携わる医師に対して,現時点でコンセンサスが得られ,適正と考えられる体癌の標準的な治療法を示すことを目的に作成された。これにより体癌の治療レベルの均霑(きんてん)化と治療の安全性や成績の向上を図ることが期待できる。
 本ガイドラインの作成に当たっては,「卵巣がん」の時と同様にガイドライン検討委員会の中に作成委員会と評価委員会を設置し,作成委員には体癌の診療を専門的に行っている医師を広く全国から召集し,さらに放射線治療専門医と腫瘍内科医にも入っていただいた。作成形式は「卵巣がん」では総説的な体裁をとったが,本ガイドラインでは体癌の治療に関するエビデンスが少なくレベルも低いこと,欧米との治療上のギャップが少なくないことなどから,体癌の治療上の問題点を明らかにしそれに回答する「Q & A 形式」を採用することにした。取り扱う対象は,子宮体部に原発した癌,子宮内膜異型増殖症およびそれらの再発腫瘍とし,対象疾患の治療を主体とした5つのアルゴリズムを載せ,各項を「Q & A 形式」で記述した。すなわち,体癌治療における現在の問題点を臨床的疑問点(クリニカルクエスチョン:CQ)として取り上げ,各CQに対して国内外の文献を網羅的に収集し,各文献の構造化抄録を作成しエビデンスとして評価した。これを十分に吟味したうえで,総合的な判断からCQに対する答えを推奨として簡潔に記載し,さらにそのCQに対する背景・目的と推奨に至るまでの経緯を解説として記述し,最後にエビデンスのレベルを付記した参考文献を載せた。
 本ガイドラインを「卵巣がん」同様に実地医療の場で十二分に御活用していただきたい。

(金原出版ホームページより)


婦人科腫瘍学・必修知識

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

婦人科腫瘍専門医修練ガイドライン

外陰の腫瘍・類腫瘍

腟の腫瘍

外陰・腟の腫瘍・類腫瘍、問題と解答

子宮頚癌、組織分類

子宮頸癌、進行期分類

子宮頸癌、放射線治療

子宮頚癌、化学療法

子宮頚癌、問題と解答

子宮体癌

子宮体癌、問題と解答

子宮肉腫

子宮肉腫、問題と解答

卵管癌

卵巣の腫瘍・類腫瘍、全般・組織型

卵巣癌、進行期分類

卵巣癌の手術療法

卵巣癌、化学療法

卵管・卵巣の腫瘍・類腫瘍、問題と解答

絨毛性疾患

絨毛性疾患、問題と解答

細胞診

細胞診、問題と解答

組織診、問題と解答

コルポスコピー

腫瘍マーカー

婦人科疾患のCT診断

婦人科疾患のMRI診断

抗癌剤の分類

緩和医療

癌関連遺伝子

RECISTガイドライン

EBM、ガイドライン


婦人科腫瘍専門医修練ガイドライン

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

婦人科腫瘍専門医修練ガイドライン

         内 容

Ⅰ.婦人科腫瘍の診断と進行期の決定

Ⅱ.婦人科腫瘍病理組織・細胞診診断

Ⅲ.癌患者の病態生理とその管理

Ⅳ.発癌、浸潤と転移

Ⅴ.婦人科腫瘍に関する遺伝子・遺伝学

Ⅵ.臨床統計と臨床試験

Ⅶ.腫瘍免疫学

Ⅷ.化学療法

Ⅸ.治療薬剤の薬理学

Ⅹ.放射線治療

XI.各疾患における評価と治療法

XII.手術

XIII.その他


Ⅰ.婦人科腫瘍の診断と進行期の決定

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 婦人科腫瘍の診断と進行期について十分な知識を有し、適切に診断し、かつ進行期を決定することができる。

行動目標
 診断のために、問診、診察、および検査法を適切に行い、以下の項目を達成することができる。
 1. 悪性腫瘍の診断を確定する。
 2. 悪性腫瘍の拡がりの診断を行う。
 3. 治療上問題となる合併症を適切に診断する。

