東京や大阪などの大都市圏以外では、全国的に産婦人科の勤務医の数はかなり減少しました。また、新たに開業する産婦人科医達は分娩を取り扱わない場合が多いので、分娩を取り扱う施設の数は激減しています。そのため、各医療圏の拠点病院産婦人科に患者さんが集中する傾向が非常に顕著になっています。
医師を供給する大学側の基本的な考え方は、『県全体の産婦人科医療を崩壊させないように守り抜く。そのため、産婦人科医を拠点病院に集約化する。』というスタンスだと思います。
また、各自治体や地域住民の意見が、『近所で分娩できなくなったのは非常に不便なので、産婦人科医を拠点病院に集約化するなんて方針はもってのほかである。産婦人科医を拠点病院に集めるのではなく、医師をなるべく均等に分散し、近所の病院にも1人でいいから産婦人科医を回してほしい。そして、何とかして近所での分娩取り扱いを再開してほしい。』というような方向になりがちなのは十分に理解できます。
いろいろ問題はあるにせよ、拠点病院の産婦人科が何とかもちこたえている医療圏では、産科医療にせよ婦人科医療にせよ、その医療圏で医療が完結してます。しかし、拠点病院の産婦人科が崩壊してしまった医療圏では、正常分娩以外はすべて近隣の医療圏に依存しなければならない非常に困った事態に陥っている現実があります。その落差は非常に激しいので、拠点病院産婦人科への医師集約化の重要性が、一般の地域住民にも、徐々に理解されつつあるのではないかと思います。
最近は、全国的に大学の産婦人科へ入局する若い医師がやや増加する兆しもでてきたと聞いてますが、若い医師達は、医学部を卒業してから最初の十年くらいの間は、症例数の多い大きな病院で研修して、十分に修業を積んで実力をつける必要があります。従って、現在の状況はすぐには変わらないでしょう。
私自身の立場としては、自分の定年退職までは、大学医局と一心同体となり、近隣の産婦人科医療体制が何とか持ちこたえるように頑張りぬきたいと思っています。しかし、私の医学知識<wbr></wbr>や技能もだんだん時代遅れの旧式になりつつあり、<wbr></wbr>定年退職までのあと数年間で次世代へのバトンタッチを完了する必要があります。