本編の中盤でヒョッコリすずさんの前に現れる、幼なじみの水原哲さん。
少年時代はヒネクレな暴れん坊で強面キャラでしたが、青年期の彼はサバサバした快活な男に(^_^;
すずさんの作った食事を楽しみ、
風呂にはいって大声で歌い、
畳にゴロンと横になる...。
すずさんも少年時代とのギャップに戸惑っているようですが、よくもまぁ初めてきた他人の家でここまでリラックスできるなぁと(^_^;
軍人・兵隊さんへの敬いの気持ちがあってこそ成立するんですが、現代人の感覚からすると驚いちゃいますけどね...。
外泊許可の名目である「入湯上陸」ですが、軍隊...それも洋上の艦艇にずっといる身には本当にありがたいものだったようです。
今年の夏に亡くなった俳優・中島春雄さんの自伝「怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄」に実感を伴う記述があります。
中島さんはゴジラのスーツアクターとして有名な方ですが、戦時中海軍にいた人で、その時の思い出を綴っています。
昭和一九年の三月に、正式に「海軍航空技術廠」の一員になった。
海軍時代の一番の思い出は航空母艦「信濃」に配属されたことだよ。ものすごく大きくてね。戦艦武蔵、大和、あれと同型なんだ。最初は戦艦にする予定を空母に改造したから六万八千トンもあった。僕は「発着機部」に配属された。
海軍航空技術廠といえば、航空戦略に尽力した山本五十六が設置した機関で、しかも幻の空母・信濃でカタパルト要員だったという...それだけで凄い経歴に読んでてビックリなんですがっ!
空母の中は皆が走るね。タラップでもタタタッ!って早足で駆け下りる。中は金気臭いのが苦手だったね。どこもペンキや鉄の匂いがしている。そこに二四時間はしんどいよ。周りは全て鉄だから、ぶつかったら痛いしさ。
金気臭い...なるほど、天井から床まで全体が金属製でできている中で長時間いるのは厳しいものがあるのだろうなぁと、この言葉がすごく印象的です。
楽しみは「入湯上陸」だったね。軍に協力している家庭に行って一泊するんだ。海軍と契約した一般の民家があった。契約すると米の配給が多いんだ。上官も行くことがあるから気楽でもないけど、畳が恋しいから行くんだよ。軍艦の中で、いつも鉄に囲まれていると、畳が本当に恋しくなるんだよね。だから楽しみだった。
金気が鼻についてウンザリ気味なところに、木と紙と畳でできた柔らかい空間に浸れるのは、さぞかし夢のような心地だったんだろうなぁと思います。匂いも全然違っていたでしょうしね...哲さんのちょっと図々しいくらい伸び伸びと寛いでいる様子も少しは判るような気がしたんです(^_^)
普段の緊張から解き放たれ、すずさんと見て「温いのう」「柔いのう」「甘いのう」と弛緩してしまうのも無理からぬ自然の流れだよなぁともね...周作さんも察し過ぎなんだよなぁ(^_^;(原作だとリンさん絡みなのでニュアンスも微妙に違うんですけどね)
人生のすれ違いって残酷だよなぁとつくづく思い知らされる場面ですが、この「入湯」という温もりある言葉は「この世界の片隅に」によって深みあるものとして擦り込まれたなぁと感じています。
中島さんは入湯上陸のエピソードの他にも戦時中の体験談を語っていますが、迎撃する高角砲の弾丸が破裂する恐ろしさについても触れています。
敵襲のときは、高角砲でボンボン撃って迎撃するね。迎撃するときに外にいると危険だよ。高角砲の砲弾は、高空でボーンと爆発して、ギザギザの鉄の破片になってバサーッと降ってくるんだ。
「この世界の片隅に」でも初の呉空襲で生々しく描写されていますが...