A. 問診で以下の情報を適確に得ることができる。
 1. 全般的な医学的情報
 2. 婦人科的な情報
 3. 悪性腫瘍に関連した情報
  癌の家族歴・既往歴、前癌病変に関する病歴など
 4. 婦人科悪性腫瘍に関連した情報

B. 診察を適切に行うことができる。
 1. 一般的理学的診察
 2. 婦人科的診察(内診、腟・直腸双合診)
 3. 婦人科悪性腫瘍評価のための診察

C. 婦人科悪性腫瘍について、その進行期を診断できる。
 1. 臨床進行期分類が適用されている疾患について、取扱い規約に従って診断できる。
 2. 臨床進行期分類が適用されている疾患について、新しい診断法も駆使して、治療前に詳細な情報を得ることができる。
 3. 手術進行期分類が適用されている疾患について、新しい診断法も駆使して、術前に詳細な情報を得ることができる。
 4. 手術進行期分類が適用されている疾患について、取扱い規約に従って診断できる。

D. 検査法を適切に選択し、正確に行うことができる。
 1. 細胞診
 細胞診の適応を理解し、検体を適確に採取することができる。
  a. 腟、子宮腟部、子宮頸管、子宮内膜から細胞診標本採取
  b. 細胞診標本判定結果の理解

 2. 内視鏡検査
 内視鏡の適応を理解し、適切に行うことができ、観察結果を解釈することができる。
  a. 子宮頸部、腟、外陰のコルポスコピー診断
  b. 子宮鏡
  c. 膀胱鏡
  d. 直腸鏡

 3. 生検検査
 生検の適応を理解し、適確な標本採取を行うことができ、組織標本の所見を解釈できる。
  a. 通常の生検
   (1) 外陰、腟の生検
   (2) 子宮腟部生検、子宮頸管内膜掻爬、円錐切除術
   (3) 子宮内膜生検、子宮内膜全面掻爬術
   (4) リンパ節生検(鼠径節、骨盤内、腹部大動脈周囲、鎖骨上窩リンパ節)
   (5) 生検可能な転移巣
  b. 穿刺生検
   (1) 骨盤内、腹腔内、皮下の病巣に対する穿刺細胞診、穿刺組織生検
   (2) 深部病巣に対する超音波ガイド下の生検

 4. 画像診断検査
 各種画像診断法について、その適応および診断の精度と限界を理解し、画像を読影できる.
  a. 超音波断層法(経腹、経腟)、カラードプラ法
  b. 単純X 線撮影(胸部、腹部)
  c. 腎盂尿路造影
  d. MRI
  e. CT
  f. 上部消化管造影、大腸造影
  g. 血管造影
  h. 各種シンチグラフィー
  i. PET

 5. 臨床検査
 検査の適応を理解し、その結果を解釈でき、診断・治療方針の決定に利用することができる。
  a. 尿検査
  b. 末梢血液検査
  c. 肝機能、腎機能検査を含む血清生化学検査
  d. 血液凝固系検査
  e. 電解質および血液ガス
  f. 肺機能検査
  g. 心機能検査
  h. 腫瘍マーカー
  i. 分子生物学的検査および遺伝子検査
  j. 血中ホルモン値およびホルモン受容体検査


Ⅱ.婦人科腫瘍病理組織・細胞診診断

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 婦人科腫瘍患者の診断、治療にあたり最も重要な項目である病変の肉眼的および細胞診断並びに病理組織診断学的評価を細胞診、生検、手術摘出標本で十分に理解することを目標とする。特に婦人科領域の良性疾患と悪性あるいは境界悪性病変を鑑別できることを目的に修練をすすめる.。更に以上の修練を通してこれらの病変の発生、進展や細胞生物学的動態についても良く理解し、その特徴や臨床的予後について認識することができるようにする。その他、剖検、凍結切片診断、免疫染色診断、分子病理学的診断についても十分な知識を有することも望まれる。

行動目標
 1. 婦人科腫瘍の摘出標本の切り出しから、最終的な病理組織報告書作成までの過程を病理専門医の指導の下で体験する。

 2. 婦人科腫瘍領域の生検、細胞診断について病理専門医、細胞診専門医の指導の下で最終的な報告書の作成までの流れを十分に習得する。

 3. 迅速診断、免疫組織化学、分子病理学的診断の実際を見学し、これらの診断技法の意義及びその実際を理解する。

 4. 修練期間中に婦人科腫瘍患者の剖検例を経験することが望ましく、CPC などを通して疾患の終末像を理解する。

A. 外陰
 1. 以下の外陰疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。
  a. 良性疾患
   (1) 増殖性病変や硬化性苔癬などの萎縮性病変
   (2) 顆粒細胞腫などの良性腫瘍
   (3) 尖形コンジローマ

