どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

君たちはどう生きるか...宮﨑版「夢」なのか

2023年07月17日 16時00分00秒 | 映画
鑑賞してから数日...あぁ...やっぱりコレなんだろうなと。

黒澤明監督作「夢」、80歳の時のもの。

宮﨑駿さんも今年82歳...同じ境地に立ち「こんな夢をみた」と語りかけてくるような作風だったし。

巨匠も長寿に達すれば、自伝的というか...人生を振り返る作品を作りたくなるものなのだろう。

非常に観ていて同じ感触があった。

誰しも年を重ねると過去を振り返ることが多くなるし、ましてや黒澤さんや宮﨑さんレベルともなれば幼少期に感じ取った夢か現かの曖昧な境界域を増幅させて、ファンタジーとして作り上げたくなるものなんだなと。

これはもう...作品として良し悪し云々するもんじゃないんだろう。

作画は日本のアニメ界を牽引するスーパーアニメーター勢揃いな布陣で、どのシーンどのカットも素晴らしい。

だが...活き活きとしているかと言えば、そうは感じられなかった。

走馬燈のように巡る想いを老人が語り、「それってこんな感じ?」と他者が描いてみせ「まぁ...そんな感じかな」と確認しあっているだけで。

その絵は100%上手く描かれていて文句はつけられないが、想像以上の120%な期待はできない。

「これはアートだ」と褒め言葉を添えている人もいるが、それって既にアニメーションの語源である生命感が失われていることを上手く回避している言い方に思えてくる。

かつて宮﨑さん自身に感涙させられた躍動するダイナミックな動きも表現も、もうそこにはない。

先輩・同輩...そして歯ごたえのあった後輩はすでに金門の向こうに逝ってしまい、1人残された宮﨑さんは「ワレヲ學ブ者は死ス」と書きそえてその門を固く閉ざし、番人となって生きながら籠もろうとしている...。

そんなイメージばかりが去来して切なさばかりがこみ上げてくる作品だった。