ゆく河の流れは絶えずして
しかも もとの水にあらず
淀(よど)みに浮かぶうたかたは
かつ消えかつ結びて
久しくとヾまりたる例(ためし)なし
しかも もとの水にあらず
淀(よど)みに浮かぶうたかたは
かつ消えかつ結びて
久しくとヾまりたる例(ためし)なし

方丈記の冒頭で鴨長明は、この世の無常観を川の流れに例えた。

祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
諸行無常の響きあり

平家物語では、釈迦が説法を行ったとされる祇園精舎の鐘の響きに
この世は春の夜の夢の如しと、その儚さを嘆く

色は匂へど 散りぬるを
我が世誰ぞ 常ならん
有為の奥山 けふ越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず
我が世誰ぞ 常ならん
有為の奥山 けふ越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず

すべての仮名を使って作られたいろは歌では、現世の無常を有為の奥山(因縁によって起きる一切の事物)に例えている。

元日の地震に驚かされたものの、穏やかに過ぎ去ろうとしているお正月も、僕にとっては、緩やかな隅田の流れに浮かぶうたかたのようでもある。そんな泡沫の一瞬を切り取り甦らせる術がある。アナログからデジタルになって扱いやすくなったカメラ機能は、ケータイにも装備され、この世の無常をいつでもどこでも指先ひとつで留めることができる。

昨年の暮れに故障した我が愛用の一眼レフカメラ、年末年始の休業のため年明けの11日以降と言われた修理も、予定より早く12月の30日に届いた。一眼レフの故障により、コンパクトデジカメを新たに購入し、ケータイのカメラ機能と合わせて3台になったカメラ。記憶から消えていく一瞬を切り取り、PCに保存するも膨大な量になってしまう。そんな悩みも抱えながら、消えゆく常ならんものに命を与えるカメラの不思議を思いながら、今年もこれらにお世話になりそうだ。