  b. 上皮異形成(VIN)および上皮内癌

  c. 扁平上皮癌

  d. 腺癌

  e. Paget 病

  f. 悪性黒色腫

  g. 肉腫

  h. Bartholin 腺に発生する疾患
    嚢胞、扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌

  i. その他の稀な疾患

 2. ウイルス感染と上皮の増殖、癌の発生との関係を理解し記述できる。

 3. 扁平上皮内癌と浸潤癌の差異をよく理解しており、初期浸潤の特徴を認識し記述できる。

 4. 種々の外陰腫瘍の自然史、病因、分子病理学的背景や生物学的態度をよく理解し記述できる。

 5. 外陰の部位における癌の発生頻度やその進展様式を理解し記述できる。

 6. 外陰癌と他の性器癌との関連について理解し記述できる。

B. 腟
 1. 以下の腟疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。

  a. 良性疾患
   (1) 子宮内膜症
   (2) アデノーシス
   (3) 扁平上皮乳頭腫、尖形コンジローマ
   (4) その他

  b. 扁平上皮異形成(VAIN)および上皮内癌

  c. 扁平上皮内癌

  d. 腺癌

  e. 悪性黒色腫

  f. ブドウ状肉腫・胎児性横紋筋肉腫とその転移病巣

  g. その他の稀な疾患
    内胚葉洞腫瘍, 肉腫など

  h. 転移性癌

 2. 妊娠中の母体にdiethylstilbestrol (DES) を投与した結果、その女児に起こり得る性器異常についての知識を有し記述できる。

 3. 腟癌について、その自然史、病因、分子病理学的背景、発生部位と頻度、およびその進展様式について記述できる。

C. 子宮頸部
 1. 細胞診標本について、以下の細胞所見を理解し形態学的特徴を記述できる.
  a. 正常上皮
  b. 上皮内腫瘍
  c. 扁平上皮癌
  d. 腺癌
  e. ウイルスによる変化
  f. トリコモナスおよび真菌の同定
  g. 異型腺細胞の同定

 2. 以下の子宮頸部疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。
  a. 扁平上皮化生
  b. 微小頸管腺過形成
  c. コイロサイトーシス
  d. 上皮内腫瘍(CIN):異形成、上皮内癌
  e. 微小浸潤扁平上皮癌
  f. 扁平上皮癌
  g. 腺癌
  h. その他の稀な腫瘍
  i. 転移性癌

 4. 上皮内腫瘍の発生と上皮内癌、浸潤癌に至る過程を、発生部位の移行帯の特性を理解して記述できる。

 5. 子宮頸部上皮のウイルス性変化と上皮内腫瘍との関係を認識できる。

 6. 上皮内癌の腺管侵襲と間質浸潤の生物学的並びに臨床的意義を理解し記述できる事。

 7. 微小浸潤癌の定義とその治療の原則を理解し記述できる。

 8. 子宮頸部上皮内腫瘍と癌について、コルポスコピー所見、細胞診所見、病理組織所見の関連性について記述できるともに、不一致についても説明できる。

 9. 子宮頸部腺癌と子宮内膜腺癌の病理学的鑑別について説明できる。

 10. 子宮頸癌の脈管侵襲の病理組織学的意義に関して記載できる。

 11. 子宮頸癌の自然史とそれを規定する病理学的要因について記述できる。

 12. 妊娠中の子宮頸部上皮内腫瘍および子宮頸癌について、診断、管理について理解し記述できる。

D. 子宮体部
 1. 疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。

  a. 正常、非増殖性変化
   (1) 増殖期内膜
   (2) 分泌期内膜
   (3) 萎縮性内膜
   (4) 妊娠時の内膜
   (5) Arias-Stella 変化
   (6) 腺筋症

  b. 増殖性変化
   (1) 子宮内膜ポリープ
   (2) 単純型増殖症
   (3) 複雑型増殖症
   (4) 異型増殖症

  c. 癌
   (1) 類内膜腺癌
   (2) 扁平上皮成分への分化を伴う類内膜腺癌
   (3) 漿液性腺癌
   (4) 明細胞腺癌
   (5) 粘液性癌
   (6) 扁平上皮癌

