◇なずな◇
神様がたった一度だけ
この腕を動かして下さるとしたら
母の肩をたたかせてもらおう
風にゆれる
ぺんぺん草の実を見ていたら
そんな日が
本当に来るような気がした
-星野富弘さん-
神様がたった一度だけ
この腕を動かして下さるとしたら
母の肩をたたかせてもらおう
風にゆれる
ぺんぺん草の実を見ていたら
そんな日が
本当に来るような気がした
-星野富弘さん-

僕がはじめて星野富弘さんの詩に出逢ったのは、10年以上前だったろうか、新聞のコラムに載った、ぺんぺん草の詩だった。
試しに筆を口に咥えて文字を書いてみてください、それがどれほど大変なことかよくわかるでしょう。
そんな書き出しではじまったコラム「天声人語」は、まだ星野富弘さんを知らなかった僕にとって衝撃だった。それ以来、星野富弘さんの詩画集に興味を持った。
そして今度は、全盲のピアニスト・辻井伸行さんの、米国の高名なピアノコンクールでの快挙に驚かされた。
その彼は、1日だけ目が見えたら両親の顔が見たい、と言った。更に「今の自分はこころの眼で見ることができるので充分満足しています」とも言う。
体育の教師だった星野富弘さんは、鉄棒から落ちて首から下の運動機能を失いながら、口に咥えた絵筆で詩と画を描き、人を感動させる。
辻井伸行さんは、生まれつき目の見えないハンディを背負いながら、耳だけを頼りに超難曲といわれるピアノ曲で優勝し、多くの人に感動を与えた。
二人とも、障害をマイナスにせず、プラスに変える強さを持ち、明るく生きる。
僕がかつて、網膜剥離の手術をしたとき、もし両目が見えなくなったら生きていけないと思った。
白内障の手術で、良く見えるようになった目に感謝しながら、二人の強さに学び、障害を持って生きる人たちに心から敬意を表したい。