歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

30歳の肖像

2018年09月15日 | 日記
私は今年30歳になった。

これは案外悪くない出来事である。

多くの人がそうであるように、私もまた大人コンプレックスである。

自分の実年齢に対し精神年齢が低く、自分が大人であるという自覚が持てないでいるのだ。

そこに30という数字を突きつけられ、こっちの気持ちなどお構いなくおでこに「大人」という判を押された気分。

「もう大人ってことでいいのね。」

我ながら世話の焼ける面倒なやつだ。

大いなる誰かさんは端からそんなこと気にしてないだろうに。




フェデリコ・ウリベの色鉛筆で作った肖像。



思えばここに来るまで多くのカルチャーアイコンたちの年齢を追い抜いてきた。

碇シンジくんとか風の谷のナウシカとかサザエさんとか。

27クラブのジャニス・ジョプリンもカート・コバーンもジミヘンもロバート・ジョンソンも

エイミー・ワインハウスもバスキアも、私が28歳になった途端みんなまとめて年下になってしまった。

個人的に最も衝撃的だったのは28歳になったとき夫に言われた一言だ。

「君もついにムスカと同じ歳になったね。」

自分がいつかラピュタのムスカと同じ歳になるだなんて思いもよらなかった。



そして30歳、これが一体誰と同じ歳なのかって?

これも夫に言われた一言で明らかになった。

「ファイトクラブのタイラー・ダーデンって30歳らしいよ。」

ゲゲゲ!

男の中の男、消費社会に仇なす革命家、自由への先導者、あのタイラー・ダーデンが30歳!?

ちなみにファイトクラブのときのエドワード・ノートンも30歳だったらしい。

なんと罪深き30という数字かな。

お前は「ライフスタイルの奴隷だ、物に支配されている」だとか、

「何でもできる自由が手に入るのは、全てを失ってからだ」とか言い切るあの風格、

いったいどう生きたらそなわるの。



夫の呪文のような言葉に見事はめられて、2年ぶりくらいに『ファイトクラブ』を見た。

等身大のタイラー・ダーデンである。

少し感慨深いような、ただの思い込みのような。

それにしても最後のシーンは何度見ても泣ける。

寸前までそんな予兆全くないのに、

The Pixiesの『Where is my mind』をバックにビルが崩壊していく映像があまりにかっこよくて涙が出るのだ。

いいじゃない、30歳。





余談だけどタイラー・ダーデンは英エンパイア誌が発表した「史上最高の映画キャラクター100人」で見事1位を獲得している。

ランキングだが2位にダース・ベイダー、3位にジョーカー、4位ハン・ソロ、5位ハンニバル・レクターと、

ハン・ソロ以外は上位にランクインしているのが悪役ばかりでちょっと面白い。

よくよく考えるとハン・ソロも優等生タイプではないわけで、ちょっとくらい悪人の方が人の心をつかみやすいのかしら。


フェデリコ・ウリベの作品展で一番面白かった作品。
タイトルを見て笑ってしまった。その名も『プレッシャー』。
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