DLB: dementia with Lewy body
αシヌクレイン(α-Syn)
レビー小体型認知症(DLB)は、1976年、小阪憲司氏が最初に発見した病気で、近年、世界中で注目を集めるようになった認知症です。DLBは、神経細胞内にαシヌクレインという異常な蛋白質が蓄積することで、幻視を始めとする認知機能障害やパーキンソン病に類似した運動症状を引き起こす進行性の難病です。DLBの国内患者数は60~90万人程度と推定されます。
レビー小体型認知症の診断基準2017
(Mckeith,I.G et al.: Neurology, 89: 88-100, 2017)
1 認知症がある
2 中核臨認床像
*注意や覚醒レベルの変動を伴う認知機能の動揺
*現実的で詳細な内容の幻視が繰り返される
*レム睡眠行動障害
*パーキンソニズム
3 診断を示唆する検査項目
*SPECT/PETで後頭葉の取り込み低下
*MIBG心筋シンチの取り込み低下
4 診断を支持する臨床像
*向精神病薬への薬剤過敏性
*姿勢不安定、繰り返す転倒
*失神
*起立性低血圧・便秘・尿失禁などの自律性神経障害
*過眠
*嗅覚障害
*幻視以外の幻覚
*体系的な妄想
*アパシー、不安、うつ
5 診断を支持する検査所見
*脳血流SPECTなどで後頭葉の血流低下の所見
*MRI/CTで側頭葉内側部(海馬領域)の萎縮が強くない
臨床診断:認知症であることが前提で、中核臨床像4項目中の2項目。または中核臨床像1項目と診断示唆検査所見1項目でレビー小体型認知症と臨床診断する。
(介護支援専門員基本テキスト八訂、第3巻、p236)
レビー小体型認知症の症状:
① レム睡眠行動障害:夜中に夢を見て(レム睡眠中)、「逃げろー」と大声を出したり、蹴飛ばしたりするなどの動作を行う症状が、認知症の何年も前からみられることが多い。
② うつが比較的早期から出現する。
③ 嗅覚低下も比較的早期から出現する。
④ レビー小体型認知症はリアルな幻視が特徴的で、見えたものに対して、払いのける、逃げるなどのリアクションを伴う。また、同居の家族を他人だという誤認妄想や、誰かが家に来ているという「幻の同居人」の出現も特徴的。認知機能の低下は全般的で、視覚認知障害がやや目立ち、アルツハイマー型認知症ほどではないが記憶障害を伴う。
⑤ パーキンソン症状は認知症状に少し先行することも、初期には伴わないこともある。
⑥ 自律神経症状として、起立性低血圧(立ちくらみ)、血圧の変動、失神、便秘が高率に見られる。
⑦ 転倒はアルツハイマー型認知症の10倍多いといわれ、施設で受け入れる際には「失神やパーキンソニズムでいきなり転倒するので、注意しても転倒は防ぎきれない」と介護する家族に伝えておく必要がある。
レビー小体型認知症は、上記のような経過とともに、改善・悪化と変動しながらも徐々に進行し、寝たきりを経て死に至ります。嚥下障害をきたしやすく、アルツハイマー型認知症よりも進行は速く、発症から死までの全経過は10年未満とされています。
治療:
認知障害に対しては、2014年にアリセプト®が保険適応になりました。パーキンソン症状に対しては、パーキンソン治療薬が使われますが、使いすぎると幻視や妄想の悪化やせん妄を招きます。レビー小体型認知症は、薬剤過敏性が特徴ですので、薬剤を少量から始めてゆっくり増減して調節する必要があります。
参考文献:
1)レビー小体型認知症がよくわかる本 (健康ライブラリーイラスト版) 、小阪憲司、2014
2)介護支援専門員基本テキスト(八訂)、長寿社会開発センター、2018
3)改訂2版 「パーキンソン病」「レビー小体型認知症」がわかるQAブック: 最新ガイドラインに準拠!、小阪憲司、織茂 智之、2018
4)第二の認知症 レビー小体型認知症がわかる本、川畑信也、2020