ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

嘆きのピエタ

2013-06-14 12:26:29 | な行

きましたよ、キム・ギドク監督の新作。


「嘆きのピエタ」68点★★★☆


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生まれてすぐ親に捨てられた
青年イ・ガンド(イ・ジョンジン)は
“悪魔”と怖れられる、冷酷無比な借金取り。

そんな彼の前に、
母親だと名乗る謎の女ミソン(チョ・ミンス)が現れる。

信じず、ミソンを邪険に扱うガンドだが
しかし献身的に世話を焼く彼女を
次第に受け入れていく――。


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「悲夢」(08年)で映画が撮れなくなり
「アリラン」(11年)で苦悶する自分を撮り、
復活したキム・ギドク監督の新作。

ネタバレするとつまらないので
観る前の情報収集には注意しましょう。

で、ネタバレでない範囲で。

後半までがんばれば、
あの「オールド・ボーイ」に近いカタルシスが現れます。

しかし、もうとにかく
痛い、つらい描写が多いので、
それまで辛抱するのがけっこうキツイかも。

主人公は
借金を払えない債務者を、障害者にして保険金を取る
悪魔のような青年。

その方法ってのがまた
町工場のプレス器や、鉄工所の刃など
「え?まさか。これはやめようよ」的な
痛いネタのオンパレード。

生き物が出てくれば殺すし。

観客への容赦ない嫌がらせのような描写に、
耐えるのはなかなかしんどい。

そんななか、おかしな女が「母親だ」と登場するんですが
そこでも
「え?」なタブーを発動。

全編を監督の混沌とした狂気が覆っていて、
どこに行くのかと思うけど

ただ、その“仕掛け”が見え始めると、
がぜん作品の意味が変わってきます。


ただ仕掛けが見えるのが、ちょっと早すぎたのと
痛いネタに耐えるのが辛すぎたので
この点数。

「悲夢」より断然いいんですけどね。

この前の作品「アーメン」(11年、未公開)って気になるなあ。
もっとヤバさ炸裂っぽいですが。


★6/15(土)からBunkamuraル・シネマほか全国順次公開。

「嘆きのピエタ」公式サイト
コメント (2)
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