ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

HELLP症候群

2011年10月20日 | 周産期医学

HELLP syndrome

【定義】 HELLP症候群とは、
溶血 (Hemolysis)、
肝酵素上昇 (Elevated Liver Enzyme)、
血小板減少 (Low Platelets)

を主徴候とする症候群である。

【疫学】 全妊娠の0.2~0.6%、PIHの4~12%で、2/3は妊娠中の発症で、1/3は産褥期発症である。90~96%がPIHに合併して起こる。

経産婦、多胎妊娠に多い。

再発率が約20%と高い。

【血液検査所見】 
LDH≧600U/L、
末梢赤血球スメア:有棘赤血球、分裂赤血球など、
ビリルビン≧1.2mg/dL、
AST (GOT)≧70U/L、
血小板数<10万/μL

【症状】 突然の上腹部痛や心窩部痛(90%)、疲労感や倦怠感(90%)などで発症し、嘔気・嘔吐(50%)、食欲不振もみられる。HELLP症候群に先行して血小板減少がみられる。多くは高血圧、蛋白尿を伴う。主な合併症はDIC(20%)、常位胎盤早期剥離(16%)、腎不全(7%)、肺水腫(6%)、胸水・心嚢水、肝内血腫・肝破裂(1%以下)などがある。胎児機能不全の頻度も高いため、厳重な管理を要し、急速遂娩(帝王切開が多い)となることが多い。

【病態】 上腸間膜動脈や肝動脈の攣縮と網内系の血管内皮障害が主な病態と考えられる。

【治療】 治療の基本は、妊娠中断(ターミネーション)である。

早期診断をして、降圧剤の投与、硫酸マグネシウムの投与、新鮮凍結血漿の投与などを行いつつ、帝王切開で妊娠を中断する。

近年、ステロイド療法(ベタメタゾン、デキサメタゾン)が母児の予後改善につながるとの報告が多い。

塩酸リトドリンは禁忌である。(血管攣縮を助長するため好ましくない)

【予後】 母体死亡率1~4%、周産期死亡率30~40%。

子癇と同時に発症する例は重篤な経過をたどる。

多臓器不全などの続発症もみる。

****** 問題

HELLP症候群について誤っているのはどれか。2つ選べ。

a 産褥期にも発症することがある。
b 肝静脈の血栓症が原因と考えられている。
c 妊娠高血圧症候群に続発することが多い。
d 末梢血の塗沫検鏡で球状の赤血球がみられる。
e 突然の上腹部痛が高頻度にみられる。

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正解:b、d

a 2/3は妊娠中の発症で、1/3は産褥期発症である。

b 上腸間膜動脈や肝動脈の攣縮と網内系の血管内皮障害が主な病態と考えられる。

c PIHの4~12%にHELLP症候群を合併する。また、HELLP症候群の90~96%がPIHに合併して起こる。

d 末梢赤血球スメア:有棘赤血球、分裂赤血球など

e 多くは突然の上腹部痛や心窩部痛で発症する。  


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