わたしは 黙す
とわに 黙す
わたしの 喉に
静寂を発する
氷のヒタキ 棲む
ゆえに だれも
わたしに
耳を澄ましては
ならない
ひたすらに
愛の まことを信じ
めしいのように
やってきたが
ああ とうとう
ここまで きたか
わたしは 黙す
とわに 黙す
もはや
声も 枯れ果てるほど
語り 尽くした
わたしの 頭に
無言を編む
翡翠の蜘蛛が 棲む
もはや なにも
わたしに尋ねては
ならない
何も 答えることは
できない
人よ
わたしの 胸に
夢まぼろしを噛む
灰のすみれ 伏す
もう 愛してはならないと
だれかが 言う
わたしの 耳に
忘却を歌う
白砂の 蝉が棲む
忘れた方が よい
わたしを
忘れなさい
せめて 今は
遠き明日のために
わたしを
忘れなさい