歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

黄色い天敵

2015年09月17日 | 日記
自然界は捕食する側と捕食される側がいて、主に捕食する側を天敵と呼ぶ。

捕食ないし寄生、あるいは過剰防衛による攻撃者などもそう呼んで構わないだろう。

言葉の正しい意味を探るのは難しいのでそこら辺は適当だ。



天敵はなぜ天に敵と書くのだろうか。

天から現れる敵ということであるならば、今回のことは実に天敵たりうる事態だ。



10日程前から実家に帰省している。

一昨日は母の検査で県の大学付属病院まで行く用事があり、私もそれに便乗することになっていた。

午前11時半過ぎに家を出て車庫まで歩いていたのだが、途中の建物の側で少しだけぼけっと立ち止まっていた。

すると目の前を一瞬小さな黒い陰が通り過ぎた。

その時である、頭に激痛が走った。

わけが分からないまま「いててててて」と地面にへたり込む。

それに気づいた母がわめきながら私の頭めがけて鞄を振り落とした。



キイロスズメバチだ。

あまりの衝撃的な痛さに体がびっくりしたのか涙が止まらない。

頭を剣山で殴られたあとぐりぐり押し付けられているかのような凄まじい痛さである。

それでいて皮膚をこれでもかというくらいに引っ張られているような頭皮の突っ張り感。

もうなにがなんだか。



父は「そんなもん大丈夫やわい」と言うし、近くの寺の和尚さんは「それは痛いわ」と言いながら笑っている。

凄く遠い場所から声をかけられているような気分だ。



頭が朦朧とし耳や首まで麻痺してきた時にはさすがにこれはまずいと思った。

アナフィラキシーショックという言葉が頭をよぎる。

症状が現れると最悪の場合死に至ることもあるという。



しかし周りの楽天的な大人に後押しされる形で都市部行きの車に乗ってしまった。

車に乗っている間も頭を動かすことができない。

あぁ自然界はなんて理不尽なんだと頭の中で文句を垂れる。

キイロスズメバチは私の長い黒髪を何かと勘違いしたのだろう。



40分後、いろんな不安をよそにだんだん頭の痛みが和らいできた。

あれ、なんか大丈夫かも。

不謹慎だけど少し残念な気もした。

その後は頭痛くらいの痛みが夜まで続いた。

楽天的と思われた大人達には長い田舎暮らしで積んだ経験と根拠があるのだな。



キイロスズメバチからすれば天敵から身を守るための防衛行動だったのだ。

私は一日の痛みと数日の腫れに耐えるだけですむけれど、巣を守ろうとしたキイロスズメバチは鞄の一撃で死んでしまった。

今まではキイロスズメバチを見ても何も思わなかったが、これからは頭だけは隠そうと思う。

共生するためには相手への配慮も大切なのかもしれない。

次はアナフィラキシーの恐れがあるからそんな悠長なことも言えないだろうけどね。

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