バタバタした時期で、映画を観るような悠長な時間を作るの難しかったが、もう今日しかないって感じで。
クルマで約30分、TOHOシネマズららぽーと冨士見へ。
ここでは小さめなハコである。
でもこの大きさがちょうど良いし、心地良い。
ほぼ満席という状態でちょっと驚いた。
客層は中高年以上の男女半々...大半が(自分もふくめて)シニア割の利用者だろう(*^o^*)
内容は期待を裏切ることなく、とても良い作品だった。
主人公は役所広司さん演じる平山、おそらく過去は派手で虚飾に満ちた世界に生きていた人なのだろう...その全てを捨て、ある意味で逃げ出した人のようだ。
全てにわたって彼の視点で描かれており、約一週間ほどの日常を淡々と追う。
朝起きて植栽に水をやり、缶コーヒーを飲みつつ、仕事に向かう。
そして銭湯で疲れを癒し、馴染みの居酒屋で一杯やって、夜は読書しつつ眠りにつく...スローライフというか...清貧と言えばそうなのだが、全ての束縛やシガラミから解かれ、こんな暮らしができれば良いなぁ...と憧れてしまうような不思議な気持ちで見入ってしまう。
その日々の反復の中に時折小さなズレを生じる。静かな池に小石が投げ込まれるように。
そこに物語がほんとに小さく仰々しくなく挟まれるのだ。
これがちょっとした刺激となって鑑賞者に心地良く響いてくる。
監督のヴィム・ヴェンダースさんは小津作品のフォロワーとして有名だが、聖地・東京を舞台に、日本人を描いていくことに喜びを感じながら作り上げたのが実感できる。
小津作品のモノマネはしていないが、シーン、カットのそこかしこにニヤリとさせられるエッセンスの散りばめが上手い!
アヤのキスは最高で、平山と一緒にこっちもニヤニヤしてしまった(*^o^*)
映像も良いが、音がとても良い。
平山の息づかい、環境音、そして小物類が立てる音...カセットのカシャカシャ、ポケットカメラのカシャッ。
何もかもが愛おしく「もののあわれ」として沁みてくる。
内容とは別になるが、スクリーン縦横比が4:3のスタンダードサイズだったのも素晴らしかったなぁ...。
小津安二郎メモリアルイヤー締めくくりとして、良い映画を観させてもらって充足感でいっぱいに...(´д`)
駐車場から夕陽に染まり金色に輝く風景が目に飛び込み、映画の続きを感じさせられた。
気分よく、帰途につく。