今から30年前の昨日にあたる1994年1月29日、米国ネバダ州で行われた試合結果です。
IBFウェルター級戦:
王者フェリックス トリニダード(プエルトリコ)判定3対0(119-106、117-109、116-110)挑戦者ヘクター カマチョ(プエルトリコ)
*結果として歴史に残る一戦となったフリオ セサール チャベス(メキシコ)とフランキー ランドール(米)によるWBCスーパーライト級戦。「生きる伝説」チャベスが初黒星と生涯初のダウンを喫した戦いの前座で、注目のプエルトリカン同士による新旧対決が行われました。
(真冬のラスベガスで、プエルトリコの新旧対決が実現)/ Photo: Youtube
この試合が行われる前年6月に、古豪モーリス ブロッカー(米)を相手に衝撃的なKO劇を演じ王座奪取に成功したトリニダード。左ジャブから右ストレート、そして左フックというシンプルなボクシングを展開する21歳の早熟な天才児です。
王者より10歳年長のカマチョは、スピードに乗ったサウスポー(左構え)スタイルで、1980年代の中量級を沸かせた人気者。ピークは過ぎたとはいえ、まだまだ世界トップレベルの実力を維持していました。
戦前の予想では、カマチョが経験を活かし善戦、もしくは「挑戦者が番狂わせを起こすのでは?」という声も多く聞かれました。実際序盤戦は、カマチョが中々の動きを見せ先手を取りました。しかもトリニダードは序盤戦に左目じりをカットしてしまったため、王者陣営に暗雲すら漂っていました。
しかしどちらかというとスロースターターのトリニダードは(と言っても王座挑戦試合は2回で、初防衛戦は初回で終わらせています)、カット以降にエンジンがかかり始めます。その左右の強打とリングを滑るようなフットワークで、徐々に徐々にとマッチョマン(カマチョのニックネーム)を追い詰めていったトリニダード。特にその右ボディーブローは有効的で、カマチョはそのパンチを貰うたびに露骨に逃げモードに入ります。
(古豪カマチョに襲い掛かるトリニダード)/ Photo: Ring Magazine
回を追うごとにトリニダードのワンサイドマッチとなったこの試合。後半戦ではカマチョのクリンチが目立つようになり、その度に会場からはブーイングの嵐が起こります。結局、マッチョマンは試合終了のゴングを聞くことが精一杯の有様。トリニダードが予想外の大差判定勝利を収め3度目の防衛に成功すると同時に、初の12回フルラウンドでも戦い抜けるスタミナがある事を証明。また一歩、スーパースターへの階段を上ることになりました。
(試合は予想外のワンサイドマッチに)/ Photo: Fox News
しかしいつ見てもいいですね、トリニダードのキビキビとしたボクシングは。
WBCスーパーウェルター級戦:
王者サイモン ブラウン(米)判定2対0(118-111、116-112、114-114)挑戦者トロイ ウォータース(豪)
*この試合が行われる前年の6月に、当時のWBC王者だったテリー ノリス(米)に挑戦したウォータース。3回終了時に降参しましたが(TKO負け)、2回にノリスからダウンを奪うなど大善戦。敗れたとはいえその名を全米のファンに知らしめています。ちなみにトリニダードはその興行に出場し、世界王座を獲得しています。
その後ノリスは9月に防衛回数を伸ばすことに成功。しかし師走にメキシコで行ったブラウンとの防衛戦でまさかのTKO負けを喫してしまいました。
王座獲得から僅か40日。ブラウンは好戦的な実力者ウォータースと初防衛戦を行うことになりました。打ち合い好きな選手同士の対戦なだけに、激しいパンチの交換が期待された一戦。しかし両者はリング中央で丁寧なパンチの交換を繰り広げることになりました。内容的にはそれほど悪くはなかったのですが、どうもこの日会場に訪れたお客さんは厳しい人ばかり。試合を通し、何度か「もっと打ち合え!」と言わんとばかりのブーイングが聞かれました。
(その強打でウォータース(右)を脅かすブラウン)/ Photo: Fox News
最終回、豪州人が王者を追い詰める場面がありましたが、結局は採点を覆すことは出来ず。ブラウンが自身2階級目の王座の初防衛に成功しています。
(ウォータースも負けじと反撃)/ Photo: Yahoo Sport Australia
リングサイドには両者と対戦したノリスの姿も見られました。ノリスは3月に再起戦を行うこととなっています。
(リングサイドにはノリスの姿も)/ Photo: Youtube