これまでの戦争映画に空中で弾丸が破裂する様子はあっても、その破片が地表に落ちてくる(というより抉り突き刺す...)描写はなかったように思います。
直撃しなくても破片で敵機に被害を与えるためだね。だから下にいる者は鉄兜を被っていないと、死ぬか大怪我だよ。僕らは屋根の軒下に急いで潜ったね。凄い音で降ってくるんだ。バラバラバラッ!て。
敵味方の区別なく襲ってくる鉄の塊...害を被っても国が補償してくれるわけでもない時代。
「この世界の片隅に」はテンポが速く、1カット・1シーンは短くても、実に多くのことを映像で語っています。
中島さんの語り口は軽妙洒脱で、「怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄」はタイトル通りゴジラのスーツアクターとしての体験談がメインで、戦時中の話しはごく一部ですが、それだけに真に迫る重みを感じます。
少年時代はヒネクレな暴れん坊で強面キャラでしたが、青年期の彼はサバサバした快活な男に(^_^;
すずさんの作った食事を楽しみ、
風呂にはいって大声で歌い、
畳にゴロンと横になる...。
すずさんも少年時代とのギャップに戸惑っているようですが、よくもまぁ初めてきた他人の家でここまでリラックスできるなぁと(^_^;
軍人・兵隊さんへの敬いの気持ちがあってこそ成立するんですが、現代人の感覚からすると驚いちゃいますけどね...。
外泊許可の名目である「入湯上陸」ですが、軍隊...それも洋上の艦艇にずっといる身には本当にありがたいものだったようです。
今年の夏に亡くなった俳優・中島春雄さんの自伝「怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄」に実感を伴う記述があります。
中島さんはゴジラのスーツアクターとして有名な方ですが、戦時中海軍にいた人で、その時の思い出を綴っています。
昭和一九年の三月に、正式に「海軍航空技術廠」の一員になった。
海軍時代の一番の思い出は航空母艦「信濃」に配属されたことだよ。ものすごく大きくてね。戦艦武蔵、大和、あれと同型なんだ。最初は戦艦にする予定を空母に改造したから六万八千トンもあった。僕は「発着機部」に配属された。
海軍航空技術廠といえば、航空戦略に尽力した山本五十六が設置した機関で、しかも幻の空母・信濃でカタパルト要員だったという...それだけで凄い経歴に読んでてビックリなんですがっ!
空母の中は皆が走るね。タラップでもタタタッ!って早足で駆け下りる。中は金気臭いのが苦手だったね。どこもペンキや鉄の匂いがしている。そこに二四時間はしんどいよ。周りは全て鉄だから、ぶつかったら痛いしさ。
金気臭い...なるほど、天井から床まで全体が金属製でできている中で長時間いるのは厳しいものがあるのだろうなぁと、この言葉がすごく印象的です。
楽しみは「入湯上陸」だったね。軍に協力している家庭に行って一泊するんだ。海軍と契約した一般の民家があった。契約すると米の配給が多いんだ。上官も行くことがあるから気楽でもないけど、畳が恋しいから行くんだよ。軍艦の中で、いつも鉄に囲まれていると、畳が本当に恋しくなるんだよね。だから楽しみだった。
金気が鼻についてウンザリ気味なところに、木と紙と畳でできた柔らかい空間に浸れるのは、さぞかし夢のような心地だったんだろうなぁと思います。匂いも全然違っていたでしょうしね...哲さんのちょっと図々しいくらい伸び伸びと寛いでいる様子も少しは判るような気がしたんです(^_^)
普段の緊張から解き放たれ、すずさんと見て「温いのう」「柔いのう」「甘いのう」と弛緩してしまうのも無理からぬ自然の流れだよなぁともね...周作さんも察し過ぎなんだよなぁ(^_^;(原作だとリンさん絡みなのでニュアンスも微妙に違うんですけどね)
人生のすれ違いって残酷だよなぁとつくづく思い知らされる場面ですが、この「入湯」という温もりある言葉は「この世界の片隅に」によって深みあるものとして擦り込まれたなぁと感じています。
中島さんは入湯上陸のエピソードの他にも戦時中の体験談を語っていますが、迎撃する高角砲の弾丸が破裂する恐ろしさについても触れています。
敵襲のときは、高角砲でボンボン撃って迎撃するね。迎撃するときに外にいると危険だよ。高角砲の砲弾は、高空でボーンと爆発して、ギザギザの鉄の破片になってバサーッと降ってくるんだ。
「この世界の片隅に」でも初の呉空襲で生々しく描写されていますが...
これまでの戦争映画に空中で弾丸が破裂する様子はあっても、その破片が地表に落ちてくる(というより抉り突き刺す...)描写はなかったように思います。
直撃しなくても破片で敵機に被害を与えるためだね。だから下にいる者は鉄兜を被っていないと、死ぬか大怪我だよ。僕らは屋根の軒下に急いで潜ったね。凄い音で降ってくるんだ。バラバラバラッ!て。
敵味方の区別なく襲ってくる鉄の塊...害を被っても国が補償してくれるわけでもない時代。
「この世界の片隅に」はテンポが速く、1カット・1シーンは短くても、実に多くのことを映像で語っています。
中島さんの語り口は軽妙洒脱で、「怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄」はタイトル通りゴジラのスーツアクターとしての体験談がメインで、戦時中の話しはごく一部ですが、それだけに真に迫る重みを感じます。