  d. 子宮内膜間質腫瘍
   (1) 子宮内膜間質結節
   (2) 低悪性度子宮内膜間質肉腫
   (3) 高悪性度子宮内膜間質肉腫

  e. 癌肉腫
   (1) 同所性
   (2) 異所性

  f. 平滑筋肉腫

  g. 転移性癌

  h. その他の悪性腫瘍

 2. 子宮内膜細胞診について以下の細胞像を認識でき記述できる。
  a. 正常、周期性変化
  b. 増殖性変化
  c. 内膜腺癌

 3. 子宮内膜増殖症と子宮内膜腺癌の関連について理解し記述できる。

 4. 以下の疾患について、自然史、生物学的態度、進展様式を理解し記述できる。
  a. 子宮内膜腺癌
  b. 子宮内膜間質肉腫
  c. 平滑筋肉腫
  d. 癌肉腫

 5. 子宮内膜異型増殖症と腺癌の鑑別をその限界点とあわせて理解し記述できる。

 6. 良性の平滑筋腫と平滑筋肉腫の鑑別の基準や子宮内膜間質肉腫のgrading について記述できる。

 7. 内膜腺癌の筋層浸潤と腺筋症の病理組織学的差異を理解し記述できる。

 8. 子宮内膜癌患者に対するホルモン補充療法についてそのメリット、デメリットを理解し記述できる。

E. 卵管
 1. 以下の疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。
  a. 良性の類腫瘍病変
   (1) 高度の慢性卵管炎
   (2) 嚢胞性卵管炎
   (3) 上皮性変化を伴った結核性卵管炎
   (4) 結節性峡部卵管炎

  b. 良性の類内膜性病変
   (1) 子宮内膜症
   (2) 偽脱落膜変化

  c. 妊娠に関連した変化
   (1) 子宮外妊娠

  d. 腺癌、癌肉腫

  e. 転移性癌

  2. 原発性腫瘍と転移性腫瘍の鑑別について理解し記述できる。

F. 卵巣
 1. 以下の疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。
  a. 表層上皮性・間質性腫瘍
   (1) 良性腫瘍
   (2) 境界悪性腫瘍
   (3) 悪性腫瘍
  b. 性索間質性腫瘍
  c. 胚細胞性腫瘍
  d. 転移性卵巣癌
  e. 類腫瘍病変

 2. 種々の卵巣腫瘍についてその自然史、分子病理学的背景を含む細胞生物学的態度について理解し記述できる。

 3. 種々の卵巣腫瘍についてその発生頻度、両側発生の可能性について理解し記述できる。

 4. 原発性卵巣腫瘍を転移性卵巣癌と区別するための特徴を理解し記述できる。

 5. 境界悪性、悪性卵巣腫瘍において、嚢腫摘出術や片側付属器切除術に止め妊孕能を温存できる適応を理解し記述できる。

G. 絨毛性疾患
 1. 以下の疾患について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。

  a. 正常の初期妊娠像

  b. 胞状奇胎
   (1) 全胞状奇胎
   (2) 部分胞状奇胎

  c. 侵入奇胎

  d. 胎盤部トロホブラスト腫瘍

  e. 絨毛癌

 2. 種々の絨毛性疾患についてその自然史と生物学的態度を理解し記述できる.

H. リンパ節
 1. 組織学的に以下の疾患を認識し記述できる.
  a. 転移性癌
  b. 良性の上皮成分(子宮内膜症、卵管内膜症)

 2. リンパ節穿刺細胞診による悪性上皮細胞を認識できる.

I. 大網
 大網の転移病巣について、肉眼および病理組織学的、一部では細胞診断学的所見を把握し、病理組織診断並びに細胞診診断の報告書の内容を適確に理解してその疾患の診断、治療に応用できる。

J. 腹水、腹腔洗浄細胞診
 腹水あるいは腹腔洗浄液の細胞診断学的所見、結果を理解できる。細胞診断の結果にもとづいて、その疾患の診断、治療に応用できる。


Ⅲ.癌患者の病態生理とその管理

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 婦人科癌患者を管理する上で必要な生理学と病態生理学について十分な知識を有し、活用できる。

