歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

ランナーズハイ

2018年08月12日 | 日記
ずいぶん前から走っている。

白く靄がかった視界不明瞭のコースだ。

ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、

そこでは自分の重苦しい呼吸音だけが聞こえる。



靄が薄くなると前を走っている黒い影が見えてくる。

それはずっと前から私の前を走っている。

接近したり離されたりの繰り返しだが、

最後の数メートルが遠い。



黒い影のシルエットは成人女性のようだった。

理由はわからないが私は彼女を追い越さなければならない。

頭で考えれば考えるほど、彼女の背中は遠ざかる。

大分前から彼女と二人で走り続けている。



走って走って走り続けて、体力と精神を消耗していく。

しまいには思考も働かずぼんやりしてくる。



それでもひたすら走り続けていたらあるとき急に足が軽くなった。

足や手や呼吸など身体中がうまく機能していくのがわかる。

すごいすごい、ずんずん進むよ。

まるで自分の身体じゃないようだ。

すごいスピードで走り抜け、ついには黒い影に追いついた。

横目で影の顔を覗き見るとそれは自分だった。

そうだったのね、と案外軽く受け止めてさらに大きく一歩を踏み込む。

次の瞬間、一気に追い越した。



急速に靄が消え去り視界がクリアになった。

目の前に何も走っていない、コースすらない世界。

真っ白な光だけの世界。

なんだこれ、最高じゃないか。

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