大多数の欧米諸国では、妊婦健診は近くの診療所で行うが分娩施設は集約されているのに対して、日本では多数の小規模施設が分娩を取り扱うという特徴があります。例えば、分娩施設あたりの産婦人科医数は、アメリカが6.7人、イギリスが7.1人であるのに対し、日本はわずか1.4人にすぎず、きわめて小規模な施設で多くの分娩が行われているのが現状です。
日本の分娩施設は少人数の産科医で維持されているため、各施設の産科医の当直回数が多くなって勤務環境が過酷となり、これが若い医師がこの分野への参入を躊躇する大きな要因の一つとなっています。
全国各地の多くの分娩施設が休診ないし規模縮小に追い込まれていて、事態はどんどん悪化し続けてますが、小規模施設での分娩管理にはやはり限界がありますから、各地域で分娩施設の集約化を進め、施設あたりの産婦人科医数を少なくとも諸外国並みの6~7人程度まで増やす必要があると思います。
次世代の若い人達が入門を尻込みするような過酷な勤務環境のままで、無理に無理を重ねて頑張り続けるのは考えものです。産科医療を再生させるためには、若い人達が喜んで入門できるような勤務環境を整えることが非常に重要だと思います。
****** J-CASTニュース、2008年7月5日
半年先まで分娩予約でいっぱい 妊娠判明即病院探しに奔走
産婦人科医が足りず、半年先まで分娩の予約が取れない。そんな深刻な事態が全国で増えている。今や、妊娠したと分かった瞬間から、妊婦は産み場所を求めて奔走せざるをえないのである。
妊娠わかった時点で予約を取ることが絶対に必要
「09年1月まで、分娩予約を受け付けることができません」
そう話すのは、東京都内の産婦人科病院だ。ここでは、2人部屋と個室があるが、2人部屋は人気があり、すぐに埋まってしまう。割高な個室も少し空きがある程度だ。
また、都内の別の病院の場合は、ホームページに「09年1月前半まで予約を制限している」と書かれている。ここに問い合わせると、担当者は1月後半から予約可能と回答した。今後さらに制限が進むことも考えられるという。
1か月の分娩数を制限している病院もある。独立行政法人国立病院機構横浜医療センター(神奈川県横浜市)では、1か月の分娩数を70件にしている。産婦人科医が7~8人勤務している比較的大きな病院だが、担当者は「先週で1月までの予約がいっぱいになりました。埋まるのが早かったです」と話す。横浜市西部地区、藤沢、鎌倉地域の中核病院である同センターには、地域の産婦人科で予約が取れなかった妊婦が殺到している様子だ。
分娩予定日は通常、妊娠9~10か月目とされる。7か月先まで空きがないということは、妊娠2か月目までに受診しなければ間に合わない計算だ。ところがこの時期は自覚症状が少ないという。つまり、受診が遅れると予約が取れない、なんてことにもなりかねない。
「小さな病院は医師の数も、ベッド数も少ない。そのためすぐに予約でいっぱいとなってしまう。また、分娩できる施設の数自体も減っていて、妊婦さんは手当たり次第病院に問い合わせている」
妊娠がわかった時点で診察を受けて、早めに分娩予約を取ることが絶対に必要だ。各病院の担当者はこう口を揃える。最近の妊婦はまず、産む場所の心配をしなければならない。
一方、東京都の医療機関案内サービス「ひまわり」では地域別に助産所の検索ができるが、予約の空き状況まではわからない。各病院にデータを随時更新してもらわなければならないため、予約状況がわかるサービスの実現は難しい、と東京都福祉保険局は話している。
(以下略)
(J-CASTニュース、2008年7月5日)
労働環境、報酬で補うしかありません。
出産に立ち会う喜びがどうのこうの、の時代では
なくなりました。
学生や研修医が納得できる労働環境、報酬を
用意しないと誰も産科を希望しません。
学会は学生、研修医の意識調査をしっかりやっていただき、
この問題に真剣に取り組んでいただきたいと思います。
長野県は病院での出産の割合が全国で4-5番めに高く、7割以上だった思います。もう勤務医の比率は増えません。
産婦人科医が減少するの理由は明快です。開業しようと思っても1.つぶしがきかない。2.利益率が低い。3.投資額が大きい。このために産婦人科を志望しても開業する余地がない。つまり一生、定年まで病院に勤めないといけません。たとえ60歳になっても病院で20代の時と同じ仕事を連綿と続けなければならないのです。開業さえままならない科に、誰が選択を勧めるでしょう。産婦人科の親ですら、自分の子に産婦人科を継がせようとはなかなかしません。将来、勤務医を辞めて開業して外来だけで十分な生活が出来る診療報酬制度にならないと産婦人科医の底上げはむりです。
一産婦人科医;産科で開業するには5億円前後かかり、親が裕福でないと事実上無理です。婦人科で開業するには5千万円前後で可能ですが、おっしゃるように十分な利益を出すのは至難の業です。診療報酬制度が婦人科に不利なようになっているからです。今年度から小児科などの診療報酬を上げた事になっていますが、昨日の新聞報道では逆に小児科開業医の収入が減っているとありました。国は本当に馬鹿ですね。
全く,この国は何を考えているのでしょうか?
>医療費を減らすこと。だけ。
先生のブログ、いつも楽しみにしてます。御身体にお気をつけください。
朋有り遠方より来る 亦楽しからずや
同世代の志を同じくする仲間が全国から集まり、一緒に勉学に励むのは、とても楽しいことだと思います。
実は、当院の研修医にもそのサマースクールに参加を希望する者が1人いたんですが、気が付いたら参加申し込みの締め切り日を過ぎていてせっかくのチャンスを逃してしまい非常に残念に思ってます。そのかわり、明日から横浜で開催される第44回日本周産期・新生児医学会学術集会にその研修医と参加するので、一緒に楽しく勉学に励んできたいと思います。
もしも時間が許しましたら、ぜひ当方にも一度お立ち寄りください。(といっても、松本からはけっこう遠いですが...)