行動目標
 以下の基礎的事項及び婦人科癌患者に起こり得る異常についてその病態を理解し、治療について記述できる。

A. 体液、電解質
 1. 水、電解質バランスと輸液
  a. 体液とその組成
   (1) 体液構成
   (2) 水・電解質の調節機構
  b. 水バランスの異常
   (1) 脱水
   (2) 水過剰
  c. 電解質バランスの異常とその補正
   (1) 血清ナトリウム値の異常
   (2) 血清カリウム値の異常
   (3) 血清カルシウム値の異常
   (4) 血清クロール値の異常
 2. 酸・塩基平衡
  a. 酸・塩基平衡の基礎(pH, pCO2 base excess)
  b. 酸塩基平衡異常の診断と治療
   (1) 呼吸性アシドーシス
   (2) 呼吸性アルカローシス
   (3) 代謝性アシドーシス
   (4) 代謝性アルカローシス

B. 栄養
 1. 成人女性の一日あたりのカロリー、蛋白質、炭水化物、脂肪およびビタミンの必要量
 2. 水分、電解質、カロリー、ビタミンの過不足量の同定と補正

C. 血液と血液成分
 1. 輸血
  a. 輸血の目的
  b. 輸血用血液および血液成分
   (1) 輸血用血液
   (2) 自家血輸血
   (3) 成分輸血
  c. 輸血の実際
   (1) 輸血の適応、方法
   (2) 輸血時の検査
  d. 輸血の副作用・合併症
   (1) 溶血性反応
   (2) 非溶血性非感染性副作用
   (3) 輸血による感染
   (4) 大量輸血による合併症
     低体温、高カリウム血症、クエン酸中毒、出血傾向
  e. 代用血漿剤

 2. 血液凝固系
  a. 出血と止血、凝固系の応答
   (1) 出血と凝固系の応答
   (2) 線維素溶解現象
   (3) 血液凝固・線溶の阻止作用
     アンチトロンビンⅢ, α2プラスミン・インヒビター
  b. 止血・凝固異常
   (1) 手術に伴って起こる血液凝固系、血小板系、線溶系の変動
   (2) DIC
   (3) 先天性出血性疾患

D. 心・循環器系
 1. 循環機能検査の意義と異常について基礎的知識をもつ.
  a. AHA、NYHAの分類
  b. 血圧とその異常
  c. 心電図とその異常
  d. 運動負荷試験
  e. 心エコー
  f. 心筋シンチグラフィー
  g. 中心静脈圧

 2. 循環管理の基礎
  a. 前負荷の管理(循環血液量の調節)
  b. 心機能の管理
  c. 後負荷の管理

 3. 循環系合併症
  a. 深部静脈血栓症の診断・治療
  b. 肺塞栓症の診断・治療(予防)
   (1) 肺換気血流シンチグラフィー
   (2) 肺動脈造影
   (3) ヘパリン、ワーファリンによる治療
   (4) 下大静脈フィルター
   (5) 理学療法:弾性包帯・ストッキング、フットポンプなど
  c. 抗癌剤の心毒性

E.呼吸機能
 1. 正常の肺機能と検査の理解
 2. 呼吸器疾患の病態と診断・治療
  a. 慢性閉塞性肺疾患
  b. 無気肺
  c. 気道閉塞・気道狭窄
  d. 拘束性換気障害
  e. 肺水腫
  f. 成人型呼吸窮迫症候群
  g. 急性肺炎・気管支肺炎
  h. 重症喘息・喘息重積状態
 3. 人工呼吸器の使用法とその適応

F. 腎機能と腎不全
 1. 正常腎機能
  a. 腎機能の生理学
  b. 腎機能検査

 2. 腎機能異常の病態と診断・治療
  a. 感染症
  b. 腎不全
  c. 薬剤の腎毒性
   (1) 抗癌剤
   (2) 抗生物質

 3. 膀胱の変化
  a. 抗癌剤による変化
  b. 放射線治療による変化
  c. 腫瘍性変化
  d. 手術に伴う変化

G.消化器系
 1. 消化管の生理学

 2. 婦人科癌の治療に伴う消化管の変化と病態の診断・治療
  a. 婦人科癌の浸潤・転移による通過障害
  b. 放射線治療による変化、腸炎、腸閉塞
  c. 抗癌剤による変化、腸炎、消化器症状
  d. 広範な切除に伴う合併症

 3. 消化管合併症の診断・治療
  a. 腸閉塞
  b. 盲管症候群
  c. 短腸症候群(short bowel syndrome)
  d. 腸瘻

 4. 肝臓
  a. 肝臓の生理学
  b. 肝疾患の診断・治療
   (1) ウイルス性肝炎
   (2) 婦人科腫瘍の転移
   (3) 肝硬変、肝不全
   (4) 薬剤性肝障害
    ① 抗癌剤
    ② 抗生物質
    ③ その他

