ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

胎児循環

2011年04月30日 | 周産期医学

胎盤におけるガス交換
・ 胎児のガス交換は、胎盤の絨毛間腔で母体血と胎児血とのガス分圧の差による拡散によって行われる。
・ 絨毛間腔は母体血で満たされ、母体血と胎児血は混合しない。
・ 胎児の血液は、赤血球数が増加(多血)し、酸素親和性の強い胎児ヘモグロビン(HbF)が主体となっている。

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胎児循環の血液の流れ
・ 右心房に上大静脈と下大静脈が還流する。
・ 下大静脈には胎盤で酸素化された血液が静脈管を通って流れ込んでいる。右心房に流入した下大静脈由来の酸素分圧の高い血液の多くは卵円孔を通って左心房に入る。
・ 上大静脈由来の酸素分圧の低い血液の多くは右心房から右心室へ入って肺動脈へ流れる。肺動脈血流は動脈管を通って下行大動脈に合流する。
・ 下行動脈の血液の一部は内腸骨動脈から分枝する臍帯動脈を経て胎盤に至り、再び酸素化を受ける。

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胎児循環の特徴
①胎盤でのガス交換を含む体外循環を有し、肺循環は乏しい。
②卵円孔という心内シャントにより左右の心房が交通する。
③左右の心室の厚さは同等である。
④動脈管により肺動脈は大動脈に連絡され、右心室の拍出する血液の大部分が大動脈に流れる。
⑤臍帯動静脈、静脈管が存在する。

胎児循環から新生児循環への変化
①肺動脈が開く。
②卵円孔が閉鎖する。
③動脈管が収縮する。
④動脈管が閉じる。
⑤臍帯動脈が閉じる。
⑥胎児循環がなくなる。

****** 問題

問題1
胎児循環で酸素分圧が最も高いのどれか。
a 右心室
b Botallo動脈管
c 上行大動脈
d 下行大動脈
e Arantius静脈管

問題2
胎児循環で正しいのはどれか。2つ選べ。
a 臍静脈は2本である。
b Arantius静脈管は下大静脈に流入する。
c 左右心室は卵円孔で交通している。
d 右室の拍出量の大部分はBotallo動脈管を通過する。
e 最も高い酸素濃度の血液が流れる血管は中大脳動脈である。

問題3
胎児循環で正しいのはどれか。2つ選べ。
a 卵円孔では主に上大静脈の血液が左心房に流れる。
b 動脈管では肺動脈から下行大動脈に血液が流れる。
c 静脈管には酸素化血が流れる。
d 臍帯動脈では胎盤から胎児側に血液が流れる。
e 絨毛間腔では胎児血と母体血が混じっている。

問題4
正しいのはどれか。2つ選べ。
a 絨毛間腔は母体血が循環する。
b 脱落膜は胎児由来の組織である。
c 羊水量は胎児腎機能と関連する。
d 胎盤の構造は妊娠24週で完成する。
e 胎盤重量は妊娠末期で平均800gである。

****** 正解

問題1
a. 右心室には上半身に酸素供給をし終えた血液が主に流入するため、酸素分圧は低い。
b. 動脈管内の血液は、右心室から肺動脈を経ており、酸素分圧は低い。
c. 上行大動脈には、比較的酸素飽和度の高い下大静脈由来の動静脈混合血が流れる。
d. 下行大動脈には動脈管からの血液が流入し、上行大動脈よりも酸素分圧は低下する。
e. 静脈管内には、臍帯静脈由来の純粋な動脈血が流れている。
正解:e

問題2
a. 臍動脈は2本、臍静脈は1本である。
b. Arantius静脈管は、臍静脈の血液(動脈血)を下大静脈へ流入させる。
c. 卵円孔があるのは左房と右房の間である。
d. 胎児循環では、肺循環へ血液を送る必要がないので、右室の拍出量の大部分は動脈管を通る。
e. 酸素濃度が最も高いのは、臍静脈、Arantius静脈管および肝分枝の血液である。
正解:b、d

問題3
a. 上大静脈から右心房に流入した血液の多くは卵円孔を通過せず右心室へ入る。下大静脈から右心房に流入した血液の多くは卵円孔を通過して左心房に流れる。
d. 臍帯動脈は胎児の内腸骨動脈の分枝であり、胎児より胎盤に向かって血液が流れる。
e. 絨毛間腔には母体血が流れており、母体血と胎児血が混合することはない。
正解:b、c

問題4
a. 絨毛間腔は母体血で満たされている。
b. 脱落膜は母体の子宮内膜由来である。
c. 胎児腎からの尿産生と胎児の嚥下で羊水量は調節されている。
d. 胎盤の構造は妊娠14~16週で完成する。
e. 胎盤重量は妊娠末期で約500gである。
正解:a、c


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
以前から疑問に思っていたのですが、出生児の評価... (田舎暮らし)
2012-11-21 01:08:43
成人は動脈血で血ガスをとることを考えたら、臍帯静脈でとる方が理にかなっているように思うのですが。
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