

黄色く色づいたイチョウが、空に向かって精一杯背伸びをしている。

つるべ落としの秋の陽は 木の影を長く伸ばして
西の空に落ちて行き
空も イチョウの葉も 木の影も ひんやりとした空気も
みんな秋の色

秋は雀さえも人恋しい季節
ましてや人は尚更のこと
むかし、ヴェルレーヌのこんな詩に涙したこともあったっけ。
◇落葉◇
秋の日の
ヴィオロンの
ためいきの
身にしみて
うら悲し
鐘のおとに
胸ふたぎ
色かへて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや
げにわれは
うらぶれて
ここかしこ
さだめなく
とび散らふ
落葉かな
-上田敏 訳『海潮音』より-
あの日の涙は いま何処?