H. 精神・神経系
 1. 癌に関連する中枢神経系異常とその治療
  a. organic brain syndrome(器質性脳症候群)
  b. 癌の進展に伴う脊索、神経根圧迫
  c. 抗癌剤または放射線による脳、脊索の障害

 2. 末梢神経障害の原因とその治療
  a. 手術
  b. 抗癌剤
  c. 放射線
  d. 癌の浸潤

 3. 癌疼痛の原因と管理
  a. 癌疼痛の原因
  b. 治療
   (1) NSAID
   (2) 麻薬
   (3) 麻酔

 4. サイコオンコロジー
  a. 婦人科癌患者の心理と行動的反応
  b. カウンセリングの基礎

I. ショック
 1. 癌患者におけるショックの成因と治療
  a. 失血性ショック
  b. 心原性ショック
  c. 敗血症性ショック


Ⅳ.発癌、浸潤と転移

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 発癌過程における環境因子、遺伝的素因、ウイルスの影響を理解する。浸潤、転移の基本的な概念・理論を理解する。

行動目標
A. 以下の事項について理解すると共に記述できる.
 1. 環境因子と発癌
  a. 女性ホルモンおよびSERM(selective estrogen receptor modulator)の影響
   (1) 胎児期のDES 暴露と腟癌、子宮頸癌の発生
   (2) ホルモン補充療法と子宮内膜癌
   (3) SERM(特にタモキシフェン)と子宮内膜癌

  b. 放射線被曝
   (1) 放射線治療後の照射部位に新たな悪性腫瘍(癌や肉腫)の発生する危険性
   (2) CT、DIP/IVP、胸腹部単純X 線など診断的放射線被曝による発癌の危険性

  c. 抗癌剤の影響
   (1) 抗癌剤による2次発癌の危険性
   (2) 母体に対する化学療法による胎児への危険性

  d. ヒトパピローマウイルス(HPV)感染と発癌
   (1) HPV の分子生物学(構造、発癌遺伝子、疫学)
   (2) HPV 感染による女性生殖器の変化
   (3) HPV ワクチン

  e. 環境発癌物質(タルク、アスベスト、喫煙など)と婦人科悪性腫瘍の関連

 2. 好発癌家系と原因遺伝子

 3. 癌の細胞生物学
  a. 細胞構造
  b. 代謝系
  c. 細胞周期(G1, S, G2, M, G0)

 4. 婦人科癌の進展様式

 5. 多段階発癌
  a. Initiation、promotion、progression
  b. 血管新生
  c. 浸潤・転移に関連する因子
   (1) 成長因子VEGF FGF, EGF, HGF, PDGF
   (2) インテグリン、カドヘリン/カテニン
   (3) Metalloproteinase
   (4) カテプシン


Ⅴ.婦人科腫瘍に関する遺伝子・遺伝学

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 癌遺伝子、癌抑制遺伝子、DNA 修復遺伝子、テロメレース関連遺伝子、アポトーシス関連遺伝子などの癌関連遺伝子、好発癌家系について基礎的な知識を習得する。

行動目標
A. 以下の基礎的事項について理解するとともに記述できる。
 1. 癌関連遺伝子の正常の機能と癌化における役割
  a. 癌原遺伝子(myc, ras, c-erbB-2 等)

  b. 癌抑制遺伝子(p53, RB, WT1, VHL, BRCA1/2 等)

  c. DNA 修復遺伝子(hMSH1, hMSH2, hMSH6 等)

  d. テロメアとテロメレース関連遺伝子hTERT、hTR 等)

  e. アポトーシスとアポトーシス関連遺伝子

 2. 癌原遺伝子の活性化の機序

  a. 点突然変異

  b. 挿入

  c. 欠失

  d. 増幅 

  e. 転座

 3. 癌抑制遺伝子の不活化の機序
  a. Knudson の2 ヒット説

  b. 散発性腫瘍と家族性腫瘍の臨床遺伝学的特徴
    発症年齢、両側性、多重癌

  c. p53 遺伝子の正常機能と癌化における役割

 4. 癌における染色体変化

 5. 婦人科腫瘍における遺伝子変化
  a. 子宮内膜癌
  b. 卵巣癌
  c. 子宮頸癌

 6. 婦人科癌好発家系の臨床遺伝学・カウンセリングの基礎知識
  a. 卵巣癌家系

  b. 家族性乳癌・卵巣癌症候群

  c. 遺伝性非腺腫性大腸癌


Ⅵ.臨床統計と臨床試験

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 臨床研究についてその立案や説明を行う上で必要な疫学、統計的手法を十分理解する。

