ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

愛について、ある土曜日の面会室

2012-12-12 22:52:45 | あ行

ダルデンヌ兄弟のテイストに
ちょっと似ている気がします。

「愛について、ある土曜日の面会室」73点★★★★


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フランス・マルセイユ。

不器用な男スティファン(レダ・カテブ)は
ある男から奇妙な依頼を受ける。

アルジェリアに住む女性ゾラ(ファリダ・ラウアッジ)は
息子が殺されたと聞き、
マルセイユにやってきた。

地元のサッカー少女、16歳のロール(ポーリン・エチエンヌ)は
バスで出会った少年と恋に落ちるが
ある日、彼が逮捕されてしまう。

3人はそれぞれの思いを秘めて、
その日、刑務所の面会室へと向かうが――。

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冒頭、子連れで泣き叫ぶ女性を
冷ややかに見つめる人々。

そのシーンが、最後にこうつながってくるとは――!
と、
構成の妙にうなる作品です。

3つの物語が交互に描かれ
それらが巧妙に絡まっていくわけですが

はじめは訳がわからず、かなり眠かった(笑)。

でもそこで踏ん張ると
意外なまでに精密に編まれた糸のおもしろさに
からめとられます。

そしてタイトルにあるように
全てがその時間、その場所に向けての道のりだとわかったときには
「ほう」とため息がもれました。

81年生まれのレア・フェネール監督は
本作が長編デビュー作。

旅芸人の家に生まれ、
父は座長、母と妹は役者という非常に興味深い履歴の持ち主で
(プレスの資料で見ると
シャルロット・ゲンズブール似の美少女なんですわコレが!)

社会の辛いサイドにいる人々を淡々と描くその筆は
ダルデンヌ兄弟のテイストに似ている感じで、

ぶっきらぼうなまでに説明を排除し、
観る側にハードルを設け、
でもここまで揺るがずに踏ん張られると、

受け取るこちら側も「おしっ」と言いたくなる。

役者もいい人選で
ゾラを演じるのは
「ジョルダーニ家の人々」(12年)で難民女性に扮した
ファリダ・ラウアッジ。

スティファン役は
「預言者」(09年)に出てたレダ・カテブと
見応えありあり。

いやはや有望な才能が
またひとつ生まれたようですね。


★12/15(土)からシネスイッチ銀座で公開。

「愛について、ある土曜日の面会室」公式サイト
コメント (2)
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