行動目標
A. 以下の疫学に関する基本的事項を記述或いは説明できる。
 1. 疫学的事項
  a. 疾病頻度、疾病罹患率
  b. 疾病率の標準化

 2. 病因について
  a. 病因を判定する基準
  b. 定量的判定法(相対危険率、オッズ比)

 3. 疾病、危険因子のスクリーニング
  a. スクリーニング法を確立するための基準
  b. スクリーニングの定量的評価法
    感度、特異度、receiver-operator characteristic curve (ROC 曲線)

 4. 研究方法
  a. 実験的ランダム化比較臨床試験等
  b. 観察的前方視的コホート研究、後方視的コホート研究、ケースコントロール研究

 5. 研究において考慮すべき事項
  a. 検出力
  b. 対象の選択
  c. コントロールの選択
  d. 無作為抽出法
  e. 倫理的配慮
  f. バイアスの回避
  g. 混乱因子の回避

B. 以下の統計に関する基本的事項を理解し説明できる.
 1. 記述統計
  a. 標本統計量の計算
  b. 分散の計測

 2. 統計学的推測の信頼度

 3. 推論(仮説検証)
  a. 信頼区間
  b. ノンパラメトリック法
  c. パラメトリック法
   (1) 二群の差の検定(z 検定、t 検定)
   (2) 多群の差の検定(分散分析法等)
   (3) 比率の検定(カイ二乗検定等)
  d. 多変量解析(重回帰分析, 比例ハザードモデル、ロジスティックモデル)

C. 研究を計画するにあたり、いつどのように統計学者に相談するかを理解する。

D. データの蓄積及び分析に関してコンピュータの使用、重要性、限界を理解する。


Ⅶ.腫瘍免疫学

2006年11月23日 | 婦人科腫瘍

一般目標
 免疫システムの基本的な要素について知る。

行動目標
A. 定義
以下の事項について定義を理解する.
 1. 抗原および抗体
 2. 以下の細胞とその由来、機能
   マクロファージ、B 細胞、NK 細胞
 3. 抗体の5つのクラスとその機能
 4. T 細胞とその分類、その由来、機能
 5. 医療的に利用される可能性のあるサイトカイン
   TNF, インターロイキン類、インターフェロン類、等
 6. 補体とその由来、機能

B. 免疫反応
以下の事項について理解し説明できる.
 1. 抗原に曝露された後の抗体産生の機序
 2. 異物抗原に曝露された後の殺細胞的リンパ球の働きと機序
 3. 主なサイトカインの効果とその発現の機序(単独の役割とサイトカインネットワークの中での役割)
 4. 即時性過敏症反応と遅発性過敏症反応
 5. 液性免疫反応と細胞性免疫反応の違い
 6. 細胞性免疫反応の機序
 7. 免疫抑制、免疫賦活、免疫寛容の状態の例
 8. 低栄養状態が免疫に及ぼす影響とそれをモニターする方法

C. 腫瘍免疫
免疫系が腫瘍発生の過程で関与している証拠とされる資料について知ると共に、以下の事項を理解し、説明できる。
 1. 以下の抗原の違い
  a. 癌特異移植抗原(TSTA)
  b. 腫瘍関連抗原(TAA)
  c. ヒト白血球抗原(HLA)

 2. 腫瘍に対する免疫監視機構および拒否反応の欠落に関する理論

 3. 免疫不全、免疫抑制状態における癌の発生

 4. 化学発癌物質により発生した癌の特異抗原

 5. ウイルスにより誘発された癌の抗原性

 6. ウイルスにより癌が誘発される免疫学的証拠

 7. 婦人科癌における腫瘍関連抗原の証拠

 8. 婦人科癌における腫瘍マーカーの有用性
   CEA, AFP, hCG, CA125, CA19-9, SCC 等

D. 免疫療法
以下の事項について理解し説明できる
 1. 3 つの免疫療法(特異的能動的免疫療法、非特異的能動的免疫療法、受動的免疫療法)

 2. サイトカインの医療応用

 3. 単クローン性抗体の製造の機序と癌の診断、治療への応用